異世界はシーカーストーンとともに。   作:愚の骨頂だよねぇ?

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今回はDLC第一弾のネタバレとなります。でも、みんなやってるよね!?!?(押しつけ)


#8 英傑は報酬をもらい、決闘を申し込まれる

 尋問を終えたリンクは、レイムと共にスゥの屋敷に戻った。そして出迎えた女給がバルコニーに案内すると、既に公爵陛下とエルゼたちが座って待っていた。

「おお、ようやく終わったか」

「お待たせして申し訳ありません」

 リンクは頭を下げた。

「よい。とりあえずこのテーブルにかけなさい。今紅茶を持っていかせよう」

「心遣い感謝いたします。それでは失礼いたします」

「君はかなり固いなぁ。もう少し崩しても構わんのだぞ?」

 出来るわけがない。そもそも同じテーブルに座ること自体があり得ない。だが、掛けないわけにもいかず渋々座る。

「……これでも努力はしているつもりです。それで、尋問の件なのですが……」

「襲撃を依頼した人間はわかったのか?」

「襲撃した男は依頼主の名前を知らないようです。どうやら依頼を受けた際に名乗らなかったようです。お力になれず申し訳ありません」

「いや、リンク君の落ち度ではない。それに、思い当たる節がないわけでもない。私は公爵であり且つ国王の弟だ。それ故な」

「……なるほど。国王陛下の弟様であればなおさらでしょう」

 高貴な身分というのは時にして危険なことが多い。人間の欲するものは、富、女、権力であり、そうして自己を顕示して欲求を満たす。恐らく公爵は多くの人間にその地位を狙われており、こうした誘拐騒動が起きてしまった始末だ。

 リンクと公爵陛下が話していると、バルコニーの扉が開く。そこにはスゥがいた。

「スゥ、母上に会ってきたのかい?」

「はい。お母様には襲撃にあったことは言いませんでした。不安にさせたらいけないと思いまして」

「それでいい」

 会話を終え、スゥはすとんと父と同じテーブルにつく。それでリンクは新たな疑問が浮かび上がった。

「公爵陛下。不躾ですが質問をよろしいでしょうか?」

「なにかね?」

「スゥ様はーー」

「スゥでよい!」

「……スゥは何故外出をなされ――外出をしたのでしょうか?」

「ああ、それはだな……」

 父親が少し暗そうな顔をする。しまった、やはり踏み込みすぎたか。リンクは撤回しようと口を開く。だが、その前にスゥが答えてしまった。

「母上は目が見えないのじゃ。5年前に病気にかかってしまい、その代償としてな……」

 なるほど。だから姿を表さないのか。身分の高いものの妻というのは夫に連れ添うのが基本のはずだが、それができない状態というわけか。

「それからずっと私たちは妻の病気を治せる医師を探し続けている。しかし国中の医師を探しても、なかなか治せるものは見つからなかった。唯一妻の父、つまりスゥの祖父は治せるものだったが、亡くなっているのだ。スゥは祖母の下へと行き、情報を集めようとしたのだが……」

「なるほど……」

 リンクはちらりとリンゼの方を見る。しかし、リンゼは静かに首を振って不可能を告げる。リンクもまた、目の病気の治す手段を持っていなかった。ミファーの祈りはあくまで外傷であり、病気を治すものでもない。一応、いちかばちかのレベルだが、一度彼女の目玉を刳り貫き、無理矢理キースの目玉でも入れてミファーの祈りで治療し、神経を無理矢理つなげるといった強引な治療方法がある。が、そもそも脳の方で問題があるかもしれないし、キースの目玉できちんと見えるのも不安だ。それに、見た目がよくない。

「……申し訳ありません。私たちにその魔術が使えるものは……」

「良いのだ。いつかみつければよい。それに私は、たとえ妻が目が見えなくても妻をずっと愛し続ける。その気持ちは変わることはない。さて、娘の護衛を務めてくれた報酬を与えよう。レイム、例のものを」

「はっ」

 レイムはいつの間に用意していた箱をテーブルに置いた。開けてみなさいと促されると、失礼しますといって箱を開けた。

「これは……」

「白金貨20枚だ」

 公爵が平調子で告げる。どうやら硬貨のようだが、いったいどのくらいの価値が――

「「し、白金貨20枚!?」」

 突如女性陣が大声で叫ぶ。貨幣価値の分からないリンクは首を傾げ、彼女たちに聞いた。

「一体どのくらいなんだ、その白金貨って?」

「白金貨一枚で金貨10枚分よ……」

 金貨十枚分……宿に泊まるのがせいぜい銅貨2枚かだ。

 ……ハイラルで宿に泊まると、大体20ルピーくらいはかかる。銅貨1枚当たり10ルピーだとすると、その十倍の銀貨一枚で100ルピー、その十倍の金貨一枚で1000ルピー、その10倍の……10000ルピー、そしてその2倍の20000ルピーだと!?

 ――なんてことだ……姫の護衛の報酬より多いじゃないか。

 リンクはようやくこの金額の大きさを理解し、ぶるぶると頭を横に振った。

「そのような大金、私めには受け取れません!」

「よいのだ。そなたたちはスゥを助けてくれた。それにこれから冒険するにあたって、お金は必要であろう? 受け取っておきなさい」

 恐れおおすぎる。しかし、事実お金は必要であり、一文無しであるリンクにとっては願ってもない報酬だ。受け取るべき、だろうか?

「……あ、ありがとうございます。でしたら、有難くいただきます」

 ……そうだ、あくまで依頼人から報酬を貰ったに過ぎない。仕方がないのだ。国王の弟から莫大な報酬をもらったのは、正当な行為なのだ。

 報酬をもらい、キレイに4等分すると、そろそろリンク達は屋敷が出ることにした。依頼を果たさなくてはならないためだ。その旨を伝えると、少し寂しそうな表情を浮かべつつ、あい分かったといい、女給たちとともにリンク達をわざわざ玄関まで出迎えた。

「ではな、またここを訪れるがよい。スゥもまた会いたがったいるようだしな」

「また遊びに来るのじゃぞ! 絶対じゃよ!」

 遊びの目的で公爵の家に出入りするのはどうかとは思ったが、もうここは素直に頷くしかないだろう。

 それに――王都にはまた来るかもしれない。そう思い、リンクはそっと庭にシーカーストーンを向けてとある機能を発動した。すると、リンクの足元に青い魔法陣が現れた。

「……リンクさん、それは?」

 リンゼが問う。

「これはワープメーカー。場所を登録しておけば、この場所にいつでもどこでもワープできるんだ。但し登録できるのは一か所だけだけど」

 ハイラルのとある馬宿で見つけた「ウワサのミツバちゃん Ex増刊号Vol.2」という本に書かれてあったのでその記述に従い、見つけてきたのだが、ワープポイントである祠がこの世界にない以上、この道具の存在は本当にありがたい。

「すごいでござるな。これなら王都にも、スゥの家にも簡単に行けるでござる」

「スゥ! また必ずあなたのところに行くわ! 元気でね!」

「エルゼも達者でな!」

 にかっと八重歯を光らせ、ぶんぶんと手を振るスゥに皆は――リンクを除く――応え、馬車に乗っていった。

 

 

 

 その後リンク達は馬車に乗り、依頼主の場所を確認する。

「依頼主の名前はなんていうの、リンゼ?」

「たしかソードレック子爵だよ。貴族エリアにいるし丁度良かったね」

「ソードレック子爵……真でござるか?」

「ヤエ、知ってるのか?」

 リンクはシーカーストーンの中に入っている持ち物の確認をしながら尋ねる。

「知っているも何も……前に話した、拙者の父上が世話になった方というのが子爵殿でござるよ」

「へぇ……世界って狭いのね」

 ゆったり馬車で揺られていると、すぐに公爵邸についた。4人はおり、門の前に立つ警備の者に用件を伝えると、子爵陛下を呼びに中へ入っていった。しばらくすると、子爵が姿を現した。

 ――ふむ。

 リンクは子爵の姿を見るなり、すぐにわかった。この男、相当な剣達者である。先ほどのオルドリンデ公爵とは体の鍛え方が違う。八重の父上が世話になっていたといっていたが、それも納得がいく体つきだ。

「そなた達がザナックの遣いか。私はカルロッサ・ガルン・ソードレックというものだが」

「……ええ。お届け物があり、届に参った次第でございます」

 ザナックという人物は知らないが、恐らく依頼人の名前だろう。適当に返事をしておけばいいだろう。そしてリンクはシーカーストーンから、預かっていた手紙と小包を取り出し、差し出した。

「そうか。む、これは」

「どうぞ」

 公爵は手紙を受け取り、文章を読むや、すぐに内容を把握したようだ。そして護衛の者が中に入って用意したペンと手紙を受け取り、返事を書くとすぐにリンクに渡した。

「手間をかけるがこれをザナックに――というよりギルドに届けてくれないか」

「仰せつかりました」

「うむ、ではな……ところで、先ほどから気になっているのだが、お主の傍にいる少女、どこかで見覚えがあるのだが……名前は何という」

 子爵の目線の先には八重がいた。八重はきょとんとしながらも答えた。

「拙者の名前は八重。九重八重でござる」

「九重……お、お主重兵衛殿の娘か!」

 公爵は羽願して、嬉しそうに八重をじろじろと見つめた。八重は多少困惑していたが。

「間違いない! お主の母親にそっくりじゃ! よかったのぉ、母親に似て!!」

 ひとりで興奮しており、周りの温度差に気づいた子爵はコホンと咳払った。

「すまない、あまりにうれしくてついな……彼女の父親の重兵衛殿は、我がソードレック公爵家の剣術指南役だったのだ。私がまだはなたれ小僧だった時、こっぴどく指導されたが、もう20年もたつと思うと、懐かしいものだ」

「父上は、今まで育てた剣士の中でも、子爵殿ほど剣術の才能に満ち溢れたものはいないと評しておりました」

「そういわれてしまうと、世辞でもうれしくなるものだな」

 はははと愉快に笑い、八重の顔をまっすぐ見つめる。八重もまた、真剣な目の色をしつつ、言葉をつづけた。

「また父上は、子爵殿と出会った際には是非行って指南していただけとも、仰っていました」

「ほう……」

 その言葉を聞き、子爵にどうやら何かの灯がともったようである。感情的な笑みから、挑戦的なそれに変わり、今にも剣が現れてきそうなほどの雰囲気を醸し出してきた。

 

 いくばくの緊張感を保ったまま、一同は子爵家に備えてある武道場へと移動する。全部木張りのものであり、汗の臭いなどが染みついている。エルゼとリンゼは思わず鼻をつまみ、リンクもまたひくひくと鼻を震わせる。唯一八重だけは何も動じずにいた。

「ここは重兵衛殿が設計して、私の父上が建てた道場でな。イーシェン風に作られている」

「道理でなじみがあるわけでござるな。さすがは父上」

「では早速始めよう。横にかけてある木刀から好きなのを選んでくれ」

 八重は何本かかけられている木刀を眺め、試しに振ってみたりする。自分に合うものを選んでいるのだろう。数分程度選考し、ようやく気に入ったものを見つけたようで、八重はそれを持って子爵の前へと現れた。

「分かっているとは思うが、剣以外の攻撃手段はなしだ。では、いくぞ」

「お手合わせ、よろしく頼むでござる!!」

 そういうと、二人はきっと表情を変えた。二人はじりじりと距離を詰め、互いの出方をうかがう。円を描くように動き、切っ先がわずかに掠る。どうやって戦うべきか。そのイメージを構築しているのだろう。しかも、こういった両手剣に該当する類の武器というものは、一度の攻撃で大きな隙を生む。故に、考えなしに振ってしまったらそれを突かれて終わりになる。下手な小細工では落とせないほどに強い剣の握り、敵との心理戦を反映する間合いのとり方、そして足取りの重さ。全てが遊びではないことを物語っている。模擬戦とはいえ、まるで二人が真剣を握っているような気迫を感じる。

 しばらく経ち、膠着を破ろうというように、八重が飛び出す。不意打ちに近いように、自然に素早く相手の間合いに入り込む。だが、子爵はそれに冷静に対応し、上段から振り下ろされる一撃に刀を合わせ、対抗し、弾き返す。

「くっ!」

 弾き返された八重は態勢を整えるべく、一度距離をとった。そして、肩で息を整え、落ち着いたところで、彼女は小手の一撃を放つ。隙が少なく、牽制にも様子見にも使える。子爵はそれを無駄のない太刀筋で弾き、続く第二撃もひらりと躱して見せた。

「やぁっ!」

 八重は思い切り相手に踏み込み、胴へと斬り込む。良い判断だと思う。躱した相手は刀を合わせての対応が厳しくなる。加えて胴ならば躱すことも容易ではない。だが――子爵は流れるように上へと彼女の刀を跳ね上げた。

「ぐぅっ!!」

 何とか刀を手から離すことはなかったが大きく隙が生まれてしまう。そこを子爵は逃さず強い踏み込みとともに胴を狙った。だが、なんとか後方へと跳ね飛ばされる剣の勢いを強引に逆らわせ、決めの一撃を防いだ。

「ほう……さすが重兵衛殿の娘だ。だが、お主の剣には特徴がある」

「な、なんでござるか?」

「余りにも模範的すぎる。重兵衛殿の剣術をそのまま真似ただけだ」

「……それが悪いと申されるか?」

「悪くはない。ただ、その先には何も、ない」

 そういうや、子爵はばっと上に刀を構え、強い踏み込みで間合いを一気に詰めていく。上段からの一撃を狙っているのか。それとも――

「くっ……!」

 八重は警戒し、刀を横に構え、上部からの一撃に備えた。だが――突如、わき腹に強い衝撃が襲い掛かった。

「な――なん――」

 八重は横目に見る。すると、わき腹に木刀が思い切り食い込んでいる。すさまじい激痛に建つことすらままならず、ふらっと床に倒れ込む。

 いったい何が起こった。八重の頭の中はその疑問でいっぱいになり、解明するため立ち上がろうとする。しかし、納刀した子爵が静かに忠告する。

「下手に動くな。肋骨は何本か折れている、下手に動くと肺に刺さるぞ。回復魔法をかけてやってくれ」

「は、はい!」

 リンゼが八重のもとに駆け出し、そっと回復魔法をかける。暫くして八重が立ち上がり、木刀を支えにして立つと、八重は頭を下げた。

「ご指南かたじけなく」

「お前の剣は影がない。虚実織り交ぜ、引いては進み、緩やかにして激しく。正しい剣だけでは道場剣術の域を出ぬ。それが悪いとは言わん。強さとは己次第で違うものなのだからな」

 八重は下を向いている。子爵は、少し休んでいろと声をかけた。

「八重、しばらくそこで考えるのだ。お前は剣に何を求めるのかを。それと、私はもう一人、手合わせをしたい」

 そういって、子爵はリンクを見る。リンクは目線を合わせ、立ち上がった。

「そなたを始めて見た時から、とんでもない資質を抱えていると感じた。どうか私と手合わせ願えないか」

 根拠のない言葉だ。だが――リンクもまた、願ってもないことだ。

「喜んでお受けいたしましょう。真剣ですか? 模擬ですか?」

「ここは模擬でいこう。何も殺し合いをしたいわけではない。では刀を選ぶがよい」

「そのことですが、私は刀より直剣の方が得意です。ですので、これを使わせてください」

 そういうとリンクは、シーカーストーンから《森人の剣》を取り出した。こちらはコキリの森あたりで手に入る木製の剣であり、殺傷能力は極めて低い。模擬戦にも十分使えるレベルだと思う。

「……よいだろう。そなたがそれでよいのなら、私としては一向にかまわん」

 そういうと、子爵はすっと正眼でリンクを見つめ、剣を構える。リンクは腰を落とし、剣を持つ右手を引いた。

「よいか八重。そこでよくこの戦いを見ておけ。分かるであろう、このものはお主よりも強い」

「……わかりました」

 八重は若干不満そうにしながらも、リンクをじっと見つめた。

 リンクもまた、彼の構えをじっと眺める。実に隙が無く、どこから飛び掛かっても、対処されそうだ。きっとそれは向こうも同じ。リンクもまた隙のない構えをしており、弱点を見出しにくい。

 横に移動しつつ徐々に間合いを詰める。リーチが長いのは相手側であり、それゆえに近づきにくい。だが、リンクは知っていた。槍などといった、刺突を攻撃手段とする武器以外には、直線間のリーチは余り影響はしないということを。剣で突く行為というのは、確かに奇襲性があるのだが、攻撃力と、横への攻撃に弱くなる。つまり、初手で突きを警戒する必要がないのだ。無論無防備に斬りかかっていいというわけでもない。ただ必要以上におびえる必要もない。

 剣の届く範囲外ギリギリにまで足で迫る。そしてリンクは剣を握る力を強めた。これにより、相手の意識は剣の方へ向く。そして――ばっと剣を振り上げた。

「――!」

 極限にまで集中力が高まっていた子爵は掲げられた剣へと意識を向ける。だが、そのせいで、間合いを詰めたリンクの姿を認識できなかった。

「でやぁっ――」

「――!!」

 低く入り込んだリンクは横から薙いでいく。子爵は注意をそらされたことに気づき、舌打ちしながらもそれを防いでいく。さすがにこれで勝負が決するとは思っていなかった。

「……なるほど、早くも彼女に教えようとしているわけか」

「さぁな……」

 ぼそりと呟かれた子爵の言葉を流すとリンクは追撃をする。公爵は何とかリンクの攻撃を弾こうとするも、子爵の刀の範囲内にいるため、子爵は思うように威力を発揮できず、受けるがままだ。リーチの長い武器の弱点としては、至近距離になると、思うように威力が発揮できない点だ。それ故敵の猛攻に対して防戦一方になってしまう。そういったリーチの長い武器を扱うものは、相手を威圧して重い一撃をたたき込むのが普通だ。そういった状況になってはいけないのである。

 だが――そういった状況になったとしても、脱出する手段自体は、存在する。

「やぁっ!!」

「――おおっ!!」

 リンクの中段の一撃が繰り出されるや、子爵はあえて足の力を抜く。武器がぶつかり、衝撃が発生すると、子爵の体はよろめいた。それを隙と見たリンクは思い切り踏み込んで返すように斬り込もうとする。しかし――リンクの喉元をかっ裂くように木刀が飛んできた。本能的な危機を感じ、リンクは剣を振るのを何とかとどめ、背を反らして躱した。

「……さすがだ。私の見込みは正しかった。まさかこんなにも早く私の間合いに入り込むとは」

「貴方もあの状況でよく返せるものです」

 両者ともに息は切れておらず、平然と会話をする。そして5秒も経たないうちにリンク達は再び戦闘を開始する。飛び込みと同時に両者の武器が激しくぶつかり、カンと大きく音が上がる。二人の剣を振る勢いでわずかに風が起こり始め、空気に熱が生まれてくる。

「ヤァッッ!!」

「ッッ!!」

 子爵が振り下ろす一撃をリンクは横にギリギリのところで飛んで躱し、わずかに体を加速させて剣をふるう。しかしそれを子爵が強烈な一振りで弾いてみせる。大きく崩されたリンクはその勢いを殺さずに後方に転がり、距離をとって一瞬整えてから、飛び掛かってきた子爵の刀を受け、再び打ち合いが始まった。

 キュッキュと床をこする音が響き、カンカンとたたき合う音がこだまする。先ほどの八重との戦いにはなかった《熱》が限界を超え始めている。

 常人の域を超えた戦闘を見せつけられたエルゼとリンゼ、そして八重は唖然とした。

「あの二人……なんて次元なの?」

「すごすぎるよ……子爵様も、リンクさんも」

「……拙者は子爵殿と剣を合わせるだけでも精一杯であったのに、リンク殿は一気に劣勢に追い込んだ……拙者とリンク殿、何が違うのでござろうか……」

「武器、じゃない?」

「そんな簡単な話では、きっとござらんよ……それに、あの二人はただやみくもに打ち合っているわけではござらん。どのようにかわし、叩けば最善なのかそれをきちんと考えながら動いている」

 八重はじっと彼らの動きを見据えながらそう評する。

「……私は近接戦闘には詳しくはないですが、特徴がないとは言えません。リンクさんは激しく動き回りながらも、適度に力を抜き、相手の攻撃に合わせて緩急をつけています。しかも相手の攻撃の勢いを利用して距離を撮ったり、隙を突いたりと、大胆です」

「そうね……対して子爵様はほとんど動きはないけれど、動き回るリンクの動きに時に激しく、時に緩やかに対応しているわ。そしてたまにリンクへと勢いよく迫って、虚を突いている感じがする。よく見れば、ますますとんでもない戦いだってわかるわね」

「……なるほど」

 八重は、二人の言葉を刻み込み、そして再びリンク達の試合をじっと見つめた。

「――うおおおっっ!」

 子爵は大きく叫び、3人は、そしてリンクは子爵に注目する。そして大きく剣を掲げ、ぐっと握りしめた。勝負を決めに行くようだ。

 ――なら!

「はぁぁっっ……!」

 リンクもまた腰を低く落とし、剣を限界まで後ろへと引く。そして剣をぐっと握りしめた。

 恐らくリンクは、自身の上段攻撃を、剣で合わせて防ぐべく、そう構えた。そう読んだ公爵は剣を振り下ろした。だが、実際はリンクの胴を狙っている。八重にとどめを刺したこの技は、上段に、強い気迫を感じさせる陰の剣を構えて相手の注意をそちらに向け、防御を薄くさせたところで本命の胴への攻撃を決めるというものだ。極限にまで集中力が高くなっているこの状況では、視界が狭まるのが常であり、この手の技はよく決まる。

 勝った。思わずニヤリと口角をあげる。だが、その一撃は、弾き返された。

「なにっ……!」

 よろめく中、きっとリンクを見る。リンクは、上に剣を振ってはいなかった。水平に、剣を振っていた。この一撃を、理解し、読んでいたということなのか。たった一度しか見せていないのに、この青年は――

 リンクの剣の勢いは止まらない。リンクを軸に剣の軌道は、円を描くように回転し、ふたたびリンクが正面を向く。その表情は、険しいものであった。しかし、確信に溢れていた。

 必殺の一撃を見事に弾かれ、大きくよろめいてしまった。もう防ぐことも叶わない。子爵はしかと、木剣を睨んだ。そして――子爵の逞しい肉体に、リンクの渾身の一撃が食い込んでいった。

 

 

 

 




ワープメーカーが街で使えるかどうか忘れました。もし使えなかったらごめんなさい。
あと、戦闘描写で文字数おおくなっちゃってごめんなさい。本当はもうちょっと書きたかったけどこれ以上多くし過ぎるのは不味いかなって思いました。
あと、森人の剣は切れない設定にしています。刀使うリンクってあんまり強くなさそうだし。
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