東北きりたんが、結月ゆかりを大好きな短編小説集   作:甘味処

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【2話同時投稿の2話目です】
【先に1話目を見てください】
【第三者視点です】


㊼村人なゆかりさんと、神獣なきりたんぬ

神獣きりたんぬ。

いくつかの山々を縄張りとするこの獣は、山に匹敵する巨躯と言われ恐れられているが、ほとんど姿を見せず有り余る力を周辺に散らすことで作物を実らせ魔物を遠ざける恩恵をもたらし周辺の村々から崇め奉られる存在でもあった。

 

そんな恐ろしくも気高い神獣は今...

 

 

 

 

「きりちゃん、やっぱりモフモフだね...」

 

子犬ほどに小さくなって、目をキラキラさせた少女に抱きしめられ、モフモフされていた。

 

少女の名前は結月ゆかり。少し身長が小さめだが村の決まりではそろそろ成人に達する年齢だ。

神獣きりたんぬを信仰する村の一つに住むごく一般人な彼女は、自分の腕に収まる小さな動物が敬われ恐れられる神獣きりたんぬとは、気づいていない。

しかしそれも仕方が無いのかも知れない。なぜなら

 

「ふふっ、きりちゃん気持ちよさそう...マキさんに作ってもらった特注品のクシだからね!」

もふもふされた後、丁寧にブラッシングされて気持ちよさそうに目を細め、そのまま眠ってしまいそうな様子は神獣としての威厳の欠片も無いのだから。

 

 

「ん、私も眠くなっちゃった...朝のお仕事もひと段落したし一緒に2度寝しちゃおっか」

そのまま横になり眠ってしまう1人と1匹。互いの四肢がしっかり相手にしがみついているその様は、両者の深い信頼関係を感じさせた。

 

 

 

「くー...くー...」

本来、山をも越えるほどの巨体を有する神獣きりたんぬ。しかし本人(獣)は注目を浴びることはあまり好きでは無かった。故に普段は小さくなって引きこもりライフをしていたのだが...昔、幼いゆかりと遭遇し見事に餌付けされつつ数年経過、現状にいたる。

 

 

 

「...あっ、きりちゃん。おはよう。お昼ごはんちょうどできたから一緒に食べようか。じゃあ、お手できる?...うん良い子だね、はい。食べていいよ!」

たっぷりと2度寝を堪能した後、先に起きたゆかりは昼食を作っていた。美味しそうな匂いに鼻をピクピクさせたきりたんぬは、ゆっくりと目を覚ます。

起き抜けのあまり回らない頭だったが、しっかりと躾されたご飯前の儀式をすませ、昼食にありついた。

 

 

 

「ん?おかわり?...もう、おねだり上手なんだから。あんまり食べるとお腹壊しちゃうかも知れないから、これで最後だよ?」

ご飯が足らなかったらしく、お腹を必死に見せて上目遣いでアピールするきりたんぬの姿は、重ねて言うが神獣としての威厳など欠片も残っていない。

 

 

「ごちそうさま...じゃあ、畑仕事に行こっか。」

ゆかりと会うまでは、寝て起きて食べてゴロゴロしてを繰り返していた引きこも...いや動物として正しい生活をしていたきりたんぬだが、ゆかりのペット...いや居候を初めてからは仕事をするようになった。それはゆかりの畑の世話だけでなく、他の村人の手伝いもしている。

 

 

 

「きりちゃん、やっぱりちっちゃいのに凄い力持ちだね...あっお礼ですか。いえいえ、こちらこそいつもありがとうございます。」

倒れた巨木を簡単に動かすきりたんぬ。魔法などの神秘が有るとは言え、重機など無い発展途上なこの世界の住人にとって、小さくなっても神獣の力はそのままなきりたんぬは、非力な村人達にとって貴重な存在だった。たまに別の村に招待されるほどで、周囲からもありがたがれ、ゆかりはお礼に作物を貰い、それをきりたんぬに料理として還元していた。

 

 

「あっ隣のおばあちゃん。また、きりちゃんを撫でたいんですね。いい?きりちゃん?...いいみたいです、どうぞ」

本来いくら役立っているとは言え、通常の動物を超える力を有するきりたんぬは人の世界では忌避される存在なのだが...ここは神獣きりたんぬの縄張り。この異常な力を持ち年月が経っても外見も変わらない小動物は、きりたんぬの眷属なのではないかと思われ、ありがたく拝まれたり撫でられたりして受け入れられていた。

何よりも見た目小動物で、ゆかりにべったりな様子に村人達が危機感など抱けない事も要因なのかもしれない。

 

「ふふっ、きりちゃん人気だね。私も鼻が高いよ!」

そんなこんなで当初は”きりたんぬの眷属様”等と呼ばれていたきりたんぬだったが、出会ったばかりの幼いゆかりは”きりちゃん”と略称し、その呼び方は村人にも広がり、完全に村のマスコットとなっていた。余談だが、親友のマキが作るきりちゃんの木彫りは一定数の需要が常にあり、村の特産物化している。

 

 

「お家に戻ったら、一緒にお風呂入ろーね。」

本来、ゆかりはもう少し大人びた言動なのだが...対話相手が人ならぬ動物と言うこともあり、少し子供じみた言動になってしまっていた。親バカならぬ、飼い主バカだった。デレデレだが、両思いのため誰も止める人はいなかった。

 

 

「それじゃあ、おやすみ。きりちゃん。」

一緒に起きて、一緒にご飯を食べて、一緒に働いて、一緒にお風呂に入って、一緒のお布団で就寝する。

ゆかりにとって幼いころから続けていたその毎日は当たり前の繰り返しで、幸せな繰り返しだった。

 

 

 

だがそんな毎日の繰り返しは、急に止まることとなる。

この次の日から、きりたんぬが姿を消し現れなくなったのだ。

 

 

 

 

 

 

「きりちゃん、山に帰っちゃったのかな...」

きりたんぬがいなくなってから1週間が経った。ずいぶん長いこと共にいたが、元より野生動物だ。急に去ってしまうのもしかたがない事だと分かっていても割り切ることなんてできずに、一人分と言うには作りすぎた昼食を前に、ゆかりは自宅でしょんぼりと肩を落としていた。

 

そんな中に響く軽いノック音。

 

 

「っはーい!...マキさん達、ですか。真剣な表情でどうかしたんですか?」

もしかしたらきりたんぬかも知れないと慌てて出てみるが現れたのは親友達だった。...そもそもきりたんぬはノックと言うには前足で雑な叩き方だったと今更ながらに気づき苦笑してしまう。

 

 

「...え?えっ、どうしたんですか?」

落ち込みつつも用件を聞くゆかりをしり目に、いつに無く真剣な表情の親友達はゆかりの家に入り、勝手に荷造りをし始めた。

 

 

「神獣さまへの生贄、ですか?そんな話し聞いたことも...えっ私が?」

慌てている親友たちに何とか話しを聞くと、ゆかりが”神獣きりたんぬへの生贄”に選ばれてしまったと村中で噂になっているらしい。

生贄なんて聞いたことが無かったが、親友達はゆかりを逃がそうと駆けつけてくれたようだった。

 

話しを聞き終えた時には、親友達の手によって荷造りも済んでいた。何よりも自分の事を逃がそうと行動してくれた親友達にゆかりは思わず笑みを零したが...同時に力なく首をふった。

 

 

「いえ...私は逃げません。」

状況に流されそうになったが自分が逃げた場合、村がどんな事態になるのか想像してしまうと、ゆかりは逃げる訳にはいかなかった。

この山に住まう神獣きりたんぬは古くから近隣の村々を守り、多くの恵みを授けてくれている。

村を守るためなのか、それともたんに力が漏れ出ているのかは定かでは無いが...これまでの加護の代償と村の今後を考えれば、自分一人の命など差し出すべきだと、ゆかりは感じたのだった。

 

...最悪、神獣の逆鱗に触れたら小さな村等、壊滅してしまいかねない。

 

 

「私一人で済むのならば...村のためにも命を捧げるべきでしょう」

そんな思考を巡らせたゆかりの瞳には決意に溢れ、それを見てしまった親友達は何も言い返すことはできなかった。

 

 

 

「こ、これを私が着て良いのですか?...はあ」

数日後、ゆかりを何とか助けようと奔走したくれたらしく顔色が悪い村長の手によって申し訳無さそうに渡された生贄の衣装は、純白の衣服で...何というか嫁入り衣装のようだった。正直、1村人のゆかりは生涯目にすることも無さそうな逸品だった。

 

 

「こんな展開になるなら、きりちゃんともう一度...いえ、会えなくなってしまって逆に良かったのかも知れませんね。あの子、勘が良いから」

小さいころから一緒に居た小動物は何かにつけ危険を察するとゆかりに教えてくれ、助けてくれたことは何度もあった。仮にこの場にいた場合、ゆかりは無理やり村から連れ出され逃げていたかもしれ無い...なんて思いつつ、ゆかりは神獣が待つ山奥に連れて行かれたのだった。

 

 

 

 

 

「わっ...灯りが浮いてる?」

連れてこられた山奥にある洞窟...と言うには広過ぎる空間は、輝く光の玉が無数に浮く神秘的な場所だった。

そこは神聖な場所らしく、案内に来てくれた人は入ってこれず、ゆかり1人になっていた。

 

 

「ここに神獣きりたんぬ様が...わっ!......え?きりちゃん!?」

自身を捧げる相手をキョロキョロと探すゆかりに...見慣れた小動物が胸に飛び込んできた。

 

 必死にぎゅーぎゅーくっついてきたのは、いなくなっていたはずの小動物...きりちゃんだった。

 

 

 

「どうしてここに...ま、まさか私を心配して?」

幼いころから一緒にいて、心配性なこの動物なら自分を助けるために来たのではないかと、ゆかりは思い当たってしまう。しかし、それをされてしまうと自分一人の命では済まない事態に陥いることに、ゆかりは顔色を青くした。

 

 

「きりちゃんだって、ただではすまないかも...」

眷属かもしれないとは言え、見た目より力があるとは言え、久しぶりの再開に喜んで嬉しそうになき声をあげる小動物が、伝え聞く神獣と戦うなんて、ゆかりにはどう考えても無理だと思えた。

 

 「神獣きりたんぬ様が来る前に、きりちゃんを逃がさないと...」

状況に混乱し久しぶりに胸に収まる存在に嬉しくなりつつも、ゆかりは決意を固めたのだった。

 

 

 

 

 

その後、ややこしいがきりたんぬが来る前にきりたんぬを遠ざけるため、冷たく当たろうとしたゆかりが潤んだ瞳を向けられ断念したり、

 

人目がつかないここなら大きくなれると巨大になったきりたんぬにゆかりがダイブしてモフモフモフモフモフモフしたり、

 

モフモフを力の限り楽しんだゆかりが、事ここにあって【きりちゃん=きりたんぬ】に気づいたり、

 

何とか意思疎通したら、神託でゆかりを(お嫁に)欲しいと告げたら、生贄だと勘違いされていたことが分かったり、

 

ゆかりを生贄から救うため、駆けつけて来た幼なじみに事情を説明するはめになったり、

 

結局、ゆかりが神獣きりたんぬの巫女的な役職を得たものの、変わらない日常に戻ったり、

 

ツガイになったので、エッチなことをしようときりたんぬが人化したものの、神獣としては幼かったらしいきりたんぬの姿が10歳ほどのしかも女の子で、ゆかりが頭をかかえたり、

 

きりたんぬの姉神らしい、ずん子とイタコが神界からやって来て無理難題をふっかけられたり、

 

色々あるのだが...まあ、なんと言うか、ゆかりときりたんぬは幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。

 

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