僕とウチと恋路っ!   作:mam

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12月30日(金)


僕とみんなとおせち料理part03

 

 

「一のお重には後、何を入れるのかな?」

 とりあえず今のところ用意しているのは黒豆と田作りと数の子の三種類。

 

「重ねるお重の数で変わりますけど……明久君と坂本君のお重の数はいくつですか?」

「俺は四段だな」

「僕は三段だよ」

 僕と雄二がそれぞれ持ってきたお重をテーブルの上に置く。

 

「昔から言われている正式なお重の数は五段らしいです」

「「「へぇ」」」

 しかし、本当に姫路さんは色々知っているなぁ。

 

「……私の家では五段目は空にしておくのが昔からの決まり」

「そうなのか?」

「……うん」

 雄二の問い掛けに小さく頷く霧島さん。

 

「お重を空にしておくのは、来年はその空のところに詰める事が出来るくらい出世できますように、との願いを込めるからだそうです」

「へぇ……じゃあ、空のお重に願い事を書いて入れておけば叶うかな?」

「それは神社にお参りして絵馬に書いた方が良いと思いますよ」

 僕が空のお重を持ちながら姫路さんとそんな話をしていると……

 

(もっと胸を大きくして欲しい……絵馬とか言うのと両方やったら効果あるのかしら)

 美波が自分の胸に両手を当てながら何か呟いていた。

 

「美波?どうしたの?」

「あっ、あああっアキには関係あるけど関係ないわっ!」

 美波が顔を真っ赤にして慌てている。どうしたんだろう?

 

「なんでもいいから、今聞いた事は忘れなさいっ!判ったっ!?」

 いきなり襟を掴まれて頭をガクガク揺すられる。

 どうやら僕は気が付いてはいけない事に気付きかけているみたいだ。

 

「わ、判ったっ。すぐ忘れるからっ」

「ほんとっ!?」

「うん。美波に嘘なんか付かないよっ!」

 僕の記憶力だと夕御飯までには忘れてると思うよ?

 

――――

―――

――

 

「そうすると明久君と坂本君で、おせちの詰め方が変わりますね」

「明久とバラバラに詰めるのも面倒だから俺のも三段にしよう。四段目は俺の好きな物を詰める事にする」

「それですと後は……紅白のかまぼこや伊達巻、栗金団に昆布巻きなどでしょうか」

 姫路さんが頬に人差し指を当てながら答えてくれる。

 

「かまぼこには、どういう意味があるのかしら」

「かまぼこは半円形に切って日の出を表しているそうです。また紅は魔除け、白は清浄をイメージしているみたいですね」

「日の出と言う事は新しい門出と言う意味か」

 雄二があごに手を当てながら呟く。

 

「そうですね。来年は初日の出が見れると良いですね」

 姫路さんが優しく微笑みながらそう言うと……美波が僕の袖を引っ張って

 

「ねぇ、アキ?初日の出を一緒に見に行かない?」

「うん、いいよ」

 新年早々美波に会えるなら、来年はきっと良い事があるに違いない。

 

「初日の出か……俺も見に行くかな。他のみんなはどうだ?」

 雄二がそう言うと……みんなは僕と美波を見て

 

「わしの家は元旦は家族と過ごす仕来りなのじゃ」

「ボクは多分起きれないと思うからパスかな」

「…………俺もたぶん起きれない」

「私はお父さんとお母さんと見に行く約束をしているので」

 みんな元旦は色々予定があるよね。それに引きかえ、このバカは……

 

(バカ雄二っ!なんで新年早々貴様の顔を見ないといけないのさっ!?)

(るせーっ!お前らが翔子を焚き付けるから正月から拘束される羽目になったんだろうがっ!)

 興奮してるからなのか少し顔が赤い雄二とアイコンタクトで会話する。

 

(とりあえず逃げ道を作っとかないと新年早々この家に監禁されちまう)

 たぶん戻ってきたら拘束されるのには変わらないと思うんだけど……仕方ないか。

 

「判ったよ。じゃあ、待ち合わせとかは後で決めようよ」

「そうか。すまんな。ついでだから初詣も行こうぜ」

 雄二が笑顔で返事をすると霧島さんが

 

「……雄二が行くなら私も行く」

「別に構わんが、お前は家の用事があるんじゃないのか?」

「……大丈夫。午前中は空いているから美波たちと一緒に初詣に行って午後から松の内の間、雄二は私とずっと一緒」

 頬を染めてやや俯きながら雄二の袖を引っ張っている霧島さん。

 

「そっ、そうか……三日間ずっとか……」

 雄二はぷるぷる震えながら、信号機みたいに顔が真っ赤から一気に真っ青になっていた。

 

――――

―――

――

 

「伊達巻は巻物の形から勉強が出来るように、と言う意味があるそうです」

「昆布巻きは、おそらく『喜ぶ』からじゃろうな」

「木下君の言う通りです」

「よく演劇の料理シーンでも出てくるからのう」

 にこにこと笑顔の秀吉と優しく微笑んでいる姫路さんのツーショット。

 見ていて心が和んで僕まで笑顔になるなぁ。

 

「じゃあ、栗金団は何で入っているのかな?」

 工藤さんも笑顔で質問してくる。

 するとムッツリーニがぼそっと

「…………デザート」

「確かに甘いですけれど金団は、その色や字から金運アップの意味があるみたいですね」

 流石のムッツリーニも、おせちには性的好奇心を刺激されるものは無かったようだ。

 

「……栗金団は少し作りすぎたみたいだから持っていって」

 相変わらず真っ青な顔をしてぶつぶつ言いながら動かなくなった雄二の傍に居た霧島さんが

 冷蔵庫からステンレス製の大きなバットを取り出し、フタを開けると……栗金団が入っていた。

 

「霧島さん、ありがとう」

「翔子、ありがとう」

 美波と二人、霧島さんに御礼を言って少し味見をさせてもらう。

 うん、甘過ぎず、舌の上からすーっと甘味が消えていくのが気持ちいいな。

 美波を見ると笑顔で頷いていた。

 

 そうすると、かまぼこは切るだけだからすぐ出来るだろうし

 一のお重で作らないといけないのは、後は伊達巻と昆布巻きか。

 

「ほら、雄二(ボゴッ)」

 とりあえず目が(うつ)ろな雄二を殴って、正気に戻す。

「いてぇっ!何しやがるっ!?」

「伊達巻と昆布巻きを作らないといけないんだけど、雄二はどっちを作る?」

「ん……それなら俺たちは伊達巻を作るか。ムッツリーニと工藤、魚をすり潰すの手伝ってくれ」

 雄二がムッツリーニと工藤さんを呼んで手伝ってもらうみたいだ。

 魚をすり潰すのは体力もいるだろうから、あの二人に頼むのは良いかも知れない。

 

「じゃあ、僕たちは昆布巻きを作ろうか」

「うんっ」

「姫路さんと秀吉は僕たちの方を手伝ってくれる?」

「うむ」

「はい」

 

 とりあえず昆布とかんぴょうを水に入れて戻すかな。

 僕は昆布とかんぴょうを手に持って

 

「姫路さん?水に入れるのは昆布とかんぴょうだけで良いからね」

「はい。判りました」

 美波と姫路さんにかんぴょうを戻すのをお願いして

 僕と秀吉で昆布を水にくぐらせて表面をふきんで拭いておく。

 

 そして少し時間をおいてから昆布を切って美波と姫路さんと秀吉の三人で

 昆布を巻いてかんぴょうで結んでもらう。

 

 僕が、その間にかまぼこを切っていると……

 なにやら三人で楽しそうに話をしているのが聞こえてくる。

 

「……でね、アキがウチの事を一番大切だって言ってくれて」

「明久君がそんな事を言ったんですか」

「あの明久がのぅ」

 何か言いながら三人でちらちら僕の方を見てくる。

 一体何の話をしているのだろう?

 

 そして僕がかまぼこを切り終わり、三人の方へ行くと

 

「明久よ。おぬし、言う時は言うんじゃのう」

「美波ちゃんを大切にしてあげてくださいね」

「ふぇ?何の話?」

 僕が首を傾げていると……僕に向かって美波が片目を瞑りながら両手を合わせて

 

「アキの家に泊めてもらった時に、アキがウチの事を一番大切だって言ってくれたのをつい……」

「ええっ!?」

 この間の大雪の日に美波をお姫様抱っこした時に言った台詞だよね……

 耳まですごく熱くなってるのが判る。

 

「明久よ。照れる事は無いじゃろう?友達として、おぬしら二人が幸せになるのはすごく嬉しいのじゃ」

「そうですよ。私が……いえ、二人が幸せになってくれるのが本当に嬉しいんです」

 二人とも嬉しそうな笑顔で僕と美波を見ている。

 

「ありがとう。瑞希、木下。ウチは絶対アキに幸せにしてもらうから……ね?」

「う…うん……」

 すごく幸せそうな笑顔で僕を見つめている美波にその返事をするのが精一杯だった。

 

 

 そして昆布巻きも無事煮付けが終わり、いよいよ一のお重の盛り付けをする。

 

「アキ、盛り付けはウチに任せてくれる?」

「うん。お願いするよ」

 美波が盛り付けをしてくれるみたいだ。

 やっぱり女の子だから甘い栗金団や伊達巻辺りを多めに盛り付けるのかな?

 

 あっちは雄二が盛り付けをやってるみたいだけど……綺麗にほぼ均等に盛り付けをしているな。

 そして美波は、と言うと……

 

 お重の半分以上が真っ黒だった。

 半分と言うより、ほぼ四分の三くらい黒豆が圧倒的勝利という感じだ。

 そして右側一列に伊達巻が並んでいて黒豆と伊達巻の間の

 3センチ位の縦一列の隙間に田作りと栗金団や紅白のかまぼこ

 数の子と昆布巻きが少しずつ配置されている。

 物凄くお正月らしくない感じが……全体が黒っぽくて全然華やかに見えない。

 

「みっ、美波?」

「ちょっと待ってね。もうすぐ終わるから」

 僕が話しかけても手を休めることなく盛り付けをしている美波。

 一生懸命なのは嬉しいんだけど……

 

「出来たっと。アキ、お待たせ」

 と言って、「はい」とお重を両手で持って僕に見せてくれる美波。

 

「ず、ずいぶん黒豆にこだわってるんだね」

 僕がそう言うと美波は満面の笑みで

 

「そうよ。アキが真面目に勉強して……」

「うん、頑張るよ」

どんなことがあっても(ウチが技をかけまくっても)健康で居られますようにって……ウチの願いを込めたの」

 

 美波の想いの強さが伝わってくる。

 

 …………来年も手加減はしないと。

 

「あ、ありがとう」

「来年も頑張ってね」

 

 心の底から嬉しそうな美波の笑顔と、黒豆が一杯のお重を見ていると

 

 

 …………来年はカルシウムもたくさん取ろう、と心に誓った。

 

 

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