異世界はシーカーストーンとともに。   作:愚の骨頂だよねぇ?

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いつのまにかランキング入りしてました。こんな作品ですがありがとうございます。


#5 英傑は侍と出会い、再度穴を穿つ

 夜が明け、朝日が登り始めた頃に三人は起きた。その後各自出発の支度を終え、さっさと野宿した地を後にする。

 馬二頭にマスターバイクで一行は、適度に休憩や食材の収集も取りつつ王都までの道を進んでいく。途中、王都と最初の町リフレットとの間にある、アマネスクという町に到着すると、エルゼは今晩はここで宿をとろうと提案した。二人の賛同を得た後、馬二頭を馬宿に、バイクをシーカーストーンに仕舞い、宿を探すべく歩いていく。

 だが、リンクは町の様子に違和感を感じた。すれ違う人々の目線が、すべて同じ方向を向いている。

 エルゼやリンゼもそれに気づいたようで、不審に思った様子で話しかけてくる。

「何が起こってるのかしら?」

「ちょっと見てみる」

 リンクはシーカーストーンを取り出して、望遠鏡機能を起動する。すると、町の中央で、大勢の人が何かを取り囲むような構図が見えた。最初の町でも、似たような光景があった。リンクは意味ありげな目線で二人を見てすぐに逸らし、行こうと促す。だんだんと野次馬の姿が肉眼でもはっきりと見えてきて、リンクたちは人の合間を覗き込む。すると、何人かの男たちが、一人の、腰に剣を指した少女を取り囲んでいるのが見えた。

「あの子……変わった格好してますね」

「……ああ。俺も見たことがない。剣の差し方はともかくな」

 上はピンク色の服ではあるが、リンクやエルゼ、リンゼたちの着ているそれとは性質が違う。胸の辺りで、服同士が交差しており、服の右半分が左半分の下に覆い隠されている。下は丈が長い青色であり、ギザギザした折り目が何重にもついている。履き物は靴やブーツではなく、藁で編んだものであり、全く見たことのない類いの服装である。髪型は、後ろに長い髪を一束で纏めており、リボンで結んでいる。

 もっともリンクの目を引いたのは、長刀を腰に差してあるということだ。この差し方は、かつてリンクがハイラルで戦った、イーガ団の剣士がしていたものとそっくりだった。思い切り溜めた必殺の居合いの一撃はリンクを苦しめ、リンクが使いこなす剣術とはまた違った戦いを見せた。少女もまた、あのように戦うのだろうか。きっと、このままいけば戦いになる。前例もあるし確信してよいだろう。リンクはじっと彼女へと視線をフォーカスさせた。

 そんなリンクをよそに、事態は緊迫し始めていく。取り囲んでいる男が一歩詰めより、低い声で脅すように言葉を発する。

「昼間は世話になったな、姉ちゃん。お礼に来てやったぜ」

「……はて? 拙者、世話などした覚えはないのでござるが」

「すっとぼけやがって……! 俺らの仲間をぶちのめしときながら、無事で帰れると思うなよ?」

「……ああ、昼間警備兵に突き出した奴らの仲間でござるか。あれはお主たちが悪い。昼間っから酒に酔い、乱暴狼藉を働くからでござる」

 ねちねちと因縁付ける男たちに少女は毅然と言い返す。厄介な奴等に絡まれたものだ。

「やかましい!! やっちまえっ!」

 いらついた男は仲間に叫ぶとそれ一斉にと少女に襲いかかった。

 だが少女は直線に突っ込む男たちを簡単にかわし、かわせないと判断した場合は相手の突進を利用して軽々と投げ飛ばしていく。

(体術か。彼女は剣をあまり多用しないようだ)

 相手の力を利用しねじ伏せていく戦い方を、リンクはしない。周りにある爆弾タルや鉄のブロックを使って奇襲することはあるが、相手の攻撃を物理的に利用して戦うことはなかった。故に、少女の戦い方はリンクにとっては新鮮だった。相手の力を利用しているだけなので体力も減らないし、無駄なく処理できる。まだまだ未知の領域が存在していたようだ。

 だが、少女は突如不意によろめき始める。この混戦の中隙を見せるのは命取り。好機と見たのか、彼女の背を切り裂こうとする輩が現れた。粗のある剣だが、貧弱そうな服装で防げるものではない。

 リンクはとっさにシーカーストーンを取り出し、男めがけて光を放った。男は一瞬目を開いてその光を覗き込む。するとーー男の体が金色の光に覆われていき、剣を握ったまま、静止した。シーカーストーンの機能の一つ《ビタロック》を発動したのである。

 ビタロックは物体の"時"を一定時間だけ停止させることができる。つまり相手の動きを止めることができるのだ。廻りがにわかにざわつくなか、リンクは少女に叫んだ。

「後ろだッ!」

「えっ……あっ!」

 少女が振り向くとそこには怒りの表情をしながらも静止している男がいる。男の体を纏う金色の光は点滅を始め、少女は困惑した。

「そいつを斬ってみろ、奴等の群れに向かってな」

 リンクは少女に伝える。

「ど、どういうことでござるか?」

「いいからやってみろ。いいことが起きる」

 少女は相も変わらず困惑するが、わかったというように、腰から剣を払う。剣の形は、曲がっており、片方のみ刃がある。イーガ団の奴等が使っていた代物にそっくりだ。

 少女は、さすがに殺害はためらったようでそのまま刃の無い方で叩いていく。すると、男の体から矢印が現れていく。少女が叩いていく度に、大きく、長く伸びていった。

 そうしているうちにも光の点滅は激しくなり、目がチカチカするほどまでになった瞬間、男の体から光は解き放たれた。と同時にーー

「うわあっっ!!」

「なんとっ!?」

 男の体が勢いよくその地から離れていき、吹っ飛んでいった。砲弾のごとく放たれた男は、群がって襲いかかろうとする仲間たちに思い切り衝突した。

 ビタロックにはもうひとつ効果がある。停止した物体に何らかの衝撃を与えると、その方向に物体が吹っ飛んでいくというものだ。攻撃を受けている本人からすれば、いつのまにか飛ばされているという状態になるので大きく困惑すると同時に勝負が決している。成人男性一人が与えたダメージは尋常なものではなく、彼女を取り囲んでいたもの全員が、そのまま起き上がることはなかった。

 

 

 野次馬達が散り、伸びているゴロツキたちを衛兵が回収すると、少女はリンク達の元へと駆け寄り、頭を下げた。

「先程はかたじけなかった。助けていただいたこと、お礼を申し上げまする」

「怪我とかは大丈夫か?」

「拙者はそこまでひ弱ではござらぬが、心配してくださり、感謝いたす。拙者、九重八重と申す。ヤエが名前でココノエが家名でござる」

 自己紹介を終えると彼女はペコリと頭を下げる。

「俺はリンク。特に家名とかはない。それと、こっちにいるのがエルゼとリンゼだ」

「エルゼよ。さっきはごめんね、助けられなくて」

「お気になさらずとも大丈夫でござる。拙者が油断してたのが悪いのでござる」

「リンゼです。ヤエさんはどうして立ち眩んでしまったのですか?」

 リンゼが問うと、八重は途端に顔を赤くし、もじもじし始める。そしてボソボソと呟いた。

「せ、拙者恥ずかしながらここに来るまでに路銀を落としてしまい……」

 そういっている間に、彼女のお腹から情けない音が聞こえ、ますます紅潮していく。

「そういうことなら……ほら」

 リンクはシーカーストーンを取り出し、ハイラルで作っておいたキノコおにぎりを出現させた。そして八重に渡し、食べるように促す。だが彼女は、空腹にも関わらず、他人からの施しを受けるわけにはと拒んでくる。

「……だったらこうしよう。俺は君の体術を学びたい。それの授業料として君にこのおにぎりを与える。それでいいか?」

 あくまでこれは取引だということを匂わせるや、彼女はすぐにガードを解き、かたじけないと言いつつおにぎりを頬張った。

 リンク並みのスピードで胃に落とし込むや、彼女は至福の表情を浮かべた。

「はぁ、なかなかに美味でござった。拙者の故郷を思い出させる味でござる」

「故郷はどこなの?」

「東にあるイーシェンでござる」

「イーシェンですか……道理で変わった格好をしているわけですね」

 なるほど、こちらの世界では、キノコおにぎりが郷土料理となっている場所もあるわけか。ハイラル米とキノコを使うだけの簡単なものだが、喜んでもらえて何よりだ。

「それでヤエ。君はこれからどうするんだ?」

「拙者は王都に向かうでござるよ。昔父上が世話になった人間に会いに行くのでござる」

「奇遇ね。私たちも仕事で王都に向かう途中なの。そうだ、よかったら一緒にいかない? 馬車を借りれば4人で移動できるし、どう?」

「拙者としては願ってもない話でござるが、拙者などと一緒でよろしいのか?」

「構わないよ。さっきもいったけど、色々教えてほしいからな」

 馬車での移動になってしまうのは少々痛いが、一文無しの人間を無下にするわけにはいかない。それに、彼女の体術は習得の価値があるだろう。

「ではありがたくお供させていただこう。しばらくの間宜しくでござる」

 八重が仲間に加わったところでリンクたちは宿を探しに出掛けた。八重はお金を持っていないのでこちらでお金を出すといったのだが、先程と同じように頑なに断りだすので、また再びリンクが、この街の情報がほしいというとすんなりと受け入れてくれた。少女は取引に弱いようだ。

 

 

 

 男女ごとに部屋を分け、女子部屋でわいわいと騒いでいるなかリンクはそうそうに宿を抜け出し、街を歩いていた。先程八重に聞いた、この街の情報を思い出していたからである。特に気になったのは、この発言である。

「この街の防具屋は、王都ほどではござらぬが種類は豊富でござるよ。筋力をあげるものや魔力をあげるもの、その他もろもろ一杯あるでござる」

 魔力をあげるものがあるというのならいかない理由がない。それを購入さえすれば、あのゲートの穴を広げることだって不可能じゃない。

 防具屋が見え、リンクは中に入るといらっしゃいと声をかけられる。

「魔力をあげる防具はありますか?」

「ん? あああるよ。この鎧を着れば適性を持った属性の魔力をあげることが可能なんだ。多少重くて動きは制限されるが、買うかい?」

「ええ、だが交換という形にはできないですか?」

 リンクがそういうのには訳があった。リンクは実は八重と同じ一文無しなのだ。故に、普通に買い物はできない状態だ。

 店主はやや困った顔をしながら頭をかく。

「交換ってもなあ、宝石くらいじゃないと応じることはできんな」

「それなら……これでどうです?」

 そういうとリンクはシーカーストーンから、とある宝石を取り出した。透明に輝き、美しい光を放つ最高級の宝石、ダイヤモンドである。以前ハイラルの地で巨大な岩の魔物《イワロック》を倒した際に出てきたものである。

 店主はそれを見た瞬間、なんだこりゃと仰天する。

「そ、そいつはなかなか見られない代物だ! これを使えば良質な防具が作れるぞ! よっしゃ、それと交換でいいぜ!」

 交渉成立だ。リンクは防具を受け取ってシーカーストーンに仕舞い、店を後にした。

 その後リンクは早速それに着替え、草原に出る。多少重いが気になるレベルではない。十分に近接戦闘も可能なレベルだ。リンクはぐっと意識を集中させ、手をかざし、魔法を詠唱する。

「ゲート……!」

 救うべき大地、ハイラルを思い浮かべ、魔力を送り込む。今回は魔法石は無いが、二回目ということと鎧のお陰で比較的スムーズに魔法は形成されていく。

 魔力が熱を持ち始め、それが放出される感覚を味わった瞬間、空間に再び、針先程度の大きさの穴が穿たれた。成功した。そう思いリンクはさらに魔力を込めていく。すると、わずかにだが、穴が広がり始めていく。身体中の熱がリンクの体を駆け巡り、不快感を覚えるが関係ない。これで帰れるのなら……!

 リンクの努力もかいあってか、穴はなんとリンクの顔の大きさ程度までに広がった。前回よりも大きくなっている。このままいけば体ごと入り込めるようになるだろう。禍々しい空気に顔をしかめるが、もはやこれまでだ。

 リンクはへばった体に鞭をうち、指だけいれてみる。今回はきっと問題なく通過できるはずだ。神に祈るような気持ちで震えながら入れていく。

 だが、またしてもハイラルは彼を激しい痛みで拒んだ。腕全体が焼けるようなすさまじい熱をもってリンクを突き飛ばした。

「……くそっ!」

 リンクが地面を叩き、ゲートは消滅していく。これまで以上に激しく拒絶され、リンクはしばらくその場から動かなかった。

 確かに穴は大きくなっていた。だが、肝心の入り込む行為ができない。これに関しては、どうすればいいのだろうか。目の前が絶望で真っ暗になっていく。もはやどうしようもないのか。

 ……いや、何かきっとあるはずだ。リンクは立ち上がり、この問題を考えるべく、ふらつく体に鞭うって宿に戻っていった。

 

 




さて、冒険はまだまだ続きますが、正直イセスマ自体ものすごく長いので全部は追いません(そもそも展開や状況が違いすぎて無理)。
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