東北きりたんが、結月ゆかりを大好きな短編小説集   作:甘味処

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今までと違って、東北きりたん視点です。


⑩きりたんと、熟睡中なゆかりさん

  私、東北きりたんが今より更に幼い頃、

 両足で歩き初めたばかりだった私にとって、

  世界は広く、毎日新しい発見があった。

 

 

 

 

  小さな私の目が届く小さな世界ですら、

    目が回る程の広さなのだから。

 

私の手が届かない外にある世界の広さなんて、

  限界等無いのだと勝手に信仰していた。

 

 

 

 

 

 一般人との違いなんて把握していなかったが

  当時無意識に魔法を使っていた私は、

  どこまでも《視野》を広げてしまった

 

 

    毎日が、ドキドキの連続で

     未知を探し続ける日々

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつからだろう。新しい何かは無くなり、

    この世界は思ったより小さく、

    単調な繰り返しで成り立つ、

存外つまらないものだと感じてしまったのは。

 

 

少なくとも私の視界から色が消え魔法が使えな

くなった境界の日は確実にあったはずなのに。

 

 

    高次元な視点は価値観を変え、

   私はハリボテな世界を嫌悪した。

 

 

    今では未知を捜し求めたころの、

      幼い記憶すら消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   世界は、私は、なんてつまらない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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我が家ながら、東北家の住人は皆変人、下手をすれば狂人の集まりだ。

 

2人の姉はそれぞれ、魔法と霊能力と言う異能の力を持ち、それ故かどうか知れないが頭のネジが2、3本飛んだ性格だった。

 

 

 

そして私もまた、一般的とは言えない存在だった。異能の力こそ持たないものの、現実を物語のようにしか認識できない後天的な精神疾患を患っていたのだ。

 

 

 

心的要因により自己の発露が不十分になり、一時的にしろ一生にしろ、異能の力が使えなくなる。

 

過去を紐解くとうちの家系では、私の現状といくつか似た事象が存在した。

近しいだれかが亡くなったり、SAN値が削れるようなものを見たり、人の身に合わない力を行使したりと、諸々の理由で精神に傷を負ってしまい、今の私と同じ素質はあれど力が使えない状態に陥っていた。

 

...物心着く前から魔法が使えない私には、そもそも精神に負荷を負った記憶すら、まったく身に覚えが無いのだけど。

 

 

 

 

 

 

 

特殊な力も生きている実感も希薄な私。ただ人生に悲観はしたことなどなかった。

 

家族が、私が、創作物の登場人物のようにしか思えなかったけれど、物語の中の彼女達を私は確かに気に入っていたからだ。

破天荒な所はあれど、持って生まれた力を善行に使い、家族を愛し、人を救い、毎日の生活を楽しんでいる。これでどうやって嫌いになれるのだろうか。

 

多少ピントがズレているのだろうが私は不安も不満も抱かず、このまま生き続けるのだと何となく信じていた。そんな日々の途中、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結月ゆかりさんと出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うちに遊びに来たずん姉様の友人。とても楽しそうにゲームをする人だった。ゲームをしていると、瞳の奥がキラキラと輝くのだ。

 

 

最初はただ一緒に遊びたいと感じ、楽しくて楽しくて没頭していると、独りで世界を傍観していた《私》の隣に、いつのまにかゆかりさんはいた。

 

恋をすると世界が変わると良く言うが、

それからも、ゆかりさんと触れ合う内に世界は色づき焦点が合い、いとも簡単に私は現実を現実として認識できてしまった。魔法の発露もそれが原因だったのだろう。

 

どうやら特殊な事情を解決するために、必ずしも特殊な何かは必要無いらしい。

 

 

私は私を過大評価して、同時に過小評価していたのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...さて、そんな経緯を通して私が、ゆかりさんに感謝とか親愛とか執着とか恋心だかを持っていると言う《前置き》が長くなってしまったが、

 

 

 

 

 

 

 

今の状況を説明しよう。

 

 

 

 

 

 

 

ゆかりさんが私の部屋でベットに横になっている。今日は疲労が溜まっていたらしく、勉強と食事とお風呂を終えたら、私に一言断ってお気に入りらしいクッションを頭にあてがい呼吸も穏やかに眠ってしまったのだ。

 

そしてこの部屋は他に人はいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、チャンスタイムの襲来なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...ゆかりさん。そんな無防備に寝てると、私にエロい事されちゃいますよ?むしろエロい事されたいんですね。分かりました。まかせてください!!」

 

 

いくら恋心に急かされても、私は花も恥らう女子小学生だ。これから行われるエロ...いや、《にゃんにゃんな行為》への合意の確認は忘れない。

 

とは言え、耳に届きつつも疲れているだろうゆかりさんの眠りを妨げ無い音量で話しかけたため、まるで呪いのような呟きになってしまったが...不可抗力だ。問題ない。

 

 

 

 

 

 

横たわってすやすやと眠るゆかりさん眺める。口元が微かに開き、静かに寝息を立てる様子はどこまでも無垢だった。

 

そしてその隣に立つ、少し息を荒らげ、わきわきと手を動かす私。

きっと客観的に見たら静と動、対極な感じでまるで一枚の絵画のような風景に違いない。私もゆかりさんも美少女の範疇に入るだろうし。

 

 

 

 

 

「...いや、正気に戻れ私。」

幸か不幸か、客観的に想像したおかげでルパンダイブしそうな私を止めることができた。

 

 

 

 

 

私の中の良心代表、天使(仮)な私が言う。

 

にゃんにゃんは、あくまでゆかりさんの意思でもってにゃんにゃんすべきであって、それが無いにゃんにゃんなど、真のにゃんにゃんでないはずだ。

 

と言うか、後でバレて怒られるのはまだしも、嫌われるのは絶対にいやだ。

 

...だから、怒られない範囲で楽しもう。

 

 

 

 

脳会議、全会一致。

天使(仮)と悪魔(仮)の硬い握手が交わされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと、いつも抱きしめてくれるし、手とか腕とかなら触っても大丈夫。...大丈夫なはず。」

怒られずにこの状況を楽しむため、過去の事例を元に完璧な理論を展開。いつもと違いやり過ぎると止めてくれるゆかりさんが眠っているため、手探り感は否めないが。

 

少しだけ欲張って、ただ触れるだけでなく手と手で、そっと恋人繋ぎをする。

 

 

 

 

 

 

 

「...」

私の頬が、ピクピクと動く。声にならないとはこのことか。

ゆかりさんの手の冷たさ、指の間が締め付けられる感じ、安心しきった寝顔、全部が嬉しくて、楽しくて、たまらない。

さらには独占欲やら、この状況にいない全世界中の人たちに対する優越感やらが、私の頬をにんまりとさせる。

 

 

 

 

 

言葉にしづらい様々な感情と感覚に頭が処理しきれずフリーズしかかっていると、ゆかりさんの口が小さく開き...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《きりちゃん》と私の名前を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――!?」

急に呼ばれて背筋が瞬間的に伸びる。瞬間脳裏に流れたのはゆかりさんへの言い訳。絡み合った手は我関せずと、反射すらしないでくっついたままだったが。

 

 

しかし、ゆかりさんの目は閉じたままだった。寝言で偶然私を呼んだ。...いや。無意識に今、触れ合っているのが私だと気づいてくれたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...私の感触と体温を、覚えてくれてるんですか?」

 

自分のセリフにぞくぞくと産毛がたつような喜悦が体中をぐるぐると回る。そんな自身の反応で、私は本当にゆかりさんのことが大好きなのだと実感し、再認識してしまう。

 

 

...同時にゆかりさんからの私への気持ちは、姉妹愛の域を出ていないだろう、ということに気持ちが少し落ち込む。

 

いつかは私からの大好きな気持ちと同じくらいに、私を想ってくれるのだろうか。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...もしかして、寒いんですか?」

 

ゆかりさんの手とにぎにぎすること数分、いや10分は経っていた。今ではゆかりさんからも握る力を感じる手に、そんなことを考える。

体温が低めのゆかりさん、もちろん暖房もつけ毛布もかぶっているが最近は特に寒く、心配してしまう。

 

 

無論、普段から暖房の温度をもっと上げれば良いのだろうが...

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆかりさんにくっついて、暑苦しくなんて感じて欲しくないですし...」

 

毎日、ゆかりさんが来るまでの暖房の調節は私を悩ませる。私が抱きついた上で快適に感じる程度に抑えなければならないからだ。

 

できることなら冷房をガンガンにかけてふるふると震えるゆかりさんを、布団に引っ張り込みギュウギュウ抱きしめて暖め合いたいのだけど...それは何とか自重している。

 

まあそんな訳で、私が隣にいない今のゆかりさんは、もしかしたら寒さを感じているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その責任は、取らねばならないわけで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お邪魔します」

 

ゆかりさんを暖めるために、電気を消し布団にもぐりこみ、片手でゆかりさんに抱きつく。恋人つなぎをしているほうの手はくっついて離れなかったし離せなかったし離したくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ...」

普段は眠る寸前に朦朧としながら抱きついているので、しっかりした意識で正面から抱きつくのは初めてだったことに気付く。

 

肌に触れる服は色違いのお揃いな寝巻きで、

ほのかに感じる香りは同じ石鹸で、

トクトクと鼓動する心音さえお揃いだった。

もっとも、ゆかりさんの心音は私と違ってゆっくりと控えめな音だったが。

 

視界が、触感が、嗅覚が、そして鼓膜さえも、ゆかりさんがいっぱいで、ゆかりさんに支配されて、たまらない充足感を感じる。

 

 

いつもと違って既に眠っているゆかりさんは仰向けのまま、こちらを向いて抱きしめてくれなかったが、意識が無くとも明日の朝までには抱きしめてくれるという妙な確信があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやすみなさい...ゆかりさん。」

 

心臓が早い鼓動を打っても、人は安心できるものらしい。そんな新しい発見をしつつ、私の意識は、ゆっくりと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

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