其は正義を手放し偽悪を掴む   作:災禍の壺

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(作者)「番外的なやつです」
(庭原)「無い伏線を張っていくスタイル」


第二十四話

■???

 

 今更になって。

 少年は、死を恐れた。

 どうあっても、時の流れというものは不可逆で、死から逃れる事は出来ない。

 だからそれは、誰もが行ってきた現実逃避だ。

 例外は無い。

 そんなものは何処にも無い。

 だからこそ、逃げ道が無い。

 掲げた理想は何処にも行けず、遠くない内に雲散霧消する。

 人間は生まれながらにして五里霧中なのだ。真っ直ぐ進んでいる確証など無い。それどころか、『正しい』のか否かもまた、不明瞭だ。

 それによる不安は精神的な苦痛となって、漏れ出す声は怨嗟となる。孰れ至る所で響き、合唱(シュプレヒコール)となり、共鳴する。

 それは、哀しい事では無かろうか。

 始まる前から、それは詰んでいると言うのだ。

 始まると同時に投了。そんな将棋見た事が無い。

 だが、盤の上では『有り得ない』現象が、現実で起きている。

 事実は小説よりも奇なり、とはよく言うが、ここまで奇妙なものなのだろうか?それこそ、幻想のようだ。

 ある筈の無い魔導書(ネクロノミコン)を探す冒険譚のようだ。

 とても、とても。おかしな話になっている。

 誰がこんな物語のシナリオを書いているのだろうか。会ってみたいものだ、が……。

 その当事者(シナリオライター)が、一番困っているという現状は、どうしたものか。

 当事者でありながら被害者とは、一体。

 

『面白くないものだ。自由を唄うと選択肢が多過ぎて敵わんな』

 

 ゲームのように(、、、、、、、)ある程度選択肢があった方が、余程いい。

 壊れれば救われるなら、狂えば救われるなら、誰もが壊れて狂うだろう。

 だが、救われる為の選択肢、などという都合の良いものは無い。自ずから探し当てなければならない。

 無限の選択肢の中で。

 有限の時間の中で。

 だからこそ、なのか。それとも、だけれども、なのか。

 矢張り、とも言えるし奇しくも、とも言えるそんな中で、カタルパ・ガーデンは停滞を望みながら前へ進んで行くのだ。

 そうして彼は今日も、彼女の嘘に気付かないのだろう。

 (いや)、変質しては、嘘でも無くなるのか。

 嘘から出たまこと、になるのか。

 ……なってしまうのか(、、、、、、、、)

 【絶対『に』裁く姫】は、【絶対『を』裁く姫】になった。

 言葉にするなら、それだけだ。

 それはどういう事なのか、についてはつい先日誰かが述べた通りなのだ。

 『絶対裁定(アブソリュート・ジャッジ)』が、『絶対裁定(ジ・アブソリュート・イズ・ジャッジド)』になっただけ。

 まぁ、英語にすると、大分変わったのが分かるんだが。

 兎も角だ。【絶対裁姫】は変質した。

 嘘に嘘を重ねて真実に仕立てあげた。

 それは、彼に嘘をついたという事実から逃げ出した最果て。

 現実逃避の結果そうなったに過ぎない。

 人間で無くとも、現実逃避をする時代になった、と言うわけだ。笑える話だ。

 況してや現代に於いては、現実逃避した『行き先』がある。

 リアルでいうゲームがそうだ。

 そこには逃げ道があるのだ。

 然し乍ら此方は先程、逃げ道が無い、と言った。

 何故ならここは彼等が語る(、、、、、)ゲームだから。

 逃げ道であり、『行き先』だから。

 ここ(ゲーム)で逃避するという事は、彼等はまたリアルに逆戻りしなければならない、というループを指し示してしまうから。

 まぁ、ここまで語っておきながら言うのは何だが、問題はそこでは無い(、、、、、、、、、)

 問題は、ゲームの中のリアル。

 つまり、この世界(ゲーム)がリアルである者達だ。

 この世界以外に、逃げ道が無い。

 行き先が無い。

 蹂躙されるのを今か今かと待っている、哀れな子羊。

 そんな、ティアンと呼ばれる存在に、逃げ道は有るのだろうか。

 死は逃げか?

 化け物に成り果てるのが逃げか?

 果たして、彼等に『逃げる』という選択肢が、あるのだろうか?

 或いは、選べるのだろうか?

 救いは、有るのだろうか?

 答えを知っている筈の者は、知らぬ存ぜぬを貫き通した。

 ならばこれは、誰も知れない物語。

 未来はあまりにも不明瞭。それこそ五里霧中。

 人々はあまりにも悲観的。それ故の怨嗟共鳴。

 現実逃避など常套手段。その為の幻想魔導書。

 はて……何故カタルパ・ガーデンは運命に導かれているかのように歩を進めるのだろうか。

 迷ってはいる。宵と宵の狭間を彷徨っているようにしか見えない。『善い』に酔っているようにしか見えない。

 それは、必ずしも悪い事では無いのだが……どうしてか、今の彼が翳すと悪に見えてしまう。

 それは彼が偽悪を身に纏っているからだろう。

 それは彼が、掴める正義を悉く手放し、掴む価値の無い偽悪を掴んでいるからだろう。

 救いは正義、か。死こそが救い、か。

 そんな下らない理論を打ち立てなければ、平生を保てないのだろうか?

 ……実に意地汚いな、此方は。

 人が悲観的だと言いながら、最も悲観していのは此方ではないか。

 いや、然れども、〈終焉〉を越え得ない者に、どう希望を持てと言うのだろうか。希望を見出すべき者達に、希望を見出す価値が無いからこうなったのだろうが、それでもだ。

 〈終焉〉の為の駒に、エンブリオ、マスター、或いは化身はなり得ない。

 この世界の人類史のイレギュラーは、些か多過ぎる。

 間引く必要は無いが、毒しているのは事実だ。

 此方が動く理由は無い……か?

 本当に?此方が腰を上げる必要は、無いのか?

 このまま傍観を続けて出る幕を失うのは、よろしくないのではなかろうか?

 ……とは言えど。今更此方が動く事など、出来はしないのだが、ね。

 ではほんの少し、待ってみようか。

 希望を持って、見てみよう。

 それこそ、空から日本を見てみよう、とでも言うかのように。

 俯瞰して見ようか?

 まぁどうあれ、暫くはカタルパ・ガーデンを見る事になりそうだが。

 

□■□

 

 そう言えば、だが。〈UBM〉と呼ばれるものがあるそうな。

 ユニーク・ボス・モンスター、だったか。あの獣が言っていたな。

 獣も何故雑用に甘んじるのか分からんな。

 ……最も分からんのは冒涜か。

 して〈UBM〉、か。生まれながらにしてそうである者もいれば、後々認められてそうなる者もいるそうじゃないか。

 今更前者である後者であると語るのは無意味なのだろうが、な。

 ……気に食わんな。

 この世界はアレを〈終焉(ゲームオーバー)〉と言うのだろう?

 終焉、つまりは終末だ。終着点、ターミナルだ。

 であればさしずめ、此方はその為の布石、なのだろうな。

 否、若しくは全く関係が無いかもしれない。

 本当にそうなのであれば、哀しい事だが。

 今更悲観する事でも無いか。

 悲観する為の精神が、摩耗し過ぎた。疲弊し過ぎた。

 今更『人の心』とやらを解るには、遅過ぎる。今更己を理解するには、己の全容を、此方は理解していなさすぎる。

 で、なんだったか。あのキメラのような化身が呼んだ此方の名は……嗚呼、そうだったな。

 

『【七亡乱波 ギャラルホルン】、だったな。意外や意外、覚えているものじゃないか』

 

 ……はて、どう笑うのだったか。

 口角を上げるのだったか?あと目元を『優しく』……?

 分からんな。

 遂に笑い方を忘れたか。如何せん使う機会が無かったからな、仕方ない。

 化身との付き合いは長いが……あれだ、席を奪われてからは、化身と話す機会も減っておったな。尚更か。

 最近は獣が来たりはしていたが、現状確認でしか無かっただろうしな。

 そう言えば、獣が此方を〈イレギュラー〉などと呼んだ事もあったが、一体何の意味があるのだ?例外とは、果たして?

 ……分からんな。

 だが、あの時誘われたのだから成ってみたかったな。

 

 ――――〈SUBM〉とやらに。




【七亡乱波 ギャラルホルン】
 種族は???
 口振り的には〈SUBM〉のなり損ない。現在はイレギュラー……らしい。
 果たしてその実態は。
 乱波は喇叭とかかっている、らしい。
 元ネタは言わずともがな、終末の為の喇叭、ギャラルホルン。
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