( °壺°)「一応日曜に更新しようというポリシーって守りたいじゃない?」
( ✕✝︎)「既に何回かそのポリシー破ってんだよなぁ」
人類は、既に失敗している。
有史以来、ある筈のない平等を求め、得る物の無い戦争を起こし、果てに人類は人工的に人間を造り上げようとした。
なら絶対的な平等、なんてものは理想論なのだ。有り得ない。有り得る筈のない、夢に
だからこそ、それが叶うならば。叶ってしまったのならば。
人々はそれを奇跡と呼ばず、何と呼ぶのだろうか。
□■□
極光が放たれ、それは街を浄化するが如く呑み込んだ筈だった。
しかし地は抉れず、家屋は傷つかず、木々ですらそよ風に流されているだけだ。
だが、無意味だった訳では無い。
【龍幻飛後 アジ・ダハーカ】は、その血肉の大半が消え失せ、骨を太陽の元に晒していた。
垂れる血はない。それですら蒸発して消え失せた。見えている肉も焼けただれ、血管が塞がれているのだ。
アジ・ダハーカは翼を持つ龍蛇。龍としての特性と、蛇としての特性を併せ持つとされる。ヒュドラよろしく、その身には再生能力もある筈なのだが、ヒュドラの伝承と同じように、焼いて塞がれては再生する事が出来ないようだ。
【アジ・ダハーカ】を盾にして耐えたエイル・ピースも、無傷ではない。左頬と左腕は消え失せているし(左腕は食らう前からだが)、右脚も膝から下が掻き消えている。極光がエイルの左半身を焼いたのだ。
汗腺すら焼き塞がったのか、汗すら流れない。冷や汗を伝う頬も、左側にはない。
『A…………Ahhhhhh…………』
辛うじて無事だった【アジ・ダハーカ】の三つ首の内の一つ……真ん中の苦悩を表す首が、嘶いた。
だがそれは咆哮とは違い、恐怖が感じ取れた。
「……見事だ、正義の味方。勇者になれなくとも……そうか、それでいいんだったな…………」
エイルの視線は慈愛に満ちていた。その視線の向こうには、倒れ伏している燕尾服の青年と、それを揺さぶる白いワンピースの少女が居る。
目を細め、笑みを浮かべる。焼けたせいで固くなっているのだろう、【アジ・ダハーカ】がエイルを見る動きは鈍い。
だがその眼には未だ、悪を履行しようという意思がある。諸悪の根源は未だ、何も為してはいないから。何も成せてはいないから。
その焼け爛れた腕で、世界に爪痕を残そうと――何かを遺そうとしている。
己が〈エンブリオ〉でありながら、【転移模倣 ミミクリー】のせいでマトモに使ってこなかった分、意思疎通と言うか、感情の機微の読み取りがしづらい。
何を話しているかは分からない。だが何をしたいか、それだけは今、よく分かる。
動かない正義の味方を尻目に、火傷の痕をエイルは削ぎ落とした。【龍幻飛後 アジ・ダハーカ】の悲鳴にも似た咆哮が、辺りを震撼させる。それにより、先の極光で静止していた雑踏が再開され、次いで悲鳴を伴って逃げ惑う群衆となった。
今の【アジ・ダハーカ】には意思がある。正義の味方を打倒する事で、己の悪を立証しようとしている。
【諸悪王】だから……等と言う野暮ったい理由はいらない。
ただ同士だから、分かる。
エイル・ピースは確かに【アジ・ダハーカ】の真意を汲み取っている。
やがて削ぎ落とされた場所から新たな血肉が生まれ始めた。
エイル自身の肉体欠損はどうしようもない。【アジ・ダハーカ】の自己再生能力がエイルにもあるなら喜んで削ぎ落とすのだが、生憎今削ぎ落としては出血量を増やすだけだ。
【歯車鎖刃 オステオトーム】を左脚に括りつけ、義足代わりにする。ゆっくり駆動させるとセ○ウェイのように走り出した。右脚は引き摺られる形だ。
正義の味方の前まで来ると、揺さぶっていた手を止め、その間に鎖の少女が立った。両手を広げ、守ろうとしている。非力なのにも関わらず。今ここで足を振り回すだけで断ち切られる程に脆弱な筈なのに。
彼女は『強い』。
エイルはそう思った。
【アジ・ダハーカ】が唸る。今にも少女とその後ろの正義の味方に食らいつきに行こうとしている。
手で制し、その手でアイテムボックスをまさぐり、【禁牢監叉 デルピュネー】を取り出す。
その枷は枷でありながら罠である。それは縛るものでありながら、敵に食らいつく牙となる。
鎖の少女を(一応)牽制しながら、その枷で正義の味方を噛む。
淡く光り、ステータスを奪った事を確信する。
「取り敢えず今日はここまでにしたい。何が起きたかは存じないが、あれ程の光、さぞ代償は大きいのだろう。【アジ・ダハーカ】、抑えてくれ。こいつは必ず再び私達の元に来る。『コレ』の為に」
【アジ・ダハーカ】にエイルは【禁牢監叉】を見せる。三つ首の龍はそれを眺め、次いで鎖の少女を見遣る。
睨み付けるような視線に一瞬硬直した鎖の少女は、強い意思を持って頷き返す。
何せ目の前にいるのは【諸悪王】。取ってつけたように完璧に調整された、正義の味方のラスボスなのだから。倒しに行くに決まっている。打倒したいのは、此方も同じだったようだ。
「私も……コイツも。もう半ば満身創痍でね。いや、外付けのポーションが蒸発するとは思わなんだ。それに肉体再生用の回復アイテムなどあったか?」
もう踵を返し鋸を駆動させているエイル。【アジ・ダハーカ】は一つの首でそれを。あと一つずつでそれぞれ正義の味方と鎖の少女を見ていた。
一番左の鎖の少女を見る苦痛の首が、そっと口を開く。
『お前が正義の女神ではない事は察せる。だが……正義であろうとしている事も察せる』
「……驚いたな、君、話せたのか」
『あの王には明かしていないがな。そもあれは、なるべくしてなった王ではなく――いや、話すまい。兎角其方の理念は理解した。正義を目指すのは、手段であり目的ではないのか』
「……多分、そうだね」
『――そうか』
まだ何かを言おうとしていたのだろうが、【アジ・ダハーカ】はそれ以上何も言おうとはしなかった。
『そこの正義を、絶やすなよ』
最後にそう言い残し、既に見えない【諸悪王】を追っていく。巨大な翼をはためかせて飛んでいく姿は、とても悪龍のそれとは思えなかった。
魔書が話の終わりを悟り近付く。正義の味方は息をしていたが、とても浅い。大丈夫なのか、と少女に魔書は問う。
「大丈夫だ。今は
『……どういう……?』
「これには【ギャラルホルン】が一時期私を乗っ取った事に起因する所があるのさ」
『……は?』
「私は【絶対を裁く姫】だ。だから、『絶対に悪を屠る一撃』を許容しない」
捲し立てるように鎖の少女は続ける。
「だから今カーターと【ギャラルホルン】は、裁判の真っ最中なのさ」
【絶対を絶対に裁く姫】という自己矛盾を孕んだ少女は、逃げるように青空を仰いだ。
【龍幻飛後 アジ・ダハーカ】
TYPE:ラビリンス・ギア
エイル・ピースには隠しているが、実は話せる。アイコンタクトだけで会話が成り立っている訳だし、エイルは困っていない。本当は話せる事をエイルには察せられている。
《天地均し響け、週末の笛の音よ》
悪特攻らしい攻撃。悪絶対殺すマン(今回殺せてないよね?)。『絶対』なんて付けたせいで裁かれる運命に。あぁんまりだぁぁ。