きりちゃんの部屋入ると、ポッキーの箱が積み重なってた。大人買いしたらしい。
「今日はポッキーの日...さあ、ゲームを始めましょう!!」
また何かアニメでも見たのだろう。ポーズを決めつつセリフを発するきりちゃん。いつも通りの光景だ。
要約するとポッキーゲームがしたいらしい。
ポッキーゲーム...確か”ゲーム”とは名ばかりのイチャイチャするための、恋人向けのイベントだったはずだ。
「ゆかりさんとイチャイチャしたいので、それであってます。むしろポッキーが無くても構いません。イチャイチャしましょう。」
きりちゃんは私に対して欲望をオープンにし過ぎだと思う。真剣な顔で訴えかけてくるので、ぼーっとしてると流されて頷きそうで怖い。
と言うか、ポッキーゲームにポッキー使わないとか、それはただのキスだ。小学生と如何わしいことをするつもりは毛頭ないので断る。
「むう、好感度は足りてる気がするのですが、ゆかりさんの倫理観的なのが最大の敵のようですね。...でもまあ、確かにルールとかしっかりしてないですよね。唇が触れ合ったらアウトでしたっけ?」
その場合、お互いに食べ進むから、両方失格になって勝敗が分からなくなってしまう。
...いやまあ、勝敗なんてそもそも付けない、協力ゲーム的な感じなんだろうけど。
対戦ゲームっぽくするなら、ポッキー1本ずつ先攻と後攻を分けて、片方だけが食べ進めるようにすれば、少なくともどっちが失格かはっきりしそうかな?
「ふむふむ、確かに。それなら勝敗は残ったそれぞれのポッキーの短さで決めればOKですかね。」
それと、攻める側じゃ無い時も、咥える長さを決めないとそこも不公平に...
「後は時間制限なんかもキチンと決めないと...」
その後、夕食中まで続いたポッキーゲームのルール検討は、A4一枚に箇条書きでまとまり、夕食後に無事ゲームは開催されることとなった。
「さあ、勝負ですよ、ゆかりさん!!」
互いにチキンレースを行う単純なゲームだが...お互いの性分なのか、きりちゃんとのゲームは白熱することがほとんどで、このゲームも例に漏れることは無かった。
「ふふっ、流石はゆかりさんです。」
ゲームは進み、きりちゃんの不敵な笑いに私もニンマリ笑みを返す。デュース制《※注1》を採用したために続きに続いた延長戦に、私達はしのぎを削りあい...
きりちゃんの要請で、唇が接触したかビデオ判定用のカメラ映像《※注2》を2人で見始めた時に、そろって正気を取り戻して赤面した。
...おかしい。最初はルールの話しをしていただけで実際にやるつもりは一切無かったのに、どうしてこうなった。《※注3》
「えっ...と、あの、ビデオ判定の要請、取り消せます?」
例のごとく膝に乗っているきりちゃんも良く分からないノリに乗って、良く分からないことになっていた事に気づいたらしい。私も真剣な顔でアホなことをやってる自分の姿はこれ以上目に入れたく無いのでゲームはそこで終わった。
「何か、疲れましたね。おやすみなさい。」
きちんと黒歴史...ビデオカメラの映像を消し、歯ブラシをして、2人で布団に入る。
確かに疲れていたらしく、意識はすぐに薄れていった。
《※注1 デュース制》夕食中に会話に入り込んだずん子さん発案により採用。2点以上の点数差が無いと勝敗が決まらないルール。結果として試合が長くなる要因にもなる制度。
《※注2 ビデオ判定》夕食中に会話に入り込んだずん子さん発案により採用。映像を元に判定する制度。今回使われたビデオカメラは高画質高音質を誇り、さらに常にWi-Fiを飛ばしてバックアップを作成し続けるずん子さんからの借り物。
《※注3 誘導された会話》夕食中に会話に入り込んだずん子さんの仕業。絶妙なトークで気付かれずに、ゆかきりコンビの背中を押し、ポッキーゲーム実行まで進ませたずん子さん。今話の立役者でもある。