オラリオに銃剣士がいるのは間違っているだろうか?   作:ゆきラテ

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五話

つい先程までバカ騒ぎしていた『ロキファミリア』の面々は呆然とした。ベートがアイズに助けられた冒険者を侮辱とも言える詰りをした時に白い人影が店から食い逃げしたと思ったらベートがトマトみたいになり、見知らぬ青年がベートに喧嘩を売ったのだ。

 

付け加えれば、『ロキファミリア』はオラリオに存在ファミリアの中で2大派閥と呼ばれる程のファミリアである。例え上級冒険者と言えども容易に喧嘩を売れない。しかし、喧嘩を売った青年を『ロキファミリア』の誰も知らない。

 

つまり、下級冒険者ということだ。Lv1の冒険者が最大派閥のLv5に宴の席で堂々と喧嘩を売ったのだ。

 

これには、『ロキファミリア』団長であるフィン・ディムナも驚いた。彼は『小人族(パルム)』でありながらLv6である第1級冒険者だ。彼の真骨頂はその頭脳にあるのだが、彼ですら状況理解に時間を要した。

 

酒が入っているということもあるのだが、それだけ無謀なことであった。

 

「えっと、君は?…これはどういうことかな?」

 

宴の中で酒が入っているとは言え、普通の理由で団員に喧嘩を売ったのならば許さない、という意思が伝わる声で問いた。

 

「んあ、俺はさっき店を出ていっちまったお前らに不当に貶され辱められた冒険者のファミリアメンバーだよ」

 

事情を聞いたフィンはこちらに分があると思い、まず謝罪をした。

 

「それは家の団員が悪かっ────」

 

だがそれは遮られた。他ならぬ青年に。

 

「いや、あんたが謝る必要は無い、ロキファミリア団長【勇者(ブレイバー)】。アンタは何にも謝らなければいけないことをした訳では無い。ミノタウロスのことも気にしなくていい」

 

「えっ?」

 

フィンも流石に驚いた。ベートに喧嘩を売ったのはミノタウロスの事案だと思っていたのに謝らなくていいどころか気にするなと言われたのだ。

 

「ベルがみっともなくミノタウロスに追いかけられたのも、喚きながら逃げたのも、壁に追い詰められて怯えていたのも、顔がトマトになったのも、助けられて例も言えなかったのも、逃げ出したのも本当のことだ。ベルのことだから、そこのトマト野郎、あー、【凶狼(ヴァナルガンド)】ベート・ローガにも怒ってはねぇだろうよ、何も言えない、自身に対して怒っているんだろうさ。だからこれは俺が仲間が家族が悪く言われて切れた俺が喧嘩を売っているだけだ」

 

青年はそこで区切ると、

 

「表出ろや、トマト野郎」

 

改めてベートに喧嘩を売った。

 

 

 

♠♠♠

 

 

俺とベートは店の表に出て対峙していた。

 

「止めなくていいんですか団長?」

「止めたいんだけどね…」

 

(いや、止めなくていいよ)

 

どうやら団長さんは止めたいらしい。だがこちらも引く気は無い。相手が格上だろうとそれは、仲間や家族が不当に貶されて怒らない理由にはなりなどしない。

 

「テメェのLvは幾つダァ?」

 

「1だが」

 

一様Lvを聞いてくる犬っころに返事を返すとその顔に嘲笑が見て取れた。

 

「ホントにLv1で5に喧嘩を売る雑魚がいたとは笑いものだぁ!ハンデとして俺は足技を使わねぇし、もしお前が1発でもかすらせることが出来たらお前の勝ちでいいぜ?」

 

随分舐めたことを提案してきているが好都合、酒飲んで酔っ払って油断しまくりのこいつに痛いの一発喰らわせる。

 

「お前の勝ち条件は?」

 

「お前の降参だけでいいぜ?」

 

さらに、こんなことを言ってきた。つまりは俺が気絶するか降参するまでは負けねぇわけだ。

 

「じゃ、いく、ぜ!」

 

俺はスタート宣言と共に全力の踏み込みで銃剣の刃で切りかかるが、やはりLv差によって軽々とよけられた。

 

「遅せぇッ!」

 

俺の背後に回った犬っころは頭に向けて拳を叩き込もうとしているのを見て俺は銃を自身の背後コート越しに発射した。俺のコートによって隠された銃身から放たれた弾丸は犬っころのジャケットの端を貫通して夜の街に消えていった。

 

「この野郎ォ!雑魚がァ!」

 

どうやら感で避けたらしいが、相当お怒りのようだ。気を抜かぬようにと思った瞬間には犬っころを見失った。

 

「こっちだ!」

 

背後に回った犬っころは腰の入ったストレートで振り向き際の俺の顔をぶん殴った。

 

「ブハッ!?」

 

レベル差がありすぎるためか簡単に殴り飛ばされる。何mか飛んだ後不用にも地面に転がったがすぐに立ち上がる。

 

「雑魚が調子に乗るからだ」

 

何か犬っころが言ってくるがなんにも入ってこない。考えるのはどうすればコイツに1発入れられるかだけ。俺は切った唇から流れる血を拭うと銃を構えて、最初と同じく踏み込んだ。

 

「何度も同じ手が通じるかよォ!」

 

犬っころは踏み込みと同時に俺の後方少し後に下がっていた。さっきの攻撃を警戒しているようだ。そしてそれが俺の狙い。俺は後方の犬っころに向けて2つの銃剣を左右から狙うように投げながら再度踏み込む。

 

「血迷ったか!」

 

犬っころは勝利を確信した笑で笑い背後を取って俺の頭に決定打を打ち込もうとしていた。トドメの一撃程油断しやすい。そして最大の反撃チャンス。俺は懐からひとつの銃を取り出す。もしものために隠してある銃。リボルバー式のその銃を自身の腹に向けて発射する。

 

「「ぐハァッ!?」」

 

見事弾丸は俺の腹をぶち抜いて犬っころの腕に当たった。流石に貫通はしなかったが。

 

「こ、これで俺のか、ちだ」

 

あまりの激痛に意識が朦朧とする。犬っころの痛みに対する声を聞いたのを確認して俺の意識は暗闇に沈んでいった。

 

 

 

 

♠♠♠ロキファミリアside♠♠♠

 

 

「そこまでだ!」

 

「糞がァァァ!!」

 

僕は二人の決闘を止めた。いや、審判として判断したと言ってもいい。今の勝負はベートの油断と何より相手の心の強さによって勝負がついた。彼が使っていた武器の名も構造も分からないがあれは弾を高速で打ち出す道具なのだろう。そしてそれを誰が自身の腹ごと撃ち抜き攻撃することが出来るだろうか。

 

ロキファミリア団長フィン・ディムナは敬意を表する。その心の強さに。

 

(近い未来が楽しみだ)

 

先ずは二人の治療だろう。ベートは腕を怪我したようだがリヴェリアとポーションで足りるだろうが青年は足りないだろう。

 

「誰か彼をディアンケヒトファミリアへ連れて行って来てはくれないか?」

 

ディアンケヒトファミリアはオラリオの薬剤系ファミリアの最上位のファミリアだ。そこの団長ならこの傷も直してくれるだろう。

 

「お金は僕が払おう」

 

僕に敬意を払わせたことへの驚嘆と未来への投資を込めて、金は僕が払おう。

 

「ハイ、はいはいはーい!私が行きたい!」

 

手を挙げたのは【大切断(アマゾン)】のティオナ・ヒュリテだ。しきりに行きたがっているので彼女に任せて問題は無いだろう。

 

「任せたよ、ティオナ」

 

「まっかせてよっ!」

 

元気いっぱいなのはいいのだが怪我人を運ぶのにそんなにはしゃいでて大丈夫か?と思ったが気にしないことにした。

 

(ホントに楽しみだ)

 

 

 

 

♠♠♠澄晴side♠♠♠

 

 

ぼんやりとした光が目に映る。いや、光というよりこれは目が覚めた時の感覚だな。焦点があって初めて見たものは…。

 

「……知らない天井だ」

 

テンプレだった。そんなことを思っていると気を失ったであろう前までのことを思い出した。

 

勝てた、確かに勝てた。でもそれは苦戦の後の勝利だ。それに相手は相当のハンデをしていた。ほとんど勝利とは言えぬものだ。

 

「強くなりたいな…」

 

1人つぶやいた。

 

「その前にしっかり療養して下さい」

 

否、1人ではなかった。店員姿の女性がベットの隣の椅子に腰掛けていた。銀色に輝く腰までのストレート、銀色の瞳。表情は固く、理性を感じさせる。

 

「えっと、あなたは?」

 

「名を聞く時は自分から名乗るのでは?」

 

確かに、ご最もな事だ。言わせてしまったことが恥ずかしい。

 

「俺は冒険者。ヘスティアファミリアの団員のサイオンジ澄晴だ。よろしく!」

 

「私はディアンケヒトファミリアの団長アミッド・テアサナーレです」

 

ッ!?超大物じゃねーか。ディアンケヒトと言うと、薬剤系のトップ派閥。そして彼女はそこの団員にして、2つな【戦場の聖女(デア・セイント)】。回復に優れたLv2の人だ。

 

ここまで来たら、もう理解出来た。俺は喧嘩して怪我してここに運ばれたのだ。そして、恐らく彼女が治療してくれたのだろう。弾丸が貫通したはずの片腹が全く痛くない。

 

「治療ありがとう、やってくれたのはアミッドさんだろ?…金はどれくらいだ、家は零細だからあんま払えねぇんだが」

 

彼女程の人に治療されたんだから、対価が必要だろう。

 

「必要ありません。ロキファミリアの【大切断】が貴方の治療費を既に払いました」

 

【大切断】と言うとあの時酒場にいたロキファミリアのアマゾネスの子だな。今度あったら礼をしなければ。

 

「じゃあ、俺はホームに帰るよ、ありがとう。それと笑ったほうが可愛いぞ?今でそんなに可愛いんだから、じゃあな」

 

俺はホームに向けて歩いていった。

 

 

 

 

 

「変わった人、でも可愛いだなんて。」///

 

澄晴が出ていった後、アミッドは1人頬を赤く染めて微笑していた。色んな人から綺麗と褒められたことがあるが、全く悪意なく下心なく褒められたのはいつぶりだろうか?

 

「…サイオンジ・澄晴」

 

そう呟く彼女の顔を月光が照らす。その様を澄晴が見たら、女神のようと、口にしただろう。

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