僕とウチと恋路っ!   作:mam

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1月14日(土)


僕とみんなとスイーツpart03

 スペシャルパフェを大体食べ終え

 雄二が鎖から解放されたからなのか、パフェを食べ過ぎたからなのかグッタリしてて

 ムッツリーニが出血のし過ぎで食後のデザートならぬ、食後の輸血を行ってて

 まだ真っ赤な顔をしている僕と美波を見ながら、秀吉と姫路さんも少し顔を赤くして

 

「まったく……食べている物より、おぬしらの雰囲気の方が甘ったるいのう」

「まったくです……おかげで食べ過ぎちゃいました」

 

 秀吉が、やれやれといった表情で

 姫路さんはお腹に手を当てて珍しく少し口を尖らせている。

 

 僕の気のせいかもしれないけれど……

 姫路さんは、やけ食いっぽく見えたのはなんでだろう?

 

 

 そこへウェイトレスさんがやってきて僕らにお辞儀をしてきた。

 

「お待たせ致しました」

 

「まだ何か頼んでいたっけ?」

「俺は、もう甘いもんはいらねぇ」

「…………これ以上食べられない」

 

 と、僕らが言うと……

 

「何言ってるのよ、アキ」

「……雄二。これからが本番」

「ほら、ムッツリーニ君。お楽しみはこれからだよっ」

 

 女の子三人が立ち上がり、パートナーである僕らの手をそれぞれ引っ張っている。

 

「ウェディングケーキ入刀体験の準備が整いましたので御案内に参りました」

 

 ウェイトレスさんは、そう言うとまた頭を下げている。

 

 そう言えば、一番最初に頼んでいたんだっけ。

 パフェを食べる事に集中し過ぎてて、すっかり忘れてたよ。

 

 体験に参加する僕ら6人が席を立ったのを確認すると

 

「では、こちらの方へお願い致します」

 ウェイトレスさんが歩き出したので

 

「頑張るのじゃ」

「楽しみにしてますね」

 秀吉と姫路さんに見送られて、ウェイトレスさんから遅れないように後を付いていく。

 

 

☆   ☆   ☆

 

 

 お店の中央より少し奥の方にある一段高くなっているステージに

 写真で見た大きなウェディングケーキがテーブルの上に置いてある。

 ここだとお店の中の何処からでも見えそうだ。

 

 ケーキを近くで見ると……

 バニラの香りだろうか。すごく甘いけど良い匂いがする。

 

「明久。お前が近付くとケーキにバカが移るぞ」

 雄二が笑いながらそんな事を言ってきた。

 

「なんだとっ!僕がケーキよりバカだって言うのかっ!?」

「そうよ、坂本っ!」

 

 美波が僕の手を握りながら雄二に向かって言い返してくれている。

 やっぱり美波は僕の事を良く判って……

 

「アキだって本気を出せば、ケーキに負けないんだからねっ!!」

 

 ちょっと美波っ!僕って本気を出さないとケーキに負けるのっ!?

 何の勝負だと負けるのか判らないけれど、すごいショックだ……

 

「あの……説明をさせて頂いてもよろしいでしょうか」

 案内してくれたウェイトレスさんが困った顔で僕らを見ている。

 

「「「「「「すいません」」」」」」

 

 ――全員で頭を下げて謝った。

 

 

「では、説明に入らせて頂きます」

 そう言うとウェイトレスさんは一本の長いナイフを手に取り

 

「BGMが流れましたら、お名前をお呼び致しますので一組ずつケーキに入刀して頂きます」

 ナイフを持ってない方の手で、ケーキにナイフを刺す仕草をしている。

 

「その時に写真撮影をしますので少し動かないでください」

「皆様がお帰りになられる際に、その写真はサービスでお渡ししています」

 

――――説明は続き……

 

 このウェディングケーキ入刀体験は私服で行うと言う事で

 本来ならウェディングドレスまで用意したかったみたいなんだけど

 そこまで準備すると服の管理や更衣室の増設、業務内容の申請など

 色々と手間が掛かるらしい……大人の事情って大変なんだなぁ。

 

 入刀が終わった後のケーキと写真撮影くらいしか、サービスが出来ないので

 ここへ来るカップルでも、そんなに申し込む事は無いらしい。

 だから僕ら全員が体験出来るんだけどね。

 

 あまり参加する人が居なくても、このイベントを続けているのは

 ケーキはお店の宣伝も兼ねているから味の方は結構評判が良いらしい。

 なので、ケーキ目当てで来ているお客さんもいるとの事だった。

 

 そして一通り説明が終わると……

 

 僕たちの名前を聞かれた。

 入刀する時に呼ばれるって言ってたっけ。

 少し恥ずかしいけど、さっきの説明だとあまりこちらを見る人は居なさそうだから

 そんなに気にする事もないかな。

 

 

「それでは順番を決めて頂きたいのですが……」

 ウェイトレスさんが僕らを見回しながら聞いてきた。

 

「誰が最初に恥を掻きたいんだ?」

 雄二がそう言うと……霧島さんがいきなり雄二と腕を組んで

 

「……雄二と私が一番目に行かせてもらう」

「なっ……翔子っ!いきなり何を言って……いや、何をやって……」

 雄二が珍しく慌てているな。

 まぁ、雄二と霧島さんが一番目が良いって言うなら反対する理由もないし。

 それにあまり見ている人は居ないって言っても最初は恥ずかしいからね。

 

 次に僕とムッツリーニのどちらが行くかだけど……

 

 ムッツリーニの後だと純白のウェディングケーキが鼻血で真っ赤に染まり

 僕と美波が笑顔でそれにナイフを刺しているところを記念撮影されたら

 猟奇的な殺人(ケーキ?)現場の証拠写真になってしまうかもしれない。

 

「ねえ、ムッツリーニ。次に行く順番だけど……」

「…………二番目に行かせて欲しい。頑張るから」

 ムッツリーニが珍しく真剣な表情で言ってきた。

 

「判ったよ。早く終わらせた方が鼻血を我慢する時間も短くて済むだろうし」

 

 僕がそう言うと……

 ムッツリーニがアイコンタクトで

 

(…………鼻血を我慢するのを頑張るんじゃない)

(じゃあ、何を頑張るのさ?)

 ムッツリーニは、チラッと工藤さんを見てから……

 

(…………悲しませないように頑張るんだ)

 

 ムッツリーニがそこまで言うなら……

 僕は小さく頷くと

 

「美波。僕たちが最後で良いかな?」

「もちろん、良いわよ。ウチは順番なんて気にしないし……アキが隣に居てくれるなら、ね?」

 僕の手を握りながら、美波は笑顔で答えてくれた。

 

 

☆   ☆   ☆

 

 

 そして……

 

 店内の照明が少し暗くなり、ステージ周辺のライトが点き

 まるでスポットライトのように僕らを照らしている。

 するとBGMが変わり……

 

――♪♪♪~♪ ♪♪♪~♪ ♪♪♪~ ♪♪♪~

 

 これは確か……結婚行進曲だったっけ。

 

 先週も、今と同じ様な状況でこの曲を聞いた気がする。

 今年に入って、まだ二週間しか経ってないのにこの曲を聴くのは二回目か。

 このペースだと今年何回聞くのかなぁ、と思っていると……

 

『本日は寒い中、ご来店頂き、誠にありがとうございます』

 アナウンスが流れてきて……いよいよ始まるのか。

 

『ただいまから当店のケーキで結婚式の入刀体験をさせて頂きます』

『皆様、御歓談、御食事中でお忙しいとは思いますが中央ステージの方をご覧ください』

『一組目は……坂本君・霧島さんのカップルです』

 そして雄二と霧島さんがウェイトレスさんに促されるように

 ケーキの傍まで行くと……

 

 

――――何処からか小さな声で――

 

 

「あの子たち、去年の年末の如月ハイランドのイベントで……」

「そうそう、TVに映っていたわよね」

「たしか結婚を前提として付き合っているんでしょ。羨ましいわね」

 

 ――などと聞こえてきた。

 

 そう言えば、あのイベントはTVでも取り上げられたんだっけ。

 でもみんな去年の事なんか良く覚えているなぁ。

 いつの間にかステージの周りには人が集まってきて……

 

 

――――パチ。

 

 一つの拍手から……

 

――――パチ、パチ。

―――パチパチパチ。

―-パチパチパチパチ。

 

 ステージが拍手で包まれる。

 そこに居るのは……雄二と霧島さん。

 

「……雄二」

 顔を赤くして俯いている霧島さんの肩に雄二は手を置くと

 

「翔子、下を向くな。俺たちは何も恥ずかしい事や(やま)しい事なんてしていない」

「……うん」

「前を見るのが恥ずかしいなら……いつもみたいに俺だけを見ていろ」

「……うん」

 

 雄二は目の前のケーキを真っ直ぐ見て……

 霧島さんは雄二の顔を見ている。

 

 二人が手を合わせて持っている一本のナイフがゆっくりと……

 そして二人が動かなくなるとフラッシュが焚かれて一瞬一瞬、二人が光に包まれる。

 

 お店の人だけじゃなく……

 ステージの周りに居る人たちの中にも写真を撮っている人が居るみたいだ。

 

 

 

 雄二と霧島さんがステージの脇に居る僕たちのところに戻ってきて

 お店の人にナイフを渡すと

 

「これだけ人が居ると、さすがに緊張するな……次はムッツリーニだが大丈夫か?」

「(コクコク)…………大丈夫」

 

 お店の人に新しいナイフを手渡されて

 ムッツリーニはケーキの方を睨むように見ている。

 

『続きまして二組目は……土屋君・工藤さんのカップルです』

 ムッツリーニと工藤さんが呼ばれる。

 

「ムッツリーニ君……」

 工藤さんが少し不安そうな顔でムッツリーニを見ていると

 ムッツリーニは工藤さんの手をしっかりと握って

 

「…………愛子、行くぞ」

「――うんっ、康太君っ」

 

 ムッツリーニは、キッとケーキを睨んだまま

 工藤さんは笑顔でムッツリーニを見ながら

 二人はケーキの前に立つ。

 

 二人で一緒に持っているナイフがゆっくりとケーキに刺さる。

 そしてムッツリーニと工藤さんもまた、光に包まれた。

 

 

 

 少ししてから二人が僕たちのところに戻ってきて、お店の人にナイフを渡す。

 するとムッツリーニが僕の方を見て

 

「…………人前に出るのがこんなに恥ずかしいと思うのは生まれて初めて」

 ムッツリーニはいつも人目につかないように行動してるからなぁ。

 

「…………明久はすごいな」

「いやぁ、それほどでも」

 何がすごいのか判らないけど、改まって言われると照れちゃうな。

 

「…………いつもこんなに大勢の前で恥ずかしい思いをしても平気なんて」

「いつも恥ずかしい事なんてしてないからねっ!?」

 

 酷い誤解だ。

 いつも恥ずかしい事と顔をしているのは雄二で

 僕はそれの巻き添えを食ってるだけなのに。

 

「しかし、工藤と手を繋いでいて良く鼻血を我慢できたな」

 雄二が感心しながらそう言うと……

 

「…………信念は不可能を可能にする」

「それで鼻血を押さえられるのか」

 雄二が驚いた顔でムッツリーニを見ている。

 

「…………悲しむ顔を見たくなかっただけ」

 ムッツリーニが工藤さんを見ながらそう言ってると

 工藤さんが視線に気付いたのか

 

「康太君。二人で一緒に出来たって事が、すごく嬉しかったよ」

 そう言って工藤さんがムッツリーニに抱きつくと……

 

――――プッシャァァァ

 

 どうやらムッツリーニの緊張の糸が切れたみたいだ。

 

 

 

 そして僕がお店の人から新しいナイフを受け取っていると

 

『ラストを飾ります三組目は……吉井君・島田さんのカップルです』

『皆様、盛大な拍手でお迎えください』

 

 アナウンスが終わると……BGMが聞こえなくなるくらい、拍手が鳴り響く。

 

「すごい人ね」

 美波が驚いた顔で呟いた。

 

 ステージの周りには……ざっと二十人以上は居るかな。

 すると美波が少し頬を染めて僕を見上げると

 

「今は知らない人ばかりだけど……きっといつの日か、お父さんやお母さん、葉月の前でするのね」

 そう言って優しく微笑む美波。

 もちろん、僕も……

 

「うん。いつか、きっと……姉さんや父さんに母さん。雄二やムッツリーニ、秀吉や姫路さん、霧島さんに工藤さんの前で」

 

 ――そして二人揃って笑って言葉を続ける。

 

「「みんなが祝福してくれる前でやろうね」」

 

 

「ほら、アキ。行くわよっ」

「わわっ、美波。いきなりは危ないよっ」

 僕と手を繋いで美波が引っ張るようにステージに上がる。

 

 すると拍手が少し笑い声に変わる。

 

「あの二人、可愛いわね」

「男の子の方が少し頼りない気もするけど……」

「でも高校生なのに結婚まで考えているならしっかりしてるんじゃない?」

「結婚を前提としてるなら体験じゃなくて予行練習なのね」

 

 ――――噂だけが一人歩きしている気がする。

 

 この人たちとは二度と会う事は無いだろうから気にしない事にしよう。

 

 

 僕と美波も二人の手を重ねるようにして一本のナイフを持つとゆっくりとケーキへ……

 眩しく光るフラッシュの中……美波の嬉しそうな笑顔が印象的だった。

 

 

 

 そして僕と美波が雄二たちのところに戻ると

 

「このイベントがこんなに盛り上がったのは初めてです」

 笑顔でナイフを受け取りながら話すウェイトレスさん。

 

「では、後でお席の方にケーキをお持ちさせて頂きます」

 ぺこりと頭を下げて店の奥の方に行ってしまった。

 

 

☆   ☆   ☆

 

 

 僕らが席へ戻ると……

 

「お主ら、大変じゃったのう」

「美波ちゃんも翔子ちゃんも愛子ちゃんもすごく幸せそうで……羨ましいです」

 

 秀吉も姫路さんも笑顔で出迎えてくれた。

 

 しばらくするとウェイトレスさんが切り分けられたケーキを持ってきてくれた。

 秀吉と姫路さんには僕たちと同じ席だからという事でサービスでくれるらしい。

 そして僕と美波、雄二と霧島さん、ムッツリーニと工藤さんの前には……

 

 二人で一つのお皿に載せて持ってきてくれたみたいだ。

 もちろんフォークは一つしか付いていない。

 

 するとウェイトレスさんはにっこりと笑顔で

 

「フォークはお一つでよろしいでしょうか?」

 

「「「二つでお願いしますっ」」」

 

 

 

 追加のフォークを持ってきてくれたウェイトレスさんが

 

「ケーキ入刀の時からあんなに皆様に祝福されたお客様は貴方がたが初めてですね」

 フォークを僕や雄二、ムッツリーニの前に置きながら話をしてくれた。

 

「普段ですと入刀には皆様興味が無いらしくてケーキを分ける時に来られるのですが」

「あんなに人が集まるなんて想像もしてなかった」

 雄二が霧島さんにまたも二本のフォークでケーキを口元に運ばれている中、そう言うと

 

「ケーキがあんなに早く無くなったのも初めてです」

 ウェイトレスさんはにっこりと微笑み、僕らの席から離れる時……

 

「ではどうぞ……お幸せに」

 

 

 

☆   ☆   ☆

 

 

 

 そしてケーキも食べ終わり、みんなと別れて美波を送っていく途中……

 

「今日はたくさん食べたわね」

 美波がお腹に手を当てながら話す。

 そう言えば、姫路さんも別れ際にお腹に手を当てていたっけ。

 

 ――――物凄く暗い表情で。

 

 

「うん。しばらく甘い物は食べなくても大丈夫だね」

 おそらく普段の生活だと一ヶ月分は食べたんじゃないだろうか。

 パフェだけでも十分過ぎるくらいなのにケーキも食べたからなぁ。

 

 僕もお腹に手を当てながら歩いていると……

 その手を美波が取って手を繋ぐと

 

「明日はアキと二人っきりで過ごせるのよね?」

 すごく嬉しそうな笑顔で聞いてきた。

 

「うん。約束したからね」

 明日の日曜は、僕が美波にお昼御飯を作ってあげるって約束したんだっけ。

 

「美波は何か食べたい物はあるかな?」

 僕は今日たくさん食べたから甘い物はちょっと勘弁してもらいたいけど。

 

「そうね……」

 人差し指をあごに当てて考えている美波。

 

「これと言って特に食べたい物はないんだけど……」

「――ないんだけど?」

 僕が聞き返すと……夕日に負けないくらい、美波は顔を輝かせて

 

「アキに食べさせてもらえるんだったら何でも良いわよ」

「ええっ!今日、あんなにやったのにっ!?」

 

 ケーキ入刀体験が終わって持ってきてもらったケーキが

 僕と美波の分で一つのお皿に載っていたから

 結局、美波とあーんをしながら食べたり食べさせられたりしたのに……

 

「だってみんなの前だったじゃない。ウチは二人っきりの時もしたいの」

 大きくて勝気な吊り目を潤ませて頬を少し染めながら

 僕を見上げるように見つめて言う美波。

 

 美波の望む事なら出来るだけ叶えてあげたいけれど……

 でもみんなの前と、二人っきりの時にするあーんの違いが良く判らない。

 

 僕が首を傾げながら歩いていると……

 

「明日はアキの家に行けば良いのよね?」

 僕の家に美波が来る……二人っきりには、なれないな。

 確か姉さんは何処にも行く予定が無かった気がする。

 

「美波の家だとダメかな?」

「ウチの家?別に良いけど、明日は葉月もお母さんも居るから二人っきりになれないわよ?」

 

 それでも僕の家で姉さんが見てる前で、あーんなんてしたら

 きっと姉さんにも強要されるだろう……おそらく半永久的に。

 

 まだ美波の家の方が安心できる気がする。

 美波にしてあげてたら葉月ちゃんも、あーんをおねだりしてくるかもしれないけど

 さすがに美波のお母さんまで僕に要求してくる事は無いよね。

 

「じゃあ、二人っきりになれなくてもいいから――」

「そうね。アキだけに御飯作ってもらうのも悪いから朝御飯はアキの家に作りに行ってあげる」

 僕が言いかけている途中で美波がそう言ってきた。

 朝から、あの姉さんも一緒に相手しないといけないなんて……

 それだけは避けたいんだけどっ!?

 

「いやいやいや……そんな朝早くから美波に来てもらうなんて悪いよ」

「ふふっ。遠慮なんてしなくて良いわよ。ウチもアキに何かしてあげたいんだもの」

 優しく微笑んで僕を見ている美波。

 その気持ちはすごく嬉しいんだけど……

 

「じゃあ、僕が美波の家に――」

 僕がそう言ってる途中で美波は繋いでいる手を離すと

 美波が編んでくれたマフラーを解いて、また巻き直してくれた。

 

 ――僕の口を塞ぐように顔の下半分まで覆って。

 

「じゃあ、明日の朝御飯楽しみにしててねっ」

 

 そう言って走り出す美波。

 いつの間にか、美波の家の近くまで来てたんだな。

 

 左右に揺れながら走り去っていく美波のポニーテールを見ながら……

 

 

 

――――僕は姉さんが急用で出掛けてくれる事を祈っていた。

 

 

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