東北きりたんが、結月ゆかりを大好きな短編小説集   作:甘味処

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結月ゆかり視点です。



③笑顔なゆかりさんと笑顔なきりたん。

「ゆか姉?...その、どうでしたか?」

不安気に、そして気遣うように私に《結果》を聞く、きりちゃん。

 

就職活動を初めて半年になる。世間では景気もある程度上がってきていて、入っている大学も国内で上から数えて両手で足りるネームバリューを持っていた、だから、私は正直舐めていたのだろう。メールの内容はこれまでと同じ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーまた、不採用だったー

 

 

 

...最近は、耳鳴りがずっとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆ、ゆか姉を採用しないなんて、最低な会社ですね!そんなゴミ会社、こっちから願い下げですよ!!」

 

内定は一つも取れず、不採用は30社を超えている。今回面接は、これまで以上に手応えもあったはずだったのに...

 

最近は両親と顔が合わせずらく、家庭教師をしていたきりちゃんの家、東北家に居候している。

 

 

 

 

 

 

「そもそも、あの程度の会社如きが...ゆ、ゆか姉!?泣いちゃダメです!」

 

小学生に慰められている自分が情けなくて、涙が出そうなんて考えてたら、本当に出ていたらしい。

 

 

あわあわと焦り、昔私からしたように戸惑いながら頭を撫でてくれるきりちゃんに、人事のように笑いが出そうなる。

 

マキさんを初めとした友人達とは、最近疎遠になってしまっている。いや、そもそも彼女達も社会人になるために頑張ってるはず。みんな忙しくて当然だ。

 

結果として、きりちゃんだけが相変わらず隣にいてくれて、きりちゃんだけが私を支えようとしてくれていた。...きりちゃんだけが。

 

 

 

 

「...えっ、ゆか姉?」

 

気づいたら、きりちゃんをベットに押し倒していた。きりちゃんを、離したくなくて、離れたくなくて、私は、そのまま、困惑するきりちゃんを無理矢理.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆか姉、落ち着きました?」

 

事の後、あれだけ酷いことをした私に相変わらず、きりちゃんは優しく接してくれた。

 

 

 

 

「ふふ、ゆか姉のこと、前から好きだって言ってたじゃないですか。酷いこと、なんて私はされてませんよ?」

 

自己嫌悪で声も出せない私に、甘い言葉をかけてくれる。

 

 

 

 

 

「...ね、ゆか姉。家で働きませんか?家事とか、運転手とか、うちが傘下に収めてる会社でも良いです。ゆか姉なら、うちの家は誰も文句は...明日にしましょうか。疲れていますよね?」

 

優しく髪を梳いてくれる小さな手に、睡魔が纏い、まぶたが重くなる。

 

 

 

 

 

「ふふふ...上手く行きました...ずぅっと一緒ですよ?ゆか姉?」

 

眠る寸前に何かを呟くきりちゃんは、見たことも無いような、とても妖艶な笑顔で...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【ここまでの引用元】

→きりたんの机に置いてあったノート

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「ゆかりさん!ただいまです!!あなたの愛しのきりちゃんが帰って...あ」

 

今日も変わらず、東北家を訪れると、きりちゃんは学校の行事で遅くなっているらしく、部屋に通された。

 

何気なく机の上に開いてあったノートを見ると、《きりちゃん》と《ゆか姉》の百合百合な、きりちゃん作の自作な官能小説が書いてあった。決して、現実の私が就活中なわけでも、小学生に手を出してるわけでもない。

 

 

 

しかもノートの内容が割とえぐい。登場人物の《ゆか姉》は同じく登場人物の《きりちゃん》に明らかに嵌められていた。

 

と言うのも、わざわざ赤ペンで《30社 不採用》の文章と《マキさん達と音信不通》の文章に、

《東北家の圧力》と書かれた文言から矢印が引っ張ってある。

 

 

 

 

 

ついでに、第2話は構想中らしく、まだ文にはなってなかったが、次のページには「首輪」や「メイド服」等のキーワードが書かれている。ノートの中の《ゆか姉》の行く末は、寄り道なく進んで行くようだった。...何処にとは言わないが。

 

 

 

 

 

 

 

「えっ...見ちゃいました?あれ?えっえ?見ちゃったの?」

スパンと勢い良く障子を開け放ち、恒例となった色惚けたセリフを言い終わら無いうちに、表情を凍らせるきりちゃん。

 

 

最近は、調子に乗ったように、からかってくるが、それもナリを潜めている。

まあ、からかうと言っても私が不快に感じないよう細心の注意を払ってるのが節々に感じられ、微笑ましいのだが。

 

 

ふるふると震え、悪いことをした自覚がある、怒られる寸前の仔犬のようだった。

 

 

 

私は怒ってないことを伝えるため、笑顔で、いつも通り膝の上に座るように促す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ストーップ!待って!ゆかりさん待ってください!!声と笑顔が怖いです!?」

 

失礼な。声は1オクターブ下がってしまったかもしれないが、表情は完璧なまでの笑顔だ。表情筋が微動だにしないレベルの。

 

 

 

 

 

「うぅ...お、お手柔らかにお願いします。」

 

私の平和的な意志が伝わったのだろう。ふらふらと私の膝に座るきりちゃん。

...罪人見たいな様子で、それでもいつも通り私の膝上に収まるきりちゃんに、つい吹き出してしまった。

少し、脅し過ぎてしまったのかもしれない。

 

 

 

 

 

「ゆ、ゆかりさん?怒って...無いん、ですね。」

おどおどとしながらも、察しが良いきりちゃんは、私がはほとんど気にしてないことに気付いたようだった。

内心で済ませてる分には自由だし、私だって人に言えない、いわゆる黒歴史的なものはある。

そしてきりちゃんの好意は十二分に伝わっていたので、想定の範囲と言うか...

見てしまって申し訳なさすら感じている。

 

 

 

とは言え、きりちゃんのためにも少しだけ注意をしなければならないなと思いつつ、私は普段見せない、きりちゃんの力が抜けた笑顔を楽しむのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かった...あっ、でもネットに上げたら、凄い評判なんですよ!あの小説!」

 

...この話は、めでたしめでたしで終わりかと思いきや、爆弾発言が出てきた。

 

えっ、あの小説をネットに?本名は無かったけど愛称がばっちり載ってて、知り合いが見たら誰のことだか分かるエロ小説を?流石に恥ずかしいのだけど...

 

 

「はい!さっき、私の小説が凄い評価されてるの、ずん姉様に自慢しちゃいました!ふふっ、大作家きりたんの誕生ですよ!!」

 

...さっきから、スマホが通知で唸ってる。見なくても分かる。LINEのグループ通知だ。

明日友人達の前に顔を出すのがきつい。絶対からかわれる。

 

天然なIAちゃんあたりには、小学生に手をだしたら捕まってしまうと本気で心配されかねない。きっと、せめて卒業までは我慢できないかと、説得されるだろう。きつい。

 

 

 

 

 

 

「それで2話目はですね...」

 

無邪気に今後の予定を話すきりちゃん。

...うん。残念ながら少しだけお仕置きをしなくてはならないようだ。

 

 

 

ふいに、きりちゃんに《くすぐったいと感じるのは、相手への信頼があるから》と言う話をする。

 

 

 

「へ?はぁ、そうなんですか。」

唐突な話に、気の抜けた返事を返す、きりちゃん。

その無邪気な顔に少しだけ心が痛むが、

痛いことはしないし、悪かったことをしたと分からせてあげるのは姉のように慕ってくれる私の仕事だ。...実の姉は、私をネタに盛り上がって手が離せないだろうし。

お仕置きついでに、きりちゃんが私をどれだけ信頼してるか、確かめさせて貰おう。

 

「あれ?ゆかりさん..?何やら不穏な空気が...うひゃ!?ぷっ、く、くすぐった、やめ...あはっ、ひゃははは!!!」

 

 

後日きりちゃん曰く、その日は笑顔継続時間の過去最長記録を叩き出したらしい。

 

 

 





【この小説の大まかな流れ】
《前半部》
きりたんが作成した、ゆかりさんとの少し黒い官能小説の内容。
《中盤部》
ゆかりさんが、その官能小説を見つけ、きりたん焦る。ゆかりさん、そこまで気にしてない
《後半部》
きりたん実はネットにアップまでしてた。しかも、ずん子さんにお知らせ済。
→ゆかりさんによる、きりたんへの、くすぐりと言う名のお仕置き決定。
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