(庭原)「無い伏線を張っていくスタイル」
■???
今更になって。
少年は、死を恐れた。
どうあっても、時の流れというものは不可逆で、死から逃れる事は出来ない。
だからそれは、誰もが行ってきた現実逃避だ。
例外は無い。
そんなものは何処にも無い。
だからこそ、逃げ道が無い。
掲げた理想は何処にも行けず、遠くない内に雲散霧消する。
人間は生まれながらにして五里霧中なのだ。真っ直ぐ進んでいる確証など無い。それどころか、『正しい』のか否かもまた、不明瞭だ。
それによる不安は精神的な苦痛となって、漏れ出す声は怨嗟となる。孰れ至る所で響き、
それは、哀しい事では無かろうか。
始まる前から、それは詰んでいると言うのだ。
始まると同時に投了。そんな将棋見た事が無い。
だが、盤の上では『有り得ない』現象が、現実で起きている。
事実は小説よりも奇なり、とはよく言うが、ここまで奇妙なものなのだろうか?それこそ、幻想のようだ。
ある筈の無い
とても、とても。おかしな話になっている。
誰がこんな物語のシナリオを書いているのだろうか。会ってみたいものだ、が……。
その
当事者でありながら被害者とは、一体。
『面白くないものだ。自由を唄うと選択肢が多過ぎて敵わんな』
壊れれば救われるなら、狂えば救われるなら、誰もが壊れて狂うだろう。
だが、救われる為の選択肢、などという都合の良いものは無い。自ずから探し当てなければならない。
無限の選択肢の中で。
有限の時間の中で。
だからこそ、なのか。それとも、だけれども、なのか。
矢張り、とも言えるし奇しくも、とも言えるそんな中で、カタルパ・ガーデンは停滞を望みながら前へ進んで行くのだ。
そうして彼は今日も、彼女の嘘に気付かないのだろう。
嘘から出たまこと、になるのか。
……
【絶対『に』裁く姫】は、【絶対『を』裁く姫】になった。
言葉にするなら、それだけだ。
それはどういう事なのか、についてはつい先日誰かが述べた通りなのだ。
『
まぁ、英語にすると、大分変わったのが分かるんだが。
兎も角だ。【絶対裁姫】は変質した。
嘘に嘘を重ねて真実に仕立てあげた。
それは、彼に嘘をついたという事実から逃げ出した最果て。
現実逃避の結果そうなったに過ぎない。
人間で無くとも、現実逃避をする時代になった、と言うわけだ。笑える話だ。
況してや現代に於いては、現実逃避した『行き先』がある。
リアルでいうゲームがそうだ。
そこには逃げ道があるのだ。
然し乍ら此方は先程、逃げ道が無い、と言った。
何故ならここは
逃げ道であり、『行き先』だから。
まぁ、ここまで語っておきながら言うのは何だが、
問題は、ゲームの中のリアル。
つまり、
この世界以外に、逃げ道が無い。
行き先が無い。
蹂躙されるのを今か今かと待っている、哀れな子羊。
そんな、ティアンと呼ばれる存在に、逃げ道は有るのだろうか。
死は逃げか?
化け物に成り果てるのが逃げか?
果たして、彼等に『逃げる』という選択肢が、あるのだろうか?
或いは、選べるのだろうか?
救いは、有るのだろうか?
答えを知っている筈の者は、知らぬ存ぜぬを貫き通した。
ならばこれは、誰も知れない物語。
未来はあまりにも不明瞭。それこそ五里霧中。
人々はあまりにも悲観的。それ故の怨嗟共鳴。
現実逃避など常套手段。その為の幻想魔導書。
はて……何故カタルパ・ガーデンは運命に導かれているかのように歩を進めるのだろうか。
迷ってはいる。宵と宵の狭間を彷徨っているようにしか見えない。『善い』に酔っているようにしか見えない。
それは、必ずしも悪い事では無いのだが……どうしてか、今の彼が翳すと悪に見えてしまう。
それは彼が偽悪を身に纏っているからだろう。
それは彼が、掴める正義を悉く手放し、掴む価値の無い偽悪を掴んでいるからだろう。
救いは正義、か。死こそが救い、か。
そんな下らない理論を打ち立てなければ、平生を保てないのだろうか?
……実に意地汚いな、此方は。
人が悲観的だと言いながら、最も悲観していのは此方ではないか。
いや、然れども、〈終焉〉を越え得ない者に、どう希望を持てと言うのだろうか。希望を見出すべき者達に、希望を見出す価値が無いからこうなったのだろうが、それでもだ。
〈終焉〉の為の駒に、エンブリオ、マスター、或いは化身はなり得ない。
この世界の人類史のイレギュラーは、些か多過ぎる。
間引く必要は無いが、毒しているのは事実だ。
此方が動く理由は無い……か?
本当に?此方が腰を上げる必要は、無いのか?
このまま傍観を続けて出る幕を失うのは、よろしくないのではなかろうか?
……とは言えど。今更此方が動く事など、出来はしないのだが、ね。
ではほんの少し、待ってみようか。
希望を持って、見てみよう。
それこそ、空から日本を見てみよう、とでも言うかのように。
俯瞰して見ようか?
まぁどうあれ、暫くはカタルパ・ガーデンを見る事になりそうだが。
□■□
そう言えば、だが。〈UBM〉と呼ばれるものがあるそうな。
ユニーク・ボス・モンスター、だったか。あの獣が言っていたな。
獣も何故雑用に甘んじるのか分からんな。
……最も分からんのは冒涜か。
して〈UBM〉、か。生まれながらにしてそうである者もいれば、後々認められてそうなる者もいるそうじゃないか。
今更前者である後者であると語るのは無意味なのだろうが、な。
……気に食わんな。
この世界はアレを〈
終焉、つまりは終末だ。終着点、ターミナルだ。
であればさしずめ、此方はその為の布石、なのだろうな。
否、若しくは全く関係が無いかもしれない。
本当にそうなのであれば、哀しい事だが。
今更悲観する事でも無いか。
悲観する為の精神が、摩耗し過ぎた。疲弊し過ぎた。
今更『人の心』とやらを解るには、遅過ぎる。今更己を理解するには、己の全容を、此方は理解していなさすぎる。
で、なんだったか。あのキメラのような化身が呼んだ此方の名は……嗚呼、そうだったな。
『【七亡乱波 ギャラルホルン】、だったな。意外や意外、覚えているものじゃないか』
……はて、どう笑うのだったか。
口角を上げるのだったか?あと目元を『優しく』……?
分からんな。
遂に笑い方を忘れたか。如何せん使う機会が無かったからな、仕方ない。
化身との付き合いは長いが……あれだ、席を奪われてからは、化身と話す機会も減っておったな。尚更か。
最近は獣が来たりはしていたが、現状確認でしか無かっただろうしな。
そう言えば、獣が此方を〈イレギュラー〉などと呼んだ事もあったが、一体何の意味があるのだ?例外とは、果たして?
……分からんな。
だが、あの時誘われたのだから成ってみたかったな。
――――〈SUBM〉とやらに。
【七亡乱波 ギャラルホルン】
種族は???
口振り的には〈SUBM〉のなり損ない。現在はイレギュラー……らしい。
果たしてその実態は。
乱波は喇叭とかかっている、らしい。
元ネタは言わずともがな、終末の為の喇叭、ギャラルホルン。