それと以前から伝えたかったのですが、誤字報告してくれる方々ありがとうございます、とっても、とっても助かってます。
もちろんご指摘してくれる方あっての機能ですが、ハーメルンの【誤字報告&修正】機能凄いですね。ボタン一つで教えてくれた情報どおりに文章が直って凄い快適です。
「ゆかりさんに貢ぎたいです。」
外は猛暑なので部屋にこもり、クーラーをつけつつゲームをしているのは私ときりちゃん、通称ゆかきりコンビ(とネットで呼ばれているらしい)だ。
冷房は少し冷え気味な26度に設定にし、きちんとお腹が冷えないようにタオルケットをかけてゴロゴロしていると、すぐ近くにいてタオルケットを共用しているきりちゃんの口から唐突にヤバい言葉が発せられた。
どうやらユカリと言う奴は小学生に貢がせるヤバいやつのようだ。私は平凡な一般人なので、きっと住む世界が違う、危険人物なのだろう。だから私はその人物について考えることを放棄した。
「ゆかりさん、聞いてます?ゆかりさーん。...あっそうか。ちゅーをご所望なんですね。眠り姫を起す的な意味で。」
呼びかけられ、揺さぶられる。そういえば私の名前もゆかりだったけ...現実逃避に失敗してしまった。
瞳を閉じて嬉しそうに近づいてくる、きりちゃんの両頬をほぼ無意識にキャッチし、むにむにとする。
「んひゅ、にゅふう...えへへ。あっ、目の焦点がやっと合いましたね。ダメですよ。妻が夫を無視するなんて家庭内不和の切っ掛けになっちゃいます。...それで何か欲しいものありませんか?ずん姉さまに相談すれば、簡単に予算が下りると思いますので。」
頬をもみもみされて、変な声を上げつつ満更でも無さそうなきりちゃんは手を離すと何事も無かったかのように色惚けた後にキラキラと瞳を輝かせて続きを話す。
至近距離で輝く瞳が眩しいから、今はサングラスが欲しいかも。
...と言うか、何でそんな願望が出てきちゃったの?それとずん子さんに相談禁止ね。本当に大金用意してきちゃいそうだから。
「理由ですか?えっと、この前居間のソファーに座って一緒にダラダラしてたじゃないですか。その時にテレビでやってた、ドロドロした昼ドラをチラ見してまして、そこに登場してた悪女に貢いでる冴えない男を見て...私もゆかりさんに貢ぎたいなぁと思ったんです。」
確かその人、借金してまで貢いだあげく、捨てられてボロボロになってたよね?何故あのシーンを見て貢ぎたいと思うのか、お姉さんには分かりません。
「ふふっ、ゆかり...お姉さん、いえ、ゆかりお姉ちゃんもあの時ドラマ見てたんですね。...ふふん。私が貢ぐ相手は、ドラマの悪女なんかじゃなくてゆかりお姉ちゃんだから、大丈夫なんです!」
あんまり考えなしに発言した私の自称に乗ってくるきりちゃん。腕の内側に入り込んで猫のようにスリスリしてくる仕草も相まって、何か妹属性に目覚めそうになりつつも、貢ぐ対象がどうのこうのな問題では無いとツッコミをする。
「んー。でもゆかりお姉ちゃん、私が渡した誕生日プレゼントの手袋とか大事に使ってくれるじゃないですか。ドラマの悪い人とは違います。...でも最近は着けてくれないのが何だかモヤモヤして...ゆかりお姉ちゃんが私のものだって印を付けたいと言うか、同じくらい喜んで欲しいものを渡したくなったと言うか...よく分からないけど、ゆかりさんに、いっぱいいっぱい、ご奉仕したいんです」
謎の衝動を燃料にメラメラと燃えるきりちゃんの瞳。...いやまあ、確かに誕生日に貰った手袋、凄い気に入ったけど、猛暑の中でも装着するほど狂気的な執着を向けてるわけではない。
現在、手袋は来冬に備え押入れに眠ってもらっているが、きりちゃんの話を聞いていると私の所有者を示す首輪のように思えてしまった。
まあ、きりちゃんは変に偏った知識を持っている上に、その場のノリで話してしまう悪癖がある。だから言葉よりも内心はかなり純粋な善意なのだと分かっている...分かっているのだが......うん、まあ気にしないでおこう。
「もちろん、お金だけで繋がっている関係になったら寂しいですけど...お金で関係を補強できるかもって思っちゃったんです。多分、私の恋心が好きな人につくしたいって気持ちになってギュンギュン燃えちゃってるみたいなんです。...ね、ゆかりお姉ちゃん。私を幾らでも引き出せる都合の良いATM的に、思う存分使って下さ...いふぁい、いふぁいです」
瞳を揺らして息を荒げながらいつもよりも強く私を抱きしめて不穏なことを話し出した、きりちゃんに制裁を与えるために両頬を先ほどよりも強めにぐにぐにする。
って言うかそのATM、バックにいる東北家と言う大銀行に私自身が担保に取られてる気がするから遠慮します。そもそも、きりちゃんと一緒にいるのは決してお金目当てなんかじゃ無いから、冗談でもそんな風に言われるのは不満だ。
「つ、つまりお金じゃなくて、小学生な私の体をご所望ってことですね。ふふっ、ゆかりさんはエッチなロリコンさんで...いぅ、ちょっと痛いです、冗談ですってば!?」
年相応なかわいい表情をしつつも、懲りないきりちゃんのコメカミに握りこぶしでぐりぐりする...所謂うめぼしという制裁を行った。冗談だってことは通じてるけど、教育に悪いのでアウトです。
「むう、ゆかりお姉ちゃんは酷いです。他の人ならともかく、私はお姉ちゃん大好きなんですからね。例え痛みでも、してくれるのが嬉しくて癖になっちゃったらどうするんですか!...それで話しを戻しますが、欲しい物、ほんとに何かありません?」
若干涙目のきりちゃん。割と本当にこちらを責めるような視線に言葉が止まってしまう。あっあれ?私が悪いの?
なんて躊躇してると、話しが元の路線に戻った。罪悪感を刺激された直後の話題転換に思わず受身になって、欲しいものを思案してしまったが...そんな思考を中断する。
いくらお金持ちとはいえ、誕生日とかでもなく、何も無いのに小学生の友人に奢ってもらうつもりは無い。だから断ろうとしたのだが...ふと、あることを思いつき、それなら近くのデパートで、服が欲しいと伝えた。
「おおっ、任せて下さい!」
ほくほく顔を私の胸にぎゅーぎゅー押し付けるきりちゃん。きっと私に貢ぐ薔薇色?の未来で頭の中はいっぱいなのだろうが...残念ながらかわいい妹分をそんな退廃的な悪の道に進ませるつもりなど毛頭ない。喜ぶきりちゃんから見えない角度で、私はニヤリと笑った。
~デパートへ移動中~
「え!?私がゆかりさんの服を決めていいんですか!?そっそれなら、もちろんエッチな服とかでも構いませんよね!?」
デパートに到着後、お姉ちゃん呼びのブームは過ぎ去っていたようだった。少し残念に思いつつ、きりちゃんに私の服を決めて欲しい旨を伝えると、欲望に染まった瞳と言葉を向けられた。
恐らく一般的なデパートの品揃えでは、今のきりちゃんの要望に答える品揃えは無いと思うが、もちろんエッチなのはダメだと牽制しつつ普段着る普通の...いわゆる普段着を買ってほしいと伝える。
代わりに私もきりちゃんの服を買ってあげるからと付け加えつつ。
「えっ、ゆかりさんからも買ってもらえ...あっ、で、でも、それじゃあ私が貢ぐことにならなくなっちゃいます...」
思わず私の提案に飛びつこうとしたきりちゃんだが、当初の目的が破綻することに気づき躊躇している。
そう、私の考え付いたこととは、きりちゃんにもプレゼントすることで一方的な”貢がれる”なんて状態を阻止しつつも、服飾に無頓着なきりちゃんに服を買ってあげると言う、一挙両得の作戦だったのだ。小学生と折半って微妙だけど、きりちゃんの持ってるお金はずん子さんからもらったお金だから問題無いだろう。
それにこの娘、割と着ているものには無頓着なのか、出会って半年経っても普段着のバリエーションは数着しかない。
たまに『働いたら負け』とか書いてあるネタTシャツをドヤ顔で着て、私をチラ見するツッコミ待ちだったりするがそれは別として、年頃の少女としてはどうなのかと思っていたのでちょうど良かった。
「え、えーと...」
目をぐるぐるして悩むきりちゃん。ゲームなどでは的確に即断即決をする手腕を持っているが、恋愛事情になるとやはり勝手が違うのだろう。恋なんてしたことないから想定しかできないが。
まあとにかく、後一押しで転がってくれそうなので、その小さな耳元に悪魔...では無く真人間への道を示す天使な囁きをする。
きりちゃんに、”私”が選んだ服、着て欲しいな。
「きっ、着ます!喜んで!!私、ゆかりさんの色に染まります!!」
この娘のツボは大分知ってしまっているので、きちんと重要部分を強調しつつ囁くと、あっけないほど上手く行った。
目をグルグル回しながら感極まってこちらを抱きしめるきりちゃんをあやしつつ、私は計画通り...的などっかの神(笑)風な表情をこっそりする。
...何だか本当に昼ドラに出てくる悪女のようだと自覚してしまった。まあ進ませているのは真っ当な道のはずなので大丈夫だろう。
「えへへ、ゆかりさんのプレゼント...。それにいっぱい試着して、楽しかったですね。」
最終的に互いの服を購入してプレゼントしあい、ついでに今度みんなでプールに行くつもりだったので水着も買ったりした。
吟味に吟味を重ねた互いへの服は、渡すのも貰うのも嬉しかったが途中経過の着せあいっこも凄い楽しくて、買い終えた後も服を着る未来の日々を楽しみに語りながら、きりちゃんと手を繋いで一緒に東北家に帰宅し、この日を終えた。