僕とウチと恋路っ!   作:mam

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1月2日(月)


僕とみんなとお正月part07

 

 

 ムッツリーニの顔色が少し青色になってきたのが心配になったのか

 工藤さんが「帰る」と言い出したので二人と別れることに。

 

 帰る時も最初に見かけた時と同様に付かず離れずで歩いていく二人。

 まぁ輸血パックもムッツリーニの家にあるみたいだから

 今、手を繋いだりして、またムッツリーニが鼻血を出したら今度こそ命の危機だろう。

 

 そんな二人をしばらく見送ってから僕たちも帰ることに……

 河川敷を来た方向へ歩きながら

 

「お姉ちゃん?」

「どうしたの?」

 美波と葉月ちゃんは来た時と同じ様に手を繋ぎながら歩いている。

 その後ろを僕と姉さんが並んで歩いているんだけど

 僕は両手で壊れた凧を持っているので姉さんと手を繋がずに済んでいる。

 

「うちでも犬さんとか飼っちゃダメですか?」

「そうね。ブラちゃんは可愛かったけど……」

 美波は優しく微笑むと葉月ちゃんの頭を撫でながら

 

「でも、昼間はほとんど一人になっちゃうから……葉月もおうちに一人で居たら寂しいでしょ?」

「あぅ……判ったです……」

 美波の言うことに素直に頷きつつも、寂しげに目を伏せてしまう葉月ちゃん。

 さっきまであんなに楽しそうにブラちゃんと遊んでいたのを見ると可哀想に思うけど……

 

 一人で居る寂しさは犬でも人間でも変わらないだろう。

 ましてや、美波が家に居ない間はほとんど一人で居る事の多い葉月ちゃんは

 それが良く判っているから反論もせずに美波の言う事を聞いているんだろうな。

 

 そんな葉月ちゃんを見かねたのか、姉さんが僕に小声で

 

(今度、犬の着ぐるみを買ってくるのでアキくんがそれを着て葉月ちゃんを励ましてください)

(うん、判ったよ……って、ちょっと、姉さんっ!何で僕がそんな物を着ないといけないのさっ!?)

(アキくんは今の葉月ちゃんを見て、なんとも思わないんですか)

 僕たちの目の前でしょんぼりとうなだれている葉月ちゃん。

 僕に出来る事で元気になってくれるなら何でもしてあげたいけど……

 

(だからって僕が犬の格好になることはないじゃないかっ!)

(その方が葉月ちゃんが喜ぶと思ったのですが……私もアキくんのそういう格好が見てみたいですし)

 姉さんは真剣な顔でそんな事を言ってきたけど……

 絶対に後半の方が本音だよねっ!?

 

 僕と姉さんがそんな会話をしていると、ふいに葉月ちゃんが僕の傍に寄ってきて

 

「今日はバカなお兄ちゃんにいっぱい甘えるんですっ」

 そう言いながら僕の袖を引っ張る葉月ちゃん。

 でも顔はまだ笑っていなくて……

 

「ダメですか?」

 すごく不安そうな……今にも泣きそうな顔をしている。

 美波の妹という前に葉月ちゃんは僕の大切な友達だから、いつも笑っていて欲しい。

 

「いいよ。今日はずっと一緒に遊ぼうね」

 僕は出来る限りの笑顔で答えると

「ありがとうですっ」

 葉月ちゃんも笑顔で答えてくれた。

 

「アキ……ゴメンね」

「大丈夫だよ。それに今日は元々葉月ちゃんと遊ぶつもりだったんだし」

「そうですね。昨日、アキくんが葉月ちゃんとあまり遊んであげられなかったみたいですし」

 姉さんにそんな事を言われていると葉月ちゃんがいつもの天真爛漫な笑顔で

 

「葉月、今日はバカなお兄ちゃんと一緒に御飯を食べて」

 うん、それくらいならお安い御用だ。

 僕が葉月ちゃんの笑顔を見ながら頷いていると……

 

「一緒にお風呂入って一緒に寝るんですっ」

 ゴメンね、葉月ちゃん。そのお願いは叶えてあげられそうに無いんだ。

 美波と姉さんの物凄い殺気に押し潰されそうになりながら無言の返事をした。

 

 

…………

……… 

……

 

 

「そう言えば夕御飯の買い物もしていこうかな」

「バカなお兄ちゃんの御飯がまた食べられるんですねっ」

 両手を挙げて喜んでくれている葉月ちゃん。

 頭を撫でてあげたいけれど、生憎(あいにく)今は壊れた凧で両手が塞がっているので出来なかった。

 

「たくさん食べてね」

「はいですっ。たくさん食べて早く大きくなってバカなお兄ちゃんのお嫁さんになるんですっ」

 僕と美波が苦笑しながら葉月ちゃんを見ていると姉さんも微笑みながら

 

「姉さんも楽しみです」

「ほぇ、姉さんも?」

「はい……さっきアキくんがメイド姿で御飯を作ってくれると言ってましたので」

 

 あ……そう言えば、美波が寄り添ってきた時に姉さんに見つかっちゃって

 許してもらう代わりにそんな約束しちゃったんだっけ。

 

「あの……玲さん」

「美波さん、どうかしましたか?」

「ウチにもメイド服を貸して頂けますか?」

「ええ、それは構いませんが……」

「ありがとうございます」

 姉さんの返事を聞いて嬉しそうに微笑む美波。

 

「美波もメイド服を着てくれるの?」

「うん」

「姉さんが言ってたのは僕だけなのに?」

 僕がそう言うと……美波は笑顔で片目を瞑りながら僕の口に人差し指を軽く当てて

 

「そんな事言わないで……ウチも一緒に頭を下げたんだから、ね?」

 

 

…………

………

……

 

 

 しばらく歩いて……うちとスーパーへの分かれ道が近くなってくると

 姉さんが両手を差し出してきて

 

「アキくん、凧を貸してください」

 僕が姉さんに凧を渡すと姉さんは葉月ちゃんに向かって

「葉月ちゃん。美波さんとアキくんは買い物をしてから帰るそうなので先に家に戻りましょう」

「葉月もお手伝いするですっ」

「荷物を持ってもらうのに美波さんにお手伝いして頂きたいのです」

 今日と明日の分まで食材を買うとしたら結構な量になるしね。

 

「判りましたです……」

 葉月ちゃんも判ってくれたみたいだ。少し残念そうだけど……

「私たちは早く帰ってアキくんに着せるメイド服の用意をして待っていましょう」

 姉さんがそう言うと葉月ちゃんはパァッと笑顔になって

「バカなお兄ちゃんっ!またメイドさんになってくれるんですねっ!」

 着たくて着るわけじゃないんだけどね……

 

「ええ。だから早く帰って待っていましょう」

「はいですっ」

 葉月ちゃんが笑顔になってくれたのは嬉しいけど……

 その理由が何故か釈然としない。

 

「では、美波さんとアキくん。よろしくお願いしますね」

「はいっ、任せてください。ほら、アキ。行くわよっ」

 妙にやる気のある美波に引っ張られるように

 スーパーへの道を進む僕に向かって姉さんが

 

「そうそう、アキくん。烏龍茶をケースで買ってきてくださいね」

「はい?」

「そろそろ無くなりそうなので……では頼みましたよ」

 そう言うと葉月ちゃんと並んで行ってしまった。

 行ってしまった二人を見ていると……

 

「ほら、アキ。せっかく二人っきりになれたんだから」

 美波はそう言うと……そっと手を握ってきた。

 温かくて柔らかい美波の手を僕も握り返して

 

「そうだね。行こっか」

「うんっ」

 美波は満面の笑みで返事をしてくれた。

 

 

――――

―――

――

 

 

 そして買い物を終えて家に戻ると……

 

 姉さんがメイド服を手に出迎えてくれた。

 

「おかえりなさい。ではアキくん、早速これに着替えてください」

「この烏龍茶を片付けたらね」

 

 さすがに美波にこんな重い物を持たせるわけにいかないので

 僕が烏龍茶を担いできたけど……

 その代わり、美波に今日と明日の食材を持ってきてもらった。

 結構な重さだったと思うんだけど、ずいぶん軽々と持っていた気がする。

 

 そして烏龍茶を片付けようとキッチンの隅の方へ行くと

 自分で飲むために買ってあるのか、僕に着替えさせるために買ってあるのか

 よく判らない缶コーヒーはまだ山積みになっていた。

 ……早いところ、この缶コーヒーも片付けないとなぁ。

 

 

…………

………

……

 

 

 そして美波と二人で夕御飯を作る……メイド服を着て。

 最近美波と一緒に料理をする事が増えてきたなぁ。

 それは嬉しいんだけど……メイド服を着て料理する事も増えた気がする。

 

 でも、去年まで一人ぼっちだったのに比べれば

 みんなと一緒に居るって言うのが嬉しいし、何より美波と……

 

「アキ?」

 ふいに美波に呼ばれて我に返ると……目の前には美波の顔がアップで……

 

「わわっ」

「ボーっとして、どうしたの?危ないわよ」

「ごっ、ごめん。ちょっと考え事してて……」

「なによ、考え事って?」

 美波は顔を近づけたまま、質問をしてくる。

 

「えっと……クリスマスの時も言ったけど、去年までほとんど一人だったから、こうやってみんなと一緒に居ると楽しいなって」

 美波は大きな瞳で僕を見つめている。

 

「今年は口うるさいけど姉さんも居て、いつも笑顔が可愛い葉月ちゃんが居て、そして……」

 一緒に居ると楽しくて幸せな気持ちになれる美波が傍に居てくれるのがすごく嬉しい。

 

 …………って言おうと思ったら

 

「誰が口うるさいんですか」

「可愛いって褒められたですっ」

 口を尖らせている姉さんと両手を挙げて喜んでいる葉月ちゃんに邪魔されちゃったよ。

 

「二人とも大人しくリビングで待っててよ」

「せっかくアキくんが可愛い格好をしているので見ないと勿体無くて」

「バカなお兄ちゃん、可愛いですっ」

 姉さんと葉月ちゃんが僕を見ながらそう言ってきた。

 

 そこへ御飯が炊けたという炊飯器からの電子音が鳴り響き

 

「ほら、もうすぐ出来るからちょっと待っててね」

「はいですっ」

「もうちょっとアキくんの可愛い姿を見させてください」

 

 

 そして料理もほぼ出来て盛り付けをしていると美波が小声で……

 

(そう言えばアキ)

(なに?)

(さっき、みんなが居てって言った時、ウチのだけ聞いてなかったんだけど?)

 今改めて言うのはちょっと照れるな。

 

(えっと……)

(なによ、ウチのは言いにくい事なの?)

(そういうわけじゃないんだけど……)

 ちらっと姉さんたちの方を見ると……まだ二人とも僕の事を見ているみたいだ。

 

(この料理が出来たら言うから、ちょっと待っててくれる?)

(うん)

 そして料理の盛り付けを終わらせて……姉さんと葉月ちゃんに向かって

 

「料理が出来たから自分の分は自分で持って行ってくれる?」

「はいです」

「仕方ありませんね」

 こっちへやってきた姉さんと葉月ちゃんに料理の載ったお皿を渡す。

 そして二人がキッチンから出て行ったのを見計らって美波の方を向き

 

「美波が傍に居てくれるのがすごく嬉しくて……これからもずっと僕の隣に居てくれる?」

 

 すると美波は頬を染めて……大きな瞳で僕を見つめて

 

「当たり前じゃない……バカ」

 そして僕の胸におでこをこつん、と当てて

 

「何があってもウチはアキから離れないから……ずっと傍に居るからね」

 

 美波のポニーテールが目の前で揺れて……

 すごく優しくて良い匂いがした。

 

 

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