幸運の子   作:水上竜華

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第十二話です

原作を読んだらまず書いてみたいと思ったエピソードをやっと出せるダス

あと、作者が失念していたのですが東方の【斥候】が【忍者】である可能性があるため、シキ君のジョブを【忍者】に変更しました

今回の話と関係ないけど、原作の方の展開がすんごくムネアツでたまんねーです(圧倒的な語彙力のなさ)



第十二話 転職と旅立ち

 

□【式神術師】夜ト神寝子

 

「う~ん、どうしようかな。次のジョブは」

 

そう言いながら私は将都の大通りを当てもなくさまよっていた。

 現在私が就いている【式神術師】のレベルは昨日受けてきたの討伐クエストの達成をもって、取得から僅か十日でレベル50になりカンストしたのだ。

 そして、次のジョブを選ぶことになるのだがこれを決めるのにかなり悩んでいる。

 

 数あるバフ特化のジョブの中でLUCを上げるスキルがある【祈禱師(キトウシ)】か、それとも陰陽師系統や式神術師系統の上級職である風属性特化の【風魔師(フウマシ)】や探知系スキル特化の【占星術師(アストロマンサー)】、正常進化の【高位式神術師(ハイ・シキガミジュツシ)】になるのか、はたまた毛色を変えて生産職でも追加しようかなど、割と選択肢が多いのだ。

 

 

 

 私的にはLUCを上げるために【賭博師(ギャンブラー)】に就きたいのだがジョブ的に魔法系のスキルが使えなくなるため、必然的にレベル上げはジョブクエストで賭け事をするしかない。

 しかし、うちの財務官であるザシキワラシ様から積極的にギャンブルをすることを禁止されている私にはこれをすることが出来ないというわけなのだ。

 

 

 

 というわけで【賭博師】以外で選ぶとして、個人的に一番必要に思えるのは従属キャパシティーとMPが上がりやすい【高位式神術師】なのだがなんとなくしっくりこないのだ

 そして、なかなか決定を下すことが出来ないので、気分転換のためにこうしてブラブラと散歩しているというわけだ

 そんな中なにかを思い出したのか、私の隣を歩いていたザシキワラシが声を上げた

 

 

「あ、そう言えばマスター。この間の狩りで【MP回復ポーション】が切れかけていたのではなかったのデス?」

「あー、そういえばそうだった。確か、あと十本もなかったね」

 

 

 アイテムボックスの中身を確認すると回復量が固定値である【MP回復ポーション】が八本だけ入っている。そろそろ固定値の回復アイテムだと物足りなくなってきたし、すこし高額の回復量を割合で決定するタイプのポーションも買うことにしよう。スキルで回復アイテムを作れると言ってもアレは緊急時の備えでもあるので頻繁に使うことが出来るアイテムではない。

 

 ひとまずここら辺で一番大きな薬屋を見つけた私たちはそこに入店することにした。

 その店の中に入ると薬草が持つ独特の香りが鼻腔を通り、壁際の棚に視線を向けると【ヒールポーション】や【薬効包帯】、【快癒万能薬】など雑貨屋に置いていないような回復アイテムが数多く置かれているのが見えた。

 

 そして店内を見渡していると見知った人物の後姿を見つけた

 あの隠し切れないほどの母性を放つ女性は私が出会ってきた人の中で彼女しかいない

 

 

「あれ、梅原さん?」

「あら、寝子さんにザシキワラシちゃん?こんな所で奇遇ね。何か買いにきたのかしら?」

 

 

 診療所の看護師である梅原さんだ

 

 

 私が【角兎】にやられた件でお世話になって以降も交流を続けているティアンの一人である

 

 

「はい、回復アイテムの補充にきました。そう言う梅原さんこそどうしてここに?」

「私は診療所で発注してた薬の受け取りにきたの。今は店員さんに持ってきてもらっている所ね」

 

 

 なるほど、確かに【看護師】である彼女が医療関係の施設にいても何ら不思議ではない

 

 

「そう言えばさっきまで何か悩んでいるような様子だったけど、何かあったの?」

 

 

 自分が悩んでいることにすぐさま気が付いた梅原さんの観察眼に驚愕した私だったが、誰かに意見をもらうのもいいかと思い素直に話すこととした

 一通り話を終えると梅原さんは首を縦に振りながら理解の色をしめしてくれた

 

 

「なるほど。確かに最初のうちはジョブ選びには悩むのよね。私もそうだったから寝子さんの気持ちはよく分かるわ。でも、それならいい解決策があるかもしれないわ」

「え、本当ですか!?」

 

 

 いきなり解決策が出てくるとは思わず、驚きの声を上げてしまった

 しかし、どうするのだろうか、と考えていると梅原さんは自分が持っていた肩掛け型のアイテムボックスの中に手を入れてあるアイテムを取り出した

 

 

 

「はい、【適職診断カタログ】~」

 

 

 

 そのアイテムを持った方の手を頭上に掲げるように取り出した梅原さんの姿を見て、私は何とも言えない空気に飲み込まれた

 

 

 ……なぜ、あのモフる毛並みが一本たりともない某ネコ型ロボットのような取り出し方をしたのか、貴女はあの青ダヌキのことを知っているのか、そもそもそれに意味はあるのか

 思考の海に沈んでしまった私に対して梅原さんはお茶目な笑みを返してくれた

 

 

「マスターの人にはこうすると受けがいいと患者さんから聞いたのよ」

 

 

 なるほど、戦犯は彼女ではなかったようだ

 

 

 

 

 

 ………マジで誰が広めたのか、メッチャ気になるな。これ

 

 

 

 

 

「は、はあ?」

「うふふ。さて、おふざけはここまでにしましょうか」

 

 

 やっと本題に入るようだ。なんでも【適職診断カタログ】というアイテムなのだが、与えられた質問に回答することによって現在の自分が就けるジョブの中から自分に適していると思われるジョブを提示する便利アイテムなのだそうだ

 

 なぜそんなアイテムを持ち歩いているのか尋ねると、件の青ダヌキ式取り出し術を梅原さんに教えた患者さんの話を聞いてから使う機会があるかもしれないと思い、昔手に入れたアイテムの中から掘り出したのだとか

 

 折角の勧めてもらっていることだし、梅原さんが薬の納品を確認している間に試しにやらせてもらうことにした

 いくつもの問いに答えていき、アイテムによって導き出されたジョブ、その名も……

 

 

 

 

 

「【妖魔師(ヨウマシ)】?」

「あ~、なるほどね~。確かにこれなら寝子さんにピッタリなジョブだわ」

 

 

 

 

 

 どうやら納品された薬を確認する作業が終わったらしく、梅田さんはいつの間にか私の背後に立ち、診断結果を覗き見ていた

 まだ短い付き合いとはいえ私のことをよく知っている梅原さんが納得するほどのジョブであるらしい

 どんなジョブなのか気になり、診断結果に書かれたそのジョブの詳細の欄に目を向けてみる

 

 

 どうやら【妖魔師】とは式神術師系統妖怪特化型上級職であり、種族が【妖怪】であるモンスターを召喚し使役することに特化しているジョブなのだとか

 

 

 

 梅原さんによると【妖魔師】を取得するには三つの条件があり、一つ目がオーソドックスに【式神術師】のレベルがカンストしていること、二つ目が亜竜クラス以上の【妖怪】の召喚モンスターを三体以上一定時間内に連続で召喚していること、そして最後の一つは召喚モンスターの種族を【妖怪】で統一した状態で5体以上の亜竜のボスモンスターを単独で倒すことだそうだ。

 

 一つ目の条件は言うまでもなくクリアしており、二つ目の条件も以前モフモフを全身で堪能するために【鎌鼬】、二匹の【狛犬】、【鵺】の四匹を同時に召喚したことがあったので既に達成している

 

 

 

 

 あれは、いいモノだった……

 

 

 

 

 ゴホン、そして最後の一つも【式神術師】になってからフィールドで狩りをしていた時に亜竜クラスのボスモンスターなんて十体以上は倒しているし、基本的に私がモフモフを追及したがために手持ちの召喚モンスターは全部【妖怪】で統一されているため問題なくクリアできている

 

 

「ちなみに具体的に何が出来るか知ってますか?」

「詳しいことは知らないけど、私の知り合いに【高位式神術師】の人がいるの。その人の話によると式神術師系統の上級職のスキルは大体似たような傾向にあるらしくて、その中でも特化型のジョブには特定の種族のモンスターに対してプラスの効果があるスキルを取得できるようになるらしいの」

 

 

 そのスキルの中には、召喚したモンスターのステータスを強化するものや、召喚するときに消費するMPの削減するもの、そして複数の媒体にMPを留めることが出来るものもあるのだとか

 そしてさらに、特化型の上級職にはパーティー枠を拡張する《軍団》と同系統のスキルを獲得できるらしい

 

 

 

 ………いや、メッチャ知ってるじゃないですか

 これで詳しくないとか【式神術師】ってどんだけ奥が深いんですか!!

 

 

 

 しかし、中々興味深い話が聞けたな

 

 

 召喚のコストを軽減できる上に複数体のモンスターを同時召喚することが出来るようになるのはかなり魅力的だ

 

 【妖怪】以外にモフモフしてるモンスターがいる種族は少ないらしいし、いっその事【妖怪】に特化するのも悪くないだろう

 

 

「決まりました。私、【妖魔師】になります」

「私もそれがいいと思うわ。じゃあ、将都からすこし離れることになるから遠出の準備をした方がいいわよ」

「え?」

 

 

 梅原さんによると【妖魔師】のジョブクリスタルはこの街にはなく、将都から北の【這龍(しゃりゅう)山道(さんどう)】を竜車で半日ほど進んだ場所にある小さい町の【式神術師】ギルド内にあるのだという

 

 当然のことながら一定のレベル以下のモンスターを遠ざける《魔除け》のスキルや防御結界が内蔵されている安全面が考慮された高級な馬車や竜車を私は所有しておらず、これまでも遠出はそこまでしたことはない

 

 最近では移動中の戦闘も【式神】にしてもらうことで可能になったとはいえ全力の戦闘を行うにはやはりザシキワラシを使う必要がある私では街に着くまで最低でも丸一日は掛かるだろう

 

 ザシキワラシがいるため道中の野宿は比較的楽だが、流石の私でもフィールドにいるとなるとのんびりと寝ることはできない

 

 私がソロで踏破するのは厳しいだろう

 

 となると、どこかの馬車に相乗りさせてもらって街まで行くのが最適解か

 

 しかし、商人関係の知り合いはそんなにいないし「これからどうしようかなぁ~」と呟くと梅原さんから声を掛けられる

 

 

「伝手がないなら、私が一緒に行きましょうか?」

「へ?」

 

 

 なんでもこれから私が向かう予定の街の病院で働いていた【看護師】さんが高齢で数人退職してしまい人手不足になってしまったため、医療関係のギルドに人材派遣の申請をしたのだという

 そして、梅原さんのいる診療所から何人かヘルプに行くことになり、その中に梅原さんも含まれているのだとか

 出発は明後日なのでそこまで待たずに済むとのことなので、時々手伝いをしているお礼に、と私を誘ってくれたのだ

 

 道中の安全は問題ないと、自信満々に言っていたので特に断る理由もなく他に都合が良さそうな知り合いも思いつかなかったので、図々しくもお世話になることにした

 

 

 

                 ◇

 

 

 

 あれから二日後、その間にいろいろとあったが何とかこの日を迎えることが出来た

 

 現在の私達は松井さんが書いた本を読みながら北門の近くで梅原さん達が乗ってくる馬車を待っている状態だ

 

 

 

 私が読んでいる本は「ココロの日記」という実際に龍の〈UBM〉に育てられたティアンの少女の半生を題材にした物語だ。長い年月を経て少女と龍の間に芽生える家族愛ももちろん見所なのだが、余り詳しく解明されていない実際の龍の生態について書かれており、歴史学や生物学的にも注目の作品になっているのだそうだ

 

 

 ザシキワラシが読んでいるのは「黒姫物語」という松井さんのデビュー作である。物語の内容は、とある名家の娘が病気により床に伏した自身の弟の代わりに影武者として表舞台に立ち、自分たちが治める領地のために奮闘するというもので、当時の女性に大人気だったらしく、最終的に劇場公演が行われるほどの人気が出てとんでもなく驚いたとは作者本人の談である

 

 おそらく、私が思うに人気の理由は主人公の女の子が正体を隠しているとはいえ、本当の男が顔負けのするくらいのイケメンっぷりを発揮しつつ、所々で見え隠れする乙女の姿がとても新鮮で当時の奥様方に受けたのだろう

 所謂、宝塚ファンの奥様をイメージすると分かりやすいだろうか

 

 ただ、デビュー作が意外にも女性受けが良かったせいなのか、松井さんの作品の主人公はそのほとんどが女性になってしまったらしい

 

 ちなみに「黒姫物語」のモデルになった姫をルーツに持つ領地はひと時の間、観光名所として人の往来が活発になりかなり儲けたのだとか

 

 

 割と自分好みの内容の本だったことと、ゲーム内の歴史についても学べることからこうして時間が空いている時にザシキワラシと共に松井さんの作品を読んでいるわけである

 

 

 そうこうしているうちに待ち合わせの時間となり、診療所がある方向の道から派遣に行く看護師さんを乗せた馬車が約束の時間通りにやってきた

 

 

 

 

 そして私はやって来た馬車の外見の異様さに完全に度肝を抜かされた

 

 

 

 

 

 

 

 車輪にはサスペンションが付いたゴム製のタイヤが付けられており、デコボコの道にも対応できるようになっていて、荷台は木製でありながらも頑丈そうなイメージがある黒塗りの木材で出来ており、周りにはうるさくないくらいに金箔で意匠が施されている

 

 

 

 

 

 

 

 ………なんだ、あのいかにも高級な雰囲気を醸し出している馬車は

 

 

 

 

 

 

 

 なぜ私が待っていた馬車が、アレだと判断できたのか

 

 

 

 ………その理由はいたって単純明快で、業者台に梅原さんが乗っていたからだ

 

 

「寝子さーん、ザシキワラシちゃーん。お待たせ-」

「いや、何ですかこの高級車は」

「うふふ、やっぱり気になるわよ」

 

 

 悪戯が成功した子供のような笑みで笑う梅原さんは困惑している私に種明かしをしてくれた

 なんでもこの馬車は梅原さんの所有物で、【看護師】になる前にしていた仕事で手に入れたシロモノであるらしく、防御結界に、周辺にいるモンスターや人間を探知するマジックアイテムを完備しており、内部は異空間になっていて中には生活をするには快適な居間があり長旅にも使える優れモノなのだとか

 

 恐る恐る値段を聞いてみると「ニッコリ」と笑みを返されただけで詳しいことは何も答えてくれなかった……

 

 

 本当にこの人、前まで何してたんだ?

 

 

 とんでもない代物が目の前に現れたことに唖然としていると、ふと気が付いたことを聞いてみた

 

 

「あの~、護衛の人達が見当たらないのですが……」

「ん?護衛なんて雇ってないわよ。既に過剰戦力だし」

 

 

 ………はて、聞き違いだろうか。この馬車に乗車する予定の乗客は梅原さんを含めた看護師さんが四名に、私とザシキワラシの二人を合わせてたったの六名である

 私たちは道中では満足に戦えない可能性を考えると他の四名で事足りるとでもいうのか?

 

 

「いや、でも最近これから行く街の近くで〈UBM〉が出るって噂も聞きましたし、流石に厳しいのではないかと……」

 

 

 今まで出会ったことはないがこの世界では同一の個体がいない完全に世界中でただ一つのオンリーワンなボスモンスター、通称〈UBM〉というモンスターが存在する

 そんな存在が近隣に出てきているのにこんな少人数でかつ非戦闘職の面々で本当に大丈夫なのだろうか?

 

 

「そんなこと言ったらどこに行っても危ないわよ?まあ、最悪の場合は逃げられるくらいの技量は皆持ってるから平気よ」

 

 

 真面目に彼女たちが本当に【看護師】なのか疑問になってきたが、その言葉に嘘はないようだ

 

 

 どの道、彼女たちを信じて進むしかないか、と腹を決めて馬車にお邪魔させてもらうのであった

 

 

 







やっと【適職診断カタログ】が出せました

これの正しい取り出し方は青ダヌキ式で決まりですな

修羅については、嘘はついてないよ(汗)

まだギリギリ、オープン修羅じゃないっすよ(自己申告)

あと、天地の馬車に使われてるサスペンションは大昔にドライビング・キャットなるマスターが大陸からやって来てブレイクスルーを既に起こしていたため、天地でも普及しているのだとか(捏造設定)


次回、キングクリムゾン!!

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