僕とウチと恋路っ!   作:mam

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1月14日(土)


僕とみんなとスイーツpart01

 

 今日は駅前に新しく出来たスイーツのお店に

 いつものみんなで食べに行く約束をしているので駅前の広場へ。

 普段、待ち合わせに遅めに着いているから

 約束の10分前に着いたんだけど……

 

 雄二と霧島さん、秀吉に姫路さんと工藤さんがすでに来ていた。

 

「おはよう」

 僕が挨拶をすると

 

「「「「「おはよう(さん)(なのじゃ)(ございます)」」」」」

 みんなで白い息を吐きながら挨拶をする。

 もう、お昼だって言うのに今日も寒いなぁ。

 

 辺りを見回したけど……美波はまだ来てないみたいだ。

 

「雄二と霧島さんはいつも早いね」

 と、僕が言うと雄二が遠い目をして

 

「ああ……翔子が朝の六時から起こしに来てくれてな」

「へぇ、霧島さんはそんなに早く雄二に会いたかったんだね」

「……雄二の寝顔が見たかったから(ポッ)」

 仄かに赤く染めた頬に両手を当てて少し俯くように照れている霧島さん。

 

 雄二の寝顔か。

 そんな物が見たいなんて霧島さんも変わってるなぁ。

 

「……雄二の気絶している顔は良く見ているから」

「ほぼ毎週末、見てるだろ」

 霧島さんは雄二を気絶させた後、何をやっているんだろう?

 なんて僕が考えていると……ふっ、と視界が遮られた。

 

「――わわっ!?」

「だぁ~れだ?」

 どうやら誰かに後ろから目隠しをされているみたいだ。

 

 まず霧島さんが僕にこんな事をする訳が無いし、雄二だったら……

 僕の後ろを取ったら躊躇(ためら)うことなく後頭部に打撃を叩き込んでくるだろう。

 何故なら僕もそうするから。

 

 次に秀吉と姫路さんもたぶん出来ない。

 雄二たちと話をするちょっと前まで二人を見ていたけど

 僕とは少し距離があった気がする。

 

 

 ――おそらく工藤さんだろう。

 

 今居る中で一番悪戯好きだし、ムッツリーニが居なくて暇を持て余していそうだった。

 

 それに物的証拠が……

 

 僕の顔に当たっている手の感触が明らかに女の子の柔らかくて温かい手だ。

 そしてほぼ真後ろでくっ付いているはずなのに僕の背中に

 

 …………当たっている感触があまり無い。

 

「工藤さんだと思うんだけど……」

 僕の目隠しをしている手が一瞬ピクッて……やっぱり工藤さんだったんだな。

 

「あはは。簡単過ぎたかな?」

「そうだね」

「ところで何でボクだと判ったのかな?」

「えっと……悪戯好きだし、なにより……」

 

 これはちょっと言い難いよね……本人が気にしているかもしれないし。

 僕が言いよどんでいると工藤さんの方から

 

「ひょっとして……吉井君の背中にボクの胸が当たってないから?」

 

――コクコク

 

 しまった。うっかり頷いちゃった。

 怒られるかな、と思っていると……

 

「あはは。ボクもちょっとは気にしてるのに……そんな事を言うなら――」

 工藤さんは何故か楽しそうにしている。

 

「こうやっても胸が当たらないのってボクと美波ちゃんだけだよねぇ?」

 少し大きい声でハッキリと話している工藤さん。

 誰かに聞かせてるのかな?

 

「そうだね。今日来る人だと美波と工藤さんくらいかな」

「吉井君って正直だね。本当に面白いなぁ」

 

 工藤さんがそう言うと……

 

 ――ポキポキ

 

 どこかで指を鳴らす音が聞こえるような?

 

「吉井君。先に謝っとくね……本当にごめんね」

 そう言って手を外す工藤さん。

 失礼な事を言ったのは僕なのに何で謝っているんだろう?

 

 僕が正面を見ると……

 鬼の形相をした美波が拳を握り締めているのが見えた。

 

「みっ、美波。おは――」

「アキの…………バカァァァァッ!!」

 

――ボゴォッ

 

 挨拶が終わる前に美波の右拳が僕の顔面に突き刺さる。

 僕が鼻血を出していると、ちょうどムッツリーニがやってきて

 

「…………明久。……(パンチラは)何処だ?」

 

 両手にデジカメを携えて、きょろきょろと周りを見回しながら僕に質問をしてきた。

 

 あのね、ムッツリーニ。

 世の中の男が全員、君と同じ理由(エロ)で鼻血を出す訳じゃないんだよ?

 

 

☆   ☆   ☆

 

 

 全員揃ったところでお店に向かうと……

 お昼時だからなのか、結構並んでいる。

 これなら味の方は期待出来そうだなぁ。

 問題なのは……

 

「もうっ、ほんとにアキったら……ウチも気にしてる事なのにっ」

「ごっ、ごめんなさい」

 さっきの事で、まだ機嫌が斜めに向きっぱなしの美波。

 そして僕の左腕を取ると

 

「今日はアキの腕が使い物にならなくなるくらい、あーんしてもらうんだからねっ」

 そんなに食べれるの、美波?

 

「そしてアキのお腹が破裂するまであーんするんだからっ」

 美波は左手をギュッと握り締めている。

 ここは以前雄二たちと行った事のある食べ放題のお店と違うから

 そんな事になったら僕のお腹も財布も大問題だ。

 

 

「ムッツリーニ君。あのパフェ頼もうよ」

「…………?」

 工藤さんがムッツリーニの袖を引っ張りながらポスターを指差している。

 

 『カップル限定』と書かれたポスターには

 色々なフルーツやダイス状にカットされたスポンジケーキが載った

 美味しそうなパフェと一本のスプーンが写っていた。

 まさかとは思うけど、二人で一本のスプーンを使って食べるんじゃ……

 

 

「……雄二、あれしよう」

「なんだ?」

 霧島さんが指差しているのはパフェの隣のポスター。

 

 やはり、これにも『カップル限定』と大きく書かれており

 断面にはフルーツやナッツなど色々ちりばめられて

 クリームがたっぷり載った大きなケーキの写真が写っていた。

 『二人で最高の時間を体験してみませんか』と書いてある。

 

 そして良く見ると……『ウェディングケーキ入刀体験』と書いてあった。

 体験に申し込むと、そのケーキが食べられるらしい。

 申し込まないでもお金を払えば食べられるみたいだけど。

 でも時間が限定で、人数も制限されているみたいだ。

 1日三回で一回が三組ずつなのか。

 

 周りを見ると割りとカップルも居るから

 霧島さんは残念だろうけど、今から申し込んでも次の回には無理だろう。

 流石にこれだけ混んでいると店内に居座り続けるのも……

 

 

――――クイクイッ

 

 ん?

 

 袖を引っ張られたので隣に居る美波を見ると……

 頬を少し染めて目をキラキラさせながらポスターを指差している。

 

「アキっ。さっきのは許してあげるから……あれ、しない?」

 

 美波が許してくれるのはすごく嬉しいけど……

 まさか一本のスプーンで二人で交互にあーんをするのっ!?

 

「ええっ。あれはすごく恥ずかしいよ」

「どうしてよ?」

「だって……みんなが見てる前でするんだよ?」

「当たり前じゃない。二人を祝福するためにみんな来てくれてるんだから」

「ええっ!パフェ食べるのを祝福してくれるのっ!?」

 

 知らなかった。

 パフェって二人で食べると祝福される物だったのか。

 そもそもパフェなんて、あんまり食べた事なかったし……

 

「アンタ、何を勘違いしてるのよ?ウチが言ってるのはケーキよ。ウェディングケーキっ!」

 僕の頬を抓って顔を美波の方に向けさせられる。

 

「いひゃい」

 美波は、パッと手を離して僕の左右の頬を挟むように両手を当てると

 

「ウチがしたいのはウェディング体験の方よ」

「でも一度に三組しか出来ないみたいだから今から申し込んでも間に合うかな」

 僕がそう言うと……美波は少し表情を曇らせて

 

「ダメだったら仕方ないわよ。申し込むだけ申し込んでみましょ」

「うん。僕らの順番が来たら頼むだけ頼んでみるね」

 

 少しだけだったけど、ポスターを見た時の美波は

 目をキラキラさせて嬉しそうだった。

 やっぱり美波が望む事なら出来るだけ叶えてあげたい。

 

 それにケーキに入刀するだけなら、みんなの前で手を握るくらいだろうし

 パフェで間接キスをしながら、あーんをするよりは恥ずかしくないだろう。

 

 こんな事で美波が機嫌を直してくれるならお安い御用だ。

 僕がホッと胸を撫で下ろしていると……

 

 美波がすごく嬉しそうに満面の笑みで

 

「それとアキ。パフェの方も頼んでくれるのよね」

 

 

 

 ――――えっ!?

 

 

 

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