「ゆかりさん。実はまだ誕生日のサプライズがあるんです。ちょっと来てください。」
今日は私の誕生日...だったらしい。夕飯の後にケーキを出して貰って気づいた。
そしてきりちゃんからのプレゼントは手袋で、あまり身につけるものに無頓着な私だが、もこもこな素材が気持ち良くて暖かくて、今日以降使い続けることを確信するほど気に入ってしまった。
きりちゃんに感謝の言葉を伝えると、とても嬉しそうに微笑んでくれた。
ついでに、きりちゃん自身も色違いの手袋を買っているらしく、ずん子さんの提案でお揃いの手袋をしたきりちゃんとの写真を撮ってもらうことに。...少々恥ずかしいポーズも要望されたが、せっかくの誕生日だからと言われ受け入れてしまったりした。
そんな感じでお祝いしてくれた後の、きりちゃんの発言。
了承したら手を引かれ、何故か何時ものように部屋に連れられ、膝に座られ、ゲームをする体勢になった。...何だろう?
「ふっふっふ...いくら勘が鋭いゆかりさんでも、どういうことか分からないようですね。」
ふふんっとドヤ顔するきりちゃん。膝にのって背中をあずけてくる関係で、斜め後ろに見上げる形で覗き込んでくるが...首は痛くないのだろうか?両手で頭を持って優しく前を向かせる。
「ん。...実はこのゲーム、私が初めて創造魔法で作りだしたものなんです!!ゆかりさんへの誕生日プレゼントパート2です!さあ、一緒にやりましょう!!」
私に頭を操作されても特に気にせず説明するきりちゃん。
魔法でゲームを作成。確かにそれはすごい...けど、何か魔法少女の魔法っぽくない上に、初めて作成するには難易度が高いような。
「うちの魔法は、理論とか術式とか一応ありますけど基本的には《想いを具現化》する系の魔法なので、いつもやってるゲームは具現化しやすい?らしいです。」
なるほど。
それでどんなゲームなのか聞こうと口を開いたが...画面を見て口が閉じる。
「ふっふっふ...ゲーム内容は私、東北きりたんが主人公の恋愛シュミレーションゲーム!!むろん、ゆかりさんルートのみ攻略可能です!!!!」
画面にオープニングが流れる。軽快な音楽と共に、二次元にデフォルメされた私が様々なシーン集で紹介されていた。
「あー!何で電源切っちゃうんですか!?」
無言で電源を切ったら不満気に怒られた。解せぬ。
「むふふ、さあ改めてやりましょう!」
きりちゃんの説得を受けた私。いまいち納得仕切れていないが、押し切られて結果的にゲームをすることになった。甘いのかも知れないが...私の誕生日にと、用意してくれたこの娘の気持ちを考えると断われなかった。
「ゆかりさんへの溢れる想いを元にしたゲームなのですが、ゲームの詳細は作った私も不明です...とりあえず、ゆかりさんに会って好感度を上げましょう。ゆかりさんならゲーム屋さんとか、ゲームセンターとかに...ほらいた!」
MAP上の選択肢、的確に私の居場所を捕捉するきりちゃん。...私はきりちゃんにどういう目で見られているのだろうか。気持ち不安になった。
「あれ?今度はゆかりさんがいませんね。
ん?”残り一個の新作ゲーム”?この選択肢は...買っときましょう。そしてゆかりさんに見せれば...よしっ!!」
小学五年生に新作ゲームをチラつかされ、家までお持ち帰りされる私。私はきりちゃんにどういう目で(ry
「ふふっ私達、ゲームの中でも一緒にゲームしてますよ。」
目にキラキラとしたエフェクトをつけてコントローラを持つゲーム内の私は、
お菓子を近くに配置して、現実でも背中をあずけているクッションを使って凄いリラックスしていた。
ああ、こんなに簡単に誘い込まれちゃって...何だか、かわいそうな人を見ているようでホロリとしてしまう。
「ふむふむ。どうやらミニゲームで勝てば好感度がアップするみたいですね...それなら容赦しませんよ!」
ゲームの中でゲームをするのはなかなかシュールかと思っていたが、ミニゲームとしてプレイヤー自身が操作できるようだった。
そして、きりちゃんの言う通り、その後のゲーム内容は容赦が無かった。
......敵。つまりはゲームの中の私が。
「そ、そんな25連射!?」
ばよえーんな某落ち物ゲームでは、ジャブのような3~5連射をされ、対処しているうちにいつの間にか恐ろしい連射を積み重ねられ、
「問題文一文字で分かる訳ないじゃないですか!!...もしかして、クイズの問題と解答、全部覚えてるんですか!?」
クイズゲームでは問題文が1文字出た時点で即答され、
「ちょっと待って!?それテニスじゃなくてテニヌの技じゃないですか!?」
テニスゲームでは、裏コマンドでもあるのか、某王子様風の必殺技にぼこぼこにされ、最後は吹っ飛ばされてKO負け。
「ゆかりさん...助けてください.......」
格闘ゲームでは、ブロッキングと予知めいた立ち回り、さらにはバグを利用したコンボにボコボコにやられ...流石にきりちゃんの心が折れてしまったようだった。
私は無言でコントローラーを受け取る。
私を攻略するために私が操作すると言う意味不明なことになるが、そんなことは気にならないほど...
私は、静かに怒っていた。
...自分でもCPUへの理不尽な怒りとは思うのだが。
負ける度にデフォルメされたきりちゃんが涙目になり、同じくデフォルメされた私が無邪気に喜んでいるモーションが流れる。
ゲームは確かに勝敗を競うものだが、隣で一緒に楽しんでいる友人を一方的にぼこぼこにし続けて屈託無く喜ぶほど私は腐っていない。
こちらは通常プレイなのに反則すれすれの裏技を一方的に連発していることも気に障る。
そして何よりも最近改めて感じた、きりちゃんと遊ぶ時間の大切さと、腕の中で泣いているきりちゃんの存在。
ゲーム中の私を騙るこいつは...敵だ。
「ク、クイズですか?いくらなんでも勝て...え!?」
このミニゲーム。他もそうだが、全て元となるゲームが存在する。恐らくきりちゃんのご都合主義な魔法の補間をするためだが。
そしてクイズの元となるゲームも私はやりこんだものだった。問題文なら全て暗記している。そしてこのゲームは...
「問題文一文字で解答し合ってる...これなら半分の確率で勝て...あれ!?ゆかりさん、問題文どころか解答の選択肢すら出てないのに何で答え分かるんですか!?」
某漫画で仕入れた知識だが、このゲームの出題の順番、ランダムに見えて実はパターンがある。最初の5問を見ることで、以降の問題と解答の場所は固定されるのだ。だから問題文どころか解答すら1文字も見ずに解答することが可能...!!そして、
You Win!
「ほわぁぁぁぁ...ゆかりさん、かっこいい」
きらきらした目で私を見つめるきりちゃん。やめて、漫画で知った知識を本気で勉強した黒歴史の産物だから。
そんなことよりもと、攻略可能になったゲームをきりちゃんにやってもらうために、コントローラーを渡す。
「え?...あぁ、......えっと勝って頂いたゆかりさんに申し訳ないのですが...もういいです。」
と言いつつ、ゲームを消すきりちゃん。私が疑問符を浮かべていると、
「いえ、ゲームだから仕方が無いんですが、やっぱり現実のゆかりさんとズレがあるみたいですし、何より.......今、惚れ直す前に作った物では、全然ゆかりさんの魅力を引き出せてないと分かったので。」
...ぐぬぬ、この娘は相変わらず恥ずかしいことを真っ直ぐに伝えてくる。
「そうですね。勝ってゆかりさんの好感度を上げるのはまたの機会にしましょう。せっかくのゆかりさんの誕生日ですから、争わずに協力プレイとかしたいです。」
その日は別のゲームで協力プレイをすることに。
敗北はしなかったが、私の中で何か、パラメータが上がった音がしてしまった...ような気がした。