東北きりたんが、結月ゆかりを大好きな短編小説集   作:甘味処

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⑮求婚しちゃったゆかりさんと、受けちゃったきりたん

《きりちゃん、それなら私と結婚する?》

そんな私の提案に、

 

 

 

「はっはい!お願い、します......」

 

 

 

きりちゃんは頬を赤く染めながら肯定を返してくれた。そして私はきりちゃんの手を取り......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きりちゃんが持っていたゲーム用な駒のピンを預かり、私の駒にさした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人数そろってるし、正月だし、何かボードゲームでも...とずん子さんの発案により始まった人生ゲーム。

 

ボードゲーム、特に人生ゲームなんかは運の要素がほとんどを占めていて、必勝法やコツなどは無い。

 

 

 

 

 

...無い、......はずなのだが、黒い笑みなずん子さんと、ポヤーっとしているが豪運だったらしいIAさんの、2人による遥か上空での一騎打ち(比喩)を見ると何か攻略法があるのかと勘ぐってしまう。

 

そんな鷲巣と宮永咲...じゃなくて、ずん子さんとIAさんの2人以外は、地面をゆっくり歩むように資金を増やしゲームを進めていく。...茜さんだけ何故か借金まみれになって地中を突き進んでいたが。

 

 

 

 

 

涙目な茜さんの姿が、きりちゃんと重なってつい茜さんの頭を撫でてしまった。クセって怖い。

 

猫のように目を細める茜さん。嫌がられなくて良かったのだが、反対側から感じるきりちゃんのジト目に負けて、もう片方の手はきりちゃんの頭に置かれることになったり。

 

撫でてると、私は魔性の手を持つと2人は共感していた。何だそれ。

 

 

私の撫で方はきりちゃんが育てたとか、今だけ茜さんに貸すだけで所有権はきりちゃんにあるとか、普段撫でる事に慣れていない左手のぎこちなさも逆に点数高いとか、きりちゃんによる相変わらずな妄言が飛び出ていた。

 

...妄言、だから、茜さんとIAちゃん、頼むから興味津々な感じで頷いて納得しないで欲しい。

 

 

 

まあそんな風に和気あいあいと人生ゲームは進み、3番目に中間地点に到達した私は【結婚マス】に止まり、車を模した自分の駒に青色のピン...つまりは夫のピンを追加しようとしたのだが、

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?ゆかりさん、危ない!?」

(そういえば)リアル魔法少女な、きりちゃんから発せられた波動弾?のようなものが私の手元をかすって通りすぎ、窓を抜け、雲ひとつ無い青空に吸い込まれていった。

 

通過地点にいた青いピンは、その体の7割ほどが消滅し、秒単位で私は未亡人になってしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー...危ない危ない。って何を言っているんですか。未亡人じゃないです。まだピンは差してなかったから結婚は不成立です。ノーカウント!ノーカウントなんです!!」

ひと仕事終えたように額を拭い、どこぞの班長風に何かアピールするきりちゃん。...何かパロディネタが私に伝わったことに嬉しそうにしてる。かわいい。

 

とりあえずきりちゃん、人に向けて魔法打つのはやめようね。危ないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔法は非殺傷指定だからゆかりさんには傷ひとつ付きません!...そんなことより、どこの馬の骨とも分からない男にゆかりさんを奪われてたまりますか!」

 

まあ、そういうゲームだからね。...と宥めすかそうとしたが、

 

 

 

 

 

「む。...いーえ、ゲームとは言え納得いきません。ゆかりさんと結婚するのは私です。それは絶対に、譲れません」

 

無駄にキリッとして言うきりちゃん。小学生と思えないかっこいい表情なんだろうけど、状況がそうは思えない。

いや、そういうゲームなんだからしょうがないでしょうに。ふむ......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じゃあ、それならと提案した【冒頭の結婚発言】は、そんな状況を打破するために発したものだった。

 

 

 

 

 

 

 

きりちゃんから受け取ったピンを私の駒に刺して、交互に操作すれば良いよね...と言う考えだったが、やけに嬉しそうなきりちゃんを見るに、正解だったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

しかしここで、ずん子さんからの待ったが入る。

 

 

 

 

 

 

「す、筋を通す...ですか?」

 

曰く、2人でやるならこれまで得た資金を0にすべきらしい。確かに2人分のお金を足したらトップになってしまうが、2人とも資金0はひどい。ビリになってしま......いや、借金まみれの茜さんがいたっけ。

 

言いかけた言葉に、着実に借金を増やして瞳に光を無くした茜さんが反応し、その焦点が合ってない瞳を向けてきた。...分かってるから。忘れてないから。応援してるから。

 

 

 

 

 

「せめて半分の資金だけ残すとか...」

 

きりちゃんが何とか説得を試みているが、無理くさい。ずん子さんの見立てでは、私達2人が組むことはアバンの弟子にアバン復活並みの強化フラグらしい。例えが懐かしい。

 

しかもそれを言ったのが、どこぞの大魔王的な覇気を持つずん子さんだった。いやまあ、大魔王に実際会ったわけではないので、そんな感じがするってだけだが。

 

 

 

 

 

 

「ど、どうしましょう...ゆかりさん。」

助けを求めるように涙目のきりちゃん。ゲーム中盤に入っての無一文は流石に巻き返せないが...とてもじゃないが、なら個別にやろうとは言えない雰囲気。

 

...いやまあ、そんな雰囲気が無くとも、この娘を突き放す選択肢が頭に入らない程度には、ほだかされているのだが。

 

まあそういう訳で選択肢が一つしか無い以上、迷う必要も無いとお金を全て銀行側に渡し、無一文になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆ、ゆかりさんっ!ありがとうございます!!私、ゆかりさんのために尽くしますから!!!一生かけて!!!!」

 

何故か親友達から上がる歓声と拍手。

 

そして、きりちゃんの頭の中では何か感動的な場面だったのだろう。

目を潤ませて抱きつかれた上に勢いあまって押し倒される。一生って、人生ゲームの中の話だよね?...いや違うんだろうな。

 

 

 

 

 

 

「くっくっく、いくらずん姉さまでもゆかりさんと一緒の私には敵いませんよ!資金0程度のハンデで安心しないことですね!!」

 

きりちゃんを宥め、何とか体勢を立て直すと、当たり前のように膝に乗ったきりちゃんが、実の姉に啖呵をきっていた。割と興奮してるらしく体を大きく動かしているのでバランスを取って倒れないように体を支えてあげる。返答するずん子さんもノリノリで返している。

 

 

 

そろって高笑いする2人を見て、この姉妹仲良いよねと、きりちゃんの元隣にいて現在私のお隣さんになったマキさんに言う。

 

何故か、お前が言うな的なことをにっこり笑顔で返された。...解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

「......ゆかりさん。敵は強大ですね。...でも問題ないはずです。なぜなら今日は、2人でダブルライダーなのだから!!」

 

きりちゃんの台詞につい乗せられてポーズをとってしまった。クセって怖い。

いつもと違って親友達に見られている事に気づいて頬が少し赤くなる。

 

...まあ、いいや。

続いていた寸劇も一区切りついたらしくゲームを再開する。...でもきりちゃんってネタの守備範囲広すぎない?ほんとに小学生?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ゲーム進行中~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆかりさん、お願いします。」

きりちゃんと順番にスロットを回しながらゲームを進め、ついに終盤。私達は驚異的に追い上げてずん子さんとの資金差を縮め、駒の進み具合はトップになっていた。

 

途中、何か東北姉妹の間でゾーン的なせめぎ合いを幻視したり、さらなる借金で苦しむ茜さんを見かねた葵さんが借金を肩代わりしたりした。

 

茜さんは感動しながら【億万長者になったら、稼いだお金は必ず葵さんと山分けするから...】的なことを言っていた。...誰もが口にしないが、そんな未来は無いと確信していた。

 

 

そして順番は私。資金ではまだ負けているが、ここでぴったりの5の数字を出せばゴールし、一番手到着の報酬でずん子さんを抜くことができる。

 

 

 

 

 

 

さて唐突だが私はこれまで、スロットを回す指の力を【一定】にするように注意していた。

 

乱数なんて使われていない現実の、そしてそこまで洗練されて作られていないゲーム用のルーレット...だからこそ、

同じ力で回した場合、最初の数字の位置からルーレットが【どの程度ずれるのか】は、把握することができていた。

 

 

だから、後は回す前のスロットの位置を調整して同じように回せば......

 

「5!流石ゆかりさん!!ぴったりゴールです!!!」

いわゆる目押しに近いことをしてしまったが、最後の最後くらい見逃して欲しい。私に東北姉妹のような超常的な力なんて無いのだ。

 

そして2人で勝ち取った勝利に思わずきりちゃんと抱き合う。

 

...うん。なんだかんだで無一文になってからの、ゲーム後半の方が楽しかった。やっぱりきりちゃんとするゲームは楽しくて、相性?的なものが良いのだろうと再認識してしまう。

 

 

 

なお、一番手ゴールの報奨金を受け取り、ずん子さんはぎりぎり差せたのだが、1位と2位には届かず結果的には3位だった。

 

 

2位はIAさん。ずん子さんが私達と争っている間に着々と資金を貯めていった。

 

 

そして1位は...何と葵さんだった。

 

原因は茜さんだ。

と言うのも、借金まみれでどん底だった茜さんはアイドルに転職しまさかの大ヒット、毎ターン「億」クラスのお金を稼ぎ、まさかの宣言どおりな億万長者に。

 

はしゃいだ茜さんだが、宣言通りに稼いだ分を葵さんと山分け。茜さん自身の資産は借金と相殺になってしまったが、半分まるまる貰った葵さんが結局1位となったのだった。

山分け発言を全員聞いていた以上、誰も文句は出なかった。

 

 

葵さん曰く、勝った気がしないとのことだが、元は姉を助けようとした事がきっかけなので、良い意味で因果応報的なやつなのだろうから受け入れるべきだろう。

 

 

 

そんなこんなでゲームは終わった。

市販の一般的な人生ゲームだったはずなのだが、何でこんなに波乱万丈なゲーム結果だったのだろう...と、どさくさに紛れて唇を突き出して迫ってくるきりちゃんの頭を抑えつつ思考にふけった。

 

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