「ダーリン?どこー?」
「これでいいのですか?」
「おう。ありがとな、嬢ちゃん。」
マイルームの扉が開く。
入ってきたのはマシュだ。でも、男の声もしたような気がしたのだが…
「おーい、マスター?下だ。」
「え?あ、オリオンか。どしたの?」
マシュの足元に熊のぬいぐるみが立っていた。
彼の名前はオリオン。いつもくっついてきたアルテミスに戦わせているひどいやつである。
最近は黒ひげと一緒にナンパやらしてるみたいだし…
「オリオン、ギルティ。」
「なぜに!?」
「では私はこれで失礼しますね。」
「お?おお、ありがとな。この姿だと扉開けられなくてな…」
「え?あ!ぬいぐるみさんです!どうしたのですか?ご依頼ですか!?」
部屋からマシュが出ていく。
と同時にまたもや机で何かを作っていたジャンタがこちらに気づいた。
パタパタと寄ってきてオリオンを抱き抱える。
「ダメだよ、ジャンタ。それ触ったら汚れちゃうよ。」
「なんか俺に対する扱いひどくね!?ねぇ!ひどくね!?」
「そうですよ、トナカイさん。ぬいぐるみさんはいつも一緒に遊んでくれる優しいぬいぐるみさんですよ!」
「アルテミスさーん!浮気!浮気ですよー!」
「だー!止めろ!止めてください!それしゃれになんねぇから!」
「で、なに?ナンパの仕方とか知らないよ?」
「トナカイさん。なんぱって何ですか?」
「まだジャンタは知らなくてもいいことだよ。」
「別に嬢ちゃんにそんなこと聞こうと思ってねえよ。それにマスターは何もしなくても女の子寄ってくるもんなー…」
「代われるなら代わりたいけどね…それで?依頼は?」
すごい脱線をしている気がする。
ジャンタは『なんぱって…はっ!きっとジャンタの仲間ですね!私の…仲間…?』とか言ってるし…オリオンは地面に座り込み、地面を指でいじいじしてるし…
話が進まない…
「いいよなー…マスターは…可愛い子に夜這いとかされるくらいだもんなー…」
「い!ら!い!」
「お、おぉ…えっと…来週俺たちの記念日みたいなんだが…」
「へー、おめでと。」
「おめでとうございます!」
「その…」
また地面をいじいじし始める。
なに?なんなの?別の用事があるとか?なにを頼みたいのさ…
「何の…記念日なのか…忘れた…」
「………は?」
何の記念日か忘れた?
あのアルテミス相手に?何の日か忘れたって?
「あいつめっちゃ楽しそうに部屋の飾りつけとかしてんの!でも俺には心当たりが何もない!」
「死んだね。御愁傷様です。」
「謝ったら許してくれるんじゃないですか?」
「嬢ちゃん…あいつを舐めたらダメだ…少なくとも半殺しには………はっ!」
いきなりオリオンが顔を上げた。
そして布団の中にダイブ!
「え?なに?今度はなに!?」
「こーんにーちわー!あら?マスター?ここにダーリンいない?」
「あー…なるほどね…」
入ってきたのはアルテミスだ。
今日もかなり露出多めな服である。
目を背けたい女の子キャラベスト3に入る子だ。
「えー…っと…オリオンはねー…」
「バカ!言うな!お願いしますから!」
後ろから小さな声で聞こえてくる。
アルテミスを騙すのはかわいそうだし…忘れてるオリオンも悪い。
「そこにい…」
でも…本当にいいのか?
相手はあの…アルテミスだぞ?
『ダーリンが初めて○○した日』みたいな記念日だったらいくらなんでもオリオンがかわいそうだ。絶対にわかるわけがない。
先に確認してみた方がいいかな…
「いない…けど…どうしたの?」
「そっかー。マスターのところな気がしたんだけどなー…じゃあマスターだけでいいや!ちょっと付き合って!」
「は、何に?」
「私も!私もいます!」
「欲しいものがあるの!よし行こー!」
「えー…」
「私も…」
「うん。ジャンタも一緒に来てくれるかな。」
「はい!もちろんです!」
顔を輝かせる。あー…癒されるわー…
ずるずると引きずられながらそんなことを考えているマスターであった。
太陽が照りつける。
手を目の上に持ってきていないと目を開けることすらできない。
見渡すとキラキラと光る水辺。少し歩きづらい砂浜。
そんなところに俺は女の子二人と立っていた。
「で。いきなりレイシフトさせられた訳ですが…」
「海ですー!広いですね!トナカイさん遊びましょう!」
「マスターいないとここに来れないからね~♪ありがと♪」
「うん。それはいいんだけど…ち、ちょっと待って…ジャンタ…引っ張らないで…遊ぶ…遊ぶけど先に話だけ聞かせて…」
「はっ!そうです!依頼でした!えっと…アルテミスさん。ここに何をしに来たのですか?」
「ダーリンへのプレゼントを取りに来たの!」
「それなんだけどさ、来週は何の記念日なの?」
「えっとねー…あれ?なんでマスターが来週記念日だって知ってるの?」
「え?………あっ………」
「マスター?」
ははは…笑顔で弓を引かないでくれますか…?
「やっぱり…部屋にダーリンいたのね?」
「…はい…」
ごめんよ…僕には荷が重かったみたいだ…
「ねぇダーリン?どういうことか説明してくれる?」
「ハハハ…何を言っているんだマイハニー?愛してるぜ?」
「じゃあ来週は何の日?」
「それは…」
オリオンからだらだらと冷や汗が流れ落ちる。
アルテミスも矢をつがえたまま動かない。
緊迫した空気が漂う。少しでも動けば…死ぬ。
「は、初めて出会った日…?」
「ダーリン?」
「うぐ…初…デート…?」
「ダーリン~?」
「う…く…」
「く?」
「くっころー!!!」
「あ!逃げた!待てー!」
走り出すオリオン。追うアルテミス。
しかし悲しいことにオリオンは…扉を開けることができないのだ…
「あっ!ドア開かねぇ!」
「ふふふ…ダーリン?部屋でじっくりとお話聞かせてもらうからね?」
「ちょ…おま…ま、マスター!なんとかして…」
「………」
ごめんね…俺は怒れる女の子を静める技を持っていないんだ…
さらばオリオン。安らかに眠れ…
「トナカイさん。私たち…いりましたか?」
「いらなかったねぇ…ただただ夫婦喧嘩に巻き込まれただけだな…
ところでジャンタさんや。それは何を作ってるの?」
「依頼ボックスです!ここに依頼を入れてもらいます!」
「へー、それはいいね。もうできるの?」
「はい!できました!」
「そっか。じゃあ置いておこうね。」
部屋の外に机を持ち出す。
扉の横に机を置き、上に箱をセット。
『いらいをいれてください!』と拙い文字で書かれている。
頑張って文字を勉強したんだろうな…可愛い。
「これでもっと依頼が来ますね!」
「そうだね。もっと…まともなのが…来るといいね…」
二つ目の依頼、これにて完結…?
ぐだ~…
ちなみに…オリオンとアルテミスの記念日って何だったんでしょうねぇ…