幸運の子   作:水上竜華

21 / 24



誠に遅れて申し訳ない!!
リアルが忙しくて全然書けんかったんです(決してゆゆゆいに熱中してたからではない
今後も遅れると思いますが一章を書き終えるまではエタらないのでご心配なく





第十八話 獣の力

 

□〈大貫平原〉【妖魔師】夜ト神寝子

 

 

 優勢から一転。急激に動きが変わった【ピータン】に私は驚きを隠せなかった

 自身が窮地になってから発動するスキルを何かしら持っていると思ってはいたが、まさかデバフを全て無効化されるとは思ってもいなかったのだ

 

 ほぼ死に体の状態から完全に復活した【ピータン】の強さは生半可のモノではなく、私が召喚した亜竜クラスの【狛犬】達は一瞬にしてやられてしまった

 

 奴の相手をするためには不落丸さんだけでなく、私が召喚した亜竜クラスの式神達が複数体は必要不可欠

 直ぐに正気に戻った私は、【ピータン】との戦闘開始時に【鵺】を召喚した直後に再び《妖気定着》を使用して召喚可能な状態にしておいた【覚】に加えて、通常の《式神召喚》で【鎌鼬】を召喚する

 すると、私の目の前に黒色の毛皮を纏う2メテル大の猿の【妖怪】と、体長一メテルの鎌の尻尾を持つイタチの【妖怪】が現れた

 【鵺】はまだクーリングタイム中で再召喚はできないが、召喚ができるようになるまでそこまで時間はかからない

 クーリングタイムが終わるタイミングで召喚が出来るようにするため、MPの管理に集中する

 

 私が今、召喚した【覚】と【鎌鼬】はどちらも2500を超えるAGIを持ち、手持ちの亜竜クラスの【式神】の中でもかなり速い

 さらに【覚】は高度な知能で相手の攻撃を逆算して躱し、【鎌鼬】は相手から距離を取りつつ上級魔法職並みの風魔法を放つことで相手の間合いに入らずに戦える

 形こそ違えど両者ともにヒット&アウェイを得意としたビルドをお持つ【式神】だ

 

 先程やられてしまった【狛犬】達はLUC以外のステータスが軒並み1500以上であり、【陰陽師】系統の中でも結界を張ることに特化した【結界術師】の上級職クラスの【結界】を攻守ともに使いこなすかなりハイレベルのオールラウンダーなモンスターだった

 しかし、STR特化職である【壊屋】系統をカンストした熟練者が相手であっても一撃で破壊することが難しいレベルの【結界】を張ることが出来たあの【狛犬】達が、いとも簡単にやられてしまっている

 私の手持ちの中で【狛犬】と同等、もしくはそれ以上の防御力を持つ【式神】は現状では【鵺】しかいない

 

 

 他の【式神】では召喚してから数秒と持たずにやられてしまう可能性があるので、現状の最適解は回避盾として高速機動が可能な【覚】と【鎌鼬】を召喚したのだ

 

 

 2匹の【狛犬】が消えてから直ぐに【ピータン】との戦闘を再開した不落丸さんがまだ十数秒程たった今でも危険な状態になっていないことを考えれば、最低でも【鵺】が召喚可能になる数分後までの時間稼ぎにはなるはず

 

 

 私を近辺で守る役割には数分前に召喚しておいた【狛犬】には劣るが防御力に優れた【雪男】がいる

 【雪男】は【式神】を取り扱っている専門店で購入した【式神】である

 それにまだ新しく手に入れた壁を使用していない現状なら相手の攻撃にもある程度の対応は可能だ

 

 

 不安はまだ残っているが今できる最大の支援がこれだと信じ、【式神】達を激闘を繰り広げる戦場に送り出す

 

 

 戦場に辿り着いた二匹のうち、【鎌鼬】が不落丸さんが【ピータン】から少し離れた瞬間を見計らって中距離から《風の刃》を放つ

 《風の刃》は以前私が使用していた《回風刃》の下位互換の【陰陽術】である《風刃》と同程度の魔法スキルなのだが、発動してから発射するまでのタイムラグが非常に短いため牽制には打って付けのスキルなのだ

 風の魔法に特化した高レベルのモンスターである【鎌鼬】が放つその一撃は同種の【妖怪】の中でも上位の威力を秘めている

 

 【ピータン】の首元を狙い放たれたその一撃は音速で対象に急接近する

 

 その攻撃に対して【ピータン】は視線を目の前にいる不落丸さんに向けたまま耳を少し揺らしただけで、特に行動を取るそぶりを見せなかった

 

 

 

 そして、《風の刃》は【ピータン】に抵抗する時間を与えずに直撃すると思われるまさにその瞬間、まるで何かに打ち消された(・・・・・・・・・)かのように消え去ってしまった

 

 

 

 攻撃を放った【鎌鼬】は驚きのあまり、目を見開く。例え本気の一撃ではなかったとしても、防ぐのが困難な自身の高速の一撃を何のアクションも見せずに防がれたことに驚いたのだ

 そんな【鎌鼬】の横を抜き去った【覚】は不落丸さんの隣に並び立ち、【ピータン】と相対する

 

 【覚】は自身が持つ観察能力を駆使し戦闘の流れを読み、即興で不落丸さんに息を合わせる

 不落丸さんが僅かに後ろに下がれば逆に踏み込んで相手のペースを乱し、相手の攻撃を避けるときにはお互いに衝突しないように位置取りは常にチェック。それに加えて、【鎌鼬】の攻撃の射線上に入らないように周囲の状況把握。

 モンスターの中でもスキルに頼らずに演算能力が高いという珍しいタイプの【妖怪】である【覚】は確実に主人である私の思いをくみ取り、ベテランの戦士でも難しい戦況のコントロールと接近戦の両立を見事にこなしていた

 

 そして、【覚】の高度な知能による采配によって初めて共闘したとは思えないほどの連携を繰り広げていた二匹と一人は、二頭の亜竜をいとも容易く殲滅してみせた相手と一分以上も戦うことが出来ていた

 

 

 

 ―——しかしながら、状況の悪さだけは何も変わっていなかった

 

 

 

 戦うことが出来ているなどと調子のいいことを言ってはいたが実際のところ、相手のHPバーを全く減らすどころか徐々に回復することを許してしまっている

 

 デバフを受けていた時とは比べ物にならないほどに洗礼された体捌きに加えて【鎌鼬】の攻撃を防いだスキルの所為でこちらの攻撃の殆どが通用しなくなったのだ

 不落丸さんの《看破》でスキルの名前を完全に読み取ることはできなかったが、おそらく一瞬だけ空気の歪みの様なものが見えていたことから「空気を操る」タイプのスキルだと判断できる

 ここまでの戦闘から得られた情報から考えるに効果範囲は自身の半径一メテル圏内。その範囲内の空気を操作して壁のように展開したり、空気の塊にしてこちらの攻撃に合わせて勢いよくぶつけていたのだのだろう

 実際は違う能力なのかもしれないが「見えない鎧を纏って戦っている」という考え方で概ね間違いではないはずだ

 

 そのスキルに加えて不落丸さんが《看破》で見破った【ピータン】が持つ自己治癒能力系のスキル、《自己再生》によって少しずつではあるがHPを回復しており、今では3割半くらいまで回復している

 このままこちらが何もできずにいれば、あと10分もしないうちに半分まで回復してしまうだろう

 

 

 自身の方に形勢が傾きつつあることを知っていてか相手はこちらの奮闘に焦りを見せるような様子も見せず、淡々とこちらの攻撃に対処からの反撃といった動作をルーチンワークのように続けていた

 流石に攻撃や回避の仕方は変えていたが、積極的に攻撃を仕掛けることは全くない

 

 

 まるで自分の体の調子を確認している

 

 

 そんな不気味なまでに静かな雰囲気をこの場にいる全員が【ピータン】から感じ取っていた

 

 

 そして、最悪ではなくとも依然として悪い状況を改善できないまま時間は経過していくのであった

 

 

 

 

 

 

                      ◇

 

 

 

 

 

 

□【大刀武者】不落丸

 

 

 夜ト神殿が召喚した【式神】達が増援に来てくれてから約二分程の時が経った

 まともに喰らえば確実に即死してしまう程の一撃を何度も刀で受け流し、避け続けていた拙者は目の前に何度も迫りくる死の香りに精神を削られながらもその猛攻をしのぎ切ることが出来ていた

 おそらく、【式神】達が来ていなければこの時点で膝をついていただろう

 しかし、状態異常とデバフから解放された【ピータン】が未だに全力で来ていない時点でダメージを与えるどころか生き残るだけで精一杯なのが現状だ

 状況を変えようにも相手の本気の動きが分からない今では拙者の最後の""切り札""を切ることが出来ず、【鵺】もまだ召喚できない

 他の【式神】を戦闘にさせても速さが足りないため、動きに付いてこれずに自滅してしまう

 

 依然として変わらない状況に焦燥を抱きながらも拙者たちは終わりの見えない戦闘を続けていた

 

 

 そして一分も時間が経たずに、停滞していた盤面は一変する

 

 

 急に【ピータン】が自身の足元を目掛けて強烈な蹴りを繰り出したのだ

 

 

 その衝撃で大地は砂塵を巻き上げながら亀裂を生み、複数の岩盤は浮き上がる

 【ピータン】の近くにいた拙者と【覚】は急に足元が崩れてしまった影響で一瞬だけ体制を崩しそうになりながらも、その場から離れすぎないくらいの距離を後方へと跳び去りながら回避した

 

 砂煙によって視界が悪くなってしまった所為で見失った敵が襲い掛かってくることを警戒し、目の前に広がる砂煙を注意深く観察し続ける

 

 

 すると、斜め上の方から連続で大気が爆発した(・・・・)ような音がした

 

 

 その次の瞬間、上空から砂煙を亜音速で突き抜けてきた""白い影""が拙者の右側にいた【覚】の右上半身を吹き飛ばした

 右腕が右肩もろとも吹き飛んだ【覚】は苦痛のあまり、右腕があった場所を左手で抑えながら小さな呻き声を上げてしまう

 そして、再び大気の爆発音を連続で響かせながら【覚】の腕を奪った""白い影""は弾かれる様に直線的に亜音速で移動し続けると、苦しみ悶える【覚】の頭上から落下し血飛沫と共に小規模のクレーターを作り上げた

 落下地点にいた【覚】は自身の死角から上空に移動した""白い影""を視覚に捉えることが出来ずに潰されてしまい、数秒もしないうちに光の塵となり消え去ってしまった

 

 

 

 先程まで【覚】がいた場所。そこには【覚】を踏みつぶした張本人""白い影""、【空蹴兎 ピータン】がいた

 

 

 

 【ピータン】は直前までの高速移動が嘘だったかのように静かにこちらを見つめながらたたずむんでいた

 先程の高速起動を見た拙者は非常識的な光景を見てしまったかのように驚愕の視線を【ピータン】に注いでいた

 

 

 

 ——————明らかに速すぎる、と

 

 

 

 【ピータン】のステータスは既に拙者の《看破》で見破っている

 

 《看破》の得られた情報では突出して高いステータスは上から順番にHP、STR、END、MPと並んでいた

 他のステータスはLUCを除いて軒並み500前後である

 

 当然のことながらAGIが500台である【ピータン】に亜音速での移動を特別なスキルを使わないで自力ですることは絶対に不可能だ

 

 だが、【ピータン】のスキルでそれに該当するモノは見つけることができないのだ

 

 空気を操るスキルではあれほどの勢いを出すとなると【ピータン】が持つ約3000のMPを全て使わなければ数秒とはいえ足りないはずなのだが、先程の移動の前と後だとたったの100しか削れていないことから明らかにこれは違う

 《感覚強化》でも動きは変えられてもステータスは変えられないし、最後の状態異常とデバフの無効化のスキルにもまさかステータスを強化する能力があるとは思えない

 

 これが人間範疇生物であれば装備補正なども考えられるが【ピータン】の全身には白銀の毛皮があるだけで何もつけられているよな様子も見られない

 

 

 では、一体何がその高速移動を可能にしているだろうか?

 

 

 一つだけ、考えられる方法はある

 

 

 非常に頭のおかしい方法であるため咄嗟には思いつかなかったが、若干減っている【ピータン】のHPと移動時に発生した爆発音を考えるとそれが答えだと思えてきてしまった

 

 

 

 

 その方法とは、""STRを用いた破壊を伴う移動法""である

 

 

 

 

 STRとは力に関係するステータスで、何かを持ち上げたり、物理攻撃で相手にダメージを与える際に必要なステータスだ

 STRを用いた攻撃はSTRが高ければ高いほどその威力を強くすることが出来る

 そして、威力が高ければ高いほどそれによって副次的に生まれる衝撃も強くなるため、自身のSTRがENDよりも遥かに大きすぎると自分の体が傷つくことさえもある

 さらに言うと、例えENDが足りていたとしてもしっかりと踏ん張っていなければ自分の攻撃の反動で飛んで行ってしまう危険性もあるため、力の制御に失敗すると自分に害を与えることもある

 

 

 しかし、その反動を操ることが出来れば話は変わってくる

 

 

 敢えて強大なSTRの反動に身を任せて自分の体を飛ばすことで実際のAGI以上の速さで移動することが可能となるのだ

 

 

 だが、この方法には問題点がいくつかある

 

 まず、加速しているのは自身の「体」だけであり「意識」は自身のAGI以上にはなっていないこと

 いくら加速してもその速さに対応できなければ自由に移動することができずに何かと衝突して大ダメージを喰らってしまうだろう

 力の入れ方を少しだけ変えるだけで大きな変化を産んでしまうこの移動法では使いこなせるようになる前に体がまず持たないため、考えたとしても実践する者はかなり少ない

 

 二つ目は直線でしか動けないこと

 森林地帯や大きな岩壁がある場所なら自由に動き回れるが、それ以外の平地だとまず横への方向転換が出来ないため、相手にどう動くかが簡単にバレてしまうことから戦闘にはかなり使いずらいのだ

 

 そして、ある意味で最大の問題点が移動時に掛かる衝撃による痛みがあることだ

 たとえ移動法を使いこなせていても移動を始める時や方向転換をする時、そして最後に止まるときに掛かる衝撃はいくら頑張っても消すことは不可能

 それと同時にHPも少なからず削ることになるので、長期戦にはあまり向かないというデメリットもある

 

 わざわざ、頑張って習得した方法にこれらのような欠陥があるとなると使いたがる人間はこの時点で殆ど消え去る

 

 

 

 だが、【ピータン】にはこの方法を実行するだけのSTRとこれらのデメリットを解消する手段がある

 

 《感覚強化》を使えば鋭敏になった感覚器官から周囲の情報をかなりの精度で収集しそれをもとに方向転換する位置を決め、空気を操るスキルで十分な強度の壁を作ることで空中に即席の足場を生成し軌道を変え、移動の際に生じるダメージは《自己再生》で治すことが出来る

 痛みに関して言えば、どんなに痛みつけられても跪かなかったこのモンスターには反動による痛みなど問題ないだろう

 

 そして、最後に一番重要な【ピータン】のSTRは4万オーバー

 

 

 これだけ必要な要素が揃っていれば信じざるを得ない

 【ピータン】は確実にこの方法で移動している

 

 

 数秒のうちに【覚】を屠った【ピータン】の移動法の正体に気が付いた拙者は直ぐに戦闘スタイルを変更することを決定した

 未だに動かない【ピータン】から目を離さずに注意深く腰につけた懐に入れていた""あるアイテム""を刀を握っていない左手で掴もうとする

 

 しかし、拙者が何かをしようとしたことに気が付いた【ピータン】はそうはさせないとでもいうかの如く、大地を蹴り砕きながら突進を仕掛けてくる

 こちら側も【ピータン】を迎え撃たんとするために大刀に纏わせていた【蜜】を刀身の先端部分から離し自身の腕に近い部分に集中させる

 その間も【ピータン】はこちらに近づこうと猛烈な勢いで一直線に跳んでくるが、その直線上に遠くから光弾と風の刃が飛んできた

 

 ザシキワラシ殿の《去運不返球》と【鎌鼬】の《風の刃》だ

 

 つい先程、夜ト神殿に【テレパシースカフ】で時間稼ぎの方を頼んでもらったのだ

 

 進路上に障害物が出来たのをすぐ様に確認した【ピータン】は軌道を何度か変えつつ拙者の方へと迫りくる

 どこに方向転換するのかを計算しスキルを乱射するザシキワラシ殿達の健闘のおかげで""アイテム""を掴み取り、それを使用するのに必要な時間を約二秒も稼いでもらうことが出来た

 

 

 そして、もう目の前にまで迫って来た【ピータン】を視界に入れながらも体を守るように右手で大刀を構え、そのアイテム、""ジョブクリスタル""を砕いた

 

 

 

 

 







ラストシーンですが、別に不落丸さんですが超級職とか別に取ってないんでチェンジするのは普通のジョブです

以下ピータンの詳細

伝説級〈UBM〉
【空蹴兎 ピータン】
種族:魔獣
主な能力:風圧操作、忌死廻醒、自己再生、感覚強化
到達レベル:38
発生:デザイン型
製作者:ジャバウォック
備考:STR極振りの人外系修羅。強くなるために戦いを常に求めていたおかげか、■■■■■を食らってから索敵能力と戦闘継続能力が向上し、僅か数週間で逸話級から伝説級〈UBM〉に進化した
感想欄でチートだとか言われている《忌死廻醒》だが、コストとして次のレベルアップに必要な分のリソースを一定量使用しているので、強くなるために戦っている【ピータン】的にはあまり使いたくない能力である





ここからはマジで不定期になると思いますが気長に更新を待っていただくと嬉しいです

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。