僕とウチと恋路っ!   作:mam

80 / 111
私とワシと数年後part04

―――次の日―――

 

 

――ピンポーン ピンポーン

 

「今、開けるのじゃ」

 

――ガチャ

 

「今日はよく来てくれたのう。ワシも姉上も楽しみにしておったぞ」

 

 昨日、私と一緒に居た時からずっとなのかな?と思うくらい

 嬉しそうな笑顔の木下君が私を出迎えてくれました。

 

「荷物はワシが持とう」

 私が持ってきた食材の入った袋を受け取ってくれる木下君。

 すごくと言うほどでもないですが割と重かった袋を軽々と持ってくれました。

 やっぱりこういうところは男の子なんだなぁ……顔は可愛いんですけど。

 

 そして木下君に案内されてリビングへ。

 リビングには優子ちゃんがソファに座っていて、私を見ると立ち上がり

 

「お久しぶり、姫路さん」

 優子ちゃんは軽く頭を下げてきてくれました。

 

「優子ちゃん、お久しぶりです」

 私も遅れないように挨拶をしてお辞儀をすると優子ちゃんは申し訳なさそうに

 

「今日はごめんなさいね。折角の休みにわざわざ来て頂いた上に料理まで作らせちゃって」

「いえ、今日は自由に気兼ねなく料理を作れますし……私も楽しみにしていたんです」

 実際、昨日木下君と別れてから何を作ろうか、ずっと悩んでいたくらいです。

 

 もちろん悩んでいたって言っても全然大変じゃなくて……

 むしろ、なかなか寝付けないくらい嬉しくて楽しくて……

 早く二人に食べてもらいたい気持ちでいっぱいです。

 

 でも、どんなに急いでいても手を抜いたりはしませんよ?

 その辺りは、きちんとプロとしての仕事をしないといけません。

 

「すまんのう。ワシも明久や雄二みたいに少しでも料理が出来るなら手伝えるのじゃが……」

 木下君がすごく申し訳なさそうに話しかけてきたので……

 

「大丈夫ですよ。楽しみに待っていてくれるっていう大切なお仕事をお願いしますね。待ってくれてる人が居るだけで料理の出来が変わってきますから」

 私が笑顔で答えると木下君も笑顔になってくれて

 

「そうか。それなら任せておけ。誰にも負けない立派な仕事をして見せよう」

 

 すると優子ちゃんも笑顔で

 

「それならアタシにも出来るわね。それじゃ悪いけど早速お願いできるかしら」

「はいっ。任せてください」

 

 二人とも食べる前から笑顔になってくれて……

 その笑顔を曇らせないように頑張らないといけませんね。

 

 あ、そう言えば……

 

「今更で、ごめんなさい。優子ちゃんは好き嫌いってありますか?」

「アタシは特に無いけど……秀吉はダメなものあったんじゃなかったっけ?」

「んむ、ワシか?姫路が作ってくれる物ならば、例え苦手な物でも食べて見せよう」

 にこにこと笑顔で答えてくれる木下君。

 その笑顔を見ていると頑張ろうって気持ちになっちゃいます。

 

「はぁ……あなたたちを見ていると食べる前に御馳走様って言いたくなるわね」

 優子ちゃんがため息を()きつつ額に手を当てて俯いてしまいました。

 

「あっ、姉上っ!」

 木下君は顔を真っ赤にして……私も顔が火照っている気がします。

 

「ほら、アタシお腹ペコペコなんだから早く早く」

 そう言って、優子ちゃんは食材の袋を持った木下君と私の背中を押しました。

 

 

――――

―――

――

 

 

「「「御馳走様でした」」」

 

 私が作った料理を二人とも美味しそうに食べてくれました。

 その笑顔を見ながら食べる料理は、我ながらすごく美味しかったです。

 

 私が二人の笑顔を見ながらお茶を啜っていると……

 

「そう言えば、二人は何処まですすんでいるの?」

「何処まで?」

 何処まで一緒に食事をしに行ったかでしょうか?

 

「もう、とぼけなくていいわよ。キスしたとか、一緒に夜を明かしたとか」

 優子ちゃんが目をキラキラさせながら胸の前で手を組んで質問をしてきます。

 

 

 …………ええっ!?

 

 

「姉上っ!いきなり何を聞いてくるのじゃっ!?」

 木下君が耳まで真っ赤になっています。

 私も……顔に身体中の血液が全部集まっているんじゃないかと思うくらい

 すごく火照って熱くなっているのが判ります。

 

「えっと……ひょっとしてキスもまだ?」

 優子ちゃんがすごく残念そうな顔で私と木下君を見ています。

 ……なんで優子ちゃんがそんなに残念そうな顔をしているのでしょう?

 

 

 優子ちゃんは私の方を見ると

 

「だって好きでもなかったら休みの日に御飯作りに来たりとか」

 

 

 今度は木下君の方を見て

 

「それに好きじゃなかったら毎日毎日アタシに話を聞かせたりとか」

 

 

 そして私と木下君を指さして

 

「普通しないでしょっ!?」

 

 ビシッとポーズを取っている優子ちゃん。

 

 それはそうなんですけど……

 

 

「わっ、ワシはただ……最近姉上がイライラしてるみたいじゃから気晴らしになるかと……」

 木下君がそう言うと……優子ちゃんは木下君を睨んで

 

「アタシがイライラしているのはねっ!アンタたちが全然報告に来ないからよっ!」

「報告……ですか?」

 何の報告なんでしょうか?

 

「この秀吉(バカ)が毎日嬉しそうに姫路さんの話をしていて」

 木下君……そんなに私のことを考えてくれていたんですね。

 なんか嬉しくなっちゃいます。

 

「そして今日料理を作りに来てくれるって聞いたから、何かしら言ってくるかと思ったら……」

 

 優子ちゃんはいきなり木下君の腕を取ると……

 

「なんでアンタはそんなに意気地が無いのよっ!?」

「いだだだぁぁっ!あっ、姉上っ!ワシの関節はそっちには曲がらな……っ」

 

 そして私の方を見て

 

「姫路さん、お料理すごく美味しかったわ。ありがとう」

 ぺこりと頭を下げてくれる優子ちゃん。

 ……木下君の腕を極めたままですけど。

 

「それと秀吉。いい?アンタは今日これから恋人らしく姫路さんと出かけてくるのよっ!」

「ええっ!姉上はいきなり何を言っておるのじゃっ!?」

「これ以上アタシを怒らせたいワケ?」

「なっ、なんで姉上がそんなに怒っておるんじゃっ!?」

 優子ちゃんは返事をする代わりに腕の関節をギリギリと極めています。

 

「わっ、判ったのじゃっ」

 木下君が可愛い顔を歪めて……すごく痛そうです。

 

「ほらっ、早く着替えて出掛ける準備してきなさい」

 優子ちゃんは木下君の返事を聞くと腕を開放しました。

 

「ううっ、判ったのじゃ……姫路よ。悪いが少し待っててくれるかの?」

「はい」

 私が頷くと木下君は腕をさすりながら、リビングを出て行きました。

 

「ゴメンね、姫路さん」

 私にぺこりと頭を下げる優子ちゃん。

 

「いえ、私は構いませんけど……でも、どうして?」

「あのね……アタシと秀吉って、高校の時そっくりだったじゃない?」

 確か、二卵性双生児だったんですよね。でも本当にそっくりでした。

 今は木下君も(気持ちですけど)少し精悍さが……でも可愛いのは変わりませんね。

 

「毎日、自分と同じ顔を見ているだけでも嫌だったのに」

 優子ちゃんが少し遠い目をしながら話をして

「アタシより男子に人気があるってどういう事なのよっ!?」

 思いっきり、拳を握り締めています。

 

「それであの秀吉(バカ)にも彼女が出来れば少しは変わるかなってずっと思っていて」

 そう言うと私の肩をガシッと掴んで

「やっとアイツにも彼女が出来たのよ……だから姫路さん、お願い。あの秀吉(バカ)を見捨てないでね」

 すごく真剣な表情の優子ちゃんの顔が私の目の前に……

 

「は、はい……」

 私が、その気迫に気圧されながら頷くと優子ちゃんは私から少し離れて

 

「まぁ、そう思っていたのは本当の事だけど……やっぱり姉として弟には幸せになって欲しいのよ」

「優子ちゃん……」

 

 そして私の方を見て優しく微笑むと

 

「姫路さんも、もっと素直になった方がいいわよ」

「素直……ですか?」

「そ……好きなら好きって、もっとぶつかっていかないと」

 

 

 

 …………確かにそうかもしれませんね。

 

 翔子ちゃんも愛子ちゃんも…………そして美波ちゃんも。

 

 私の周りの人たちは、そうやって幸せになっていったんでしたっけ……

 

 

 

「ふふっ。姉として、あの秀吉(バカ)の操縦方法を教えてあげるわね」

 

 優子ちゃんがそう言うと、ちょうど着替えが終わった木下君がリビングに来て

 

「姫路よ、待たせたの……って、なんじゃっ、姉上っ!何をするつもりなんじゃっ!?」

 

 優子ちゃんは木下君の腕を取り

 

「この角度でこっちに曲げると……素直になるから、ね」

 にこっと微笑んで関節を極めています。

 

 

「わっ、ワシの関節はレバーみたいに360度も動かないんじゃあ」

 木下君の顔が段々赤くなってきています。

 

「あっ、あの優子ちゃん。それくらいにしておいた方が……」

 さすがにそろそろ止めないと……

 

「そうね。アタシはこれくらいにするから後は姫路さんがちゃんと腕を組んであげてね」

 

 私と木下君は優子ちゃんの笑顔に見送られて……

 

 

 

…………

………

……

 

 

 

「まったく、姉上にも困ったものじゃ」

 私の隣を木下君が困った顔をして歩いています。

 

「でも優子ちゃんも木下君の事が心配なんですよ」

 やっぱり姉として……そして私の事も気に掛けてくれていました。

 

 そう言えば、優子ちゃんは腕を組んであげてって言ってましたね。

 

「えいっ」

 

 私がいきなり腕を組むと木下君は驚いた表情で

 

「ひっ、姫路よ。いきなり何を……」

 確かに今まで一緒に出掛ける事はたくさんありましたけど……

 腕を組んで歩くのは初めてですね。

 

「私と木下君が付き合い始めたって言ったら、みんなビックリするでしょうね」

「そうじゃな……」

 木下君は私を見て

 

「ワシは姫路がそんな事を言うのにビックリしておるぞい」

「冗談だと思ってるんですか?」

 木下君が、そんな事を言うなら……

 さっき優子ちゃんに教えてもらった操縦法を試してみようかな?

 

 ――えいっ

 

「ひっ、姫路よ?ワシの腕が有り得ない方向を向いているのは冗談じゃないのじゃが……」

「ふふっ、私は冗談なんか言いませんよ?」

「判ったのじゃっ」

 判ってもらえたみたいなので許してあげましょう。

 

 しばらく腕を組んで歩いていき……ふっと木下君が

 

「ムッツリーニと工藤もそろそろ結婚するのかのう」

 土屋君と愛子ちゃんも付き合いだして何年も経っていますしね。

 

「もしそうなっちゃったら私たちの結婚式が一番最後になりますね」

「真打は最後に登場というのが一番盛り上がるからの」

 

 そう言うと木下君は優しく微笑むと私を見つめて……

 

「のう……瑞希よ」

 

 その笑顔がすごく眩しくて……

 

 …………そして初めて私を名前で呼んでくれたのが嬉しくて私も……

 

「はいっ、秀吉君」

 

 




僕なりに考えた姫路さんと秀吉のお話は如何でしたでしょうか。

数ある未来の中の一つのお話だと思って頂ければ幸いです。

次からは、また明久と美波のお話になります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。