僕とウチと恋路っ!   作:mam

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1月6日(金)


僕とウチと始業式part02

「明久が遅刻するから悪いんだろ」

「雄二が変な事するから悪いんじゃないか」

 僕と雄二がお互いの胸倉をつかみ合っていると……

 

――ゴンッ、ゴンッ

 

「「いってぇぇ」」

 

「バカ者っ!お前らは学園長に呼ばれて、ここに居るんだろうがっ」

 鉄人の愛情溢れる指導(てっけんせいさい)に涙が出てきて止まらない。

 

 ちなみに学園長室に居るのは僕と雄二だけじゃなくて

 美波と霧島さんと姫路さんも呼び出しをされていた。

 僕と美波と霧島さんは、雄二が始業式でバカな事をやった巻き添えなんだろうけど

 姫路さんは全然関係なかったよね?

 

「ありがとう、西村先生。やっとアタシも喋らせてもらえるようさね」

 いかにも不機嫌そうな妖怪じみた顔のババァが言葉を続ける。

 

「そこのバカ二人は、この学校に居たくないのかい?それとも2年のまま、ずっとこの学校に居たいのかい?」

 

「「(僕)(俺)はどっちも遠慮します」」

 

 ババァは僕たちの返事を聞くと額に手を当てて俯きながら、ため息と共に

 

「去年廃止にした恋愛禁止の校則を復活させたほうが良いのかねぇ」

 

 ババァがそう言うや否や

 

――ガシッ ×2

 

 僕は美波に頚椎を

 雄二は霧島さんに顔面をつかまれている。

 

 

 ――――ここまではいつもの事なんだけど……

 

 

「学園長先生。本当にごめんなさい」

 美波はババァに謝りながら僕の後頭部を押して一緒に頭を下げさせている。

 僕は命を美波に握られている以上、従うしかなかった。

 

「……学園長先生。申し訳ありません」

 そして霧島さんも雄二の顔面をつかんだまま、雄二に頭を下げさせている。

 

 

 …………後頭部をババァの方に向けて。

 

 

「痛たたっ、しょっ、翔子っ!逆だっ、逆っ!」

 パッと見には、雄二も頭を下げているように見えるけど

 よく見ると、逆エビの形で恐ろしいくらいふんぞり返っているわけだから

 ちゃんと謝っているとは思えない……僕も頭を下げてはいるけど謝るつもりはないけどね。

 

 しかし、あの状態で転ばないとは、雄二はすごい足腰が強いんだな、と思っていると

 

「元々アンタらを呼ぶつもりだったんだけど、まさか新学期早々問題を起こすとはねぇ」

 バカを見るような目で僕と雄二を見ているババァ。

 

「そこのバカ二人は去年、処分保留状態だったじゃないか」

 そう言えば、試召戦争の最中に空き教室の床に穴を開けちゃったんだっけ。

 

「それの処分を今日伝えるつもりだったんだが」

「でも穴は元通り塞がるんだし、問題ないんじゃないのか」

 雄二の言う通り、去年如月グループに穴を塞いでもらえる様に

 恥ずかしい思いをして如月ハイランドのイベントの手伝いをしたんだよね。

 

 …………でも、どうして姫路さんも呼ばれているんだろう?

 

 僕と雄二の処分にも、始業式の件にも関係ないよね?

 

「あの、僕たちの事は置いといて姫路さんは何も関係ないんじゃないですか?」

「勝手にアンタらの事を置いとくんじゃないよっ!?」

 

 ちぃっ。

 姫路さんの話でごまかして僕たちの処分の話をうやむやにしようと思ったのに。

 

「アンタらの処分……いや、アンタらも含めてFクラスを処分する事にしたのさ」

「「「「ええっ!?」」」」

 

 ババァは驚いている僕たちを気にすることなく話を続けて……

 

「だから姫路も無関係じゃないよ。そして霧島を呼んだのは釘を刺しておこうと思ってね」

「明久がバカな事ばっかりするからか?」

「何をっ!?それを言うなら雄二が悪い事ばっかりするからだろっ!」

「んだとっ!」

「なんだよっ!」

 

――ゴンッ、ゴンッ

 

「「いってぇぇ」」

 

「バカ者っ!大人しく学園長の話を聞かんかっ!」

 雄二と胸倉のつかみあいをしていると鉄人にまた頭を叩かれた。

 そんなに僕と雄二の頭は叩きやすいのだろうか。

 

 すると美波が僕の制服の袖を両手でつかみながら

 

「あの、学園長先生。Fクラスの処分って全員退学って事です……か?」

 美波が少し震えている気がする。

 

 ……ひょっとして僕や雄二のした事に美波や姫路さんを巻き込んでしまったのかっ!?

 

「くそバ……いえ、ババァ長。美波たちは関係ないんです。悪いのは全部僕じゃなくて雄二なんですっ」

「ああ、まったくその通りじゃない。悪いのは全部明久の頭と顔と行動なんだ」

 僕と雄二が拳を握って熱っぽく説明すると

 

「そこのバカ二人には意見を求めるつもりはないよ。黙って聞いてないと本当に校則を復活させるからね」

 ババァがそう言うと僕は美波に、雄二は霧島さんに手で口を塞がれた。

 

「「んぐ……」」

「そうそう。大人しくさせておいておくれ。それで、島田と姫路には意見を聞きたいのさ」

「ウチ?」

「私……ですか?」

 美波と姫路さんに何を聞くつもりなんだろうか?

 

「まず処分と言っても退学じゃないよ。さすがに一クラス全員退学させたとなると色々と面倒くさい事になるからね」

 ババァがそう言うとホッと胸を撫で下ろす美波と姫路さん。

 美波の方が姫路さんより撫で下ろす距離がだいぶ短くて済むよね、と思っていると

 

「……ア~キィ~?何か失礼な事、考えてないカシラ?」

 僕の口を押さえている美波の手に力が入っているのが判る。

 今は喋れないので、とりあえず頭を横に振っておく。

 

「Fクラスの処分と言うのは三年次の振り分け試験の結果に関わりなく来年度も全員Fクラスって事さね」

「「「ええっ!?」」」

 美波と霧島さんが驚いた拍子に僕と雄二の口から手が外れてしまった。

 

「ふぅ……ところで俺たちはそんなに成績が悪いのか?」

 雄二が呼吸を正しながら質問をする。

「良くはないさね。Fクラスから上のクラスへ上がれるのも居るには居るんだが、恐らくほとんどがまたFクラスだね」

 ババァが僕たちを一瞥(いちべつ)して

 

Fクラス(アンタら)が去年しでかした騒ぎを考えれば、だいぶ生ぬるい処置だと思うんだがねぇ」

「騒ぎ、ですか?」

 姫路さんが人差し指を頬に当てて聞いている。

 

「忘れたとは言わさないよ。花火で校舎を爆破したり、集団覗きや教室内でボヤ騒ぎ、床に穴を開けたりと色々やってくれたじゃないか……そして今日の始業式の邪魔まで」

 

 …………言われてみれば思い当たるフシだらけだった。

 

「そんな集団を野放しに出来るかい?だから来年もまとめといた方が管理しやすいのさ」

「お前らのような危ない連中を他の先生や学校に任せるわけにいかんのでな」

 僕と雄二を睨んで、そう告げる鉄人。

 その言い方だと三年のFクラスも担任は鉄人なのか……

 

「でも、それだと美波と姫路さんは全然関係ないと思うんだけど……」

 悪いのは全部雄二のせいで僕は巻き添えになってるんだよね。

 僕の事は仕方ないにしても美波と姫路さんは、もっと設備の整ったクラスに行って欲しい。

 

「ああ、だから島田と姫路の意見を聞きたいのさ。Fクラスに残るのか残らないのか。二人とも成績はもっと上のクラスでも問題ないからね」

「要するに俺らを含めた男子は全員Fクラス。島田と姫路はきちんと試験の結果が反映されると言う訳か」

「そう言うことだよ。それで二人はどうするんだい?」

 ババァが美波と姫路さんを見て質問をすると

 

「そんな事、聞かれるまでもないです。ウチはアキと一緒のクラスが良いです」

 

 即答だった。

 

 美波は僕の腕を取ると「ね?」と言って微笑んでくれた。

 美波の気持ちはすごく嬉しいけど……

 

「でも、夏は暑いし冬はすごく寒いし、美波にはちゃんとした環境で勉強して欲しいんだけど」

 僕がそう言うと美波は頬を少し染めて僕を見上げて

 

「ウチはアキの傍が世界で一番落ち着いていられる場所なのよ」

 そう返事をしてくれる美波の笑顔がすごく眩しくて……僕は見蕩れてしまった。

 

 

「……学園長先生。来年は私もFクラスに」

 雄二の腕を取りながら、そう告げる霧島さん。

 でも雄二は顔をしかめながら

 

「痛ぇっ!翔子っ!関節技を極めるなっ!」

「……雄二も一緒にお願いをして」

 するとババァは取り付く島もないと言った感じで

 

「ダメだね。霧島はキチンと振り分け試験を受けな」

「……でも」

「でもじゃないよ。言っとくが無記名や、わざと間違えて解答を書いてもEクラス止まりだからね」

 ババァが言った事にビクンと反応する霧島さん。

 でも、そこまでして雄二と一緒に居たいのか。

 そしてババァは姫路さんを見て

 

「それで姫路はどうするんだね?」

「はい……」

 今までずっと俯いていた姫路さんは……

 何かを決心したと言う表情でババァを見ると

 

「私は……来年もFクラスが良いです」

「ちょっ……姫路さん?来年はちゃんとした設備のあるところの方が良いんじゃ……」

 

 僕がそう言うと、姫路さんは僕と美波を見てにっこりと微笑むと

 

「私は今のみんなが居る、このクラスが好きなんです」

「でも……」

「それとも明久君は私が居ない方が良いんですか?」

 僕を見て悪戯っぽく笑う姫路さん。

 頬を赤く染めながら上目遣いで見られて少しドキッとしてしまう。

 

「そっ、そんな事ないけど……」

 すると美波が僕の頬を抓ってきた。

 

「アキっ!何デレデレしてるのよっ!?」

「いひゃい」

「ふふっ」

 

 姫路さんは僕と美波を見て、手を口に当てて笑っていた。

 

 

――――

―――

――

 

 

 

――――ガラッ

 

 僕たちはFクラスの教室に戻ってくると

 

「遅かったのう」

「代表、みんな、お帰り」

 

 教室の中には秀吉とムッツリーニ、工藤さんが待ってくれていた。

 

「何だ、お前ら。わざわざ待っててくれたのか」

「あんな事をやった後だからのう。気になっておったんじゃ」

 秀吉が心配そうな顔でそんな事を言っていると

 

「ねぇねぇ、ムッツリーニ君。美波ちゃんと吉井君、羨ましかったよね?」

「…………俺には関係ない」

 袖を引っ張っている工藤さんの言葉に素っ気無く返すムッツリーニ。

 

「駄目ですよ、土屋君。キチンと愛子ちゃんに返事してあげないと」

「そうよ、土屋。正月はあんなに仲良さそうだったのに」

 美波と姫路さんにそんな事を言われて、顔を赤くしてプイッと横に向けるムッツリーニ。

 本当に素直じゃないんだからなぁ。

 

「……美波と愛子はお正月に会ってたの?」

 霧島さんが首を傾げて質問をしている。

 

「あははっ。ボクが飼っている犬の散歩の途中で偶然ね」

 工藤さんが照れくさそうに頬を少し掻きながら返事をしている。

 

「隠さなくたって良いじゃない。二人で仲良く歩いていたのに」

 仲良く歩いていたのは少しで、ほとんどムッツリーニがいつものように

 鼻血を出して倒れているのを工藤さんが看てあげてた気がする。

 

「それで、お前らは何をやっていたんだ?」

 雄二が僕に聞いてきたので

「凧揚げに行ってたんだよ。姉さんや葉月ちゃんも一緒に」

「凧揚げとは……またずいぶん古風な遊びをしてたんじゃな」

「うん。他にも羽根突きや、かるた取りもやったよ」

 まともな決着は付かなかったけどね。

 

「日本のお正月を満喫していたんですね」

「そうね。今年は初詣も初めて行ったし、かなり日本のお正月を知った気がするわ」

 美波と姫路さんが笑顔で話している。

 うんうん、やっぱり女の子は笑顔でいるのが一番だよね。

 

 でも美波のお正月の知識が偏ってなければ良いんだけど……

 絵馬にワラ人形が打ち付けてあったり、姉さんが作った変なかるただったりしたからなぁ。

 

「じゃあ、美波ちゃんは明日は七草粥を食べるんですか?」

 不意に姫路さんが美波に質問をしている。

 

「なな……くさ、がゆ?」

 美波が首を傾げて姫路さんを見ている。

 

「無病息災を願ったり、お正月の御馳走で弱った胃腸を休ませるために食べるそうです」

「へぇ、そういう行事もあるのね」

 姫路さんの説明に美波が頷いていると……雄二が僕の肩をつかんできて

 

「明久っ!七草粥を食べるなら俺にも食べさせてくれっ!」

「ゆっ、雄二?すごく目が怖いよ……」

 目が真剣と言うより、今にもビームが出そうな勢いで僕を見ている。

 

「今年に入ってから里芋しか食べさせてもらってないんだっ!」

 ガシッとつかまれた肩が少し痛い。

 ……と言うか、本当に全部無くなるまで食べさせられているのか。

 

 すると霧島さんが近付いて来て

 

「……じゃあ、雄二の今夜の食事はちょっと早いけど七草粥にしてあげる」

「ほっ、ほんとかっ!?」

「……うん」

 霧島さんがそう言うと、雄二は僕の肩から手を離し……霧島さんを抱き締めて

 

「ありがとうっ……本当に翔子は良い奴だなっ!」

「(ポッ)……みんなの前でそんな事を言われると照れる」

 顔を真っ赤にした霧島さんを抱き締めている雄二。

 霧島さんはみんなの前で抱き締められる事より、雄二に褒められる方が恥ずかしいのか。

 でも雄二が里芋ばかり食べさせられてるのは霧島さんのせいなんじゃ……

 

「……もし良かったら明日の朝、うちで本当の七草粥をするから皆来る?」

 霧島さんが真っ赤な顔で僕たちを朝御飯に誘ってくれている。

 

「霧島さん、いいの?」

「……うん」

 雄二に抱き締められながら頷く霧島さん。

 すると雄二が霧島さんを抱き締めるのを止めて

 

「ちょっと待て。本当の七草粥って……俺が今日食べる七草粥って何だ?」

「……うん。今日、雄二が食べるのは里芋の七草粥」

「一応聞くが中身は?」

「……里芋の葉っぱと根っこと茎と皮と花と芋と残った煮汁」

「里芋しか使ってないじゃないかっ!ただの里芋煮と変わらないだろっ!?」

「……大丈夫。今日の夕食の分で里芋は全部無くなるから」

「夕食って……まさか昼飯も……」

「……うん」

 霧島さんが返事をすると……雄二は僕の方を向いて

 

「あっ、明久っ!今から俺と昼飯を食いに……」

 

――ガシィッ

 

「……妻と食事をするのは夫の義務」

「ちょっ……俺がいつお前の夫になったんだぁぁぁ」

 そんな雄二の顔面をつかんだまま、霧島さんは僕たちの方を向いて

 

「……じゃあ、明日の朝八時くらいに家で待ってるから」

 

 

 そう言い残して霧島さんは……

 

 …………雄二の顔面をつかんだまま帰っていった。

 

 

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