Make me life!   作:Clear2世

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こんなサブタイですが、鮮血の結末みたいな展開はこのSSでないです。多分。


Make me schooldays

「そういえばさ、翼って最近どうなの?」

 

「どうつっても、別段変わりはないぞ」

 

週の初め。学生は勉学に励むため通学。社会人は自身の生活のために通勤を。

前者である俺たちは馴染みのある制服に袖を通し、学園へ向かう。

恵美と昨日の番組見た?だとか、数学の宿題ちゃんとやった?だとか、主に恵美が話題を振ってくるのに対し返答していく。

昇降口で学園用の靴に履き替え、現在は恵美と共に自分のクラスへ向かう最中。色んなとこから視線を感じるがまぁ、これもいつも通りである。

好奇、羨望、嫉妬。良い意味の視線は恵美に。悪い意味の視線は8割型俺に向けられている。

モデル経験のある恵美は女性誌に載ったこともあり、女生徒からの知名度も高くその気さくな性格から憧れを持つ生徒も少なくはない。

男子生徒?言うまでもない。なんでお前みたいな奴が所と登校してんだやら、彼氏ヅラしてんじゃねーよだとか、モテル秘訣を教えてくれだとか色々言ってきたりした。去年よりかは頻度は減ったものの、それでも数は減ってはいる。

それよりも、最近は翼がアイドルとして活動し始めてはそれに関して言ってくる奴が増え始めてきた。

妹を紹介してくれなんて抜かすチャラ男死すべし慈悲はない。

 

「最近の私かわいくなった?なんて言ってじゃれついてきたりするし、宿題やるの忘れたから手伝ってくれって泣きついてきたりしてるしな」

 

「アイドルになったからって、そんな変わらないんだね~。蓮と翼の仲は相変わらずかー」

 

「そりゃぁ、前よりかは減ってるけどな。忙しくなってるのは間違いないんだし」

 

「だよねー。あ、ほらほらっこれ見てよ」

 

自分の鞄を漁り、色々と付箋の貼られた雑誌を取り出しこちらに見せてくる。

元々距離は近かったが、これは傍から見たらイチャついてるようにしか見えないくらいのレベルで恵美が寄ってくる。

こういう所が噂される原因なのだろうが……恵美はどう思ってんだろうか。

俺?言いたい奴には言わせておけ。以上。

 

「それなら知ってるぞ。期待の新人アイドル現るってやつだろ?」

 

恵美が該当のページを見せてくる前に、手で制し担いでる鞄から、恵美の持ってるのと同じ雑誌を取り出す。

驚く俺を見たかったのか、不満声を上げる。

知らない振りをして相手の話に合わせるというのも付き合いとしてやったほうが良いとは思う派の俺だが、相手は如何せん恵美である。

やったら途中でバレて、ファミレスで俺の奢りコースになるのは目に見えている。

 

「えぇ~~!なんで知ってるのさ!これ発売したの一昨日なんだよ?」

 

「翼が発売日前から絶対に買え買えって勧めてきたんだよ」

 

「あぁ……」

 

自分でシスコンなのは理解してるが、翼も割りとブラコンなんだよな。俺とも翼とも付き合いが長い恵美は全てを理解したような顔をする。

 

『明日はね~~……なんとなんとぉ!私の特集が載った雑誌の発売日なんだぁー。買ってね?買ってね!?観賞用、保存用、布教用で最低3つ!後日読んだ感想聞いちゃうからね!』

 

発売日前日、いつも翼が寝る時間になるまでずっと俺の部屋に居座り続け、ありとあらゆる手でおねだりし続けていた。翼の活動状況は聞いてるとはいえ、こういうのが発売されたら買う気でいたしな。

実際恵美がモデルで活躍してた時の雑誌だって持ってるしな。部屋の床に置いて積んである為、本人に購入したのはバレている。

ちなみにちゃんと3つ買った。今日持ってきたのはクラスメイトに布教する用。

 

「アタシの見通しが甘かったか……蓮のシスコンっぷりは筋金入りだよねホント」

 

「別に普通だって」

 

同じのを3冊買ったことは黙っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなーおっはよー!」

 

「はよっす」

 

元気よく挨拶する恵美とは対照的に低めのテンションで挨拶する俺。

ちらほらと返ってくる挨拶。お互い自分の席に向かい、HR教室内を見渡すと来ているのは半分ちょっとってとこか。

HRまではまだ時間もあるし、みんな各々の時間を過ごしている。雑談する者、携帯やゲームを弄る者、寝る者、慌てて宿題する者。

恵美はというと、さっそく周りの女子たちに囲まれて楽しそうに雑談している。

俺?俺は一人でかわいい妹の特集が載った雑誌を見ています。

まぁ、特集だけじゃなくてちゃんと話題のコーデとか他のモデルの娘がどうだとかも見たりするけどな。

……お、346プロのアイドルじゃないかこれ?ってことは中々特集の競争倍率も高かったんじゃねーか。

 

 

「よう、このモテ男め。朝っぱらからお楽しみでしたねってか?」

 

……ん?顔を上げると目の前には不機嫌そうな顔をした見る人を不機嫌にさせる不愉快な面をした男が。

 

「えーっと、アースジェットどこにあったかな……」

 

「オイィ!?何探そうとしてんだ!ってなんでんなもん持ってきてんだよ!やめろ!人に向けようとすんな!!」

 

「人じゃないから大丈夫だ」

 

「れっきとした人だ!!俺が何したってんだよ!」

 

すげぇ、数行前に自分が言ったことをもう忘れてるのか。

さすがは学年を代表する有名人。

 

 

俺の目の前でギャアギャアと騒ぎ立てる男は鳥谷渉。名の通りの鳥頭であり、勢いだけが取り柄の男。

先程の有名人とは頭の悪さ加減を意味指す。角刈りに生まれ持った体格の良さ。いやらしい目つき。

モテようと日々奮闘してるみたいだが、成果はなし。

多分俺の友達。友達ってか悪友ってのがしっくりくるな。こいつとは良くないことに、去年から同じクラスメイトだし。

扱いが酷くないかって?こいつは俺から4万近くの借金をしているんだ。返す気も一向にないみたいだし、容赦はしない。

 

「あんなに見せつけるように登校しやがって!」

 

「んなつもりはねーよ。お前の視点からそう見えただけじゃね?」

 

「はぁ!?あんなにくっついておいてそりゃねーだろ!肩が触れ合うほど女子と近寄ったことなんて、俺なんて一度もねーぞ!」

 

知らんがな。

 

「……あ、母ちゃんがいたわ」

 

知らんがな。

この馬鹿の声は四六時中でかい為、今俺らがしてるやり取りはこの教室にいるメンツ全員が聞いてることだろう。

去年俺たちと同じクラスのメンツはいつものことかって感じで気にしていないが、そうでない連中はこちらをガン見している。

あ、恵美もこっち見てる。

 

「なぁ、ホントに所とはなんもねーんだよな?」

 

暑苦しいから、肩に腕を回さないでくれやしませんかね。

 

「いつも言っているだろ?恵美とは仲の良い友達だって」

 

「ほんとかぁ?あんなに仲よくて、付き合ってないなんて信じられねーよ」

 

「渉がなんと言おうと、俺は真実しか言ってないぞ。信じる信じないかは別としてな」

 

このやり取りで違和感を持ったかもしれんのだろうが、俺と恵美が幼馴染だってことは学園の人たちは知らない。

なぜかだかしらんが、高校に上がってからは恵美がみんなには秘密にしてほしいってことで誰にも打ち明けていない。

中学時代は聞かれたら教えていたのにな。なんか心境の変化があったのかね……俺なんかと幼馴染なのが恥ずかしい!とか思われてたらさすがにショックだ。

元祖恋愛シュミレーションゲームのヒロインみたいに、告白し関係性を否定されて振られるなんてのはゲームだけで十分だ。

 

「そうか……そうかそうかぁ!なら、俺にもチャンスはあるってことだな!」

 

そういえば、こいつ恵美に気があるやつの一人だっけな。

入学当初、渉に紹介してくれって頼み込まれた。紹介料として1万払えば考えてやるって冗談間際で言ったのだが……渉みたいに紹介してくれって言った連中は他にはいたが、そういうやつらは大体こう言えば諦めたり、逆上してきたりして紹介せずにすんだ。

しかし、こいつに常識は通用せず……

 

『一万円で彼女ができるなら安いもんだぜ!』

 

さぁ、この台詞でどれだけの馬鹿っぷりかがわかるだろう。

俺は考えてやると言っただけであって、やってやるとは言ってないし、仮に紹介するとしてもお前を売り込むとも言っていない。

さすがに一万ももらっておいて、紹介しないのはあんまりなので一応紹介はしてやったけどな。

結果?紹介したその場で告ってバッサリ斬られてました。

 

「自己完結したか。なら暑苦しいから離れて下さい」

 

「……待てよ?付き合ってもないってのにあんなに密着するか……?ホントのホンッッッッットに付き合ってねーんだろうな?」

 

誰かこいつを引き取って下さい。今の御時世草食系男子が増えつつあるのに対し、渉みたいにガンガン行く肉食系は俺は評価する。

だからといって、ウザイくらいに絡んでこんでほしい。

チラっと恵美の方を見てみると、向こうと目が合い、頑張ってね~とフリフリと手を振られた。

周りの女子友達からは伊吹君も大変そうねぇと言わんばかりに憐れみの視線を送られていた。

俺の周りには味方がいないのかと軽く絶望し項垂れていたら――――

 

「二人とも朝から元気だねぇ」

 

救いの声が天から舞い降りた。

 

「元か、おはよう。このうっとおしい馬を引き取ってくれ」

 

「馬ってなんだ馬って!お前それ俺のことを馬鹿だって言いてぇのか!!」

 

だって事実じゃん。

 

「まぁまぁ、蓮も渉もそこまでにしときなって」

 

渉とは違って話の分かりそうな男子生徒。俺が元と呼んだそいつの名は村山元気。

趣味はアニメ鑑賞にネトゲ。平日は夜更かししまくり、遅刻したり授業中寝ることも多く。休日は家から一歩も出ずネトゲにログインし、ひたすらフレンドと狩りを行う。

ネトゲ界では神すら凌駕すると言われるほどに有名。筋金入りのゲーマーで完全なインドア男。

だが、遊ぶ時は俺たち3人で街に出かけたりはするので引き篭もりってわけではない。

あだ名で呼ぶくらいには元と仲良く、一緒のネトゲもプレイしてるし趣味も俺と合う。

時々恵美も交えてオンラインゲームしたりしてるしな。

 

「渉は一人ぼっちで登校なのに、蓮は可愛い女の子を連れて登校。辛い現実を認めたくないんだよ」

 

普段は温厚な元だが、渉に対しては結構毒舌。元も俺と同じく渉に金を貸してるからな。

貸してる額は俺よか諭吉数枚分あるとのこと。

 

「ちょ!?な、何言ってんだよ!俺は単に蓮の奴が……!」

 

「あっ……(察し)」

 

「なんだその目はぁ!!ちげーからな!?勘違いすんなよ!!」

 

「うんうん、僕にはわかるよ渉。たまには僕が一緒に登下校してあげるから元気だしなよ」

 

「野郎と一緒じゃなんの意味もねーし、嬉しかねぇわ!!」

 

「元気だけに元気だせ……うん、悪くない」

 

「悪いのはお前のギャグセンスだ!」

 

元が来たお陰で、渉の気を別のとこに逸らすことはできたがさらに喧しさが上がった。

俺、渉、元。去年からクラスも同じで、男友達の中では一番付き合いが多いと言えるだろう。

 

 

「ってアレ?蓮が見てるそれって妹さん?」

 

「あぁ。一昨日発売されたもんで、翼の事が書かれてたからな」

 

机の上に広げられてる雑誌を手に取り、興味深そうに眺める元。

学園中……ってわけではないが、少なくともうちのクラスの連中は俺の妹がアイドルをやってるってことは知っている。まだまだ駆け出しとはいえ、妹が有名になってくのは誇らしい。

一抹の寂しさもあるけどな。だってしょうがないじゃないかぁ!あんなに素直でかわいい妹なんだぜ……親父みたいに、嫁に行くなとは言わないが行く前までは見守らせて欲しい。

 

「蓮の妹か。兄とは違ってかわいいよn「てめぇ、翼に手を出したらその薄汚い手を二度と物が触れないようにしてやるからな」ヒィィィイイイイイイイ!?」

 

胸ぐらを掴みドスの聞いた声で威圧してやる。翼が認めた相手ならしょうがないが、少なくとも渉みたいな男を

 

 

『おにーちゃん。この人が私の彼氏なんだ~♪』

 

翼に紹介された日には生きていく気力が根こそぎ奪われることだろう。

 

「蓮は相変わらず妹命だねぇ……」

 

「の、のほほんとしてないでこのシスコンを止めてくれよ元気!し、心配すんなって蓮!俺は年下には興味ねーからs「翼に興味ないだと?貴様それでも日本男児か!!」どっちにしろか!もうめんどいよこいつ!!!」

 

俺らの不毛なやり取りは担任が来るまで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー休み時間ー

 

 

数学の教師が退出するとクラス全体の張り詰めていた空気が緩くなる。

あの教師は私語とか気にする割にはそんな教え方が上手いわけでもないからなぁ。俺自身数学は然程苦手ではないから問題ないが、元々苦手な人にとってはますます嫌いになっていくかもな。

学生のやる気も重要だとは思うが、先生の教え方ってのも俺は重要だと思うがね。嫌な先生のせいでこの科目が苦手になりましたってのも少なくはない。ま、学校の先生は単体にではなく多数に教えるから仕方ないかもしれんけど。

特にさっきの授業に疑問点とかあったわけでもなく、ノートにまとめきれてないわけでもないので次の授業までソシャゲのアプリでもやって時間を潰すか。

最近インストールしたのは346プロのアイドルたちが歌って踊るリズムゲーム。346プロのアイドルの顔ぶれはある程度知ってはいたが、どんな曲を歌ってるのとかは知らんかったので割りと楽しめてる方だと思う。

自宅でこのシンデレラガールズスターライトステージ(略してデレステ)を遊んでる時、翼に見られて

 

『なんでミキ先輩が登場するゲームじゃないのー!』

 

頬を膨らませていた。

んなこと言われましても、765プロさんの登場するソシャゲまだないし……

とまぁ、ゲームを起動していざライブをしようと選曲していたら

 

「ねぇ、蓮ちょっといい?」

 

「ダメ。今良いとこだからまた後で」

 

恵美に声をかけられる。今顔を上げたら、確実に俺の貴重な休み時間が奪われるのは確定的に明らか。

さっさと曲を選んで――――

 

「はい、嘘つかなーい。まだ曲すら選んでないじゃん」

 

が、スマホを奪われてしまう。

そういや、恵美もデレステやってるんだっけか。俺が始めると同時に恵美もインストールしてたなそういや。

 

「ひとのものをとったらどろぼう!」

 

「蓮のものはアタシのもの。アタシのものは蓮のもの。だから問題なんてないねっ」

 

なんだその謎理論。ジャイアンもびっくりだわ。

どうやら、相手にしないとスマホを返してくれそうにないようだ。

 

「……で?俺の貴重なスタミナ消費する時間を奪ってまでのご用件は?」

 

「うわっ、なんか嫌味ったらしい言い方。まぁまぁ、いいじゃんちょっとくらい。後でジュースおごったげるからさ」

 

「いや、別に物をもらってまで気にするわけじゃねーから。……さっきの授業でか?」

 

「あーうん。ちょっとどうしてもわかんないとこがあってさー」

 

恵美の手には数学の教科書とノートが。去年はお互い違うクラスだったが、授業終了後にこっちのクラスにやってきて俺に質問してくる時があったからな。

本来なら俺よりも先生に聞いた方がいいだろうが、恵美曰く俺でもどうしてもわからなかったら先生に聞くとのこと。

頼られているのは悪い気はしないのでいいんだけどね。……多少プレッシャーはあるが。

 

「どの辺りがわからないんだ?」

 

「この不等式の証明ってやつなんだけど」

 

隣の席の(たしか池田さんって女子)イスを借りて俺の真横に座り、教科書を広げる。

……てっきり俺は席ごとくっつけて来るかと思ったんだが……まぁいいや。

 

「証明か……まぁ、ここらは苦手なものとして鉄板だわな」

 

「でしょ!あの先生解説してたけど、何言ってるかさっぱりでさ~」

 

「竹山(数学の教師)はガンガン進んで行くタイプだからなぁ。授業に追いつくにはある程度復習なりしとかないと付いてけないぞ」

 

「うぅ~……もうちょっと出来の悪い生徒にもわかりやすくゆっくり解説してほしいのに……」

 

教科書に突っ伏し、唸り声を上げる恵美。

そんな恵美を他所に、俺は恵美がどうノートをまとめてるか確認する。

うん、予想はしてたが。板書されてたことしか書いてない。いや、真っ白白なノートよりかは全然いいんだけどな。理解はできなくても、ちゃんとノートは取ろうって意志はあるみたいだし。

どっかの渉っていう馬鹿はわからなくなった瞬間に授業放棄するからなぁ……そんなんだから、万年赤点生徒なんだぞ。

 

「ほれ、顔上げろっての。俺が分かる範囲で教えてやるからさ。まずは俺のノートを見てみな」

 

「はーい。…………おぉっ!なんかめっちゃくちゃわかりやすく書かれてる!」

 

俺の場合ただノートを取るだけじゃなくて、自分なりに考えをまとめ、板書されてることだけじゃなく先生が口にした大事なとこっぽいとこも書くようにしてる。

後で清書するのはめんどくさいので、なるべく最初の内に綺麗に書いといたほうが手間が省ける。

まぁ、清書したほうが頭のなかに入りやすいって人もいるだろうけどね。

 

「取り敢えずは俺のを参考に自分のノートに書き写しな。その後で解説していくからさ」

 

「はいっ蓮先生!」

 

そう言ってノートに書き込んでいく。

先生……中々悪くない響きだ。家庭教師のバイトとかやってもいいかもな。

給料も悪くないって聞くし。

 

 

 

……それにしても、恵美の手ってスラッとして細いよなぁ。俺の手と見比べても大きさも太さも全然違う。

女性だから当たり前なんだろうが…こう改めて見ると、恵美が男女共に人気があるのがわかる。

まつ毛も長いよなぁ。ちょっと勝ち気な目元も、今真剣にノートを取ってる様は中々グッと来るものがある。

目線をさらに下げてくと、Yシャツの第一ボタンが外されている為、俺よりも白く健康的な肌が露出されている。

……そのさらに下は男にはなく、未知の双丘が――――

 

 

「……ん?どうかしたの?アタシの顔になんかついてる?」

 

俺の視線に気づいたのか、こっちに横目で視線を向けてくる。

ってさっきから俺は何考えてんだ!!いくら相手が俺だからって、こっそりとガン見するのは良い気がしないだろう。

 

「目と鼻と口がついてる」

 

「そりゃついてなかったら困るって……」

 

よし、流石俺。これで内心動揺してることを悟られてない……はず。

俺の小学生並みの返答に呆れ顔になる恵美だったが、引き続き作業に戻る。

……さっきみたくずっと盗み見るのもアレだし返却されたスマホでデレステの続きでもやるかな。

 

 

「はぁ~~、アンタたちってホンット仲いいわよねぇ」

 

と思ったが、ため息混じりに呆れた様子でこちらに近寄ってくる人物。

程よく日焼けした小麦色の肌に、最近流行りのギャルメイクを施したフェイス。腕には幾つものの別々の色を持ったブレスレットが身に付けられている。

染めたであろう茶髪の髪も相まって、遠目からでも彼女がギャルだということがわかるだろう。

 

「あ、カナ」

 

「水木か。別にこれくらい普通だろ」

 

水木佳奈多。それが彼女の名前だ。

恵美とは去年から同じクラスであり、この学校の同性の中では一番のマブダチとのこと。

見た目は恵美よりもギャル度合いが高い物の、中身は割りと常識人で成績も毎回上位にいる。

品行方正……とは言い過ぎかもしれないが、うちの学校は学業を疎かにしなければ割りとぬるい所があるので、先生も水木にはとやかく言わない。

 

俺との関連性は当然ながら恵美繋がりである。恵美が俺を遊びに誘うとき、彼女もたまに付いてきたりするからだ。

人によっては彼女の外見で敬遠するかもしれないが、俺自身人は見かけよりも中身なので、特に気にしていない。

むしろ、明るく取っ付き易い性格なので俺は結構彼女を気に入ってたりする。

 

「おはよ、メグ、イブ。いやいや、アンタらの仲睦まじっぷりは度を超えてるっての。遠目から見てもイチャついてるようにしか見えないみたいな」

 

「え、そう?ね、ね蓮。アタシたち恋人みたいに見えるって!いや~~~照れちゃうなぁ」

 

水木の冷やかしに対し、人差し指に髪を巻き付け、空いた方の手で俺の肩を揺する恵美。

いつも恵美と行動してるとこうやって水木が冷やかしにくるのが鉄板となりつつあるが、なぜだろうか。

彼女が言ってくると大して不快に感じないのが不思議だ。人柄なのだろうか?

ちなみにイブとは俺のあだ名である。伊吹→イブキ→イブ。である。

どこぞのトラブルな漫画に出てくる暗殺者の名前みたいだが、俺は特に気にしてない。

 

「つっても、普通に勉強を教えてるだけだが」

 

「普通~?そんな肩が触れ合うほどの距離だってのに?ならアンタは私が同じ距離で迫ってきたらどうすんの?」

 

「別にどうもしないが、強いて言うなら、今後は敬語で接する」

 

「他人行儀になるほどイヤなんじゃない……はぁ~これでいてホントに付き合ってないってのが信じられないってホントに」

 

なんて言われましてもね。幼馴染だってことは恵美に口止めされてるしな。

周りがなんて言っても、俺たちはまだ付き合ってないのは変わらない事実である。

 

 

「ったく、蓮が付き合ってないって言ってんだから付き合ってねーんだよ。これだからスイーツは……」

 

さっきから聞いていたのか、自分の席に座ったままこちらに体を向けて言い放つ渉。

野太い声を耳にした途端、さっきまで俺たちを微笑ましいものを見るような表情だったのが、目障りな存在を目の当たりにしたかのような表情に切り替わった。

 

「は?急に会話に割り込んで来ないでくんない?つか、私の視界に入ってくんな。マジウザイ」

 

「あぁ!?それはこっちの台詞だっつの!テメーみたいなビッチと同じ空気を吸ってるって思うと、吐き気がするぜ!」

 

「あっそ。ならどっか行けば?そのまま永久に帰ってこないでいいし」

 

「なんで俺が出ていかなきゃなんねーんだよ!てめぇが出てけ!!!」

 

エスカレートしていく無益な言い争い。そう、この二人頗る相性が悪い。

顔を合わせる度に互いを貶す言葉で会話のキャッチボールを始める。渉曰く、水木みたいな典型的なギャルは皆ビッチだとのこと。

俺から言わせて貰えば、水木はそんなテンプレなギャルじゃないと思うがな。

水木の方は見かけで判断する男は嫌いとのこと。後生理的に渉の事が嫌だとさ。

 

「まーた始まったよ。毎度のことだけど、良くやるねぇ」

 

「だねー。口ではあんなこと言ってる二人だけどさ、案外お似合いなんじゃない?」

 

「「誰がこんなやつと!!」」

 

「息ぴったりじゃねーか」

 

元と恵美の言葉に仲良く否定する二人。

 

「こんな男になら誰にでも媚を売ってそうな女なんて死んでも嫌だね!!」

 

「アンタみたいな知性も品も欠片もない男なんて願い下げ。大体、アンタだって女なら見境ないんじゃないの?」

 

「何言ってやがる。俺は女なら誰だって良いわけじゃねーよ」

 

「……どうだか」

 

疑惑の目を向ける水木。そうだな渉。お前は女なら誰でも良いわけじゃなくて

 

「かわいい女の子にしか興味ないからなっ!!」

 

だよな。一定の基準値を満たしてなきゃストライク範囲外だもんな。

他のクラスの一部の男子共は「勇者だ……」「男らしいぜ……」「後先考えない発言……渉らしいぜ」なんて(悪い意味で)尊敬の眼差しを向けていたが、ほぼ全ての女子からは侮蔑と軽蔑の視線を向けていた。

 

「あっそ。死ねば?」

 

「あんだと!?人が折角答えてやったってのによ!」

 

「いやー、誰も渉の回答なんて求めてなかったけどね」

 

「だよな。気が散るから、早く席にお戻り」

 

「お前らどっちの味方だよ!?」

 

少なくともお前の味方じゃないことだけはたし――――いや、味方でもいいか。

最初のうちは味方だと思わせておいて、信頼を築き上げておき、最後の最後で寝返る。

ジャンジャジャーァン。今明かされる衝撃の真実ゥ!!

 

「……蓮、今すっごいゲスいこと考えてるでしょ」

 

脳内で真ゲスごっこをしていると、恵美が呆れた様子でこちらに顔を向けていた。

なぜバレたし。

 

「んなことねーよ。で、写し終わったか?」

 

「終わったよ。それでね、ココのとこってどうしてこうなるのかなーって思って」

 

「あぁ、ここはだな――――――」

 

眼の前で繰り広げられている渉と水木の争いはいつものことなので、気にもとめず。疑問点の箇所を指差す恵美の講習へと戻ったのだった。

 

 




オリキャラが複数登場しましたが、別に記憶に残さないでも問題ないです。

原作との違いその2
Q.あれ?恵美と翼の出身地って……
A.君のような勘のいい読者は嫌いだよ

Q.あれ?恵美の年齢って……
A.この恵美は原作と違って1歳上ってことになってます。決して執筆中に高2が16歳だと思ったわけなんかじゃない。決して。

ミリマスのSSもっともっと増えろ。
そしたらこのSSも完結できるから。
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