東北きりたんが、結月ゆかりを大好きな短編小説集   作:甘味処

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ゴールデンウィーク前に投稿予定だったのに、ズルズルと6月になってました。
世の中、楽しい事が多すぎて困る


㊾お留守番予定なゆかりさんと、宇宙より大切にされてるきりたん

 

 

     【ゴールデンウィーク、3日前】

 

「ま、まあ私なら?余裕でこなしちゃいますけどぉ?......」

私、結月ゆかりのお膝上に座って話しているのは東北きりたん、私がきりちゃんと呼んでいる子だ。視点の関係でお顔は見えないが、声の調子的に笑みを隠し切れずにニヨニヨしているようだ。

きりちゃんの2人の姉、ずん子さんとイタ子さんは5月の長期連休、いわゆるゴールデンウィークに用事があり、不在となってしまうらしい。

シスコンなきりちゃんは、当初駄々をこねていたのだが...

 

 

「私に任せてください、イタ姉様!ずん姉様!この東北家は私が守ってみせます!!」 

きりちゃんの扱いには慣れている2人の姉によって、おだてられ今ではお留守番にノリノリになっていた。単純過ぎて不安になるが、まあ小学生だからしょうがない。むしろ素直な良い子ってことで、安心すべきとこなのだろう。

 

 

「仮に不審者が来ても、きりたん砲のサビにして...」

きりちゃんが鼻息荒くドヤドヤしてる間に、イタコさん達の視線がこちらに向いているのに気付き...私は頷いた。

小学生が1人でお留守番なんて論外なので、姉2人としては私に保護者をして欲しいようだ。

言葉を出さずとも頷いた私にホッとするイタコさん達。視線や仕草でやり取りできるくらいに東北家に馴染んだ自覚をしつつ...褒めて欲しいのか、袖をクイクイ引っ張って主張するきりちゃんの頭を丁寧に撫でてあげた。

 

 

    

 

「ふふん、ふふーーん!!」

いつも通りで絶好調なきりちゃんの様子につい笑みがこぼれてしまうが......

この日、ゴールデンウィーク3日前を境に、きりちゃんの様子は日が経つにつれ弱々しくなってしまう事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     【ゴールデンウィーク、前日】

 

「はぁ...」

きりちゃんのため息が部屋に響く。最初気のせいかとも思ったがきりちゃんの調子は悪化し続け、ゴールデンウィーク前日の今では明らかに不調そのものだった。

 

 

 

「あの、ゆかりさん......いえ、何でも無いです」

そして原因を聞いても話してくれず、たまに何かを話そうとしてやめてしまう様子が見られるようになった。

正直、普段の調子に乗った様子とギャップが酷くて胸がザワザワしてしまう。慰めようと甘やかしてみても、きりちゃんの様子は砂漠に水を零したように少しすると元の状態、つまり落ち込んでしまう。

明日から始まる長期休暇に向け一緒に遊ぶ準備を色々用意したが、体調が悪いなら諦めた方が良いかもしれない。とりあえず、体調が良く無いなら今日は早めにお休みしようかと、きりちゃんに聞いてみる。

 

 

 

「体調不良ってわけでは無いので大丈夫です。ゆかりさんこそ、明日以降の準備は大丈夫なんですか?ゴールデンウィークで旅行に行くんですよね?」

...旅行?

明日と言わず、長期休暇はきりちゃんとお留守番の予定しか無いんだけど。まあ、近場の映画くらいには一緒に行こうと思ってたけど。

 

 

 

「え?...あの、2日前くらい前に茜さんと葵さんに大阪旅行に誘われてましたよね?」

あぁ、確かに2人の里帰りに誘われた。きりちゃん聞いてたんだ。いやまあ、私の所在地が最近ほぼ東北家近辺に集中してるから不思議では無いけど...でもその場で断ったはずだ。

「え、え...良いんですか?カニとか、お好み焼きとか食い倒れツアーだって」

それはめっちゃ惹かれたけど...、そもそもそこまで聞いてて私の返事は聞いてなかったの?確か即答したはずだけど

 

 

 

「偶然聞こえて、でも盗み聞きは良く無いかなぁって、すぐ離れたんです...じゃ、じゃあコンサートツアーの方に行くんですか?」

マキさんが誘ってくれたやつか。バンドのツテで、世界的に有名な歌姫のチケットを手に入る目処がたったらしく誘われた。県外なのでついでに旅行も誘われたが...それも断ったはずだ。

 

 

 

「...じゃあ、宇宙旅行の方に行くんですか?」

...IAちゃんのやつか。ちょっと不思議系がはいって天然気味なIAちゃんだが、実は本当に不思議な存在だったらしい。詳細は省くが、先月に宇宙的なアレコレに巻き込まれて大変な目に遭ったりした。

 

これで私の特異な友人は魔法少女に霊能力者に宇宙人になったわけだ。怖いのは自称未来人やら自称精霊やらが、まだ結構いるので私の周辺は不思議成分がまだ増加傾向にあることだ。

まあ、その辺の事情は今置いといて...

 

 

 

「え?え...?」

情報を飲み込めないのか、宇宙猫状態のきりちゃんを正気に戻そう。

つまりだ。きりちゃんは私が東北家のお留守番をほっぽり出して外出するって勘違いしてたんだ。

 

 

 

「だ、だって、お留守番頼まれたの私だけでしたし...」

そういえば、頼まれた際に返事をしてたのはきりちゃんだけだった。私もアイコンタクトで返事をしていたが、流石にドヤ顔真っ最中のきりちゃんが死角のやり取りを察するのは無理があったのだろう。

 

 

んー...これは、あれか。

最近のきりちゃんの不調、ゴールデンウィークに独りぼっちだと勘違いして気落ちしていたのか。

きりちゃんとは阿吽の呼吸的な意味で割と通じ合っているが、言葉にしないと伝わらないことだってある。自分がきちんと伝えなかったことで、きりちゃんを不安にさせてしまった事に罪悪感が沸いた。

今からでも、ちゃんと伝えないと。

 

出不精な私を心配してだろうが、友人たちに他にも色々誘われたが、全て断ったので長期休暇中はずぅっと一緒に遊べるよ、と伝える。

 

 

「それって、つまり...ゆかりさんは大阪の食べ歩きツアーより、私と一緒にゲームしたい...ってことですか?」

控えめに聞いて来るきりちゃんに、肯定を返す。

すると、きりちゃんの不安気な瞳の奥がキラキラし始めた。

そのまま私は、きりちゃんを優しく抱きしめ、その小さなお耳に如何にきりちゃんと遊んでいて楽しいのかを優しく語りかける。大事な友人兼妹が数日とは言え溜め込んでいた悩みを解消できそうなチャンスだ。ここを逃す手は無い。

 

 

 

「えへへ...じゃ、じゃあ世界的な歌姫よりも......いえ、宇宙よりも私の方が大事ってことですか?...ふへへ」

背中を撫で続けると、最近の不安が押し出されるようにきりちゃんの口からこぼれだした。きりちゃん曰く、私が色々誘われている所を目撃して、慌てて一緒に居たいと伝えようとしたが...誘われた先がどれも魅力的で、ただのお留守番では太刀打ちできず、しかもお留守番宣言をした手前私についていく選択もできずに、口ごもりつづけてしまったようだ。

理由は分からなかったが真剣に悩み続けていたことを知る私は、きりちゃんの悩みを溶かしてとあげるように、きりちゃんの言葉を全肯定してあげた。世界よりも宇宙よりも、きりちゃんの事が大好きだよと、言葉だけでなくぎゅぅっと抱きしめて伝えてあげる。普段から抱きしめ合って洗練された密着具合は、きりちゃんの心に届いたらしく力が抜けて嬉しそうな声が漏れだした。

 

 

 

「しゅき...んっ......ゆかり、さん。しゅき、好きですぅ...」

その後も、たっぷりと優しく語りかけ続けること10分程。安心したのか、きりちゃんは寝息を立て始めた。腕と足でがっちりホールドされ、寝相で首に甘噛みされつつ寝言で告白され続けているが、きりちゃんが不調に陥る前のいつも通りなので、むしろ安心してしまう。

安心と、心をこめてきりちゃんに語り掛けていた分私も疲れたのか、私もそのまま眠り...明日から始まるゴールデンウィークに向けて力をためるのだった。

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