僕とウチと恋路っ!   作:mam

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1月2日(月)


僕とみんなとお正月part08

 

 

 美波とずっと一緒に居たい。

 美波のもっと近くに居たい。

 

 美波が何処にも行かないように……

 美波を絶対に離さないように……

 

 僕が両手を上げて美波を抱きしめようとした時

 

「アキくん?まだですか」

「葉月、お腹すいたです」

 二人が僕たちを促すようにリビングから声をかけてきた。

 僕が上げた手を美波の肩に置くと

 

「もぅ……折角いいところだったのに」

 美波が残念そうに呟く。

 

「僕たちも早く行こうよ」

「仕方ないわね。まぁ今はアキもメイドだし」

「……それは言わないで」

 

 僕の分は美波に持ってもらって

 僕はみんなの分の御飯を載せたお盆を持ってリビングへ。

 

 四人全員揃って席に着いたところで

 

「「「「いただきまーす」」」」

 

 みんなで手を合わせて食事が始まった。

 最初は、みんな静かに食べていたけど……

 

「バカなお兄ちゃんっ。この後、葉月と何をして遊んでくれるんですかっ」

 付け合せのミニキャロットにフォークを刺しながら葉月ちゃんが質問をしてくる。

「そうだなぁ……みんなで出来るトランプとか良いよね」

 僕が持っているゲームソフトは、ほとんど二人対戦の物だから

 みんなで遊ぶっていうのにはあまり向いてない気がする。

 

「トランプですかっ。葉月、負けないですっ」

 両手を上げて笑顔で喜ぶ葉月ちゃん。

 そんなに喜んでくれると一緒に遊ぶのが楽しみになってくるなぁ。

 

「こらっ、葉月。お行儀が悪いわよ」

「あぅ。ごめんなさいです」

 美波に(たしな)められて葉月ちゃんが、“しゅん”としてしまった。

 

「美波?少し厳しすぎないかな」

「ダメよ、アキ。こういうのはきちんと、その場で言わないと」

「そうかもしれないけど……」

 僕が少ししょんぼりしている葉月ちゃんを見ていると

「そうなの。葉月が大きくなって恥ずかしくならないようにウチらがちゃんと教えてあげなきゃ」

「ウチらって……」

 葉月ちゃんの教育に何故僕も含まれているのだろうか?と考えていると……

 

「こうして見ていると子育ての相談をしている夫婦みたいですね」

 姉さんが少し口を尖らせた表情で言ってきた。

 

「ねっ、姉さん。いきなり何を言ってるのさっ!?」

「ふっ、夫婦って……」

 美波は真っ赤になって俯いちゃった。

 僕は今、美波と話していたから大丈夫だったけど

 何か食べていたら、きっと吹いていただろうな。

 

「葉月、子供じゃないですっ!葉月がバカなお兄ちゃんのお嫁さんなんですっ!」

 葉月ちゃんはぷぅっと頬を膨らませてそっぽを向いてしまう。

 

「あっ、あのさ……」

 この場の雰囲気を何とか変えないと楽しいはずのお正月が台無しになっちゃう。

 僕が何を言おうか考えていると……

 

「「「でも……」」」

 三人が一斉に僕を見て……

 

(どうしたらアキくんがもっと可愛くなって姉さんを慕ってくれるのでしょうか……)

旦那(アキ)がこんな女装趣味だと子供になんて言えばいいのかしら……)

(バカなお兄ちゃんがもっとしっかりしてくれないと葉月、困るんですっ)

 

「「「――――はぁ……」」」

 三人揃って大きくため息をつくと俯いてしまった。

 

「なにっ?なんなのっ!?どうして僕を見てから、みんな下を向くのっ!?」

 

…………

………

……

 

 しばらく重苦しい雰囲気の中での食事が続き……

 

 ダメだ、この雰囲気には耐えられないっ!

 何か話題を……

 

「そうだ、姉さん。このメイド服は食事が終わったら脱いでも良いんだよね?」

「ええ。アキくんがメイド服を含め、全部脱いでエプロンだけを身に着けるなら」

「なんでメイド服を脱いだら、裸エプロンにならなきゃいけないのさっ!?」

「冗談です」

 なんて心臓に悪い冗談を言うんだ……美波はまた真っ赤になって俯いちゃってるし。

 

「私としては一生着ていて欲しいのですが……今回は食事の後片付けまでで良いですよ」

 僕の一生を左右する事を、さらっと言わないでほしい。

 

「もぅ着替えちゃうんですか?葉月、もっと見ていたいです」

「大丈夫ですよ、葉月ちゃん」

 葉月ちゃんが残念そうに言うと姉さんが笑顔で

 

「この後のトランプでアキくんが負けて、また着てくれますから」

「ほんとですかっ」

 葉月ちゃんが今にも踊りだしそうなくらい喜んでいる。

 さすがに今さっき美波に窘められたから実際に踊っているわけじゃないんだけど……

 それ以前に何故僕が負けるのが決定事項みたいに言ってるのっ!?

 

「ちょっ、ちょっと姉さんっ!?僕がトランプで負けてって……」

「折角みんなで遊ぶんですから何か賭けた方が盛り上がるでしょう?」

「それはそうだけど……」

「アキくんが、着るのが反対だと言うなら……では、脱衣にしますか?」

「それは絶対ダメだっ!!」

 二学期に姫路さんと雄二、霧島さんとやったダウトを思い出してしまう。

 勝てないだけならまだしも女の子に脱がされる恐怖。

 …………僕と雄二がちょっとしたトラウマを植え付けられた事があったっけ。

 

「ではアキくんのコスプレで良いですね」

「僕が負けたら判るけど……もし勝ったらどうするのさ?」

 本当は負けても判りたくはないけど……勝てば良いんだよね?

 

「そうですね……アキくんが勝ったら私が選んだ衣装の中から好きな物を選ばせてあげるって言うのではどうでしょうか?」

「それだと僕は勝っても負けても女装しないといけないよねっ!?」

「判りました。ではアキくんが勝ったら一枚ずつ脱いでいっても良いですよ」

「なんで勝った人が脱がないといけないのさっ!?」

「もうアキくんはわがままですね」

 どうあっても僕の衣装を変えたいらしい。

 すると今まで俯いたまま黙っていた美波が顔を上げて……

 

「あの、玲さん」

「なんでしょう」

「一番勝った人の言う事を一つ聞くって言うのはダメですか?」

「そうですね。このままだとアキくんが駄々をこねているだけですし」

「さも僕だけが悪いみたいに言わないでくれるかな」

 でも僕の言うことはさらっと聞き流されて……

 

「では一番勝った人がアキくんに言う事を一つ聞いてもらうことにしましょう」

「僕が命令されるのが前提なのっ!?」

「きっとみんなアキくんに命令すると思いますよ」

 姉さんがそう言うと、うんうんと頷く美波と葉月ちゃん。

 

「私が勝ったら、まずアキくんとお風呂で背中の流しっこをして寝る時におやすみのチュウをして添い寝して……」

「姉さん、さっき自分で『言う事は一つ』って言ってたよね?」

 ダメだ……姉さんが勝ったら、とにかく家から逃げよう。

 新年早々悪いけど雄二の家にでも……って、雄二は今頃霧島さんの家かな?

 今年に入ってからまだ二日しか経ってないけど、雄二は無事に家に帰れたのだろうか。

 

「ウチが勝ったら、さっきのキッチンでの続きをして、アキに膝枕をしてもらっておやすみのキスをしてもらって……」

「美波も最初自分で『言う事は一つ』って言ってたよね?」

 美波は顔を真っ赤にして頬に両手を当てて身体を捻っている。

 美波のお願いは僕も嬉しいから、いつでも聞いてあげたいけど

 さすがに姉さんや葉月ちゃんが居る前では恥ずかしくて出来ないしなぁ。

 

「葉月が勝ったら、一緒にお風呂に入っておやすみのキスをしてもらってから一緒に寝るんですっ」

「葉月ちゃん、お願いは一個だけ……」

 両手を上げて喜んでいる葉月ちゃんには何を言っても無駄みたいだ。

 さっきお行儀が悪いと言っていた美波は真っ赤な顔をして目を瞑っているみたいだし……

 美波は想像の中の僕に『何を』『どれくらい』お願いしているんだろう?

 

 みんな『一つ』という言葉の意味が判らないのかな?

 それとも一番最初に「何度でもお願いが聞いてもらえますように」とか言うのだろうか。

 

「ところで、アキは勝ったら何をお願いするつもりなの?」

 美波がこっちの世界に戻ってきたらしい……いきなり質問をされた。

 

「そうだなぁ……」

 三人とも僕を見つめている気がする。

 僕がお願いしたいことは……

 

「一人でゆっくりお風呂に入って一人で静かに寝る事……かな」

 みんなと一緒に居て楽しいと思うけど、やっぱり一人になる時間も大切だよね。

 

「アキ」 「アキくん」 「バカなお兄ちゃん」

 三人に一斉に呼ばれて……

 

「「「出来るお願いは一つだけ(なのよ)(です)」」」

 

 

 …………なぜか理不尽な気がした。

 

 

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