魔神王が断つ!   作:なと〜

9 / 10
遅くなりました!

鬼畜なイベントの数々を周回してたり、リアルが激務だったりと色々ありましたが、頑張って更新していきます。


魔弾と悪鬼

 超巨大な遊覧船『竜船』

 その大きさは魔神柱のいた世界の豪華客船にひけをとらないものであり、この国の技術力の高さが伺える。だが、その裏には上流階級と庶民の深い確執も存在する。

 

 

 竜船の甲板では上流階級の人間によってパーティが開かれている。贅沢なパーティもまた、この帝国の腐敗を顕著に表していると言えるだろう。

 

 そして、そのパーティ会場に二人、場違いな人間がいる。

 ナイトレイドの二人、タツミとブラートである。

 

「じゃ、俺は船内を見回っておく。タツミは護衛を頼んだぞ」

「おう!任せてくれ、兄貴!」

 

 インクルシオで透明化したブラートと正装に身を包むタツミは別行動をとる。

 

 

 

 

 _______________________________

 

 

 

 

 

 竜船内部・客室

 

 現在、甲板でパーティが開かれているため、ほとんどの客は甲板に出ている。

 そしてそのパーティでは、人々が異常な疲労感に襲われるという異常事態が発生している。

 その発生原因が客室の一室にある。

 

「もういいかな?」

「いや、念には念を入れて、もう少し笛を吹いておけ」

 

 帝具『軍楽夢想スクリーム』。笛の音色によって軍団の士気を上げるだけでなく、効果範囲内の兵士の能力向上もできる。また、反対に効果範囲の人間に様々な状態異常を付加することもできる。

 何度も聴くと耐性ができるし、精神が強力な者は耐える事ができるが、生半可な者は耳を塞いでもこの音色からは逃れられない。

 現在、ニャウはこの帝具にて船内にいる乗客と標的()の無力化ないし弱体化を図っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同船内部・廊下

 

 今、この場にまともに思考することが可能な者がいたなら、いくつかの事に驚くだろう。

 まず、ここにいる老人は船を包む異常に巻き込まれている様子が無いことだ。その足取りは軽く、とても疲弊している様には見えない。

 次に、この老人からは何も(・・)聞こえないことだ。足音や呼吸音はおろか、身に付けているはずの装飾品や服がこすれる音すらしない。

 最後に、この老人が背負う()である。それは本来、この様な場所にはあるはずがない。というか、持ち歩く物ですらない。

 

 異常な老人だが、周囲にそれを不審がる者はいない。

 

 そして老人はある客室で歩みを止め、背負った箱を中腰に構える。

 この箱、正確には棺桶(・・)の正式名称は超過剰武装多目的棺桶『ライヘンバッハ』。ある主人公(探偵)とある黒幕(犯罪教授)の決闘が起こった地の名を冠するものであり、ある英霊の主武装である。

 

 そしてこの老人はその英霊との元共犯者でもある。

 

 

 

 瞬間、棺桶の下部から大口径の銃口が出現する。

 

 そして銃弾の嵐が巻き起こる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 銃撃が終わる。それでも老人は一切言葉を発さないが、それは何も元来無口というわけではない。

 ただ、イラついているだけである。そこにあるべき目標(ターゲット)の死体が無ければ、奇襲が失敗した事は明白であり……

 

 

「危ないな〜」

「まさかこんなにも大胆に攻めてくるとはな…」

 

 自らの命題に辿り着くのがほんの少し(・・・・・)とはいえ、遅れることを意味するのだから。

 

「完全に音を消し、視界も通らなかったはずだ。なぜわかった?」

「あんなに殺気ダダ漏れだったら誰だって気づくさ」

「全くだ。特に戦場に身を置く(我々のような)人間相手にはな」

 

 三獣士の二人は扉とは反対の壁に穴を開け、そこから飛び降りて銃撃を回避していた。普通なら運河に落ちるだけだが、この二人の身体能力ならば船の壁にぶら下がることなど容易いことだった。

 

「…そうか。参考にはしよう。では…」

 

 

 

 

 

 

 

 死ね」

 

 

 

 再び巻き起こる銃弾の嵐。だが、眼前にいるのは歴戦の猛者。

 素直に当たるどころか、棺桶の下に潜り込み、底を蹴ることで銃口を逸らしていた。

 

 

 

「リヴァ、こいつの相手は僕でいい?」

「ああ、私は甲板にいるダイダラの援護に向かおう。油断するなよ」

「オッケー」

 

 

 この場から姿を消したリヴァ。対して残ったのはニャウ。

 

「…二人でかかってくれば、まだ勝機があったものを」

「冗談。僕たちの本来の目的はお前じゃないんだ」

「そうか、まぁいい」

 

 老人は棺桶の持ち手を強く握り、ニャウは武器を構える。

 

「我が応報と復讐のために。このバアルによって死ぬがいい!!」

「うわー…かなりイカレてるね、君」

 

 復讐の業火が幻視されそうな憤怒の眼を持つ者と無邪気の中に残虐な嗜好を潜ませた少年。

 竜船でのもう一つの戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「破壊だ!」

 

 棺桶を変形させ、機関銃を撃ちまくる。

 

「甘い!」

 

 だが、ニャウの圧倒的な速度によって、弾丸は当たらない。

 

 

 三獣士の中でも、スピードに優れるニャウ。帝具が支援型でありながら、化け物揃いのエスデス軍の精鋭中の精鋭になったのは、この圧倒的なスピード故だろう。

 正史にてタツミに「アカメの方がはやい」と言われていたが、スピードが命ともいえる暗殺者であるアカメと、数多の戦場を生き抜く戦士であるニャウとでは、さすがにアカメの方に軍配があがるだろう。むしろ、ナイトレイド最速といっても過言ではないアカメが比較対象に挙がるのだから、そのスピードは超人的なものであるとわかる。さらにいえば、その時は手負いの状態である。

 

 

 そして、バアルの持つ武装はその多機能性ゆえに大型であり、細かな攻撃は難しい。そも、機関銃という命中精度ではなく、弾幕を張ることを主とする武器では、さほど離れていない距離を高速移動するニャウを打ち抜くのは困難を極める。

 

 

「そこっ!」

「ぬうう!」

 

 ニャウはバアルの僅かな隙をついて、攻撃を仕掛ける。バアルは棺桶を盾に攻撃を受けとめる。

 

 

 

「……なるほど。ハルファスが油断はするな、といっていた意味がわかった。確かに出し惜しみは不要だ」

 

 ニャウに聞こえないように小さな声で呟くバアル。

 そして、棺桶に魔力を送り込む。

 

魔弾(・・)装填。いけ」

 

 

 次の瞬間、棺桶から飛来したものは、銃弾ではなく、ミサイル(・・・・)だった。

 そして、それらはまるで生き物のように、障害物を避け、あらゆる方向から目標(ニャウ)に向かっていった。

 

「ちょ!嘘でしょ!?」

 

 この世界において、ミサイルさらには誘導兵器などはオーパーツと同等である。

 ある例外を除き、最新兵器が銃や大砲といえば、この世界での誘導兵器の異質さがわかるだろう。

 

 普通ならば誘導兵器が命中し、物言わぬ屍と化すだろう。

 

 

 

 

 

 

 だが、彼は生半可な戦士ではない。

 初見での戦闘など日常茶飯事。さらには、身内(エスデスやリヴァ)の帝具はまさに誘導兵器そのものである。故に…

 

「よっと!」

 

 避けるだけなら容易く、そして対処法を編み出すのもそう時間はかからない。

 事実、ミサイルはニャウの変則的な動きと投げつけられた瓦礫によって対処されている。

 

 

「変わった武器持ってるね。帝具かな?」

「………答える義理はない。さっさと死ね。それが我が望み」

「………つれないねー」

 

 そう言いつつも、ニャウは脳内で思考していた。なぜかわからないが目の前の男、バアルには余裕がない。正確にいえば『これから大事な用があるのに、貴様なんぞに構っていられるか!』的な焦燥が伝わってくる。罠ではないかと勘ぐるも、彼の瞳に宿る憎悪は本物だ。

 そしてニャウにも言うほど余裕は無い。甲板で戦っているリヴァとダイダラの様子が気になってしょうがない。水の多い船の甲板ではリヴァが圧倒的に有利だとしても、万が一という事もある。できればいち早く、援護に駆けつけたい。しかし、目の前の敵を見逃すわけにもいかない。

 

(奥の手使えば、終わるんだけどな〜)

 

 しかし、帝具の奥の手をここで切っていいものか。決断を迫られる中、バアルが口を開く。

 

 

 

「早く、早く死ね!死ね死ね死ね死ね‼︎我が憎悪の対象に会うまでには膨大な時間が必要やもしれん!貴様()の相手をしている時間さえ惜しい‼︎」

「………」

 

 瞬間、ニャウの表情が消える。逆に瞳には憤怒の火がつく。

 バアルは今、『貴様ら』と言った。十中八九それは三獣士のことだろう。

 だがニャウは、『貴様ら』の中にエスデス将軍も入っているのでは?、と感じた。

 

 おそらくそれは違うのだろう。だが、絶対とは言えない。そんなあやふや(・・・・)な動機でも、ニャウに一つの決断をさせるには十分だった。

 

 

 

「オッケー。じゃあ、死ねよ‼︎」

 

 その憤怒を隠そうともせず、ニャウは思いっきり、後ろに(・・・)跳ぶ。

 

 ニャウは怒っていたが、冷静さを失ってはいなかった。

 自らの帝具『軍楽夢想スクリーム』の奥の手『鬼人招来』。本来、自軍にかける強化の演奏を自らにかけることで、まさに鬼人の如き力を得る奥の手。

 だが、演奏という準備時間が必要な為、すぐには発動できない。

 しかし、その弱点を鍛錬と持ち前のスピードで最小に抑え、僅か数秒で奥の手発動まで至らしめるのが三獣士『ニャウ』である。

 

 

 

 

 ほんの僅かな時間に、一切のミスなく演奏を終え、次は逆に思い切り飛びかかる。

 

 当然、バアルも黙ってはいない。ニャウが後ろに跳んだ瞬間に銃から数多の弾丸とミサイルを発射した。

 

 しかし、ニャウは身体を捻るなどの最低限の動きと強靭な拳で弾を躱し、弾く。

 

(獲った!)

 

 そう確信したニャウ。だが…

 

 

 

「フン‼︎」

「なっ⁉︎」

 

 こともあろうに、バアルは棺桶を離し、付いていた鎖を持って、思い切り殴って(・・・)きた。

  そして、元から爆弾でも付いていたのか、ニャウにヒットした瞬間、大爆発を起こす。

 

 

 

「アアアアアぁぁぁ‼︎」

 

 船室をいくつもぶち破り、何部屋目かの壁で止まる。

 現在、ニャウは『鬼人招来』により、元の細身の少年とは思えないほど、筋肉質な体格に豹変している。

 もし、元のまま突っ込めば間違いなく死んでいただろう。

 

「クソっ!何なんだあの武器!銃なのに殴ってくるなんて…」

 

 余りの異常に思わず悪態をつく。が……

 

 

 

 

 

 

 既に場は詰み(チェック)に入った。

 

「ガッ⁉︎」

 

 飛来する数多の魔弾。最初は頭部に、次は心臓に。魔弾の効果により、機関銃にはあり得ない精度で命中させてくる。初弾で命を奪い、念には念をと言わぬばかりに、身体の各所に弾丸やミサイルが着弾する。

 そして、身体の原型が崩れ始めた頃にようやく、弾丸が止む。

 

 

 物言わぬ肉塊と化したニャウを一瞥すると、踵を返してバアルは歩を進める。

 

「くだらん…」

 

 その時の彼の瞳に宿っていたモノは憎悪ではなく、無。無感情、無機質…

 まるで機械のように淡々と作業をこなす。

 ある存在(・・・・)が関わらなければ、の話だが

 

 

 

 

 

 ______________________________

 

 

 

 

 

 

 竜船・甲板

 

「うおおおお!」

「凌いだのか⁉︎あの攻撃を!」

 

 ブラートとリヴァとの戦いは苛烈を極めた。リヴァの奥義が炸裂したが、ブラートの気迫が勝り、空中からリヴァを葬らんと槍を振る。

 だが、リヴァも歴戦の戦士。いかにブラートの攻撃が超人的でもリヴァもまた超人。躱しきることはできずとも、致命傷は避けられる。

 

 そう、ブラートとリヴァの一対一(サシ)ならばそうなるだろう。

 

 

 

「うおおお‼︎」

「なにい⁉︎」

 

 ここにいるのはブラートとタツミ(ナイトレイド)リヴァ(三獣士)。そして名誉や誇りなど無い、命をかけた闘争。

 ならばタツミが、リヴァとブラートの勝負に参戦するのは何もおかしくはない。そして当然、闘争の結果も大きく違う。

 

「これで終わりだぁぁ‼︎」

「ブラートォォォ‼︎」

 

 タツミの奇襲によってブラートから一瞬、気がそれた。

 

 

 僅か一瞬。されど一瞬。こと強この戦いにおいてこの一瞬は文字どうり致命的だった。

 

 

 

 

 

「…俺の勝ちだ」

「強くなったな、ブラート…」

 

 インクルシオの副武装『ノインテーター』での一撃。それはリヴァを右袈裟から両断した。

 とめどなくあふれる血。既に右腕は地面に落ちている。

 

 リヴァにはまだ逆転の手段があった(・・・)

 自身に毒を注入し、帝具の奥の手『血刀殺』を用いて、相手を毒殺する最終手段。

 しかし、毒を自身に注入することはおろか、『血刀殺』の間合いまで踏み込むことすら不可能。

 ならば、自身がやるべきことは……

 

 

 地面に仰向けに倒れたリヴァ。そして最期の言葉を吐き出す。

 

「ブラート…そして少年。この船には奴らが…親衛隊が乗り込んでいる…気を付けろ」

「……なぜ俺達にそれを教える」

「ふっ…簡単なことだ。奴ら(親衛隊)はエスデス様の敵だ。敵の敵は味方…とは言えないが、奴らとお前たちを天秤にかけたまでのこと…」

 

 その言葉に偽りはない。リヴァは親衛隊とナイトレイドを『エスデスの敵』として天秤にかけ、危険な方を『敵』として。もう一方を『(敵の敵は)味方』と判断したにすぎない。

 ただ、そこに過去の戦友だから、という動機があったのかは定かではない。

 

「あいつらは危険だ。私がここで絶えることが無念で仕方がない。ああ…今だけ、お前らが憎いぞ…ブラート、少年」

「恨まれても仕方がねぇよ……それが俺達の使命だ。」

「ククク…そうか。ならば、精々あがけよ………」

 

 リヴァは全てを話し終えたといわんばかりに、目を閉じる。その顔はよく彼を知るブラートには、安らかなものに思えた。

 

 

 

 

 

 ____________

 

 

「タツミ、気をつけろよ。まだ戦いは終わってねぇ」

「ああ、わかってるよ兄貴」

 

 リヴァに勝利したブラートとタツミ。だが、リヴァの最期の言葉によって、勝利の余韻に浸ることができなかった。

 

 

 

 ブラートもタツミも、それなりの疲労があり、ブラートに至ってはインクルシオが強制解除されてしまうほどである。

 そして未だ姿を見せない敵がこれを見逃すとは到底思えない。

 

 

 そう、彼はこれを見逃さない。

 

 

「!、兄貴、後ろだ!」

「!?、いや!前からもだ!!」

「!?」

 

 少々、不規則な弾道を描いて迫る数発の弾丸。それが背中合わせになっているブラートとタツミ、それぞれ(・・・・)の正面から迫る。

 

 当然、二人とも回避する。なぜか(・・・)、弾速はそれほど速くは無い。挟み撃ちするように弾が迫るのならば、迎撃するよりも避けた方が安全だからだ。

 

 

 

『狩人』はそれをふまえて、()を動かす。

 弾は避けた二人を追うように軌道を変える。

 

 

 驚愕する二人。だが、これまで不可思議な現象を体験してきた二人は、驚愕するだけだった。

 

 ブラートは回避は無駄と判断してインクルシオの剣で迎撃するが、タツミはもう一度避けてから、迎撃に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全ては計算通り。闘争という数多の乱数が入り乱れる場にて、この狩人は獲物を捉えた。捉えられる様に計算して、誘導した。

 

 

 ズガン

 

 

「ぐぁぁ!!?」

「あ、兄貴!?」

 

 突如、床から現れた亜音速の魔弾は、ブラートの足から膝までを一直線に貫通した。更に大口径の弾な為、ブラートの脚は見るも無残なものとなっていた。

 流石のブラートも苦悶の声を漏らして跪く。タツミはブラートのそばに駆け寄る。

 

 ブラートが狙われた理由は至極単純。魔弾の迎撃に立ち止まってしまった事。そしてそれが、タツミよりも早かったからに他ならない。

 なまじ、鍛え抜かれた身体能力が仇になったのだ。

 

「タツミ!来るな!敵はそこの影だ!」

 

 だが、ブラートもただ、やられたわけではない。自身が傷つく前に僅かに聞こえた銃声。ソレをしっかりと感知していた。

 

「--全く、この国の奴らはとんでもないな」

 

 

 呆れ半分、苛立ち半分といった口調で姿を見せたバアル。既に銃を構え、狙いを定めている。

 タツミも剣を構えるが、リーチが違いすぎる。おそらく、タツミが動くと同時に先程の摩訶不思議な弾丸が迫るだろう。

 

「降伏しろ。貴様らに勝ち目はない。既に三獣士も全員、死んだ」

「…そうか、やはりな」

 

 ブラートは目の前の男の脅威を自分やリヴァと同等かそれ以上と仮定した。

 ならば、タツミが勝てる可能性はゼロに等しい。

 

(タツミ、奴は強い。おそらく今の俺やお前では勝てない)

(兄貴…どうするんだよ)

(-------------)

 

 

 

 

 

 

 

 

(何を話しているのか、無駄なことを)

 

 バアルはブラートとタツミが何かを話していることはわかったが、あまりにも小さい声なので、聴くことはできなかった。

 本気で聴こうとすれば、何かわかるのだろうが、その必要はないと思っていた。

 

 

 

 あの時(・・・)も、我々は何もしなかった。敵は少数、こちらは膨大。ならば力押しこそ最適解であったと、我々の誰もが考えた。

 敵の数が増えても、我々はそれを上回る数を保有するのだ。敵の要を、あの存在(マスター)を潰せばよいと、統括局は言った。

 

 だが、殺せなかった。数の暴力では、三千年の熱量では、

 

 我々(・・)では殺せなかった。

 

 

 だから、()になった。そして挑んだ。

 数でも、熱量でもない。緻密な計算と作戦、そして大胆な発想で挑んだ。

 そして成し遂げた……はずだった。

 フェニクス、ラウム(あとゼパなんとか)から、奴が生きていると言われた。

 何故、という疑問はある。おそらく、共犯者が何かしくじったのか。それとも、私の知らない何かがあったのか。

 

 だが、それがどうした。

 

 死んでいないのならば、また殺しに行くまで。奴の存在を私は許容しない。肯定しない。できるはずもない。

 必ず殺しに行く。

 

 だが、この世界を無視することはできない。()ならいざ知らず、我々(・・)となった今、コレを野放しになどできなかった。

 だから、早々に終わらせる。

 腐った者も、馬鹿な者も、邪魔な者も、一切合切終わらせる。

 効率よく、躊躇無く、慈悲無く。

 一秒でも早く、あの存在をコロスために。

 

 このような存在(ナイトレイド)に構っている時間すら惜しい。

 だが、先のような失敗はしない。敵の情報を収集し、理解し、計算する。

 そして、敵の戦力を削ぎ落とした上で、正面からねじ伏せる。

 それが、最も効率的だと確信している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄貴!無茶だよ!やめよう!」

「ふざけんじゃねえ‼ここでこのままやられてたまるか!」

 

 突如、言い争いを始めた二人。そして、そのままブラートがタツミを殴り飛ばした(・・・・・・)

 

「待たせたな。さあ、来いよ!」

「…いいのかね。今の貴様では私に勝てまい」

「ああ…そうかもな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺なら(・・・)な」

 

「インクルシオォォォ!!!」

 

「何!?」

 

 

 よく観察すれば、ブラートの手に帝具『インクルシオ』は無い。先程殴り飛ばしたタツミが鍵となる剣を持っている。

 

「くっ、魔弾発射!」

 

 銃から最高速の魔弾を発射する。だが…

 

「ハアァ!!」

 

 インクルシオの防御力に任せたパンチによって、魔弾は迎撃される。

 

 

「兄貴!行くぜ!」

「おう!大丈夫だ、頼んだぜ!」

 

 インクルシオを纏ったタツミがバアルに突進する。それをバアルは棺桶による打撃で迎撃を試みる。

 

「でりゃああ‼︎」

「なに!?」

 

 が、棺桶の間合いギリギリでタツミは急ブレーキをかける。

 思い切り甲板を蹴り飛ばして急ブレーキをかけたことで、破壊された木片や粉塵が舞う。

 

 

 バアルの誘導魔弾は、魔弾による自動追尾ではなく、バアル本人の目視による任意誘導となっている。『魔弾の射手』という幻霊が存在せず、さらに急ぎの作成と相成ったため、超高性能誘導にはバアル本人の感知能力が必要となったのだ。

 しかし、おかげでブラートの真下の甲板まで弾丸を誘導して狙撃する、という離れ業を実現できたのだ。

 

 そして、今、もうもうと舞う粉塵によってバアルの視界は一時的に潰された。それは魔弾の使用不可も意味する。

 

 

「おのれ!こんなもので私が止まるものか!」

 

 すぐさま、感知能力を視覚に頼らないものに切り替える。

 が、遅かった。

 

「「うおおお!」」

 

 そこには船から飛び降りるタツミと、タツミに抱えられたブラートがいた。インクルシオによって身体能力が引き上げられたタツミは、船の側面でスピードを殺しながら着水する。

 

 

 

 

 

 

 

「逃げられたか……」

 

 その声には不思議と怒りの感情はない。だが、無感情というわけでもない。相当するのは危機感、或いは警戒か。

 

「まさか、私が敗ける(・・・)とはな。やはり、この存在(・・・・)はわからんものだ」

 

 一言二言、呟くとバアルは踵を返す。そろそろニャウのスクリームの効果が切れ、乗客が目を覚ますころだ。

 

 念のために三獣士の死体を確認する。すると、リヴァの手の指にあるはずの帝具『水龍憑依ブラックマリン』が無くなっていた。

 

あの男(ブラート)か…さすがに抜け目無いな。まぁ、誤差の範囲内だな」

 

 ダイダラの近くに落ちていた帝具『二挺大斧ベルヴァーク』を担ぎながら、静かにバアルは呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ________________________

 

 

 〈マテリアル〉

 平凡への復讐者(アヴェンジャー) バアル

 

 カルデアのマスター・藤丸立香に対して並々ならぬ憎悪を持っている。詳しくは新宿をクリアすべし。FGO世界に戻りたい派筆頭だが、この国の事も放っておけないので、任務は最効率になるように終わらせる。

 

 性格は、『アマデウスがいない時のサリエリ』に近い。ただし、こちらは他の事に関しては無感情である。

 

 

 《武装》

 超過剰武装多目的棺桶『ライヘンバッハ』

 モリアーティのあの棺桶。ただし、魔弾の射手を取り込めて無いので、魔弾はバアルの視覚や感知によるマニュアル(?)ホーミング。

 弾は魔力で作られるため、膨大な魔力を持つ魔神柱専用の武装。

 まだまだ改良の余地があり、更なる強化が期待されている。

 




書きたい事は山ほどあるのに、時間が取れない!
周回したいのに林檎がないのと同じ気持ちですね。

失踪する気は無いので、どうか気長にお待ち下さい。
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