幸運の子   作:水上竜華

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第九話です

沢山のお気に入り登録ありがとうございます!!

第一章のエピローグを書き終えたら、週二投稿を考えている作者です

序盤は他人視点からスタート、後半から主人公視点となっています

………最近、天地スタートのデンドロ二次が増えてきましたね

きっと、原作の蒼白が始まれば、グランバロアスタートの作品も出てくるんだろうなぁ~



第九話 三人と一人

■【巫女】きのこ餅

 

 私は新人プレイヤーのきのこ餅

 

 友達に誘われてこの<Infinite Dendrogram>を始めた現役の女子高校生

 

 正直ゲームとかに興味がなくもっぱら本ばかりを読んでいる。

 

 今回私を誘ってくれた男友達に前からよくゲームを一緒にやろうとしつこく勧められるものだから、毎回最初だけソフトを借りてある程度一緒にやってから何がつまらないかを懇切丁寧に言ってからやめている。

 頭ごなしにつまらないと言っても逆効果なので毎回こうしているだが、本当につまらないから仕方がないのだ。

 このゲームだってすぐに飽きると思いながら、その友人曰く超がんばって手に入れたらしいそのゲームの装置を自宅の自室で着けてゲームを始めたのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はその世界観に終始圧倒されていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チュートリアルを担当してくれた管理AIのチャシャと話をした時も、友達との待ち合わせの場所である天地に投下された時も、NPCと話をした時も、ただ歩いている感触を感じている時でさえ、私はこの世界のリアルさに驚かされていた

 

 そして、街を一通り回った後私の〈エンブリオ〉が孵化したとき、この世界に来てよかったと、心の底から感じた

 

 

 

 

 私の〈エンブリオ〉であるTYPE:ガードナー【不屈巨神 ヘラクレス】は私の理想を体現した私だけの“英雄”だった。

 

 

 

 

 私は英雄が活躍する神話や伝承が書かれた本を読むのが好きだ。

 特に英雄が窮地に立たされたりする局面や、常人にとって乗り越えるのが困難な試練を己の全てを賭して乗り越えていく彼らの姿が大好きだ。

 ライトノベルも時々読むが、最近はあまりいい作品に巡り合わないので読んではいない。

 流れで手に入れてしまった力とか、元から特別な力があるというのはまだいいのだが、そこからなんの苦労せずに自分の欲しいものを手に入れていくただ作者の願望を書いた物語は嫌いだ

 

 困難な試練を自分なりの形で乗り越えていくからこそ、それに見合う対価が英雄と呼ばれるものには支払われるのだと私は思っている。

 

 その私が思い描いた理想の英雄のあり方をヘラクレスは体現してくれた。

 

 ヘラクレスには私へのステータスの補正は一切ないどころかMPとSP以外のステータスにマイナスの補正を掛け、その代わりに自身のステータスを上級戦士職並みのステータスにまで高めている。

 唯一のスキルである《宝具顕現》は自身のステータスに相手より下回っているものがある場合、そのステータスを2倍にし、そのステータスに対応する武具を一つ召喚し使いこなすスキルである。

 

 その対価として召喚中は私のMPとSPが継続して消費され、スキルの使用をやめた瞬間にヘラクレスに対して使用時間に比例した一定時間、強化したステータスが半減するという戦闘中に効果が切れればほぼ確実に負けるというリスキーなものになっている

 

 

 

 だがこれは私が望んだ力そのものだった

 

 

 

 あらゆる状況に対応できる力を手に入れる代わりにそれ相応の対価を払わなければならない

 

 これは私にとって当然のルールなのだから

 

 そして、力だけではなく礼節を忘れない気高い精神を持ち合わせるという完璧な英雄が私のためだけに存在しているのだ

 

 

 これを運命と思わずにいられるわけがない。

 

 

 そして、私たちは各々の〈エンブリオ〉の性能を試すために後から合流したクラスメイトと一緒に狩りに出掛けた

 

 そして最初のフィールドにいるモンスターはヘラクレスに全く手も足も出せずに敗れ去り、光のかけらへとなっていった

 

 その様子を見て、私は完全にうぬぼれてしまったのだ。

私のヘラクレス(英雄)は最強なのだと………

 

 

 

 だから私は柄にもなく心を弾ませながら、私たちのレベルに適正じゃないフィールドまで行こうと言ってしまったのだ

 

 

 

 私をゲームに誘った彼はそんな私を止めたのだが、もう一人のパーティーメンバーが私の意見に賛同してしまったため誰も私たちの歩みを止めることが出来なかった。

 

 

 

 そして、私が自分の英雄の最強を確信してから十数分後、私達は自分たちの未熟さに気付かされるのである

 

 

 

 

 圧倒的な絶望によって………

 

 

 

 

 

             ◆

 

 

 

 

 私たちがそれと出会ったのは、先程まで私たちがいた〈西鷹草原〉から一つ先にあるフィールドの草原の中央に近づいてきた時である。

 そこまで順調にモンスターを狩ることが出来ていた私たちの前に【ゴブリン】の集団が襲ってきたのだ。

 ここまでの道中で多くの【ゴブリン】を倒してきた私達には何ら問題はない相手のはずのだがその数が異常だった。

 

 

 

 50体以上の【ゴブリン】達がいることが目測で分かり、その中には【ゴブリンウォーリアー】や【ゴブリンアーチャー】もたくさん見える。

 

 

 

 これまで相手にしてきたものとは(まさ)しく量が違う。

 

 

 

 でも、私は信じていた。私のヘラクレス(英雄)なら目の前の敵を薙ぎ払ってくれると。

 

 

 

 

 しかし、それは圧倒的な強者の登場によって覆される。

 

 

 

 

 そう、あの【オーガリーダー】が現れたのだ。

 

 

 

 

 奴が現れるまでヘラクレスはその屈強な手足で敵を蹂躙していたのだが、ヘラクレスの周りの敵が減ったと思いきや【オーガリーダー】が目の前に立ちはだかり真っ向勝負を挑んできたのだ。

 

 そして、そのステータスの差によってヘラクレスはこれまで味わったことのない窮地に立たされ、切り札の《宝具顕現》を発動することになる。

 

 私が選んだステータスはSTR、そして召喚されたのは武骨な形をし、煌々とした光をともす巨大な棍棒である。

 そして、ヘラクレスはその棍棒を自在に操り【オーガリーダー】へと迫り、形勢は立て直されたかのように見えたが

 

 

 

 

 実際には何も変わらなかった

 

 

 

 

 

 元から全てのステータスがこちら側の方が劣っていたのだ、当然AGIもこの時のヘラクレスの方が劣っているため攻撃力が上がっていても全く当たるどころか掠りもせず、ただただ相手の攻撃を受けるだけの状況は変わらなかった。

 

 その様子を茫然と見つめることしかできない私は絶望に打ちひしがれていた。

 私は【巫女】のジョブについているが今回復系のスキルを使えば《宝具顕現》を維持する分のMPさえなくなってしまい、完全に打つ手がなくなることになる。

 私がやられれば同様にヘラクレスが消えてしまうため、他のパーティーメンバーの二人が何もできずにいる私を守りながら戦ってくれている。

 

 

 

 でも、やられるのも時間の問題だ。

 

 

 

 明らかに周りの【ゴブリン】の強さが今までに戦ってきたモノよりの強くなっているし、仲間の二人のダメージもかなり蓄積されている。回復アイテムももうすでに尽きていた。ヘラクレスが今の状態を維持できるのは後もって十五秒ほどだ。

 

 

 

 状況は絶望的でもうこれまでかと思われたその時だった。

 

 

 

 

 

 あの人が助けてくれたのは。

 

 

 

 

 

 私達から遠く離れた数十メテル先から拳くらいの大きさの黄色い光弾が4発、【オーガリーダー】の背中に直撃した。

 誰かが助けてくれたのかと私の中で新たな希望が生まれたのだが、それは【オーガリーダー】に大したダメージも与えることもできず一瞬気を逸らすくらいしかできなかった

 

 その一瞬でさえ決定的な隙にすらならず、ヘラクレスが攻撃を当てることもかなわなかった。

 

 もう本当におしまいだと、またしても絶望に飲み込まれそうになった私は、同じ方角から放たれた同じ光弾が【オーガリーダー】に直撃し、急に倒れた敵の総代将の姿を見て思考が停止した

 

 

 

 

 一体何が起きたのか。そんな疑問が頭の中に湧いてくる。

 

 

 

 

 そんな私とは違い、敵の見せた決定的な隙を見逃さなかったヘラクレスは《宝具顕現》の効果時間残り一秒でぎりぎり相手に会心の一撃を食らわせて倒していた

 

 そこからは正体不明の光弾が次々に【ゴブリン】たちへと放たれていき、同じ方向からやってきた尻尾を二つ持った大柄の猫のモンスターの二体が身動きの取れない【ゴブリン】たちに止めを刺していっている。

 そして、私のパーティーメンバーもそれに協力して全滅させることで、なんとかこの窮地を乗り越えることが出来たのであった。

 

 あの状況から助かったのは確実にあの光弾を放った人のおかげだ。

 

 お礼を言わなければと思い光弾が放たれた方向を見ると戦闘が始まるまではなかった二階建ての日本家屋(・・・・・・・・・)がある。

おそらくあそこから攻撃していたのだろう。

 相手が来る気配がしないし、どうしようかとドロップアイテムを集め終えたパーティーメンバーと一緒に考えていると(くだん)の民家の方から布のようなモンスターが、言伝が書かれた紙を持って飛んできた。

 

 どうやらこちらが向こうまで出向いて欲しいとのことらしい。

 とくに異議はなかったので大人しくその指示に従い、私たちは民家の方へ移動するのであった。

 

 

 

 

             ◇◆

 

 

 

 

□【式神術師】夜ト神寝子

 

 一先ず、彼らを呼んだ私は玄関まで出迎えに行きリビングまで案内した。

 ガードナーらしき巨人には紋章にいったん戻ってもらった。

 天井に頭ぶつけそうだし、入り口にそもそも入りきらない気がしたので仕方がないことなのだ。

 

 この三週間のうちに第三形態まで進化したザシキワラシは二階建ての日本家屋となり、もはや完全に家族単位で居住できるほどの大きさになっている。

 さらに、《童のもてなし》がLv.2に上がったことで回復量が秒間2ドットになり、コタツ以外でもリビングや客間で楽にして座る、または寝たりするだけでも回復することが出来るようになった。

 

 もう一つ追加でスキルが出来たのだが説明はまたの機会に取っておこう。

 

 

 

 そんな訳で着々と住居化が進んでいるザシキワラシの一階にあるリビングに彼らを案内し、コタツに入って待っているように伝えた私は奥のキッチンへと向かい茶菓子とお茶を準備することにしていた。

 初めてのお客さんだし、心身ともに疲れている彼らから話を聞くにしても落ち着いてからがいいだろうと考えての行動だ。

 都合のいいことにここら辺の敵ならザシキワラシと式神が余裕をもって倒せるレベルである。

 式神の活動限界時間が来たら、今は出さずに残している式神を召喚して対処すればいいし問題ないだろう。

 

 

 

 そんなこんなでお茶を入れ終えた私は、お茶とお菓子を置いたお盆をもってリビングへと向かう。

 障子はザシキワラシが自動で開けてくれるので両手がふさがっていても問題ないというハイテク仕様である。

 そして、障子を開けた先にはコタツで幸せそうにしている三人組の姿が目に入った。

 

 

「お待たせしました。お茶、入りましたよ」

「「「あ、ありがとうございます!」」」

「いえいえ、私の方こそ疲れているだろうに呼びつけてすいません。これはせめてものお礼みたいなものだから遠慮なく食べて大丈夫ですよ」

「「「いや、でも、その………」」」

 

 

 三人とも同じセリフを同時に言ったので少し可笑しくて吹きそうになりつつ、次の言葉を彼らが放つよりも先に真面目な雰囲気を出しつつ牽制する。

 

「別に私はあなた達にお礼を言ってほしくて助けたわけじゃないんです。ただあのままあなた達を放って置いたら後味が悪くなるから助けただけなんです。だから別に変に意識してお礼をしないと、とか考えてなくても大丈夫ですよ。」

 

 最後の方は笑みを交えて言ってみたが、やはりまだ納得できないのか彼らの顔の表情は険しいままだ。

 そんな中で何かに気が付いたのか、眼鏡の男の子から疑問が投げかけられる。

 

 

「あの、後味が悪いというのはどういうことなのでしょうか?」

「それはまあ、そのままの意味ですけど?」

 

 

 どうやら、明確な理由が知りたいらしいのでそのまま続けて話す。

 

 

「まあ、そうですね。簡潔に述べるなら、私はあなた達にこの世界を嫌いになってほしくないから、ですかね」

「嫌いに?」

「はい。でも、これだと抽象的すぎますね。分かりにくくてすみません」

 

 

 苦笑いをしつつ簡潔に言い過ぎたことを彼に謝った。

 

 あまり気は進まないし不幸自慢をしてるみたいで嫌だったけど、ちゃんとした理由を話すことにした。

 

 

 

「実はですね。私、この世界でトラウマが出来てしまったんですよ」

 

 

 

 突然私がそう言うと聞いていた三人がその言葉に驚いた反応を見せる。

 

 

 それに構わずに私は話を続ける。

 

 

 自分がこの世界に来た時のことから準備を済ませて張り切って狩りに出かけたこと、そして自分のドジでわざわざ作らなくていいトラウマを作ってしまったあの時のことを話して、いったん話を区切る。

 

 重い空気に耐え切れなくなったからではない。

 

 あの時のことを思い出して辛くなってきたからだ。

 

 やはりあの時のことを思い出すと怖くて震えが止まらなくなるし、少し息も苦しくなる。

 

 でも、前に松井さん達に話した時よりは楽になっている。

 

 少しずつ進歩はしているのだろう。

 

 そのことを再確認し、自分のお茶を飲んで落ち着いたところで話の続きを始めた。

 

 

 それからしばらくログインできなかったこと、もうやめてしまおうかとも考えたこと、でももう一度戻ってきてよかったと思ったこと、今ではこの世界で出会ってきた人との記憶が自分の中ではかけがえのないモノになっていることを話して私はこう締めくくった。

 

 

「だから、あなた達には私みたいになってほしくなくて助けたんです。この世界の悪いところばかり見てたあの時の私みたいに。確かに怖いこともあるけど、ここには素敵なこともたくさんあることを知ってほしかったから」

 

 

 さっきからかなりこの部屋の空気が重いのだが、まあしょうがない。

 もっと、掻い摘んで言えばよかったのだが自分のリハビリと初心の再確認をするのにも丁度良かったので全部話した。

 おかげさまでもう30分くらい時間が経っている。

 

 少し悪いことをしてしまったかな?と思っていたところに先程私に質問をした眼鏡の男の子から私に謝罪の言葉が返ってきた。

 

 

「すみません、辛いことを思い出させてしまって。実はもしかしたらあのモンスター達をけしかけたのが貴方なのかと勘ぐってしまって……、本当にすいません!!」

 

 

 すさまじい勢いで土下座をした彼を見て、なるほどと、思った。

 聞きようによればそうと取られても仕方がない。

 タイミング的にもかなりシビアな所で出てたからそこら辺を疑われたのかと、一人で納得していると眼鏡の彼が他のメンバーに責められている光景が目に入った。

 

 

「あんたそんなこと考えてたの!この人がそんなことする人だと思ってたの!!」

「全くだ。君がそんな冷たい人間だとは思ってなかったよ」

「いや、悪いとは思ったけどさ、だっておかしいと思うだろう?ドロップアイテム狙いだったら俺たちが全滅すれば独り占めできたのにそれが理由じゃないってことは、何か俺たちに後ろめたいことしたからとか、考えるだろ?」

「あんたのその発想が!!」

「まあまあ、もう私は気にしてませんからケンカしないでください。彼の考えもわかりますので仲間を思っての行動だと思って許してあげてください」

 

 

 止まりそうにない批判が眼鏡の彼に降りかかるのは気の毒だし、これ以上この空気は私が耐えられなかったので言い争いを中断させた。

 そしたらなぜか三人から尊敬の眼差しを送られてしまった。

 

 

 

 なぜだ?

 

 

 

「は、はい。分かりました。……そのごめん、ちょっと言い過ぎた」

「……僕も悪かった。自分も少しは考えていたことを差し置いて言葉に出した君のことを責めるだなんて論外だった。本当にすまない」

「いやいやいや、わかってくれればいいから頭を上げてくれって」

 

 

 よし、仲直りもできたようだしここは気を取り直して話を続けよう。

 

 

「じゃあ、話もひと段落ついたことだし今更だけど自己紹介をしましょう。私の名前は夜ト神寝子です。ジョブは【式神術師】に就いてます。よろしくね」

 

 

私がそう言うと眼鏡の彼から順番に自己紹介を始めた。

 

 

「はい、じゃあ俺から。俺の名前は黒桐シキって言います。ジョブは【忍者(ニンジャ)】に就いてます。先程は失礼しました。」

「じゃあ次は僕で。僕の名前は鳳凰院天摩。ジョブは【剣武者(ソード・サムライ)】に就いている。よろしくお願いします、ミス・夜ト神」

「さ、最後に私ですね。私の名前は、その……、き、きのこ餅って言います。ジョブは【巫女(シュライン・メイデン)】に就いてます。先程は助けていただきありがとうございます!!」

 

 

 こんな感じでやっと自己紹介を済ませた私たちは、先ほどの戦闘についての話をするのであった。

 





今回は姫様願望を持つJK視点スタートでした

新キャラ三人のうち二人は名前からお察しの通り、とある作品のフォロワーです

イケメソの方は名前だけ拝借してる感じですね

最後辺りが作者的に今一に感じるのですが、悲しいことにその作者が基本的にアホなのでこんな流れになりました

でも、MMO系のゲームだとMPKなんてモノもありますから中途半端にゲーム慣れしてると、少し疑ったりする可能性も無くは、ないですよね?

この三人の詳細は次回書きますのでそこまで辛抱していただけると嬉しいです

あと、次回は今週中に更新します

‐追記‐
シキ君のジョブを【斥候】から【忍者】に変更しました
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