幸運の子   作:水上竜華

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どもども、水上竜華です

今回の話は正直にいうと私もなぜこんな感じで書いたのかよく分からない謎な回です

今回は新キャラの説明回みたいな話ということで納得していただけると嬉しいです

途中で読むのがつらくなったら、最後の後書きの方で三人の説明が書かれているのでそこだけ読んでしまえば今後の展開的には問題ないです





第十話 指導と交流

 

□【式神術師】夜ト神寝子

 

 ふむ、なるほど。大体わかった。

 

 つまり、自分たちの〈エンブリオ〉の性能にかまけてどんどん先に進んでたら強敵にエンカウントして死にかけた、という感じか。

 自分も似たようなことを前にやってしまったので特に叱る気にもならないのだが、このゲームを始めた先輩として何について話をするか方針を決めた。

 

 

「まあ、最初の内は気が緩んで失敗するのが普通らしいので、むしろ早めの段階で自分達の限界を知れたことの方が収穫だと思いますよ。それよりも今は負けそうになったことより、どうして負けそうになったのかを考えた方が賢明ですね」

「えっと、俺たちの敗因ってただの実力不足だったんじゃあないんですか?」

「えぇ、当然それもありますが、戦い方次第でどうにかなったかもしれませんよ?遠目からあなた達の戦闘を観察してましたけど非効率な戦い方だと思いましたし、そこを改善すればもう少しは粘るなり出来たと思います」

 

 

 私がそう言うと三人とも意外そうな顔をした

 

 

 初心者で経験が浅いこともあるのだろうが、どうやら本当に気が付いていないらしい

 

 

 第三者から見ての意見だし一概に合っているとも言えないので参考までに彼らの戦闘スタイルについて聞いてみた。

 

「まずは、黒桐君ですけど道中はどんな戦い方をしてましたか?」

「えーと、敵に突撃してナイフで急所を一刺しして倒してました」

「それって、あなたの〈エンブリオ〉の能力に合わせて作ったスタイルだと考えてもよろしいですか?能力については別に嫌なら話さなくて大丈夫ですから」

 

 それから黒桐君はしばらく悩んだ後に、問題ないと判断したのか話してくれた。

 

 彼の〈エンブリオ〉は今彼が身に着けている眼鏡だそうで、その名は【戦神心眼 アテナ】と言うらしい。

 その能力はあらゆる生きとし生きるモノの急所となる部分を発見し、自身が急所に対して物理攻撃をしたときにのみダメージ補正を付与するという力で、急所になる部分には赤いマーカーが浮き出てくるらしく、これを利用して隠れている敵も事前に察知することが出来るのだという

 

 

「うん、あなたの場合本来は攻撃にのみ特化したタイプだから守勢に回ると厳しいし、なるべく遊撃に努めた方がいいのだろうけど、あの状況じゃあ仕方ない面もあったしむしろこの中じゃ一番うまいやり方だったから大きな反省点はないですね。このままのスタイルでも十分通用すると思いますよ」

「あ、ありがとうございます!!」

 

 

 褒められたのが嬉しいのか、笑みを浮かべながら頭を下げて彼はそういった

 実際にこれ以上言うことがないくらい完成してたスタイルだったので特に何かを言うまでもなく終わってしまった

 

 問題は他の二人である

 

 

「それで次は鳳凰院君に聞きたいのだけど、これまでずっとあんな感じで戦っていたんですか?」

「もちろんですとも、ミス夜ト神」

「あらかじめ言っておきますけど、あのやり方はやめた方がいいですよ」

「なんですと!!」

 

 

 本人は驚いているが、隣に座っている黒桐君は「やはりそうか」と、でも言いたげな顔をしていた

 あれが流石に間違っていることに薄々分かっていたのだろう

 

 

「まず、剣を振る技術ですがこれは修練あるのみなので一概には言えませんが、〈エンブリオ〉の使い方がまずアウトかと」

「使い方?僕は自分なりに考えて有効活用していると思うのですが?」

「確かに私が戦闘で見ている限りでは足止めに使うのはいいのですが、【魅了】の状態異常を発現した個体も倒すのは明らかに下策です」

「?」

 

 

 どうやら、本気で分からないらしい

 

 「この人、本当に大丈夫か?」と、思いながら説明する

 

 

「私が言いたいのは、わざわざ自分の手下にしたモンスターを有効活用せずに自分の手で殺すのは下策だと言っているんですよ。【魅了】は敵の動きを操れる強力な状態異常なんですからこれを有効活用しない手はありません。同士討ちさせるなり、自害させるなりした方が、効率がいいということです」

 

 

 そして、こういう使い方を前提とするのなら今のジョブの組み合わせも微妙である

 いっその事、支援特化にでもなった方が強いだろう

 

 

「念のために聞きますけど、鳳凰院君の〈エンブリオ〉の能力は中身の液体をかけて発動するタイプでいいんですよね?」

「いや、それは少しばかり違います、ミス夜ト神。僕の【ディオニュソス】は特定の状態異常が付与された酒を生成する能力を持っているんですよ。戦闘中は効果を薄めることでMP消費を抑えて使っていたのです」

 

 

 効果を薄めると、どの状態異常になるかは分からないランダム形式で状態異常を低確率で発生させられるらしく、長期戦のために使用していたらしい。

 次で、最後に聞きたかったことを聞くことにした。

 

 この質問が意外と重要になる。

 

 なにせ、彼自身がその特性の恐ろしさを理解していないのかもしれないからだ。

 

 

「最後に、その作られたお酒は時間経過で効果を失いますか?」

「少々お待ちを。………テキストにはそのようなことは書かれていないので多分失いませんね」

 

 

 うん、完全にアウト

 

 

 当の本人以外は全員気が付いたらしい。

 

 

「失礼ながら単刀直入に言います。完全にあなたは使い方を間違えている」

「な、なんですと!!」

「いいですか、あなたの〈エンブリオ〉はあらかじめお酒を作っておかないと脅威が半減するんですよ。しかも、相手にかけるときのモーションが大きすぎるから隙が出来やすくなる。それを改善するために外付けの入れ物が今のあなたには必要なんですよ。街に行けばかなり安い価格の瓶や容器が買えるのでそれに詰めてから戦闘に使った方が隙もできにくいし、遠くまで投げられる。それにアイテムの効果も発揮しやすくなるという寸法ですね」

「なるほど、そういうことですか!」

 

 

 本当に理解しているのか不安になる返答だが後は彼の仲間に任せよう

 言葉には出さないが彼は生産職に転職して、〈エンブリオ〉が作ったお酒を売ったいた方が稼げるタイプな気がするのだが、それは本人の意思に反することだと思うし私が言うことではない

 一先ず、彼の場合は前衛だと〈エンブリオ〉とシナジーさせるにはかなり難しいと思し、最後に一言助言を残しておこう

 

 

「これは先輩としてのアドバイスですけど、〈エンブリオ〉を使った戦いをするのであれば早めにスタイルを変えた方がいいですよ。私も発現して変えた口ですし」

 

 

 正直な話、私個人の感想だとマスターは〈エンブリオ〉無しだと、ただのティアンとそこまでスペックに大差はない

 だからこうして言葉にせずに、仮に戦闘職に就きたいのなら転職をした方がいいよ、と勧めているのである

 しばらくしてから鳳凰院君も考えるところがあったのか、私の方を向いてこう返してきた

 

 

「分かりました。ありがたい助言に感謝します。戦闘スタイルの方も考慮はしておきましょう。」

 

 

 なんとか、この件を通じて自分でモノを考えることを覚えてほしいものだ

 今後の彼がどのように成長するか今から楽しみだ

 

 

 

 そして、最後に残ったのはきのこ餅さんの戦い方についてだ

 

 

 

 彼女の場合、〈エンブリオ〉の性質が分かりやすい類のものだったのだが、さっきの話を聞いていて気になることがあったので先程の二人と同様に確認を済ませることにした

 

 

「始めにきのこ餅さん。あなたの〈エンブリオ〉のスキルなのですけど、選択するステータスはあなたと〈エンブリオ〉のどちらに選択権があるのですか?」

「………基本的に私ですけど」

 

 

 やはりそうだったか、と自分の考えが正しかったことを確認した私は彼女に警告を発する

 

 

「もう気が付いているかもしれませんが、今の戦い方を変えずにまた違う強敵とあなたの〈エンブリオ〉が戦えば、あなた達の勝機は薄いでしょう。なにせ、あなた達には準備が足りていませんから」

 

 

 その言葉を聞いて、きのこ餅さんは心当たりがあるようなそぶりを見せた

 どうやら分かっていることはあるようなのだが答えづらいらしい

 

 

 そんな彼女をすこし後押しすることにした

 

 

「ここまで聞いて、自分で何か分かったことがあったら遠慮なく言って下さい」

「はい。今思いつく限りだとヘラクレス、……私の〈エンブリオ〉との合図の確認が必要だと感じました。私が、彼が本当に強化を望んでいるステータスを選択できるのか、自信がないので」

 

 

 右手で自身の左手の紋章を撫でながら、そう答えた彼女は答えた

 おそらく、先の戦闘で自分が強化するステータスの選択に失敗したせいで自分の相棒を危険な目に合わせてしまったことを憂いているのだろう

 実際に戦っている人に聞いた方が確実に求めたものを選択できるはずだと考えたわけだ

 

 悪くはない考えだが、それで“最適”を選べるのかとは聞かれれば答えは否である

 

 そういうことで、一応他の方法も彼女に提案してみることにした

 

 

「それもいいかもしれませんが、もっと確実にスキルで弱点をカバーしたいのであれば《看破》を取得して相手のステータスを見れるようにするのがベストですかね。そうすれば、相談せずに優位に立てるようにステータスの選択もできますし。ただ、一部の高レベルモンスターには効かないこともあるので合図を考えるというのもありですね。」

 

 

 正直な話、無茶をすることが前提の話なので彼女のいうやり方のほうが賢いのだが補足として伝える分には問題ないだろう

 それに、このパーティーには【忍者】の黒桐君がいるので役割分担をどうにかすれば彼女がわざわざ《看破》があるジョブを取得する必要もなくなるだろう

 

 ジョブに関して言えばスキル的にMPやSPに補正があるモノさえ選べば問題ないし、発動中にどうするかは当人の判断によるものだから外野がとやかく言うことではない

 

 

「あとはヘラクレスのスキルが発動している時に、本来パーティーで回復役を担当しているきのこ餅さんの動きをどうするかを決めるくらいですかね。戦闘中にただ棒立ちになっているだけだと邪魔になりますし、回復役が抜ける穴は意外と大きいですから」

 

 

 実際に、この手のゲームにおいてパーティー単位で対戦をするときに回復役の人間が真っ先に狙われることからその重要度がよくわかる

 回復役がいることで通常よりも長い時間の戦闘が継続可能になるというメリットを消して短期決戦に挑むというのは悪くはないのだが、今回のように相手の数が多い状況下で使用すると相手側を殲滅するよりも先にこちら側がやられやすくなるリスクがかなり跳ね上がるのだ

 

 

 彼らが早々にピンチに陥ったのはこの辺の認識にも問題があったからのように思える

 

 

「まあ、そのことについて具体的に考えるのは自分たちでした方がいいでしょう。下手に意識させて柔軟に対応できなくしてもむしろ害ですし。最初に偉そうなことを言っておいて、特に具体的なことは何も言えなくてごめんなさいね。」

「いえ、滅相もないです。とても参考になる意見をありがとうございます。あとで二人と一緒にいろいろと考えてみようと思います」

 

 

 そう言って私に頭を下げたきのこ餅さんと他の二人に、最後のアドバイスをすることにした

 

 

「皆さんにはいろいろなことを言いましたけど、最終的に私が言いたかったことは物事を俯瞰的に見て、聞いて、考えて行動しましょう、ということです。どんなに準備を万全にしていたとしても予想外のことなんていつでも起きますから、その場で対応できない人間はその時点でアウトです。その状況をいかにして切り抜けるかを今までの経験から考え、どうすればいいかを導き出し、行動することが大切なんですよ。私もその考えを常に胸に抱きながら行動しています」

 

 

 「まあ、ちゃんと実行できていたとは胸を張っては言えませんが」と、苦笑を交えながらこう言うと、こう締めくくった

 

 

「だから、あなた達にもすべてに疑いを持てとまでは言いませんけど、せめて最低限自分の行動は自分でよく考えてから実行してください。後から振り返って後悔しないように」

 

 

 私の話を聞いて三人とも真面目な顔で反応を返してくれる

 しかしながら、私自身すこし後悔してることがあるとはいえ説教じみた話を彼らにしてしまった

 ゲームをしてまで大人から説教を受けるとか、彼らからしてみればとんだとばっちりを受けたようなものだ

 

 

 これでこの話は終わりにしよう

 

 

「さて!重苦しい話もここまでにして、何か違うことでもしましょう。そう言えば皆さん、これから時間は空いてますか?」

「まあ、これと言って用事はありませんけど」

「右に同じく」

「僕もノープロブレムですよ」

 

 

 全員問題がないようなので、そのまま私が今まで経験したことやリアルで起きている事柄などを話しの種に他愛のない雑談をして、ゲーム内時間で8時になった頃にお互いにフレンド登録をしてその場で解散した。

 

 

 

 

 

………もちろん彼等にはログアウトからのセーブポイントにログインで街に戻るようにしてもらった。私に移動しながらの護衛とか要求するのは無理ですんで

 

 





はい、タイトル通りの話でしたね

他にも色々な描写を考えていたのですが作者が納得できず、最終的に一番最初に書いたモノを採用しました

まあ、いい区切り目が見付からなかったのが一番の理由ですがね………

作者が無能ですみませぬ

完全に言い訳なのですが、主人公が他人のステータスをナチュナルに聞いているのはゲーム上のマナーをあまり理解していないためと、なっています

以下の内容が三人の詳細データです

・【忍者】黒桐 シキ:
主人公が助けた三人のプレイヤーの一人。かなりフラットな性格。面倒見がいい人情家。
天摩の数少ない友の一人。重度のゲームオタクであり、親友であるきのこ餅によくゲームを進めている。
本人以外にはバレているがきのこ餅には少なからず好意を抱いている。
プレイヤーネームからわかるが某型月のファン
隙を見逃さないというスタイルが〈エンブリオ〉に反映され、TYPE:アームズ【戦神心眼 アテナ】が発現
見た目は蛇の意匠が施された銀の眼鏡
能力は敵の急所の視覚化と急所へ物理攻撃がヒットしたとき急所の範囲に比例して(初期最大倍率×10)ダメージ補正を加える。有効範囲が視界に入ったものに限定されているため能力を応用して索敵にも使用可能なかなり便利な能力を持つ

ロールプレイの基になったキャラの能力と似た性能を持つエンブリオが偶然発現したため本人は大層喜んだそうな



・【巫女】きのこ餅:
主人公が助けた三人のプレイヤーの一人で唯一の女
読書家であり、好みのジャンルは英雄が活躍する神話などである。ライトノベルも少し読んでいる
リアルでも友人である黒桐に誘われてデンドロを始める。
もともとゲームに興味がなく、毎回進められたゲームもそこまで長続きしなかったので、デンドロもひとまず一回プレイしてやめればいいかと思っていた。そのため、プレイヤーネームもかなり適当につけてしまったが、かなりデンドロにハマってしまったため後に後悔することになる
姫様願望がありそのパーソナルが反映され、TYPE:ガードナー【不屈巨神 ヘラクレス】を得る
見た目は2.5メテル程の伸長を持つ筋肉隆々のナイスガイな巨人。人型のエンブリオとして持つ食癖はベジタリアンであること
能力は物理特化型のビルドであり、《宝具顕現》を使うことで武器を召喚しその使用権を得ると共にステータスの一部を強化することができる。〈マスター〉のMPとSP消費が続く限り継続可能。初期に召喚した棍棒の場合、戦士型上級職相当のモンスターと一時的に戦えるだけのSTRを手に入れることができた
現在のスキルで選択できるステータスはSTR、END、DEX、AGIのうち一つである
基本的に〈マスター〉の安全確保を第一に考えて行動する
その戦闘力の高さを〈マスター〉であるきのこ餅が過信してしまったことが後の主人公との邂逅につながる要素の一つとなる



・【剣武者】鳳凰院 天摩:
主人公が助けた三人のプレイヤーの一人。黒桐の中学時代からの友人でありゲーマー。重度のナルシストである。
リアルでイケメンであるが内面が残念であるため彼女はいない。
好きなジャンルはノベルゲーム。名前からわかるように某ノベルゲームの大ファン
だが、ロールプレイではないのでマッドなサイエンティストにはならない
自分の魅力に陶酔しているというパーソナルと馬鹿が反映された結果、TYPE:アームズ【酩酊酒壺 ディオニュソス】を孵化させる
見た目は葡萄の実とツタの彫刻が施された片手サイズの酒瓶。能力は酒類の生成能力と特殊効果の付与である
食用アルコールを水で割ったくらいレベルのアルコールならノーコストでいくらでも生成可能。生成速度は一分間に1リットル。MPを消費することで状態異常【酩酊】、【宿酔い】、【魅了】の状態異常を付与することができる
こいつの自意識過剰な一面も壊滅の危機にさらされた原因の一つである
現在、主人公のアドバイスを受けて転職も視野に入れて行動中



ちなみに三人のエンブリオのモチーフがオリンポス神話から取ったことに特に意味はありません

次回は日常回()です

来週もお楽しみに!!


‐追記‐
シキ君のジョブを【斥候】から【忍者】に変更しました
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