私と木下君が一緒に食事に行くようになってから、早4ヶ月。
最初のうちは1週間に一回行くか行かないか、くらいだったのが段々増えてきて、今は……
2~3日に一回は一緒に食事をしています。
初めのうちは高校の時の話を良くしていたのですが……
最近はお互いの仕事の話や家族などの身近にあった話をする事が増えてきました。
でも……会うと必ず一回は高校の時の話をしちゃいます。
こうして二人で会って何回もお話をしていても会話が尽きることなく……
それだけ高校の時、明久君や坂本君、美波ちゃんたちが居てくれたおかげで
楽しかったんだろうなぁ。
―――そんなある日の夕御飯にて
「どうしたのじゃ、姫路?ボーっとして……」
「えっ、あ……ごめんなさい」
「ワシの話は面白くないのかのう」
木下君が寂しそうに俯いちゃいました。
「全然そんな事無いですよ。ただ、ちょっと……」
「ただ、ちょっとなんじゃ?」
私は出来る限りの笑顔で答えましたが、木下君は寂しそうな顔のまま……そうだ。
「明日は日曜日ですよね。私がお料理を作るのでみんなを呼んでパーティしませんか?」
「皆を呼ぶのは良いのじゃが……いきなりどうしたのじゃ?」
木下君は首を傾げて私を見ています。
「私たちって、いつもみんなのお話をしているので……何か懐かしくなっちゃって」
「そうじゃな……いつも会うたびに皆の話をすると言う事は、ワシは高校の時の楽しさがまだ忘れられないのかも知れぬ」
「木下君もですか?」
「なんじゃ、姫路もか」
「ええ」
木下君も笑顔になってくれて……その笑顔を見ていると私も嬉しくなっちゃいます。
「店内では失礼じゃから食事が終わったら外に出て、皆に連絡を取るとしよう」
「そうですね」
…………
………
……
そしてお店を出てから二人で駅前の広場へ行き……
「まず、ワシが明久に連絡を入れてみるとするかのう」
携帯を取り出し、操作している木下君。
確か高校の頃は必要ないから、と言って持っていなかったけど……
今は連絡用に仕方なく持っている(持たされている?)みたいです。
PiPiPiPiPi……
『はい、もしもし』
「明久かの?」
『秀吉っ!?この間はありがとう。僕たちの結婚式に来てくれて本当に嬉しかったよ』
「なんのなんの。ワシもすごく楽しかったぞ。また呼んで欲しいくらいじゃ」
『判ったよ。また美波と結婚する時は絶対秀吉も呼ぶからね』
明久君……美波ちゃんと何回結婚するつもりなんでしょう?
「ところで明久よ。明日なんじゃが……」
『明日?日曜で僕はお休みだけど……秀吉のところは明日は月曜日なの?』
「いや、ワシも明日は日曜なんじゃが……姫路が手料理を振舞ってくれるそうなんでの、暇ならと思ったのじゃが」
『姫路さんの?秀吉は今、姫路さんと一緒に居るの?』
「んむ。今まで一緒に食事をしていたのじゃ」
『(アキ、誰から電話なの?)――秀吉だよ。今、姫路さんと一緒なんだって』
美波ちゃんも近くに居るんですね。二人は本当に仲が良くて羨ましいなぁ。
『(それで何で電話をしてきたのかしら?)――明日、姫路さんが手料理を御馳走してくれるんだってさ』
『(アキ、代わってくれる?)――うん』
木下君が少し待って、明久君から美波ちゃんに代わったのを見計らって
「是非、明久と二人揃って明日来て欲しいのじゃが……」
『木下、ごめんね。今からアキは大怪我をする予定だから、ウチはその看病をするので行けそうに無いのよ』
「大怪我って……おぬし、一体何をするつもりなんじゃ」
木下君の可愛い顔が険しい顔になっています。
……美波ちゃんは明久君に何をするつもりなんでしょう?
『(え?美波?僕、怪我するって何?)――いいから、察してあげなさいっ!』
『(ねぇ、美波も行こうよ?姫路さんの手料理を……)――もぅっ、ホントにアキは鈍いんだからっ!《ゴキッ、ゴキッ、ゴキンッ》――(うぎゃぁぁぁぁ)』
……明久君は大丈夫なんでしょうか?
『……ごめんね。そういうわけだからアキもウチも明日は行けそうに無いの』
「…………良く判ったのじゃ」
木下君の顔が真っ青になっています……
『木下、瑞希と上手くやるのよ。アキもウチも応援してるからねっ!』
「あ、ありがとうなのじゃ……」
そして電話が終わり、木下君は私の方を向くと、申し訳なさそうな顔で
「すまぬ、姫路……申し訳ないのじゃ、明久」
まるで懺悔をするかのように、がっくりと頭を垂れる木下君。
…………明久君の事だから明日には治っていますよ、たぶん。
「しっ、仕方ないですよ。お二人とも忙しいみたいですし……気を取り直して坂本君たちを呼んでみましょう」
「そうじゃのう……」
改めて携帯を操作する木下君……でも、どことなく寂しそうです。
PiPiPiPiPi……
『もしもし、秀吉か』
「んむ。雄二よ、元気じゃったかのう」
『おう。それより姫路とは、その後どうなっている?』
「実はその姫路の事なんじゃが」
『どうした?結婚でもするつもりになったのか?――(……雄二、誰から?)――秀吉だ……って、浮気じゃないぞっ!?』
翔子ちゃんも坂本君の傍に居るんですね……みんな仲が良さそうで良いなぁ。
「明日の日曜なんじゃが……姫路が手料理を振舞ってくれるそうなんでの、雄二たちも是非」
『姫路が?…………秀吉、悪いが俺たちはパスだ。明日は忙しいんでな』
「なんじゃ、日曜なのに忙しいのかの?寂しいのう」
『まぁ、そう言うな。それより姫路と上手くやれよ――(……雄二、忙しいって?)――ん?どうしたんだ、翔子?』
坂本君たちも明日は来てくれないんですね……やっぱり急過ぎたのかなぁ。
『(……明日は私とずっと一緒に居てくれるって約束してたんじゃ……)――しょっ、翔子っ!?勘違いするなっ、落ち着っ……うぎゃぁぁぁぁ』
……プツッ、ツーツー……
木下君がまた頭を垂れて……
「すまぬ、姫路……申し訳ないのじゃ、雄二」
「だっ、大丈夫ですよ。次の土屋君と愛子ちゃんなら……」
「そうじゃな。工藤はワシらの中で一番の常識人じゃからのう」
でも携帯を操作する木下君の手元は震えています……
「あ……ムッツリーニは、まだ携帯を持ってなかったんじゃ」
「そうなんですか?」
「んむ。いきなり鳴り出したら困ると言ってのう」
「それなら仕方ないですね。私が愛子ちゃんにかけてみます」
どういう状況下で鳴り出したら困るんでしょうね?
きっと優先席付近だと思うのですが……
でも、それなら電源を切るか、マナーモードにしておけば良いだけの気もします。
とりあえず私は携帯を取り出して愛子ちゃんの番号をセットして……
Prrr! Prrr!
『もしもし、瑞希ちゃん?』
「はい、愛子ちゃんお久しぶりです」
『あはは。ホント久しぶりだねっ。ところで木下君とは、どうなっているのカナ?』
「木下君ですか?今、目の前に居ますけど……」
今さっき、明久君や坂本君たちに断られたので少し落ち込んでいます。
『ええっ!土曜の夜に二人でデートしてるのっ!?』
「デートだなんて……一緒にお食事をしただけです」
『それを世間一般ではデートって言うんだよっ。いいなぁ、二人とも』
「そ、そんな事ないですよ。それで明日なんですけど……」
とりあえず早く用件を伝えた方が良いかも知れませんね。
『どうしたの、康太君?……うん、瑞希ちゃんと木下君。二人で朝まで一緒に居るんだってさ、羨ましいよねっ』
はわわわ……何か大変な勘違いをしているみたいですっ!?
「あっ、あの……愛子ちゃん?」
『(プシャァァァァ)――ああっ、康太君っ!大丈夫っ!?』
土屋君がどうかしたんでしょうか?
『瑞希ちゃんっ!ゴメンね、康太君がまた鼻血を出しちゃって……ボク、輸血が忙しくなるからまた今度ねっ』
…………切られてしまいました。
愛子ちゃんには用件すら伝えられませんでした。
土屋君の命に関わっていたみたいですし、仕方ないのかもしれません……
私の方をジッと見ていた木下君が
「ムッツリーニと工藤もダメじゃったか」
「はい……ごめんなさい」
私は居ても立っても居られず、俯いていると……
「姫路が謝る事は無いじゃろう。あやつらの問題じゃしな」
木下君が私の肩を、ぽんぽん、と軽く叩いてそっと手を置いてくれています。
すごく……落ち着く気がします。
しばらく木下君に肩を抱いてもらっていて……
「ありがとうございます。もう大丈夫です」
「おぬしが大丈夫と言うのなら良いのじゃが……」
私から手を離す時、木下君が少し残念そうだったのは私の気のせいでしょうか。
「結局、明日は誰も来てくれないんですね……」
やっぱりみんな忙しいのかなぁ。
昔みたいに簡単には集まれないみたいです。
折角、木下君に慰めてもらったのに……
私がまた俯くと……木下君が、ポンと手を叩いて
「そうじゃ、姫路よ。明日はワシの家に来て料理を作ってはくれぬか?」
「はい。私は構いませんけど……」
私がそう返事をすると木下君は笑顔になって
「そうか。恩に着るのじゃ……姉上にも姫路の料理を食べてもらいたくてのう」
「優子ちゃんに、ですか?」
「んむ。最近家に
「そうなんですか?」
「姫路の料理を食べてくれれば、きっと気が晴れると思うのじゃ」
私の手を取って嬉しそうに話す木下君を見てると……
私も嬉しくなってきちゃいます。
「はい、判りました。では明日は木下君の家に行きますね」
「よろしく頼むのじゃ」
そして帰る時、木下君は……
私と別れるまでずっと嬉しそうでした。
秀吉と姫路さんのお話も次で終わりになります。