まだエピローグまで書き終わってないけど、今週二本目、更新
今回の話を読む前に主人公の顔面偏差値は全国トップクラスとだけ言っておこう
あと、今更ですが作者はゆゆゆ好きです
□【妖魔師】夜ト神寝子
昨日のうちに何とか目的地である〈
具体的に言うと、現実の京都にある世界遺産の寺院並みの広さだ
なんでもギルドの創始者である【
そして式神術師系統のジョブクリスタルが全て揃っていたこともあり、そのまま本部になったのだという
早速中に入って受付でジョブクリスタルを使う許可を頂いてから、【妖魔師】のジョブクリスタルがある部屋まで案内された
そして、そのまま無事に【妖魔師】になることが出来た
ん?それよりも道中の話はどうしたのかって?
………そりゃあ、もちろんメチャクチャ快適な旅でしたとも
だって、襲って来たモンスターたちが馬車に近づいてきた瞬間には数発の銃声と共に全滅してるし、隣にいた梅原さんが一瞬消えたように見えたと思ったら全滅してるし、上空に炎の球が複数出たと思ったら全滅したりしてるんですよ?
もう、何が起きてるかわかりゃしませんがな
なんか、もう、次元が違ったッス
ちなみに【看護師】の皆さんがなぜ戦えるのか聞いてみたところ、サブジョブに【軍医】という医療系戦闘特化型上級職に就くことで医療系と戦闘系のジョブのスキルをいかんなく発揮することが出来るようにしているのだという
レベルは聞かなかったが、おそらくカンストしているのだろう
にしても、何であんなに強いのに街中の普通の診療所にいるのだろうか?
不思議である
まあ、要するに何が言いたいのかと言うと、道中に危険なんてなかったということだ
そして、【妖魔師】になった私は冒険者ギルドにクエストを受けに行っていた。前にも話したが私の戦闘スタイルは待つ時間が長いため、その空いた時間で生産系のクエストも進めることで何とかここまで生計を立てている。すでに【式神術師】ギルドで呪符製作のクエストを受けてきたので次はここで討伐クエストを受注しに来たのだ
そして、何やら騒がしくしている建物の中に入るとそこには一人の青年が大柄の体を持つ甲冑を着た戦士の足に縋りつきながら何かを懇願している様子が見えた
「なぜでござるか!先日まで一緒にいてもいいと言っていたではありませぬか!」
「うるさいはこの疫病神が!!俺たちを騙しやがって!!手前と一緒にいたら命がいくつあっても足りんわ!!」
「ぐはっ!!」
甲冑を着た男が足に縋りつく青年にそう言い捨てると強引にその青年の腹を蹴り飛ばすことで引き離し、男の仲間と思われる風体の人たちと共に気が立った様子でギルドを去っていった。
その場に残されたボロボロの戦闘用の着物を着ている青年は男達が去った方に体を起こしながら手を伸ばすも、そこには今ちょうどギルド内に入ってきた私達しかおらず完全に自分が男たちに置いて行かれていた
しばらくして放心から戻って来た青年は、平均よりも整っているその顔に涙を浮かべ悔しそうな表情をしながら頭の後ろで一括りにされた長髪が大きく揺れる勢いで四つん這いになると、マイナスイオンが放たれているかのような空気をかもし出し周りから見て一発で分からくらい落ち込んだ様子を見せた
「また、またやってしまったでござる……。これで44回目……。やはり、もう拙者と共にいてくれる仲間などいるわけがないとでも言うのでござるかッ!!」
青年が何やら小声でブツブツと言っているのを目の前で見ながら、私は突然起きた衝撃的な光景に面食らっていた。
私以外のギルドで一部始終を見ていたらしい人間はマスター、ティアンに関わらず、その青年のことを同情の目で見るものの特に近づこうとするものはいなかった。
………………いや、本当に何したの、この人
周りの様子から見ても厄介ごとのニオイがプンプンするし、普通ならここで青年のことを無視するのが正解なのだろう。
しかし、なぜか放置するのは躊躇われた
どこで見たのかはわからないが、似たような表情をしたモノを以前に見たことがある気がするのだ
この放置することが出来ない独特の雰囲気を出す何かを私は見たことがあるはずなのに全く分からない
ふむ、本当になんなのだろうか?最近似た感覚を味わった気がするのだが全然思い出すことが出来ない
いかん。既視感の正体がわからない分、余計にほっとけなくなってしまった
はぁ、何だかもう悩むのも面倒くさくなって来た。ここまで流れで来たようなものだし、ここは諦めて話しかけるとしよう。
心の中でそう決心した私は四つん這いになっている青年に目線を合わせるために膝を折り畳んで屈みながら、垂れてきた前髪を左手で抑えると正面から青年に話しかけた。
「あの、大丈夫ですか?」
自分で聴いておいて何だが、大丈夫な所が見つからない青年の有様である。
心の中で私に若干disられている青年はまるでそこにいることに初めて気が付いた様子で俯いていた顔を上げて私に視線を向ける
その瞬間、目の前の青年の時が止まった
比喩でもなんでもなく唖然とした様子でこちらを見つめたまま動かなくなってしまった青年の姿を見て本当に大丈夫か心配になって来た私は、小首をかしげながらもう一度話しかけた。
「あのー、本当に大丈夫ですか?どこか具合でも悪いんですか?」
「……!?」
そうすると硬直した青年は驚いた様子で再起動したのだが、途端に表情を暗くし私に視線を合わせないように俯いたまま立ち上がる
「………御心配には及びませぬ。では、拙者はこれで失礼いたす」
そう言い残した青年は私に一礼すると一目散に入口へと駆け出し、私が追い駆ける間もなく冒険者ギルドから出ていってしまった
明らかに私を避けるような行動を取ったのが気になり彼の後をつけようとすると、後ろから誰かに声がかけられた
「アイツを追いかけるのは止めといた方がいいぜ、マスターの姉ちゃん。さもないと取り返しのつかねぇことが起きるぜ」
「それはどういう意味ですか?」
急いでいるのに呼び止められた私は少しだけムッとした様子で、私に声をかけた主である見知らぬ山賊風のティアンの男にそう問いかけた
「どういう意味も何も言葉のままさぁ。あいつに関わった奴らは例外なくひどい目に合うってこった。なにせアイツぁ、あの『仲間殺しの不落丸』だからな」
「!?」
『仲間殺しの不落丸』
聞いたこともない名前だったが、その異様な通り名に驚愕を禁じえなかった。私の反応を見た男はそのまま言葉を続ける
「なんだ、姉ちゃん知らないのかい?『不落丸』って言ったらこの天地じゃ結構有名だぜ?もちろん、悪い意味でな」
「まあ、マスターだから知らんのか」と男は呟くと、そのまま言葉を続ける
「親切ついでに教えてやるよ。噂によると、アイツとパーティーを組んだ奴らはマスターとティアンに関わらずその大半は何らかのトラブルに巻き込まれて死んじまうって話だ」
「トラブルに?」
どうやら先程の青年、不落丸自身が仲間を殺したわけでは無く、あくまで事故によって狩りに同行したメンバーの大半が犠牲になっているのだという
しかも、その中でも数少ない生き残りのメンバーは全員精神疾患を患わっているのだというのだ
しかし、その話には疑問がある
「……でも、モンスターと戦えば死んでしまうことなんてたいして珍しいことではないと思いますけど?」
「ああ、確かに人間が戦っちまえば命を落とすことなんてザラにあるがな、奴の周りじゃ運が悪かったなんて言葉が出ねえくらいそれが起こるんだよ。なにせ、俺が知る限りでアイツと組んだ奴らはその日のうちに全員死んじまったからな」
「全員!?」
「ああ、全員だ。そん中にはマスターも含まれてるぜ」
確かにそれは明らかに異常だ。いくら何でもトラブルと言うには事故が起き過ぎだ
もはや、故意に殺したと思われても仕方がないだろう
「じゃあ、さっきの人たちは」
「ありゃぁ、数日前にアイツと狩りをして全滅したマスターの連中だ。もう三回くらい奴と組んでたらしいが流石に稼ぎが入らな過ぎてパーティーから追い出したんだとよ」
「そんなぁ……」
でも、なんでマスターの人たちがティアンの人をパーティーに誘ってたんだろうか?
先程から親切に色々と教えてくれる目の前のティアンの男が私がふとこぼした疑問にも律儀に反応してくれた
「何でもマスターの間だとアイツと一緒の狩りを成功させるととんでもない報酬があるとか噂になっているらしいぜ。ま、それが何かはティアンの俺らには分からんがな」
なるほど、もしかしたらマスター専用のランダムクエストが起きているのだろう
クエスト関連の掲示板でも見ればその辺のことも何かわかるのだろうけれど、私は基本的にデスペナルティになった人達が書き込んでいる死亡原因について書かれてるスレくらいしかのぞいてないからその辺の知識が不足しているのかもしれないな。
そう言えば、最近はあまり掲示板は見てなかったしクエストに関連した情報を入手し損ねている可能性もあるな
ふむ、今後は違う掲示板も注意して見るとしよう
「いろいろと教えてくれてありがとうございました」
「いや、礼はいいさ。"
ん?ちょっと待て。何だその物騒そうな名前は……
「えーと、その"妖怪屋敷"というのは?」
「ん?そりゃあ、もちろん姉ちゃんの二つ名だろう。珍しい髪の色した子連れの女のマスターによくするとフィールドであった時に休憩所を提供してくれるって最近ここいらじゃ『不落丸』ほどじゃないが有名だぜ」
……まあ、確かに最近は知り合いをフィールドで見つけたらお招きしたりはしてたけど、将都から少し離れたところでも有名になっているとは思わなかった
おそらく、名前の妖怪の部分は私が【妖怪】の式神を使っているのが原因だろう
狩りの妨害をしにきた人たちを全員動けなくしてからちょっとお説教したことは関係ないはずだ
アレは拷問ではない、ただ注意喚起をしただけだ……
現実逃避をした後に私は改めて、ティアンの男の人にお礼を言ってその場を離れて男の忠告を無視するかのように不落丸さんの後を追った
別にあのティアンの男の話を信じていないわけでは無い
私は《真偽判定》を取得してないけど、あの男が嘘をついていないのは周りの人の様子を見てわかった
きっと、あの話は全て真実なのだろう
でも、真実だからこそ私は彼を放って置くことはできなかったのだ
確かに不落丸さんはその一種の""呪い""の所為で多くの人達を殺してきた厄介者として他者から見られている
だけど実際には彼も""被害者""の一人なのだ
共に戦った仲間たちを何度も目の前で殺され、そしてその度に仲間を守れずに生き残ってしまった自分自身の無力感に苛まれているはずだ
しかも、さっきの彼のつぶやきから察するに、少なくともそれを44回も体験しているのだ
とてもではないが常人では耐えられないような苦行だ
私ならその半分もこなす前に心が壊れてしまうだろう
そんな苦行を彼は誰に命令されるでもなく自分の意志で進んで行い、それにも関わらずその心は壊れている様子は全く見えなかった
それどころか、彼はどこまでも普通の人間だった
彼の表情や声色、そして纏っている雰囲気にはそんな苦行を乗り越えてきた人間とは思えないほど人間らしいの感情が感じられたのだ
感情を殺すこともせず、自分の心が壊れるのも押しとどめ、ただ人間であり続けることはとても大変なことだ
それでも彼はやめなかった。他人に迷惑どころ害悪な人間だと思われようともそれを止めんかったのだ
そんな彼を動かす原動力が何なのか。そして、私に何かできることが何かないのか
それを確かめ、あわよくば自分の中に根付くトラウマに終止符を打つ何かを見つけるために私は彼のもとへと向かうのだ
「でも、マスター。不落丸さんが噂通りの人だとすると、このまま何もせずに探すのは見つけるのも見つけた後にも準備不足ではないのデス?」
確かにこのまま突っ走ってよしんば出会えたとしても同行できるように説得するのも難しいだろうし、説得できた後のことを考えると今のままでは少しばかりまずいのかもしれない
(私自身がかなりの足手まといであることを自覚してる分、準備には人一倍、力を入れなきゃダメだよね)
しかも、そう理解してる上で頼まれてもいない余計なお節介を焼きにいこうとしているのだ
ここで妥協などをしていたらそれこそ相手に失礼に値する行為だ
これは彼のためであり、そして何よりも私のためにする独善的な行為なのだから
そうして、私は万全の態勢で挑むために街を駆け巡るのであった
今章のキーパーソン、不落丸の登場回でした
この話を書き直しまくった所為で全く話が進まなかったという裏話があります
主人公を動かす動機が弱く感じがしますが、ここで彼女を動かさないと不落丸が死んでしまうのでご容赦ください(確定事項)
主人公の二つ名はエンブリオが特徴的だったこともあり、かなり早い段階で付けられました
次回は他の人の視点から始まります