東北きりたんが、結月ゆかりを大好きな短編小説集   作:甘味処

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⑬寒がってるゆかりさんと、ホッカイロなきりちゃん(大晦日)

 

「私はですね。今年こそは、ゆかりさんが小学生に手を出すという...壁、そう壁を乗り越えてくれますようにってお祈りするつもりです。」

 

儚げな表情で切々と話すきりちゃん。その様子とはうらはらに話の内容はかなりヤバイ感じだった。

その壁とやらの先は牢屋だと思う。捕まりたくなんてない私には越えられないシロモノだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12月31日大晦日、23時半。今年も後30分で終わりの深夜。私達は年越しのために近くの神社参拝の列に並び、新年最初に何を祈るのか雑談していた。

 

年が変わった時からお参りは始まるのだが、既にかなりの人数がいて列になっている。

 

そして、深夜というのもあって結構寒かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら壁は私が越えますので、その先でゆかりさんが抵抗しませんようにってお祈りします。」

 

恋する少女のような照れた表情を見せるきりちゃん。けれども発言は相変わらずな感じで、年が変わってもこの娘の変わらない安定性を予感できてしまった。

...まあ、口先やちょっかいは出しつつも、基本ビビりなきりちゃんなら本気で襲っては来ないだろうし、スルーしとけばいいか。

なんて妙な信頼関係に思いを馳せつつ、私は今年ものんびりと遊びながらすごせます様に祈ろうと思っていることを告げる。

 

風が吹いてる。本気で寒い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむふむ、のんびりですか。例えば?」

 

のんびりはのんびりなんだけど...例えばゲームしたり、美味しいご飯食べたり、布団の上でゴロゴロしたり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...それ、全部隣に私がいますよね。あれですか。新手のプロポーズですか?プロポーズならもう少し段取りとか雰囲気を重視してください。でも、しょうがないから及第点を上げます。なので...そのプロポーズ、受けてあげましょう。」

 

じと目からの、にっこりな笑顔。だから私も、にっこり笑って...もちろん否定する。

 

でも確かに日常な風景を想像すると、きりちゃんが当たり前のように隣にいるほどには馴染んでしまった感がある。

 

と言うか、寒さがやばい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...ゆかりさん。もしかして寒いんですか?」

 

先ほどまでの軽口を叩いていた表情からいっぺんして、真剣な、そして心配そうな表情をしてジッと私を見つめるきりちゃん。質問の形を取っているが、本人の中で確信を持って話しかけているようなので、正直に白状する。夕方くらいなら、貰った手袋もあって耐えることができるが、深夜となると寒さは格段と違った。

 

 

そんな答えを聞いたきりちゃんは、私の腕の中に入り、背中を押し当てるようにくっついてきた。ちょうど二人羽織みたいな感じだ。そしてそのまま両手を捕獲され、きりちゃんのお腹に手を押し当てられてしまう。

 

...一瞬以前きりちゃんの妄言にあった「服の中にズボっ」とやらをやられるのかと身構えたが、服の外側で健全な感じだった。暖めてくれようとしてるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

「ふっふっふ。貼るホッカイロを服の内側に付けてきました。ずん姉さまに、ぽんぽ...お腹を痛めたらまずいからとアドバイスを貰ったので貼ってきたんです。暖かいのの、おすそ分けです。」

 

なるほど手袋をつけているので分かりにくいが、お腹に押し当てられている両手がだんだん暖かくなってきた...気がする。

 

言いかけたお腹の別称にはつっこまないでおこう。遠まわしに子供っぽいと言われたきりちゃんが嫌がるのは目に見えてるし。

 

でもこの状況、結果的にきりちゃんを後ろから抱きしめているような体勢になってるんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今更じゃないですか。それに向かい合わせで、密着してお腹に手を当ててたら、それこそいかがわしいことをやってるように見えちゃいますよ。」

 

...むう、確かに。ゲームする時いつもこんなんだし、実際にホッカイロに手を当ててるだけだし、まあいいか。

ホッカイロだけじゃなくて、きりちゃんとくっついているおかげもあって、だんだん暖かくなってきたし。きりちゃんの体温、ほんとあったかいなあ。離れなくなっちゃいそう。

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしている内に、年が変わる時報が鳴る。近くの人がテレビをスマホでつけていたらしく、鳴り響いてきたのだ。

体勢はそのままで、きりちゃんに新年の挨拶をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい。ゆかりさん、新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね。」

お互い、にっこり笑って挨拶をした後...一緒に並んでいたマキさん達がおずおずと挨拶をしてくれたので、その態度を不思議に思いつつも返事を返した。

 

 

曰く、二人の世界を作っていたので話しかけづらかったらしい。いやいや心外な。そんなものは作ってはいない。...作ってないよね?

 

親友たちに投げかけた私の言葉に返されたのは肯定では無く、愛想笑いだった。

 

 

 

 

 

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