東北きりたんが、結月ゆかりを大好きな短編小説集   作:甘味処

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声月、購入側で参加予定だったのですが仕事にぶち当たりました。割と本気で悔しいです。


㊹ポケット付きなゆかりさんを、日々調教してるきりたん

「ゆかりさん、ちょっとギュってしますね」

お菓子を買いにコンビニに行く途中、隣からそんな言葉を投げかけられた。

言葉の意味を咀嚼し切る前に、声の主であるきりちゃんに私は抱きしめられていた。

...えーと、急にどうしたの?

 

「えへへ...あっ、別にやましい事はしてないですよ?ゆかりさんのコートのポケットに入れてた私の財布を取り出してるだけです。取り出しやすい体勢をしてる副産物で、結果的にちょっと抱きついちゃってますが、やましいことはしていません!」

やましい事はしてないと言う言葉を2回も言いつつ、抱きついたまま私のポケットをゴソゴソするきりちゃん。ついでに反対の手で背中あたりの服を握られて、頭はこすり付けるようにグリグリしてきている...まあ、なるほど。

 

きりちゃんの外出用の私服は基本和服だ。帯の隙間など小物を入れることができないわけではないが、洋服よりもそういった点に関しては不便なので、きりちゃんの私物を私のポケットに入れることは今日に限らず多々あった。抱きつかれるのも、ちょっと恥ずかしいが取り安い姿勢なのなら、まあしょうがないのかな?

あれ?...だけど、今日もお財布預かってたっけ?記憶に無いような。

 

 

「お家で声をかけたのですが...ちょうどゲームが佳境に入ってたので、ゆかりさん気づかなかったのかも知れません。...まずかったですか?」

しゅんとするきりちゃんに、反射的にそんな事は無いと返す。

脊髄反射的に出た言葉だが、実際使われても構わないし、さらに言えば一言断る必要も無い。自分のポケットだと思って勝手に使って欲しいと告げた。

 

 

「そ、そうですか?...えへへ。ゆかりさんのポケットも私のものになっちゃいましたね!」

ポケット『も』、という助詞が少し気にかかるが再び嬉しそうに顔を綻ばせるきりちゃんに釣られて笑みが浮かんでしまい、特に追求することも無く、買い物を終えてその日を終えた。

 

 

 

まあ、それは良かったのだが...

 

 

 

「ゆかりさん、駅に入るのにSuicaが必要です。だからぎゅーってしますね。...むふふ、すー...はー......はい、取れました。じゃあピッとして...ポケットに戻すのでまたぎゅーってしますね。あっ、駅から出る時もぎゅーってしますから!今、予約しましたからね!!」

その日以降、きりちゃんは何かにつけて外出先で抱きしめてくるようになってしまった。

て言うか今、深呼吸しなかった?それに家の中ならまだしも、外だと他人の目もあるから流石に恥ずかしいのだけど...

 

 

 

「ゆかりさんダメですよ、私はポケットから荷物を出すだけなのにそんなに恥ずかしがってたら、まるで...こ、恋人同士のニャンニャンしてるみたいじゃないですか!!」

きりちゃんは自分のセリフに自分でニヤニヤしつつも、熱を持った視線でジッと私の表情を覗き込んでくる。そんな状況に、頰の微熱を自覚し視線を逸らしてしまう。

 

 

「か、かわいい...大丈夫ですよ、ゆかりさん。逆に考えるです。ロリコンって思われちゃってもいいさと考えるんです...!!そう、私と抱きしめ合うのはごくごく普通の事、HBの鉛筆をベキッ!とへし折ることと同じようにッできて当然と思うことです!!」

俯いた私の表情をキラキラとした表情で覗き込みつつ、漫画ネタを口走るきりちゃん。欲望やらなんやらで、瞳はグルグルと渦巻いている。相変わらず思考が暴走しがちな親友で妹分を正気に戻そうと声をかけようとしたが、再度きりちゃんの言葉がかけられ遮られてしまう。

 

 

「ん、ゆかりさん。ポケットに手を入れるのにお手手がちょっと邪魔です。いいですか?ゆかりさんのお手手はちゃんと定位置な私の頭の上か、きちんと私を抱きしめてください。...はい、OKです。」

急に真剣な表情で指摘され、されるがままに。結果、きりちゃんに掴まれた私の手は誘導され片方はきりちゃんの頭の上に、もう片方はきりちゃんの背中に回されてしまった。

 

 

「えへへ...」

我に返っても、相変わらず幸せそうに微笑むきりちゃんに毒気を抜かれ、やけに長い間かかった『きりちゃんがポケットに出し入れする作業』を頭を撫でつつ待ってしまった。

 

そんな日々はこの日に限らず続き...

 

「ゆかりさん、喉が渇きましたのでぎゅーってしますね。...ん、これかな?......んー、でもこれじゃないかもですね..........あっ、やっぱり最初に触ったのでしたか。はい、飲み物出せました。ゆかりさんも飲みますか?」

 

「ゆかりさん、時間空いて暇になっちゃいましたね。こんな事もあろうかと、任天堂Swithを二台とも用意しておいたんです!こんな事もあろうかと!ゆかりさんのポケットの中に!!...じゃあぎゅーーってしますね。」

 

「ゆかりさん、お菓子を食べませんか?多分ポケットの中に...ん...んー......んー?あっ、そう言えばこの前食べちゃいましたね。すいません、今度きちんと在庫を追加しときますので、今回はお菓子じゃなくて私の甘〜いぎゅーっと、スリスリで我慢してください。...えへへ」

 

そんな感じに、何かにつけてきりちゃんは私に抱きついてくるようになってしまった。一応正当?な理由もあるので大人しく抱きしめられているのだが、私のポケットがドラえもんもかくやと言うほどにバリエーション豊かになってきた。

 

...と言うかお菓子とかならまだしも、ゲーム機やペットボトル何かがコートのポケットに入ってたら流石に気づくはずなんだけど、

私はそんな物が入っていることに気づかず、毎回出される度に驚かされていた。

 

 

「あっ好きなように使って良いと許可を貰ったので、空間拡張と簡単に物が出せるように魔法で補助しときました」

本当に4次元ポケット化してたのか...と試しにポケットに腕を突っ込んでみると普通に底まで行き着いてしまい、何も入って無かった。...あれ?

 

 

「魔法の分類なので、魔法少女以外が扱うと危険があったり無かったりするかもしれませんので、ゆかりさんには使えないようになってます。....それにゆかりさんが一人で使えちゃうと、私がゆかりさんにくっつく工程が無くなっちゃうじゃないですか!」

 

あやふやな前半部よりも明らかに後半部が本音っぽいけど...まあいっか。

 

 

「んっ、はい。お財布ですね。んー、私とゆかりさんの2つ分だから2倍時間がかかっちゃいますね。えへへ...あっ」

なお、出先で私ときりちゃんの小物が必要な際は抱き合う...と言う謎の儀式をしっかり癖つけられてしまった私は、財布を取り出してもらおうとマキさん達と一緒にいる際も何も考えずに抱きしめあってしまった。

そして、こちらを見物する友人達の視線に気づき抱き合ったまま固まってしまう...なんて事態に。

 

すぐに二人して我に帰り弁明するも、力及ばず私達は『バカップル』の称号を得てしまうのだった。...どうしてこうなった。

 

 

 

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