( °壺°)「理由はある……んですが個人的な事情なんですいません!」
( °壺°)「次は無いようにします!てか次がある前に完結しそう!」
【数神】カタルパ・ガーデン
世界は意外にも、驚く程にシンプルだ。
二つの物があり、そこに優劣がある。以上。
何方に於いても、為す側と為される側がある。加害と被害があり、得るものと失うものがある。プラスとマイナスで、驚く程にフラットだ。
であれば、正義と悪はどうなのだろう。
正義が悪の上に則を敷くのか。
悪が正義の上で胡座をかくのか。
どちらが上であったとしても、どちらにせよ精彩を欠くものだけど。
どちらであったとしても、それが誰かにとって正しい事を願う事しか、今は出来ない。
正義の味方にとって、その裁定の放棄は怠慢もいい所だが仕方ない。
俺の正義が、誰もが思い描く正義とは限らないのだから。
――そう言えば。
【絶対裁姫 アストライア】。絶対に裁く姫。絶対を裁く姫。
不可逆を圧し折る執念の姫君。
彼女の元ネタと言える正義の女神様。
女神様の掲げる『正義』ってのは、一体どんなものだったんだろうな。
□■□
鎖が掠める。炎弾が炸裂し、衣服を焦がす。
諸悪の王の焦る顔、正義の味方のしたり顔。鋸の駆動と鎖の蛇行が重なり、火花を散らす。
今、俺は今までで一番『正義の味方』をしている。
そう思う。きっと、銀剣も頷いてくれるだろう。鎖を放出し続ける刀剣も納得してくれるだろう。
この正義に、水晶の剣は頷くだろうか?
――この正義は、正義の女神に届くのだろうか?
「《
諸悪の王は、その思考を断ち切りに来た。
駆動音があからさまに変わる。過剰に廻る鋸が悲鳴をあげる。それと競り合う【怨嗟連鎖】の鎖が火花を散らす。
どうやら、シンプルに攻撃力を上げるスキル……らしい!いやまだ確定はしていないが。
腕に当たったらミンチになるだろう。風を裂く刃の駆動が、それを示唆してくれる。
「切る。斬る。――KILL」
「おっと、
矢張り血は争えない、のだろうか。いや、俺は……『僕』は庭原 椿という人間を母親と認めた事は無いんだけども。
それでも、そうした世界が変わる事によるスイッチ。『僕』と俺みたいに。エイル・ピースとしての奴と、庭原 椿としての奴が、混在しているのかもしれない。
別れたのは、【アジ・ダハーカ】の顕現の前か後か……今の奴を見るに、後なんだろうが。
庭原 椿の根底は
別に、だからと言ってエイル・ピースはいかなる悪を有しているのかは知らない。
だが悪なのであれば。正義の上に胡座をかくのであれば。
俺は、どうであれ倒さねばならない。
何をしても。何がなんでも。
正義の味方は、
正義の味方が正義の味方である為に、悪というものは必要なのだ。
その観点からすれば、悪というものは例外なく「必要悪」と呼べてしまうものなのかもしれない。
俺の視点から見れば、どんな悪でも、差異なく必要悪なのかもしれない。
多少の違いを受容して、それに叛逆する。ただそれだけの機構。
――それが、正義の味方。
美学などではない。ただ、それが生き様で、生き甲斐で、生きる意味、つまり使命なのだろう。
俺という存在は、矢張り危機感以前に使命感が突出しているようだ。
――今の俺が知っている情報ではないが、
ならば俺の傍らに居るべきは、乙女ではなく使徒であるべきだったのではなかろうか。
何故、危機感の産物なのか。
その正義の味方足り得る為の使命感よりも、もっと先に、危機感を抱いたのだろうか。
その問への回答は、イエスだ。
俺は――あの時『僕』だったのだから。
英雄がいるのであれば、悪は必要とされる。
あの日、降り立った日に理解していた。
奴は言ったのだから。
『英雄になるのも魔王になるのも、王になるのも奴隷になるのも、善人になるのも悪人になるのも、何かするのも何もしないのも、<Infinite Dendrogram>に居ても、<Infinite Dendrogram>を去っても、何でも自由だよ。出来るなら何をしたっていい』――と。
なら、『僕』は魔王と敵対すべきだったし、俺は悪人と敵対すべきだった。
だが、『僕』は間違えていたから。
悪への危機感を抱いていた。
自分が倒さなければ蔓延してしまう、という危機感を少なからず抱いていた。
両親と言いたくはないが、あいつらから生まれ落ちたが故の悪への嫌悪感は、第二の自分を作ってはならないという危機感だ。
だから彼女は
今も、これからも。
それだけでいい。
それだけで、構わない。
彼女が彼女である理由。
俺が俺である理由。
それさえあれば。それがあるならば。
正義の味方は、正義の味方で居られる。
□■□
無力を、無意味を証明しよう。
俺がここで、【諸悪王】を打倒しても、三日後、同じ地獄が繰り返される事を証明しよう。
【諸悪王】を淘汰しても、新たなる悪が芽吹き、俺達に敵対する事を証明しよう。
証明をするその為に、銀剣を振るう。
鎖が再び掠める。炎弾を含め、これで三度。
《
そんな状態で《愚者と嘘つき》を起動した後に《
だから、何かしらの対策がある筈だ。《仰げば尊き正義の断片》使用時に【デルピュネー】で奪取したステータスを返す、とかな。
やり方はいくつかある。だが何をするかは予想が出来ない。
相手が何をするのであれ――此方の手は変えない。緩めない。
「記憶を消去。対象は《
『了解。発動タイミングは?』
「3秒後だ」
『――――起動』
「『《
1番使ってきた、それ故に記載されている中では最も記憶されている量が多い魔法、《紅炎之槍》を消去する。
《架空の魔書》により召喚出来る最大時間は10秒程。
【実在虚構 ヨグ=ソトース】は、絶対的な防御力を誇るが、それ以外に能がない。
攻撃は出来ない。強化も弱体化も無い。ただそこに『存在しないが存在する』曖昧なモノ。
それが、顕現した。
『――――――――』
陽炎のように揺らめきながら。無音の咆哮をあげながら。それはその姿を瞬時に現した。
そして。それに【諸悪王】の視界は覆われる。
俺の動作を、ほんの数瞬見失う。
【ヨグ=ソトース】が顕現しているその10秒の内にその曖昧な存在を駆け上がる。
頭頂から旗を手に跳躍する。目下にあるのは諸悪の王。
「《
「《
俺の行動を理解していたというのだろうか。
【ヨグ=ソトース】に見向きもせずに、俺を、睨みつけている。
「《
「
理解していたのだろう。彼(中身的には彼女だが)の動きは規則的だ。
「最
「――
最大戦力が炸裂し、俺は――『僕』はその日初めて。
親子喧嘩をした。
( °壺°)「先週休んだ分長い、訳でもない」