東方銃神録   作:照喜名 是空

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美のクオリア

 

かぐや姫は笑い出した。

最初はふっという嘲笑、やがては高笑いに。

 

「ろくに宝も用意できず、あげく私を襲おうとした男共にその親玉の偽者の宝を差し出した偽者の神、お笑いね」

 

「いいや、間違いなく本物さ。あんたの思っていたものと違っただけだ。

あんたの望んだものはつまるところこんなもんなのさ」

 

5人の男たちはこれから何が起こるのか待っている。

どうすればよいか解らないから俺を見ている。

知るか、正直俺もわからん。

とりあえずこいつと出会う方法で思いついてしまったのがこれだ。

自分でも頭の悪い方法だと思う。

 

「それで、その神様がいったい何の用なの?」

 

「あんたには余計なことを言っても無駄だからばっさりといく。

あんた、帰りたいのか?帰りたくないのか?

どっちにしろ俺なら用立てられる。

代金はあんたの持っている不死の薬とやらでどうだ。どうせいらないんだろ」

 

男たちがどよめく。余人には垂涎の品だろう。俺もほしい。

 

「論外ね。大和の神があいつらに勝てるわけないでしょ。

いえ、その銃を見るにあなた地上に残った生き残り?

そんな旧式の銃でどうにかなるとでも思っているの」

 

勝てるわけがない、か。争うことを前提にして話を進めてもいい口調だな。

俺は切り札を二つ切った。

かぐや姫に投げてよこすものが二つ。

ある弾丸と、重力子放射線射出装置。

 

「重力子放射線射出装置……デーヴァ共の作った奴ね。

あなたの銃よりはましだけど、でも無理。

こっちは……あなた正気?こんなものを投げてよこさないで」

 

その弾丸は寒気と吐き気が同時に襲ってくるようなおぞましい印象を受ける。

見えるものには見えるだろう。この世のありとあらゆる災厄を煮詰めて作ったような禍々しいオーラが。

 

「俺たち神は人々の厄を背負うことがある。

そして俺の能力は「複製する程度の能力」どんなものでもいくらでも増やせるんだよ。

一国を傾けてなお余りある量の災厄を弾丸一つに凝縮して封印した。

あの連中は穢れを嫌うんだろう?こいつをくらって無事に済むのはもう生き物じゃない」

 

「たしかにこれならあの連中を殺しきれるかもしれないわね」

 

「あとはそっちの判断だ」

 

「いいわ、私は帰らない。100年はかくまってもらうわよ。薬はそのときの成功報酬にしましょう」

 

「賢しい女だなあんた」

 

「欲の皮の張ったただの人間のあんたよりはましよ」

 

5人の男たちがだんだんと正気に戻って俺に恐る恐る話しかける。

自分たちが蚊帳の外に置かれたと解ったらしい。

 

「狭見江竜神様!あなたはわれわれに偽の宝をつかませた上、自分だけその女と添い遂げる気なのですか。

それでは、あまりに不実でございます」

 

 

「お前らが自分で宝をとりにいってたらどうなったと思う?

南洋の島にたどり着くまでに死ぬ、たどりつけても熱病にかかって死ぬ、竜がいたところで挑んで死ぬ。

他のやつらも探す途中で死んだだろうよ。

何の苦労もなく只でもらっておいておまけに何も失わずにすんだ。

それでいいじゃねえか。

それともお前ら何か?襲っておいてものにできなかった女とまだ関係が続けられるとでも思っているのか」

 

「あなたに従ったわれわれが愚かだった、あなたなどもう信じない」

 

俺は少しばかり困った。自分がまいた種だからだ。

ここで何らかの責任をとらねば面子にかかわる。

 

「ならお前ら、俺の目を見ろ、俺だけを見ろ、視線を動かすな集中しろ集中しろ集中しろ」

 

俺はちょいとばかり処置をしてやった。

 

「……こんなもんか。お前ら、家に帰って妻なり親しい女なりいるだろう。

もう一度そいつらを見てみろ。考えがかわるはずだ

ああ、自分の娘や母とか、手をだしたらまずい女は見るな」

 

男たちはなかば正気を失った体でふらふらと帰っていった。

 

「何をしたの?催眠みたいだけど」

 

「あいつらの認識をいじって、あんたを見たときの「感動」をあいつらの親しい女を見たときに想起させるようにした。

あいつらは親しい女にあんたの「美」を見るはずだ。この上もなく美しく見えるだろうさ、見かけだけはな」

 

「言っておくけど、私はあいつらに顔を見せたのは今日が初めてなんだけど」

 

「だろうな、だからもう一手間加えてあいつらの中にある「あんた」という存在をその女に重ねるようにしたのさ。

あいつらはあんたじゃなく、あんたという存在に惹かれたんだ。名声とかそんなんを含めてな。

クオリアってわかるか?「あんた」という「感じ」を親しい女の中に感じるようにした。

もうあいつらにはあんたと親しい女の区別がつかん。

いや、区別はしているが、あんたに惚れていたその魅力のすべてをその女の中に感じるはずだ」

 

かぐや姫は嫣然と笑った。

 

「この外道」

 

「そう言われるのには慣れてる」

 

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