( ✕✝︎)「第■話、設定集、Epilogue and Prolog、そして資料集 その一、か。随分と長旅だな」
( °壺°)「でもまだ半分くらいですね」
( ✕✝︎)「読者の皆、もう暫く長旅に付き合ってくれ」
形骸化した正義。
それでも翳すのは些か愚者性が高くはなかろうか。
それでも翳す事に、何か思う事は無いのか、いや、あるだろう。
あるのに……無いという事にしているのだろう。
【《学習魔法・紅炎之槍》の記憶を消去】
【シークエンスコンプリート】
【【実在虚構 ヨグソトース】を召喚します】
《
そして、失った記憶をリソースとして――《実在する虚構》、《そのもの》、そうクトゥルフ神話で語られる神性――【実在虚構 ヨグソトース】を召喚するのが、《架空の魔書》の効果である。
【ヨグソトース】は居るが居ない、存在しないが存在する神性。そしてその存在性故、絶対的な防御を誇る。
カタルパがケロリとしていたのはこのスキルのお陰である。
なら、
【過去のログから《
【
それが、《
今迄【共鳴怨刀】が《
どちらもデメリットは存在する。
《架空の魔書》は前述の通り、《魔法学習》で得た記憶をスキル一つ分消去する。それをリソースにする為、多くその魔法を記憶していればしている分だけ【ヨグソトース】を呼び出す時間が長くなる。
《怨嗟の感染》では、一度この効果で使ったスキルは七日間の間《音信共鳴》でもストック出来ない事。
では、最後。
『悪は頽れる運命にあり』
「人の敷く世に善悪の境界無し」
『然れど今、【
必殺スキル。嘗て、【七亡乱波 ギャラルホルン】の橙色の突起を破壊した、最大最強のスキル。
――ここで
きっとそこにも、意味はあるのだろう。
言葉が通じなければ武力を取り出す事に、罪悪感を抱く必要は無い。それは必然的な行為なのだから。だから、それを悪とは呼ばない。言葉を交わさずに武力を行使するのが悪である。それ故に、カタルパのコレは正義で居られる。言葉を交わせる相手と言葉を交わし、その後で武力を行使するのだから。
いや、この場合行使しているのはあちらであり、こちらではないか。
今カタルパは、防御を《架空の魔書》で喚ばれる【ヨグソトース】に任せ、《怨嗟の感染》と《愚者と嘘つき》による攻撃を謀っている。
それを仮に【ギャラルホルン】が読んでいたとしても、《架空の魔書》と《怨嗟の感染》、そして《愚者と嘘つき》の能力を知らない彼の者が、十全な対策を取れる訳が無い。
結果。
【ヨグソトース】の前に宝石の嵐は無意味であり――旗の一撃の前に水晶の盾は無力であり。
既に刻まれている刻印を払う事は出来ず、その罪を祓う事は出来ず。
「『《
『っ、《
その一撃を止める事は、不可能であった。
□■□
《
その能力は二つある。一つは、『スキルを保持している限り、全ての攻撃で発生したダメージの発生回数分の【刻印】を相手に刻みつける』という能力。
【刻印】は状態異常として扱われるが、それは【宿酔】や【凍結】、【呪縛】などとは違い、状態異常欄には記載されない。
遊○王のカウンターや、プ○メモの+10/+10コインのようなもので、どんどん盛られていくものだからだろう。
そして、《愚者と嘘つき》のもう一つの効果は。
『発動時、【刻印】のある敵への攻撃に【刻印】の数分攻撃力補正をかける』という能力。
【七亡乱波】戦に於いて、【刻印】は【ネクロノミコン】の放った《ファイヤーボール》により、【刻印】は【七亡乱波 ギャラルホルン】に300程刻まれていた。
攻撃力補正率は【刻印】一つにつき1%。300も刻まれた【ギャラルホルン】に対し、+300%の補正がかけられていたという訳……
正しくは、【刻印】の数だけ、『1.01をかけていく』事になる。
その為、【刻印】が50あるだけでも、+50%であれば100のダメージは150になるだけだが、164.4…まで上がる。
この14.5(四捨五入した)は、誤差とあしらわれるかもしれないが、60あれば誤差は21.7に。70で30.7になる。
そしてこの誤差は、ダメージではなく攻撃力にかかる為、攻撃力が1000あれば誤差は10倍になっている訳だし、10000あれば……言うまでもない。そして、ここでSTRと言っていない点にも注視すべきなのだが……この際言わなくてもよいだろう。
ダメージが1でも入るなら、鎖による圧倒的手数を以て『悪を屠る』。
“獣の化身”にも似た理論は、彼等の到達点であった。
チェシャ――【無限■■ ■■■■■■】の辿り着いた理論は、偶然的にも、【絶対裁姫 アストライア】と同じであった、と言うのだ。
その過程、そして末路は違うにしても、同族。
【零点回帰 ギャラルホルン】は、カタルパ・ガーデンと対峙していてその実、トム・キャットと対峙しているも同義であったのだ。本来は全然同義ではないが。
斯くして、斬撃が宝石の体に到達する。
ゆっくり、ゆっくりと。然れど豆腐を切るかのようにすらりと。
宝石の肉体が、分かたれていくのを【ギャラルホルン】は感じた。
(成程、これが走馬灯か)
死の間際、世界がゆっくり動くように見え、過去の事を垣間見る、
【ギャラルホルン】は矢張り、人間性を得ていたのだ。
(だから……だから、負けるのだ)
人間性を持つなら、人間と同義である。悪人なら殺せるカタルパが、こうして殺す訳だ。
(なら、せめてもの、餞に――)
【ギャラルホルン】が、既に二つに別れた口で唱える。二分された顔面で、しっかりと対象を捉える。
一世一代の、大勝負。
人と人の戦いに、相応しくはない大勝負。
けれども。
化け物と化け物の戦いには、相応しかろう。
『《
宝石の一つ一つが、個性を放つように陽光を乱反射し、地上に第二の太陽が生まれる。
その太陽はミルキーを吹き飛ばし、その内に【ギャラルホルン】とカタルパを飲み込んだ。
天地鳴動。地を抉り、木々を裂き、囲っていた水晶を取り込み肥大化する。
「
恨みますよカタルパさんっ……!
《壁にかかった魔法の鏡》!」
その肥大化の過程で、宝石の乱舞に飲み込まれそうになったアルカ・トレスとセムロフ・クコーレフスがミルキーと共に虚空へと消える。
『私達が生き残るなら、街の中かこの攻撃の範囲外か、
だがその『私達』に、カタルパ・ガーデンは含まれていなかった。
今尚、宝石の太陽の中、二人で一体に対峙していたのだから。
「何のつもりだ、【ギャラルホルン】」
『無論、此方が生きていた事の証を、遺す為に』
「『生きていた』とか『遺す』とかほざくなよ化け物が」
『ならば其方も、「正義の味方」などと名乗らない方が良い。あれは人間しかなれない職だ』
『戯けめ!カーターの記憶の中には人間じゃない正義の味方とかいたぞ!』
「アイラ、多分そういう事じゃない。
……まぁ、分かっちゃいるよ。俺の正義はもう、正答ではない事くらいは」
それでも、とカタルパは続けた。
「俺は、こんな正義しか翳せない」
そんでもって、と更に続ける。
「こんな正義でしか、護れないものがあった。
こんな正義でしか、救えないひとがいた」
過去形である事に、既に光の塵となり始めた【ギャラルホルン】は気付かない。
「何より……こんなものを正義って呼んでくれた、
その目は、優しかった。
正義の味方ではなく、娘を思いやる父親のような目。
流石の【ギャラルホルン】も、それには気付いた。
(成程。一対一ではなく、あの【狂騒姫】との二対一でもなく。
彼と彼女の、二対一、或いは三対一であったか。
勝てぬな、それは。
一人であろうとした、此方では)
パキン、と罅割れる音が鳴り、そこから更に塵へと化していく。
『此方は、〈UBM〉ではないらしい』
「そうか」
『それ故、此方を倒したという証拠が無い』
「……そうか?」
『違うのか?』
『遺ると思うよ。
私達は生きていくから』
「だから心配するな」
「『そのまま朽ちろ、終末の喇叭』」
『……そうさせて、もらおう』
最後……否、最期に、胸部辺りの透明な球状の宝石を煌めかせて。
収縮する第二の太陽ごと、【零点回帰 ギャラルホルン】は、その名の通り、零に回帰したのだった――
《架空の魔書》
【幻想魔導書 ネクロノミコン】のスキル。学習していた魔法の記憶をリソースとして、【実在虚構 ヨグソトース】を召喚する。一度に複数の記憶をリソースとする事も可能だが、学習した魔法の記憶しかリソースに出来ないという欠点もある。
【実在虚構 ヨグソトース】
クトゥルフ神話に登場する神性の名を冠する、触手の化け物。
存在と非存在のどちらでもあり、どちらでもないという究極の混沌であり、全ての存在を否定し、また全ての非存在を否定する。その為、一切の攻撃が通用しない。
現状、《架空の魔書》以外での召喚は不可能。
《怨嗟の感染》
【怨嗟連鎖 シュプレヒコール】のスキル。
《音信共鳴》で一度でも模倣した事があるスキルを、強制的にストックさせる。《音信共鳴》で事前にストックしていたスキルが上書きされる為、そうすると《怨嗟の感染》と《音信共鳴》二つのデメリットにより、二つのスキルが【シュプレヒコール】による再発動が不可能になる。
強制的にストックさせる事による負荷か、24時間同スキルをストック不可という制約があり、また《音信共鳴》によるデメリットでストック出来ないスキルをストックさせる事は出来ない。
《愚者と嘘つき》
【絶対裁姫 アストライア】の必殺スキル。
このスキルを保持している限り、全ての攻撃にダメージ発生時に【刻印】を刻みつける能力を付与する。
そしてスキルを発動すると【刻印】の数だけ攻撃力補正がかかる一撃を放つ。その一撃はどんな一撃でもいい。
最大火力は勿論、【刻印】を大量に刻んだ上で、このスキルと共に《揺らめく蒼天の旗》をぶち込む事である。
( ✕✝︎)「……待て、ちょっと待て。【シュプレヒコール】の名前が誤字って――」
( °壺°)「ではまた次回ー」