僕とウチと恋路っ!   作:mam

8 / 111
僕とウチと奇妙な三角関係part03

 

「ふぁぁ、眠い」

 昨日は姉さんのおかげで全然寝れなかった。

 

「アキ、おはよう」

「おはよう、美波……」

「ずいぶん眠そうね?昨日何かあったの?」

 心配そうに僕の顔を覗き込んでくる美波。

 

「ちょっと姉さんが……」

「玲さんと何かあったの?」

「いや……吉井家の恥を晒すようで言うほどの事じゃないよ」

 まさか僕より姉さんの方が恥ずかしい日が来るとは……

 姉さんは日本に帰ってきた時から恥ずかしかったか。

 

「何よ?今更アキがバカな事やったり恥ずかしい事したって驚かないわよ?」

「何で僕っ!?」

「違うの?」

 真顔で言われた。

 

「違うよ。姉さんが……」

「玲さんの事なら教えてくれても良いじゃない……その…ウチの………(ごにょごにょ)

「どうしたの?」

「ウチのお義姉さんになるかもしれないって言ってるのっ!」

 校門までの長い上り坂に差しかかったところで僕と美波が真っ赤な顔をしていると……

 

「誰がお姉さまのお姉さまになるんですかっ!?」

 いきなり後ろから清水さんが現れた。

 

「しっ、清水さん!?」

「みっ、美春っ!?今日の放課後じゃなかったの?」

「お姉さまを見ていたら、今すぐでもよくなってきましたっ!」

 今すぐって……昨日の思わせぶりな発言は、なんだったんだろうか。

 

「美春、よく聞いて。ウチはちゃんと放課後に屋上に行くから……今はアキと話をしているの」

「お姉さま一人で来てくれるんですか?」

 胸の前で両手を合わせて目をきらきらさせて美波に問いかける清水さん。

 

「もちろん、アキと一緒よ。美春も、その方が良いんでしょ?」

 ぐいっと僕の腕を取って腕を組んでくる……今それをするのは火にニトログリセリンを注ぐのでは?

 

「ぐっ……確かに昨日は豚野郎に一緒にと言いましたが……」

 今にも僕を睨み殺さんとばかりに睨んでくる清水さん。

 ここまで痛い視線は生まれて初めてだ。

 

「ウチはちゃんと約束は守るわ。美春も守ってくれるんでしょ?」

「でもっ……」

「ウチは約束を守れないような人とは友達で居たくないの」

「わかりました……今日は放課後まで待ってます」

 そう言い残して清水さんは坂道を走って行ってしまった。

 

「ねぇ、アキ?」

「なっ、なにかな?」

 美波が笑顔で……

 

「このまま腕を組んで歩くのと関節技を極められながら歩くのとどっちが良いのかしら?」

 

 

 

----昨日の夜12時過ぎ

 

 ……ガチャガチャ

 ん?姉さん帰ってきたのかな?

 部屋の鍵をきちんと掛けておいてよかった。

 

「アキくん、ちゃんと寝てますね?」

 寝てたら返事は出来ないと思うんだけど……

 

 ……ガチャガチャ

 こんな真夜中なのに何か急ぎの用事でもあるんだろうか。

 

「アキくん……姉さんは悲しいです。この世でたった二人の姉弟なのに姉さんを閉め出すなんて」

 何で姉さんが僕の部屋から閉め出されると悲しいんだろう?

 

 ……ガチャガチャ

 

「アキくん。姉さんはこのままだと風邪を引いてしまいます」

 それなら自分の部屋でさっさと寝れば良いのでは?

 

 ……ガチャガチャ

 

「なるほど。アキくんは、こう言いたい訳ですね……部屋に入れて欲しければメイド服を着てこい、と」

 何で姉さんはそんなにメイド服が好きなんだっ!?

 僕に着せたがるし自分でも着たがるし……僕も見るのは嫌いじゃないけど。

 

「でもメイド服はアキくんの部屋にありますし……今着ているスクール水着ではダメなんですね?」

 なんで真夜中にスクール水着なのっ!?

 11月も半ば過ぎだというのに真夜中にそんな格好をしてたら風邪も引くだろう。

 それよりも姉さんの常識は風邪どころかインフルエンザにかかってるんじゃないだろうか。

 

「わかりました。では今からお隣さんに事情をお話してメイド服を借りてきます」

「わかったっ!今開けるから、そんな格好でメイド服なんか借りに行かないでっ!」

 いろんな意味で、この人を今、外に出したらいけないっ!

 一般家庭にメイド服が常備してあるという姉さんの常識を問うよりも

 夜中にスクール水着で、ご近所様に行くと言う事を止める方が先だろう。

 

 ガチャ

 

「姉さん、こんな夜中にそんな格好でどうしたの?」

「アキくんが寂しい思いをしてるんじゃないかと思って姉さんは心配だったのです」

「僕、今寝てたよねっ!?」

 何で夜中にスクール水着を着た姉に心配されないといけないんだろう。

 どっちかと言うと、そんな姉を心配するのが弟の義務のような気がしてきた……

 麗しき姉弟愛に涙を流さずにいられない。

 

「アキくんは小さい頃から姉さんと一緒に寝ると喜んでくれたじゃないですか」

「小さい頃『から』じゃなくて、小さい頃『だけ』だよっ!?」

 物心ついた頃からは起きたらスカートはかされてたり、リボン付けられてたりで

 逆に逃げてた筈なんだけどなぁ。

 

「特に用が無いなら僕、また寝るね」

 部屋のドアを閉めようとした時、姉さんは僕に向かって

 

「とりあえずメイド服を返してもらえますか?」

「その言い方だと僕が取り上げてたみたいに聞こえるんだけど……」

 いつ僕に着せても良いように勝手に僕のタンスに仕舞ったくせに……

 

「この格好だと寒いのでメイド服に着替えようかと思いまして」

「何でこれから寝る人がメイド服に着替えるのさ?」

 僕が起こされた理由ってスクール水着からメイド服に着替える為なの?

 

「アキくんが添い寝するならメイド服が良いというものですから……」

「言ってないよっ!?僕、添い寝して欲しいともメイド服に着替えて欲しいとも言ってないからねっ!?」

「アキくん、こんな夜中にそんな大声を出すのは非常識ですよ」

「くっ……夜中にこんな格好をしている人に常識を問われる日が来ようとは……」

「アキくん、お腹が空いてるから怒りっぽいのではありませんか?」

「そう言えば夕御飯食べてなかったな」

 姉さんからもらった電話の内容がショックだったから家に帰ってきてすぐ寝ちゃったんだっけ。

 

「それなら姉さんも少し小腹が空いたので何か作りましょうか」

「ん、それなら僕が作るよ」

 姉さんが作ると多分寝れなくなるか永眠する可能性が……

 

「大丈夫ですよ、アキくん。作るのは冷凍のうどんですから茹でるだけです」

 それならお湯しか使わないから大丈夫だろう。

 

「じゃあ、たまには姉さんの料理を食べてみるかな」

 お湯で茹でるだけだからカップラーメンと、ほとんど変わらないと思うけど。

 

「では出来たら呼びますね……メイド服をください」

 はい、と言って両手を出す姉さん。

 

「……僕の部屋に入っても良いから自分で持って行ってくれるかな?」

「アキくんは冷たいですね」

 そう言って僕の部屋に入り、タンスを開けると

 

 ……その場でスクール水着を脱ぎだそうとしていた。

 

 慌ててドアを閉めてリビングで待つ事にした。

 確か姉さんは僕の事を『一人の異性として愛しています』とか

 言ってた気がするんだけど……本当に異性として見ているのだろうか。

 

 姉さんがメイド服に着替えてキッチンに入ってから10分くらいで

 

「アキくん、出来ました」

 ずいぶん早い気がするけど……お湯沸かしてあったのかな?

 

 メイド姿の姉さんがお盆に湯気を立てているどんぶりを二つ、載せて持ってきた。

 同じメイド姿でも美波と違ってやっぱり大人の女性という感じがする……胸とかが特に。

 

「さぁ、アキくん。召し上がってください」

「ありがとう、姉さん。いただきます」

 早速、箸をどんぶりに……ん?なんか麺がすごい硬い気がするんだけど?

 箸で麺を持ち上げようとすると……麺が波型のまま持ち上がった。

 腰がある麺と言うより、ぎっくり腰の麺だろう。

 箸で麺を持ち上げたまま、僕は姉さんに……

 

「姉さん?これって……」

「今日のお昼御飯にラーメンをご馳走して頂いて、その時に『麺硬め』というので食べたら美味しかったので再現してみました」

「麺硬め、はラーメンだけだよっ!?冷凍うどんでやったら、ただの解凍不足なだけだっ!!」

 

 結局、僕が茹でなおして、うどんのおつゆも作り直した。

 

 

 

 

「…………と言う訳なんだよ」

 僕が話し終わると……

 

「アキのバカっ!!」

 いきなり組んでる腕の肘が関節技の餌食に……

 

「いだぁぁぁぁぁ、いっ、いきなりどうしたのっ!?」

 美波が涙目で僕を見ながら……

 

「どうせウチは玲さんや瑞希みたいに……大きくないわよっ!!」

 僕の回想の感想がそこなのっ!?

 美波は気にしすぎだと思うんだけど……

 でも、ちゃんと謝った方が良いな。

 

「ごめん、美波……僕が悪かったよ」

「何よっ!どうせアキは大きい方が良いんでしょっ!」

「違うよ。僕が謝っているのは美波に勘違いさせてる事なんだ」

「えっ?」

 関節技を解いてくれたみたいだ。

 

「あのね、僕は美波じゃないと……ダメなんだ」

「アキ……」

「大きいのが好きなら姫路さんと付き合っていたかもしれないし姉さんの誘惑に負けるかもしれない」

「大きければ誰でも良いって言うのっ!?」

「違うよ。僕は美波の全部が好きなんだ……だから美波以外の人には興味ないよ」

「本当?本当に本当なの、アキ?」

「うん、本当に本当だよ」

「アキ、ごめんね」

 申し訳無さそうに僕の肘をさすってくれる美波。

 うんうん、美波に誤解されたままじゃなくて本当に良かった

 ……さてと。

 

「ごめん、美波。悪いけど鞄を教室まで持って行ってくれるかな?」

「えっ?一緒に行かないの?」

「一緒に行きたいんだけど、僕ちょっと逃げるからっ!」

 

 そう言って鞄を美波に渡して校舎の反対側に向かってダッシュすると……

 校舎から黒い覆面姿がワラワラと出てきた。

 

「待ちやがれっ、吉井ぃっ!」

「貴様ぁっ、朝っぱらからイチャイチャとっ!」

「大人しく処刑されろっ!」

「姫路さんと秀吉のことは良いのっ!?」

 少なくとも僕を追いかけるような奴だったら相手にもされないと思うけど。

 

「貴様を処刑してからチャンスを待つっ!」

「それに貴様が死ねば島田もフリーになるだろっ!」

「僕を殺すとみんな美波に殺されるよっ!?」

「お前が先に死ねば本望だっ!」

 目的が変わってるんでは……

 そして校庭を一周して美波の前を通り過ぎる。

 

「美波、よろしくねっ」

「もうっ……バカなんだから」

 そんな事を言いながら……

 美波は僕の鞄を抱き締めて嬉しそうだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。