僕とウチと恋路っ!   作:mam

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1月14日(土)


僕とみんなとスイーツpart02

 そして僕らが席へ案内される順番が来て……

 

 全員で8人なので、4人席を二つで案内される。

 雄二と霧島さんが隣同士、ムッツリーニと工藤さんが隣同士で一つのテーブルへ

 僕と美波が隣同士、秀吉と姫路さんが隣同士で、もう一つのテーブルへ案内される。

 

「では、ご注文がお決まりになりましたらお呼び下さいませ」

 そう言って(うやうや)しくお辞儀をしているウェイトレスさんに

 

「ウェディングケーキの入刀体験って出来るんですか?」

 ダメだと思うけど、聞いてみる。

 さっき美波と約束したからね。

 するとウェイトレスさんはにっこりと微笑んで

 

「はい。ただいま確認して参ります。参加されるのは何組でしょうか?」

「えっと……」

 真っ直ぐ手を上げているのが美波と霧島さん、工藤さんか……って、ええっ!?

 

(かしこ)まりました。三組様ですね。ただいま確認して参りますので少々お待ち下さいませ」

 そう言って頭を下げ、ウェイトレスさんは店の奥の方へ。

 

 

「工藤さんも参加するの?」

 僕が驚いて聞くと

 

「いつも見てるだけだから……ボクも参加してみたいんだよ」

「…………俺は参加するなんて一言も(プイッ)」

 顔を赤くして工藤さんと反対の方向を向くムッツリーニ。

 

「ボクが何時、ムッツリーニ君とするって言ったのかな?」

 工藤さんが悪戯っぽく笑いながらそう言うと……

 

 ムッツリーニが傍目から見てハッキリと判るくらい

 ガックリと肩を落とし、暗い表情で顔を下に向けてしまった。

 

「ああっ、冗談だよ。ムッツリーニ君とやってみたかったんだよっ」

「…………」

 下を向いたまま工藤さんに揺すられるがままになっているムッツリーニ。

 

「もう、ムッツリーニ君。機嫌直してよ……ほらほら、パフェ食べさせてあげるからさー」

 メニューの一番上にある、さっきのカップル限定のパフェの写真を指差しながら

 工藤さんがムッツリーニの肩を揺すっている。

 ムッツリーニと工藤さんはスペシャルパフェを頼むのかな。

 

 

「姫路さんたちは何を頼むか決めたの?」

 僕の向かいに座っている姫路さんと秀吉に聞いてみる。

 

「そうじゃのう……どれも美味しそうなんじゃが写真だけでは、ちと選びにくいのう」

 秀吉が難しそうな顔でメニューを見ていた。

 

「私はこのパフェが、色々入っていて美味しそうだなぁと思うのですが」

 そう言って姫路さんが指差したのは、カップル限定のスペシャルパフェだった。

 確かに二人分以上のボリュームがあるから色々入っているみたいだけど……

 

「姫路よ。それはカップル限定じゃから、わしらは頼めぬぞ」

「じゃあ、オーダーする時に私と木下君がカップルということにすれば良いんですよ」

 

 姫路さんが両手を合わせて嬉しそうに言うと……

 

「カップルという事は……ワシを男として認めてくれたんじゃな」

 姫路さんの提案がすごく嬉しそうな秀吉。

「ええ。『今だけ』ですけどね」

 姫路さんも嬉しそうだ。

 

 流石にあーんはしないだろうけど、スプーンは一本しか付いてないみたいだから

 秀吉と姫路さんで交互に食べるつもりなのかなぁ?

 

 

「雄二と霧島さんもスペシャルパフェだよね?」

 僕が尋ねると……

 

「……うん(ポッ)」

 頬を染めて嬉しそうに頷く霧島さん。

 

「俺はパフェは要らないな。コーヒーと何か腹に溜まる物が良い」

 雄二がそう言うと霧島さんの手がスッと雄二の顔へ……

 

 そして先ほどのウェイトレスさんが戻ってきて僕たちに向かってお辞儀をする。

 

「お待たせ致しました。ウェディングケーキ入刀体験ですが」

 そう言って、少し間を置いてから

 

「――三組様、体験出来ますので御時間になりましたら改めて御案内させて頂きます」

 再度、僕たちに向かってお辞儀をしている。

 

「ほんとですかっ!良かったわね、アキ」

 僕の腕を抱きしめて喜んでいる美波。

 こんなに嬉しそうな美波を見ていると僕まで嬉しくなってくる。

 

「……雄二。私、嬉しい」

 雄二の顔面を掴んで喜んでいる霧島さん。

 霧島さんの手で表情は見えないけれど、雄二も喜んでいるみたいだ。

 だって何も文句を言わないで、あんなに手をバタバタさせている。

 一生懸命と言うより必死と言う感じがするけれど、たぶん気のせいだろう。

 

「体験出来るんだって。良かったね、ムッツリーニ君っ」

 ムッツリーニの腕を掴んで喜んでいる工藤さん。

 流石に服の上から手で掴まれているだけだとムッツリーニも(鼻血は)大丈夫みたいだ。

 

「後で、もっと色々な体験もしてみる?」

 工藤さんが悪戯っぽく笑いながら胸元をちらつかせてムッツリーニにそう言うと……

 

――――プッシャァァァ

 

 何の体験なんだろう……ちょっとだけ、いや、すごくムッツリーニが羨ましいっ!!

 

 

 

 そしてオーダーを取ってもらう。

 

 いつもなら雄二が仕切るんだけど

 今は霧島さんに顔を押さえられて喋れないみたいだ。

 仕方なく、僕がメニューの写真を指差しながら

 

「えっと……このカップル限定のスペシャルパフェを頼む人は?」

 

 まず、美波が手を上げて……工藤さんと姫路さんも手を上げている。

 そして霧島さんも手を上げた。

 

 

 …………グッタリとした雄二の顔面を掴んだまま。

 

 ウェイトレスさんは少し顔を引きつらせて

 

「――それではこちらのスペシャルパフェを四つで……」

 と言いかけた時、秀吉と姫路さんを見て

 

「あの、お客様。大変申し訳ありませんが、こちらのメニューはカップル限定となっております」

 頭を下げて秀吉と姫路さんにそう告げている。

 

「んむ。ワシと姫路がカップルなのじゃが」

「申し訳ございません。当店では女性同士のお客様はカップルと認めておりませんので……」

「なっ……ワシは男じゃっ!!」

 

 

 ――――結局秀吉の主張(演技?)は通らず、秀吉と姫路さんはメニューの選び直しになった。

 

 メニューを選び直している間、秀吉はずっとぶつぶつ言っていたけれど。

 

 

 そして秀吉と姫路さんのオーダーを取り終わるのを待って、聞いてみる。

 

「畏まりました。それではお待ち下さいませ」

「あの……スペシャルパフェなんですけれど」

「はい、なんでしょうか」

「スプーンは一つしか付いてこないんですか?」

「恥ずかしがられるお客様が多いので、ご希望があれば二本お付け致しますが?」

 笑顔で答えてくれるウェイトレスさん。

 

 僕はもちろん……

 いつの間にか霧島さんの手から離れた、土気色の顔をした雄二と

 鼻血が出過ぎたせいなのか、少し青い顔をしたムッツリーニも

 

「「「是非っ、二本でお願いしますっ!!」」」

 

 

☆   ☆

 

 

 そして大きめのパフェが三つと、秀吉と姫路さんがオーダーした二品と

 人数分の飲み物がテーブルの上に並べられて

 

「「「「「「「「いただきまーす」」」」」」」」

 

 

 美波がパフェの上の方のクリームを掬うと

 満面の笑みで僕の口元へスプーンを差し出してきた。

 

「はい、アキ。あーん」

 

 あーん……ぱくっ。

 

 うん。甘すぎず、コクのある牛乳の風味が香り

 舌の上から、すぅっと消えるような食感のクリーム。

 ハッキリ言って美味しい。

 

 結構量があるけれど、これなら美波と二人で食べきれそうだ。

 

「どう?美味しい?」

 美波が少し紅潮させた笑顔で聞いてくる。

 

「うん。すごく美味しいよ」

 このパフェ自体の美味しさもさることながら

 きっと美波の笑顔をこんな近くで見ながら食べられるのが

 いっそう美味しさを引き立てているんだろう。

 

 だって……

 口の中のクリームの甘さだけじゃなく

 胸の奥から温かくなるような、なんとも言えない感じが心地好い。

 

「じゃあ、今度はウチに食べさせてくれる?」

 

 はい、と美波が持っていたスプーンを手渡される。

 あれ?確かスプーンは二つ頼んだはずだよね?

 

 僕がきょろきょろしていると……

 

「アキ、どうしたの?」

「スプーンは二つ頼んだはずなんだけど……」

 僕がそう言うと美波は姫路さんの方を指差した。

 

「もう一本なら瑞希が持ってるわよ。瑞希も食べたがっていたから」

「はい。後で少し頂きますね」

 にこにこと笑顔の姫路さんを見て……

 スプーンを返してください、なんて言える訳が無いじゃないかっ!

 

 

 ふっ、と隣のテーブルを見てみると……

 

 

 雄二が鎖で椅子に縛り付けられていた。

 

「しょっ、翔子っ!普通にあーんするより恥ずかしいだろうがっ!?」

「……私に食べさせてもらえる嬉しさとパフェの美味しさに雄二が暴れだすといけないから」

「んなわけあるかっ!これを――」

「……雄二。静かにして」

「…………はい」

 

 霧島さんは右手と左手の両方でスプーンを持って雄二にあーんをしていた。

 雄二の事になると霧島さんってすごく器用になるよね。

 

「ちょっ……翔子っ!ペースが早いぞっ!?」

「……大丈夫。私の時はゆっくりで良いから」

「今が早いって言ってるん――むがぁっ」

 

 雄二が何か言おうとすると次々にスプーンを口に持って行き、黙らせる霧島さん。

 雄二はちゃんと呼吸出来ているんだろうか?

 少しだけ心配だ。

 

 

 そして雄二の向かいの席のムッツリーニと工藤さんは……

 

――――ボタボタ……

 

 ムッツリーニは鼻血を出しながら、あーんをされていた。

 

「あの、お客様……」

 流石に心配になったのか、ウェイトレスさんが声をかけてきたけれど

 

「あははっ……鼻血を出すくらい美味しいんだよねっ!ムッツリーニ君っ!」

「…………(コクコク)」

「あっ……ありがとうございます……」

 ウェイトレスさんもそれ以上何も言えずに下がってしまった。

 

「…………工藤は食べないのか?」

 ムッツリーニがティッシュで鼻血を止めながら話しかけると

 

「じゃあ、ムッツリーニ君が食べさせてくれる?」

「…………スプーンは二本あるんだから自分で食べればいい」

「ふぅん……そんな事言うんだ」

 ちょっと拗ねたような顔をする工藤さん。

 そして、おもむろに両手に一本ずつスプーンを持って……

 

 両方のスプーンでパフェを掬って食べる。

 

「これでムッツリーニ君と間接キスだねっ」

 工藤さんが頬を染めて嬉しそうに言うとムッツリーニは真っ赤になり……

 

――――プッシャァァァ

 

 鼻血の量が増した。

 間接キスで、あの出血だと……

 本当にキスをしたら全身から血を噴いて死んじゃう気がする。

 

 

 

 そして僕の正面に座っている秀吉は

 抹茶風のサヴァランにクリームとフルーツが大量に盛り付けてある物を

 一口食べては顔を綻ばせ、食べ終わるとムスッとした顔になる……を、繰り返していた。

 

「どうしたのさ、秀吉?」

「抹茶の苦さと、かけてあるシロップの甘さのバランスが絶妙で美味いのじゃが……」

 サヴァランを一口食べて可愛い顔を綻ばせながらそう言うと

 

「やっと姫路がワシの事を男扱いしてくれたのに……」

 食べ終えて、また顔を(しか)めてしまう秀吉。

 

 でもね、秀吉。

 姫路さんは、たぶん注文する時だけ男の振り(ここ重要)をしていて欲しかったんだと思うよ?

 『今だけ』って言ってたしね。

 

 

 その姫路さんは秀吉の隣で

 フルーツがたっぷり入ったロールケーキを美味しそうに食べている。

 

「姫路さん。そのケーキ、美味しい?」

「はい、すごく美味しいです。クリームが甘過ぎないのでフルーツ本来の甘さが良く判ります」

 目を細めながら幸せそうに食べている姫路さん。

 でも次の一口を食べると……

 

「はぅぅ。美味し過ぎてもっと食べたくなっちゃいます。でもこれ以上食べると……」

 そう言うとお腹に手を当てながら困っている表情に……

 

 姫路さんも秀吉みたいに嬉しい顔と困っている顔を交互にしている。

 まるで信号機のようにコロコロ変わる二人の顔を前に、隣の美波を見ると……

 

 

「ほら、アキ。ウチにも食べさせて?」

 大きな目でジッと僕を見ている。

 

 雄二やムッツリーニ(となりのテーブル)に比べれば

 美波と二人で一本のスプーンを使って食べるくらい……全然恥ずかしくないよね。

 

 ――――何より、美波が喜んでくれるなら……僕も嬉しい。

 

 

「はい、美波。あーん」

 

 あーん……ぱくっ。

 

「どう、美波?」

 僕が尋ねると美波は優しく微笑んで

 

「ふふっ……すごく幸せ」

 

 心の底から幸せだと判る美波の笑顔。

 その笑顔がこんな近くで見れて僕も……本当に嬉しくなっちゃうな。

 

「じゃあ、今度はウチが食べさせてあげる」

 そう言うと、手を差し出してきたのでスプーンを渡す。

 

 そして美波は周りのクリームごと、カットされたフルーツを一つ、スプーンで掬い

 

 

――――チュッ

 

 

 フルーツに軽く口づけすると

 

「はい、アキ。あーん」

 

 頬を染めて僕を見つめている美波。

 

「ちょっ……美波?それはすごく恥ずかしいんだけど……」

 頭に血が上りまくっているのが判る。

 耳どころか、きっと顔全体が真っ赤になってるだろう。

 

「もうっ……ウチの気持ち、アキは食べてくれないの?」

 

 今までの美波の笑顔が嘘のように一瞬で曇ってしまう。

 僕は美波のそんな悲しそうな顔は見たくない。

 

 それなら僕に今、出来る事は……

 

 

「あーん」

 

 僕は出来るだけ大きく口を開けて……

 

――ぱくっ

 

 食べてはいるけど、何のフルーツが口の中にあるのか判らない。

 

 ただ……ただ、ひたすら甘くて……

 

 心臓から口が飛び出すんじゃないかって言うくらいドキドキしている僕の目の前には……

 

「――アキ、美味しい?」

 

 すごく幸せそうな美波の眩しい笑顔があった。

 

 

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