異世界はシーカーストーンとともに。   作:愚の骨頂だよねぇ?

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この小説は知っての通りかもしれませんが、独自設定、多少の設定改変が多いです。出来るだけ改変はしないように努めていますが、難しい場合は、原作に支障がきたさない程度に改編します。


異界の魔物、現る。
#6 英傑は混乱し、屠る


 宿に着いた途端リンクはすぐにベッドで瞳を閉じ、気づけば朝になっていた。支度を整えた後、エルゼとリンゼが馬車を借りるあいだにリンクと八重で、取引条件である体術訓練を行った。元から身体能力とセンスを高い能力で持ち合わせているだけあって、習得自体はとても早く、イーシェンで言うところの、巴投げ、四方投げを覚えた。リンクは剣を持っていない場合の戦闘にはからきしダメでありとても助かった。

 馬車を連れて戻ってきた姉妹を見て鍛錬を終え、4人で乗り込んで王都へと出発した。

「ヤエも馬使えたのね! もっと早く言ってくれればいいのに」

「まさか皆乗馬できるとは思わなかったもので……これならば馬車でなくともよかったでござるな」

「まあいいわよ別に。旅はゆっくり行くものでしょう?」

 リンクは内心自分に言っているような気がして少しムッとしたが、言葉には出さない。

「そういえばリンク殿、貴殿は剣達者であると昨晩エルゼ殿やリンゼ殿から伺った。それは真でござるか?」

「えっ? ああ、まあそれなりにだけどな。一応俺の国での姫の護衛役を任されていた」

「へぇ、あんた結構すごいのね」

「リンク殿、今度手合わせよろしいか?」

 八重の期待するような表情を見て、リンクも彼女の強さに興味が沸いてきた。剣を使わずに敵を軽くいなす術の使い手である。強くないはずがない。構わないと返事をしようとリンクは口を開く――

「――ん?」

 リンクはぴくりと眉を動かし、じっと馬車の荷台の外を睨む。すると、人影がこちらに迫っているのが見えた。馬を動かしているエルゼと八重もそれに気づいたようで、先ほどの会話が止まる。

「あれ何かしら、こっちに来るようだけど」

「物盗りでござるか?」

「……いえ、それにしては疲弊しているように見えます。足取りもやや危ないです」

 リンクはシーカーストーンを取り出し、望遠機能を使う。すると、走る男の姿が大きく映し出された。全身にあちこち打撲傷を受けており、息絶え絶えになりながらも走っている。恐らく、魔物に襲われて逃げてきたのだろう。

「エルゼ、あの人のところまで馬車を」

「わかったわ」

 馬に勢い良く鞭を打ち、男の元まで駆け寄る。そしてリンゼがすぐに荷台から飛び降り、男に回復を施した。

「喋れるか。なにがあった?」

「……ありがとう。俺はお嬢様に、近くの町まで言って応援を呼んで来いと伝えられた。だが、奴らに追われてぼこぼこにされた……」

「奴等ってのは、どこにいるの?」

「あ、あそこの森の中だ……そこで馬車が襲われている……頼む、戦えるのならお嬢様たちを救ってほしい……! 私も一緒に向かおう」

「畏まったでござる。リンク殿、その方を馬車に乗せてもらえぬか」

「わかった。いくぞっ!」

 リンクは手綱を握りしめ、馬を思い切り鞭で叩きつけ、急発進した。男の先ほどの状態を見る限り、状況は急を要するものようだ。

 林道を駆け抜け、深い森に入っていくと、どうやら金属音がぶつかる音が響いてくる。リンク達は近くに馬車を止め、そのまま一斉に駆け出す。近づいていくと、やはり戦闘が行われていたのが確認できた。しかし、それは戦闘と呼ぶにはあまりに対等ではない構図だった。馬車を守るように武器を構える三人の衛兵と相対するのは、その数倍の数はいる魔物だった。その魔物は手負いの敵を嘲笑うように、キシャシャと嗤った。

「――!?」

 その笑い声を聴いた瞬間、リンクは思わず立ち止まり、その場に硬直する。あと少しというところで立ち止まったリンクに、一同は困惑する。

「どうしたの!?」

 エルゼはリンクに声をあげる。しかしリンクには、それは聞こえていなかった。目の前の光景が到底信じられるものではなかったからだ。

(何故だ……いったいどういうことだ?)

 衛兵たちが剣を向けているのは、小さな鬼のような魔物の群れだった。肌の色は焦げ茶だったり白銀だったり色々だ。右手に棍棒やら弓やら剣やらを握りしめ、ゲラゲラ笑いながらじりじりと距離を詰めている。衛兵達は相当消耗しており、あまり猶予がないようだ。

「……何でござるかあの魔物は? 見たことがないでござる」

「ですね……ゴブリンに似ていますが、それにしても小柄すぎます。しかも多種多様です」

 リンゼが不思議そうに魔物を見つめ、八重は若干興味ありげに眺める。だが、リンクだけは険しい表情を浮かべ、ぼそりと呟いた。

「ーーボコブリンだ。群れで襲いかかる、厄介な奴等だよ。だがなんだってこんなところに……」

 リンクは掠れた声で言い、ぐっと拳を握りしめる。

 ボコブリンは、ハイラルの世界で生まれた魔物であり、厄災ガノンの復活と共に各地で見られるようになった。奴等は群れで暮らしており、人間を見たらすぐに襲いかかってくる、野蛮な種族だ。リンクは何度も奴等と戦っており、基本は負けることはない。

 だが、彼らはハイラルの世界の生き物であるにも拘らず、何故この異世界に存在できるのか? 一体リンクの知らないところで、何が起こっているのかーー

「とにかく行くわよ! 早く助けないと!」

 エルゼの怒鳴るような声でリンクは我に返る。そして3人が駆けだしていくのに続いてリンクも駆けた。心中は、混乱極まりない。

「でやあっっっ!!」

 先陣を切ったエルゼが、今にも斬りかかりそうなボコブリンの背目がけて思い切り拳を叩きつけた。もろに喰らったボコブリンは木に叩きつけられ、そのまま動かなかくなった。

「なっ!?」

 先ほどまで苦しそうにしていた衛兵たちは驚きつつも、希望が見えたようで顔を輝かせる。

「はぁっ! せいっ!」

 エルゼの影から現れるように八重はさっと長刀を払い、抜きざまにボコブリンを一閃する。ボコブリンは思わぬ奇襲に弱く、対処もできずに為す術もなく斬り伏せられた。

「炎よ来たれ、渦巻く螺旋よ、ファイアストーム!」

 やや後方から、リンゼによる魔法攻撃が放たれる。魔法陣から発せられる魔力が炎へと変わり、渦となってたちまちボコブリンたちを巻き込んでいく。火だるまにされたボコブリンは悲鳴をあげながら暴れ出し、そして塵となって消えた。

 リンクもまた、剣を抜きボコブリンたちを屠っていく。奇声をあげながら飛び込んでくる奴の腹をかっ裂き、勢いを殺さずに背後にいる仲間に当てる。やられ方までもがあの世界とそっくりであり、ますます困惑していく。

 その後もリンク含め4人の戦士たちが次々にボコブリンを葬った。だが――

「いっこうに数が減らないわね……」

「キリがないでござるよ……」

 ボコブリンを倒しても、倒してもその数は減ることがない。

「もしかしたら仲間をすぐに繁殖するタイプかもしれません」

「――それはない。奴らは確かに大勢で襲い掛かるが、その場で仲間を増やしたりはしない」

「じゃあなんで増えてる……あれは!」

 エルゼが視線を向けた先には、黒いローブの男がいた。ボコブリンに守られるような形で立つ男は、口元を動かして何かぶつぶつ言っているようだ。瞬間、男の足元に黒い魔法陣が現れ、そこからボコブリンがふっと湧き出てきた。

「……あのものが召喚をしているようでござる。あの男を止めるでござるよ!」

 八重の言葉を合図にリンクとエルゼはローブの男へと迫る。しかし、また別のボコブリンが道をふさいだ。

「くっそ~あいつらさえいなくなれば……!!」

「――リンゼ、5秒でいい。奴等を足止めしてくれ。その後は急いで俺から離れるんだ」

 不意にリンクがそういった。3人は闘いながらも一斉にこちらを振り向く。

「時間を稼ぐって、何か策があるのでござるか?」

「ああ。これならこの状況を打開できる。リンゼと八重はあの馬車と兵士を連れて、いったん撤退し俺から十分に距離をとってくれ。そして俺が合図したら一気に飛び込んでくれ」

 いったいどういった作戦なのか、3人には見当がつかなかった。だが、このままやみくもに戦っていても勝機は見えない。リンクに賭ける価値はないとは言い切れない。

「わかりました。では……炎よ来たれ、渦巻く螺旋よ、ファイアストーム!」

 リンゼの両手から全てを食い殺さんとばかりの炎が放たれる。これにより何体かのボコブリンたちが焼却され、消え去ったがまた次々にわいてくる。リンゼは苦虫をつぶしたような顔をするが、引き続き魔法を詠唱する。

 その間にリンクは剣を握る右手を腰へと引く。そして、右手の筋肉を震わせ、静かに瞳を閉じる。

 暗闇の中、一つの幻影が浮かび上がる。強く、逞しく、そして誰よりも優しい褐色の女戦士は、にっと強気な笑みを浮かべ、リンクにウィンクをする。

「っ……!」

 リンクは腰を落とし、剣に力を込める。すると剣は、緑色の光に覆われ始めていく。光はだんだんと膨張し始め、バチバチと花火のように電気が跳ね散っている。

 ――いいよ、やっちまいなよ! 勇者様!

 そう、暗闇の中聞こえた気がした。

(――ああ、分かったよ。ウルボザ)

 リンクはすうっとわずかに息を吸う。筋肉の震えが止まり、抑え込む力は動きを止める。そして、一気にリンクは剣を振った。それに合わせて、幻影の女がパチンと乾いた音を鳴らす。

 瞬間、幾つもの轟雷がリンクの周りに降り注いだ。地面が揺れ、雷槍が突き刺さるたびに爆音と突風が森の中を荒らしていく。リンクの周囲にいたボコブリンたちは全て例外なく焼き殺され、そのまま消滅していった。

 静寂が訪れ、リンクは瞳を開く。そこには、雷によって焼き尽くされた地面と、ボコブリンの焼死体、そして慌てふためく黒いローブの男が映っていた。リンクはエルゼ達に手で襲撃合図を送ると、二人はばっと駆けだし、男を捉えた。ただ、男を捉えた後、二人はすかさずリンクを驚きの目で見つめていた。

 

 

 

 男を、焼かれていない木に縛り付け、避難させておいた馬車を戻すと、衛兵たちがリンク達に礼を述べた。

「助けに来ていただいてありがとうございます。あのままでは、どうなっていたことか……」

「いえ、当然のことをしたまでです。俺たちに知らせてくれた彼のおかげでもあります」

「そう考えるとお嬢様は英断をなされたようだ。何はともあれ本当に感謝する」

 衛兵たちは頭を下げ、リンクもまたその場を立ち去ろうと背を向けようとした。しかし――

「誰か―、誰かおらぬかぁ! 爺が……爺が!」

 突如、襲われていた者たちの馬車の中から声が聞こえた。駆けつけて馬車の中に入ると、そこには涙を流しながら叫ぶ少女と、馬車の腰掛で横になっている、老いた男がいた。老いた男の胸は血で汚れており、苦しそうに呻く。

「誰か爺を助けてやってくれ! 胸に……胸に矢が刺さって!」

 なるほど、ボコブリンが持っていた弓か。あれが不幸にも刺さってしまったようだ。

「リンゼ、回復魔法は使えるか?」

 このメンバーで魔法に長けているのはリンゼしかいない。しかしリンゼは首を振った。

「だめです。使えないことはないんですが、矢が深く刺さっており、体内に残ってしまいます。それに私の魔法ではとても……」

 申し訳なさそうに呟いたリンゼの言葉で少女の表情は絶望に染まる。涙があふれ出し、老人の手を握りしめる。

「お嬢様……お、お別れでございます……」

「爺っ……だめじゃ、死んではだめじゃ!」

「お嬢様と……過ごした日々は、私めにとって、な、なによりも、大切な――ゴフッ!」

「爺ッ!!」

 何か方法はないのか。リンクは必死に頭を巡らせる。金属製のものを引き寄せるマグネキャッチはどうだろうか。……だめだ、ボコブリンの使う矢は金属製ではなく、木製だ。

 何かないのか。矢を取り除き、回復させる方法は――

「お、おじょう……――」

「爺ッ! 爺ッ!! ……あ、ああ……う、うわあああああああああ!!!!」

 老人は、少女を見つめた後、瞳を閉じ、ガクッと体の力を抜く。生命が途絶えた瞬間だった。それを意識した少女は、嗚咽を漏らし、森中に響き渡るほどの泣き声をあげた。

「あああーー爺……! 爺ッ……!!」

 周りのものはみな黙り、リンゼは瞳にうっすらと涙をためている。

「気の毒に、ござるな……」

「ええ……」

 二人も重々しい口調で口を開き、それ以降は黙り込んだ。

 だが、そんな中リンクは、はっきりと響き渡る声で言い放つ。

「少しどいてくれないか」

「……え?」

 少女は、くしゃくしゃになった顔を上げてリンクを見る。そして言われるがままにリンクの場所を譲る。リンクは老人の横にしゃがみ込み、じっと傷口を見る。

「少し狭いな、仕方ない」

 そういうや、リンクはシーカーストーンを取り出し、七宝のナイフを手に取る。ゲルドのあたりに存在する神獣ヴァ・ナボリスの中から手に入れた、ゲルド族に伝わる名刀である。

「リンゼ。その子の目を隠してくれないか。これからやることは余り見せたくない」

「えっ……?」

 どういうことだろうかと思いながらもリンゼは少女の背後に立つ。リンクはそれを確認するや、一気に老人の死体へとナイフを突き立てた。

「――!!」

 場が戦慄し、皆リンクを凝視する。少女は特に恐怖し、リンゼは即彼女の視界を隠す。だが、少女は見てしまった。大切な爺を傷つけているリンクを。

「な、何をしているんじゃ! やめろっ! 爺をこれ以上……これ以上傷つけるなぁ!!」

「リンゼ、抑えてろ。これは爺さんを救うためにやっていることだ」

「で、でも!」

 リンゼは抑えようとするも、リンクの残酷な行動の意味を理解できていない。故に抑える力は弱かった。

「離せっ! 爺を傷つけるな! やめろっ、やめろっ!!」

 少女の抗議の声などよそにリンクはナイフを離さない。皮膚を裂く音が聞こえ、さらに少女は怒り狂う。

「お前は悪魔じゃ! 厄災じゃ! 怪物よりも邪悪じゃ!」

 そういわれようとリンクは何も言わない。いよいよ少女の怒りは頂点に達していき、ギリッと歯を軋り、力を込めていく。

「――わあっっ!!」

「ああっ!?」

 ついに少女が思い切って腕を振り、リンゼの拘束から逃れた。目の前には、爺を傷つける青年がいた。怒りでいっぱいな彼女は、馬車の近くで転がっている、ボコブリンが握っていたボコこん棒を握りしめ、リンクへと振りかざした。

 だが――

「……おや、ここは……?」

「……え?」

 老人がゆっくりと、座席から起き上がったのを見た少女は動きを止める。そして少女は青年の左手に何かが握られているのに気づいた。それは、血に濡れた矢の先端部分だった。

「ま、まさかお前は……爺の胸に刺さった矢をとってくれたのか?」

「それだけじゃない。お爺さんを癒したんだ。正確にはお爺さんはまだギリギリだが力尽きていなかった。だから、治癒が間に合った」

 リンクから聞いたとき、全てを理解した少女は、申し訳なさそうにリンクの方へと項垂れる。そんな彼女を、爺が立ち上がって抱き留めた。

「私はどうにか生き返ったようです。お嬢様、この青年に私は感謝の思い出いっぱいでございます」

「う、ううっ……爺……爺!」

 少女は爺の胸に抱き着いて、思い切り涙を流した。その様子を眺めながらリンクはナイフを仕舞うと、瞳を閉じる。何かに呼ばれた、気がしたからだ。そこには、滑らかな肌をした、ゾーラ族の少女がほほ笑んでいた。

 ――リンク、良かったね。あなたのおかげで命はすくわれた。

 ――……それは君の力だ、ミファー。ありがとう。

 ――私の力、またいつでも使って。リンク……またね。

 そういうと、少女は暗闇の中から消えていった。リンクもまた、瞳を開け、世界に色を取り戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ボコブリンの登場で、何かが変わる?

あと、ミファーの祈りも改変しましたが、元々対象は限定していないはずです。ゲームでは癒す相手がリンクしかいないため、リンクのみにしか効果がないと思われがちですが、設定上はリンクに力を受け渡したということなので、ギリギリ合致してなくはないと思います。
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