其は正義を手放し偽悪を掴む   作:災禍の壺

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第八十三話

 消し飛ばした。

 何一つの比喩無く。嘘偽り無く。

 万物万象、それこそ『平等』に。

 消却の光は悪の王を呑み込んだ。

 アウゲイアスの牛舎のように。

 

 だが、その希望さえ、愚弄したのがエイル・ピースという者だった。

 そう、化け物は耐えたのだ。絶えなかったのだ。

 

「かっ……はっ……!!いやまさか……これ程とは思っていなかった。言いぶりからして『元々のステータスから減少している分の何倍かを攻撃力にして放つ』ものと思っていたが……あぁそうか、【探偵】がバフを解除して何かしらしていたかと思えば……【デルピュネー】で奪った分から、追加で引き去るとはな……よくやる」

 

 カタルパは舌打ちする。自分達が放てる最強の一撃を耐えられる……事は予想していたにせよ。満身創痍とは程遠い訳では無いが、五体満足という事には、自分の元々のステータスの低さに落胆せざるを得なかった。

 アイラを押し倒して《天地均し響け、終末の笛の音よ》を使わせるよう頼むべきだったか。それは愚策にも程があるのだが。

 そんな事よりも、重要なのは耐えたという点だろう。

 《仰げば尊き正義の断片(ライト・フラッグメント)》の効果は言われた通りだ。減少しているステータスの合計値の数倍(倍率は二倍から上限無しで自然数倍率)を攻撃力と扱って光弾(今回は光弾どころではなかったが)を放つスキル。辺り一帯の最高値を攻撃力に換算して光弾を放つ《蒼天揺らめく旗(アズール・フラッグ)》とは似て似つかない。

 似て非なるスキル。追加されたのかどうなのかは本人にしか分からないが、第3形態到達時に、秘匿されていたスキルがあったのだろうか。

 それらがどうあれ、今みるべきは事実。

 《仰げば尊き正義の断片》が発動されたと言う、事実だけ。

 肩で息をするエイル。暴龍同士の喰らいあいが、一旦停止する。エイルが【アジ・ダハーカ】を呼び寄せ、アルカが【イグドラシル】を――《虹に繋がれし九極世界(イグドラシル)》を引き寄せたからだ。

 

「そうそう、私の必殺スキル、《三種の辛苦(アジ・ダハーカ)》は『死の概念を付与する』という意味不明なスキルだが……果たしてそれを自分自身に使った時、どうなるだろう?」

 

 ――【龍幻飛後 アジ・ダハーカ】はTYPE:ラビリンス単体(、、)ではない。

 TYPE:ラビリンス・ギア。

 迷宮にして、これは騎乗用のモノだと言う。

 

「まぁ、答えは神のみぞ知る……いや、それだとそこの鎖の少女は知っていなければならないかな?否、君はこの世界の(、、、、、、、)神様ではないのだった」

 

 答えを聞かせない。エイルの一人語りが止まらない。

 

「さて、答え合わせだ。勿論『どうなるか』が問題だ」

 

 悪寒が四人に駆け巡った。

 ある者はデバフを解除して味方全体に強化をし、ある者は下半身で上半身をエイルに向けて轟速で蹴り飛ばし、ある者は暴龍をけしかけ、ある者は刀剣2本を手に駆け出した。

 

 ――だが、遅い。

 

「《三種の辛苦(アジ・ダハーカ)》」

 

 暴力が、目を覚ました。

 

□■□

 

 ゲームにはよくある事だが、ストーリーのラスボスというものは大抵、第2段階が存在する。

 今回はたまたま、その第2段階が、【龍幻飛後 アジ・ダハーカ】そのもの(、、、、)だっただけの事だ。

 それが、どれ程の意味を持つのか――それを正義の味方が知る由もない。

 

□■□

 

 吹き荒れる暴風。そこにエイルの姿は無い。【アジ・ダハーカ】の中に、彼はいる。

 《三種の辛苦(アジ・ダハーカ)》その真髄は、『己が迷宮内に自分自身を押し込む』事だった。

 迷宮にして騎乗の道具。

 然らばエイル・ピースはさながら、クノッソス宮殿の牛の王。

 だが彼等にアリアドネの糸は無い。

 【イグドラシル】の暴龍でも拮抗がようやっとだった化け物が、生物的な意志を持ったのだ。

 動物的直感でのみ動く今までの【アジ・ダハーカ】とは違う。

 思考する敵。

 正義の味方の()としてはもっともだが、だがそれでも。

 正義の味方に敵対するには、物理的にも精神的にもその存在は大き過ぎた。

 

『さて、エクストラステージ……否、第2ステージ、かな?』

 

 響く声が平静を削ぎ、狂気の淵へ立たせる。

 苦痛、苦悩、そして死。

 それらが意志を持って、カタルパ達をゆっくりと。

 だが確実に食んで。食んで。

 

 食い殺した。




( °壺°)「次回の為に今回は短め!」
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