東北きりたんが、結月ゆかりを大好きな短編小説集   作:甘味処

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ずんだぱーてぃ、とても楽しかったです。小説本と人形それぞれ40以上買ってもらえました。また関東から近いイベントがあれば、参加したいです。
 
ただ、人が多い即売会に豆腐メンタルの私は耐え切れなかったようで、イベント後3日間程、小説内の2人と同じ状況に私自身が陥っていました。
 
それと今回の小説の内容について、途中から互いの会話をテレパシーにしようかと思ってましたが、分かりにくくなるだけだったのでやめました。
後、「...」を「……」の表記にしてみました。
 


㊵ベットの上で汗だくになりながら互いの体をいじり合うゆかりさんときりたん。

 

 

 

「……はあっ、はぁ」

2人っきりの部屋、ベットの上で向かい合い密着する私ときりちゃんの荒い呼吸音が響いていた。

 

「んっ、はぁ……」

私は向けられる熱に潤んだ瞳に急かされるようにきりちゃんの服をはだけ、服の内側、熱を持った肢体に手を挿し入れ、撫で回す。湿った感触を擦るように動かす手はぎこち無く震えてしまい、いつものように自然に動いてくれない。

 

「あっ、あっ……気持ち良い、です。」

そんな拙い私の手の動きを素直に受け入れて、身を任せて気持ち良くなってくれるきりちゃんに、思わず頬を緩める。

ずん子さんが用意してくれベット脇に並べられた様々な道具のおかげで、これからする行為の準備は万端だった。私はそのまま最後までしてしまおうと思っていたのだが……

 

 

「私だけじゃ、ダメです。ゆかりさんだってこんなに、ぐっしょり濡れてるじゃないですか……」

きりちゃんの両手がそっと私の腕を止めた。

そして所々隙間が空いてだらしなくなっている服の裾から進入した、幼く小さな手は私の体を這い回る。同じように震える手は気持ちよく、その気持ちを正直にきりちゃんに伝えると嬉しそうに微笑んでくれた。

そして先ほどまで私が握り、今はきりちゃんに押し付けられている熱いものの正体は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暖かい"おしぼり"だった。

 

 

「……うん。普段おしぼりなんて使いませんが汗が消えて気持ち良いですね。あっ、先に飲み物貰っちゃいますね。」

それで互いの汗をふき取った私達は、ずん子さんが準備してくれていた替えの服に着替え、飲み物に順番で口をつける。

着替えに、保温性の容器に入れたおしぼりや、タオルも全て2組づつ用意してくれたずん子さんにはとても感謝している。……なぜか飲み物だけ一つしかない上に《バカップルが使うような2口ストロー》が横に置いてあるのは、いつものずん子さんの悪い癖だろう。いつの間にこんなものを買ったの知らないが、先に見つけたおかげできりちゃんの目が届かない場所にサッと隠すことができた。

 

ずん子さん、こんな感じでちょいちょいイタズラじみたことをしてくるが、私達の関係進展のために色々アシストしているつもりらしい。ただ、今回含めずん子さんにはお世話になってるし本人的には悪意は無くて基本無害なので、だいたいスルーしている。

 

 

「ふー。すっきりしました……もうお昼ですね。お昼ごはん食べましょうか……ぁえ?熱のせいか、立ち上がるだけでもフラフラしますね。普段なら……あれ?普段、私どうやって起き上がってましたっけ?」

飲み物を飲んでいると先に立ち上がったきりちゃんがフラフラして、何やら普段の起床時の記憶が思い当たらないきりちゃんの様子に釣られて普段の起床時を思い出してみた。

 

 

……あっ。

普段は夢うつつのきりちゃんを抱き上げながら起きて、洗面所まで向かってるんだった。最近起き上がる動作なんてして無いきりちゃんが、思い出せないのも至極当然だった。

 

 

「……あっ、あー。……なるほど。」

 

無意識で行うほど当たり前となってしまっていた行為、そして何時もよりも肌寒くて腕の中が物足りない自分を自覚してなんだか恥ずかしさを感じしまう。

それは結果として赤くなっている頬を互いにさらに染め合うことになった。

 

 

……話しを、切り替えよう。

 

さて、ここまでの流れで分かるかと思うが、私ときりちゃんは2人揃って風邪を引いてしまっていたようだった。冒頭の文章でエロい事を妄想した人はスクワットでもしてて……私は誰に語りかけているのだろう?どうやら頭がボーっとして変な思考をしてしまったようだ。

 

そのまま何となく、事の始まりである今朝の出来事を思い出す。

 

 

 

 

 

 

「体、だるいです……ゆかりさんも、ですか?」

朝、ほとんど同時に目を覚ますと頬を赤くしてぼーっとしているきりちゃんが視界に入り、同時に自身のだるさに気づき、互いに風邪を引いてしまったのだと分かった。

……まあ最近は生活リズムが完全に一緒で、寝ている時間を含めると一日の半分以上傍にいるから、同時に風邪を引くと言うこの結果は、ある意味当然なのだろうけど。

 

 

「……ずん姉さま、あっはい。そう見たいです。」

いつも通りきりちゃんを抱き上げて……いや、そんな描写いらなかった。とにかく、何とか体を起して部屋を出た私達は、ずん子さんに相談をしようと声をかけた。

 

ずん子さんは私達の様子を見てすぐに察してくれたようで、熱でボーっとしている私達は、2人揃って汗に湿った寝巻きを下着ごと脱がされ、着替えさせられ、引っ張り出してきたチャンチャンコをさらに着せられて、冷えピタを付けられ、速攻で作ってくれたおかゆを食べさせられ、布団に入れられ、用意してくれた氷枕の上に載せた頭をナデナデされているうちに二度寝をして……さっき起きたのが昼近くの時間帯で、眠って再度汗をかいた体を互いに拭いて着替えようと、冒頭の話しに入ったのだった。

 

ついでに書置きによると、ずん子さんはお昼ごはん用におかゆを作り置きしてくれた上に、今日は早めに帰ってきてくれるらしい。

いっぱいお世話になってしまった。今度、何かお礼を返さなきゃいけないだろう。

 

 

 

「んっ、味付けもばっちりですね。流石はずん姉さま」

回想を終え、暖め直した目の前のお昼ごはんに手を伸ばす。朝食ではスプーンを掴む指が震えていることを指摘され……ずん子さんが差し出すスプーンを前に、きりちゃんと交互に口を開けるはめになんてなったのだが……お昼までたっぷり寝たことで多少は快復したのか、今は手が震えずに口に入れることができた。

 

 

「………………」

普段はきりちゃんといると話が尽きないのだが、風邪で喉の調子も微妙な事もあって会話も無く、カチャカチャと食器の音だけが響く静かな食事になった。

 

 

 

「……風邪、魔法で治せなくもなさそうなんですが、禁止されてるんですよね。」

そのまま食事を終えて、食器を片付けていると、きりちゃんがポツリと話し出した。

 

そうなんだ。治癒魔法的なのはファンタジーの定番の気がするけど。何か訳があるのだろうか。

 

 

 

「魔法で治すと言っても、原因と対処法がきちんと頭に入って無いと危ないらしいです。ご都合主義的に魔法は発動してくれますが、流石に人の体に向ける力を、それに頼り切るのも問題なので……」

言われてみると確かに、具体的にどう治すのか分かっていない力を、病で弱った体に使うのは危ない気がする。

治す能力も使い方しだいで攻撃になりうるし。どこぞのクレイジーなダイヤモンドみたいに。まああれは"治す"と言うより"直す"感じだったけど。

 

 

 

「後、魔法で治しきれなかった場合、魔法の抗体を持ったウィルスなんてものが登場しかねないらしいです。」

ああ、医療の薬でも似たような話しを聞いたことがある……なんて納得しつつ食器を洗い終えると、きりちゃんはいつの間にかこちらを向き、私の服の裾を掴み、しゅんとしていた。

 

 

 

「ゆかりさん……ごめんなさい。魔法で、ゆかりさんを守るって言ったのに……私がもっときちんと勉強してたら、本当なら今頃……わっ!?」

向けられる気持ちは相変わらず純粋でまっすぐで、けれども病気のせいか、きりちゃんは少しナーバスになっているようだった。

きりちゃんの悲しそうな様子は相変わらず私の心に刺さって、風邪のせいもあってか、それをどうにかしたい衝動を抑えることはできなくて、気づけばきりちゃんを抱きしめていた。

ついでに病床で気持ちが不安定な時に側にいてくれるから、一緒に風邪をひいて良かった的な、自分でもどうかと思う言葉を発しながら。

 

きりちゃんを抱きしめることが癖になっている事は自覚しているが、普段から抱きついているので仕方ないし、ちょっと抱きしめるだけで幸せそうに微笑む、きりちゃんのチョロさが悪い。……その笑顔に釣られて微笑んでしまう私も、たいがいにチョロいのだろうが。

 

 

そのまま抱き上げ、布団に向かう。食事も終えたし、こういう時はさっさと寝て、病気を治すにかぎる。

 

 

「……強引ですね。ゆかりさんに抱えられて、無理やり布団に連れ込まれたって、皆に言っちゃいますよ?」

部屋に入り、布団を被ると調子を取り戻したきりちゃんがニヤニヤとした表情で不穏な言葉をかけてきた。

 

ロリコンの濡れ衣を散々着させられている私としては、それはやめて欲しい。……先ほどまでの気持ちを考えると、"キリコン"とやらは自分でも怪しくなってきたが。

 

 

 

「えへへ。ゲームなら攻略可能なくらいにお互い好感度上がっちゃいましたね。……次、ゆかりさんが風邪を引いた時は、ずん姉さまじゃなくて私が看病しますね。弱っているゆかりさんを献身的に介護して駄目押しに好感度をぐぐーっと上げるチャンスですから!」

腕の中に頭を押し付けグリグリ動かして、見えないが多分ニコニコしながら話すきりちゃん。

相変わらずゲーム脳な発言だが、同じくゲーム脳の私にはきちんと伝わった。それならば、次回きりちゃんが風邪を引いた時は私が看病してあげたい。

 

 

「……これ以上、私のゆかりさんへの好感度上がっちゃうと大変なことになっちゃいますよ?ほら、何と言うか……ヤンデレ?的な方向に」

それは私が一緒にいて、矯正してあげるから大丈夫。きりちゃんが良い子に育つように、先生だから責任持つよ。

 

 

「一緒に……責任…………えへへ、それなら、大丈夫、かも……です…………」

抱きしめながら頭を撫でていると、きりちゃんからの返事に眠気が混じりだし、ついにはスヤスヤと眠ってしまった。

そして響くきりちゃんの寝息は催眠術のように睡眠成分たっぷりで、気づけば私も眠ってしまうのだった。

 

 

なおこれ以降……と言うより、未来永劫、約束した“互いの看病をする”と言う機会は来なかった。

 

……この一文だけだと、なんだか不穏な未来を予言する言葉にも聞こえかねないが、話は単純で今後も片方だけ風邪をひくような状況になることは無かった……ただそれだけである。

 


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