そうして、諏訪大戦の日。
平原に二つの勢力は布陣している。
俺はそれを1kmほど先から眺めていた。
「大和の軍神八坂神奈子である!此度の戦、漏矢諏訪子の発案により神同士の一騎打ちと相成った!」
「その件だが、決闘の見届け人をこちらが用意した。
狭見江竜神、客人神だ。
そちらが約定を守らず軍勢を攻め込ませるならばこの神がそちらに燃える矢を降り注がせるだろう」
「相わかった。そちらこそその神に余計な手出しはさせるなよ?」
「応」
そういう立ち位置に俺はなったらしい。
正直甘いと思うが、この時代の戦争はのんびりしたもので、なおかつ力が倍増した諏訪子はそれでいいらしい。
そうして、神々の戦いが始まった。
諏訪子が巨大な蛇の頭に乗りミャグジたちを向かわせれば、神奈子は圧倒的な柱の一撃で粉砕する。
空を舞い、諏訪子が金輪を打ち出せばたちまち神奈子は蔓を出して拘束しさびさせる。
数十分だろうか、殴り合い、呪いあい、武器を交差させてしばらく。
諏訪子が倒れ付し、神奈子が勝ち名乗りを上げた。
「この戦いの勝者、八坂神奈子である!されば漏矢の民よ、我に下れ!」
民衆はざわざわと恐れおののき、そうして俺の方を見る。
「竜神さま、あなたは我らに加勢してくれるのではなかったのですか!」
「このまま、なにもしないであいつらに下るのか…?」
「本当に、あなたは神なのか?」
どよめきが群集に伝わる。
まずい、どうやら俺が戦う流れだ。
だがここで力を示しておくのもひとつの手だろう。
このまま神奈子が俺を見逃しておくかもわからないし。
「私はかまわないよ、えーっとざみえ竜神」
「すまない」
俺は頷いて戦意を告げる。
「では前に出て尋常に勝負せよ!」
「どうします、竜神様」
「ここからでいい、あんたらは邪魔になるからどいててくれ」
使者がその旨を神奈子に告げるとあわてて両軍勢は俺と神奈子の間を空ける。
「では……いざ、勝負!」
俺の胴ほどもある御柱が8本、空中に浮かび俺に狙いを定める。
だが、俺はすでに狙いを定めている。
轟音。
「馬鹿な、なんだ、なんなんだこれは」
「460ウェザビー・マグナム弾。これを受けて無事でいられる生物など存在しないよ。
神はどうだか知らないが」
神奈子が狙撃された腹を押さえる。
こぶし大のぽっかり空いた穴から向こうの景色が見えるようだ。
「だが……これで終わりと思うな!」
空から数えるのも面倒なほどの御柱が俺に向かって飛んで来る。
ヤバイ、あれを真に受けたら死ぬ。
ボルトを引き、弾丸を再装填する。
逃げる前に神奈子を撃つ。
蔦が一瞬で生え、御柱が俺の弾丸を阻む。だが、音速で飛ぶ弾丸はその程度では止まらない。
御柱の後ろに隠れる神奈子の左腕を吹き飛ばし、地面にめり込んで止まった。
その間に俺は精一杯走って逃げる。
御柱はミサイルのように俺を追って逃がさない。
追いつかれたら終わりだ。
だが……ただの人間の俺が走って逃げられるような代物ではないだろう。
足を止め、リロードを行い三発目を狙う。
スコープの中にある神奈子はすでに左腕を再生しつつあり、俺の目をしっかりと睨んでくる。
頭部を狙い、撃つ。
スコープの先の身体が倒れ、御柱は制御を失って俺の目の前で崩れ落ちる。
「俺の勝ちだな。この戦、引き分けだ。あんたらがこれ以上来ないならば俺は撃たない。
さっさとその神を持って帰って国に帰れ。
それともこれ以上血を見たいか?」
大和の軍が退却していく。
俺はとりあえず諏訪子の所にいくことにした。
「ありがとう、狭見江竜神。とにかく助かったよ……」
「竜神はやめてくれ。竜司でいい」
「そうかい、竜神」
それからしばらくは俺は諏訪子の所にいた。
俺は彼女とひとつの取引をしたのだ。
コピーしたウェザビーマークVと弾丸20発と引き換えにこの時代にはまだあった霊力や神力の扱い方、
基本的なまじないを学んだ。
それから、神としての神格と名前をもらった。
狭見江竜神。狩猟の神、戦の神。
皆にはザミエル、と呼ばせている。
こういうものはどうせなら開き直りだからだ。
竜神になってしまうよりは魔弾の悪魔のほうがそれらしい。
それから俺はいくつかの狩猟用罠を教えたりもした。
コピーしたライターやマッチをやったりもした。
もくろみあってのことだ。
狩猟の神としての神格を高めるために。
神や妖怪になれば不老長寿が得られる。俺だってそういうものは人並みには欲しい。
そうして、それなりに名が知れた後に俺は旅立つことにした。
「行っちゃうのかい?」
「ああ、この国の有様は俺には向かん。あんただって国のことに口出しはされたくないだろう?」
「まあね……」
「安心しろ、大和に寝返ることはない。あんたの国に戦争を起こすこともない。
契約しただろう」
「そうだね、そうなったらあんたを呪う。だからあんたはそんなことはしない。
なんだかんだで命は惜しい奴だから」
「じゃあまた、いずれ」
「ああ、またね」
十分な食料と水、弾薬。装備は十分だ。
さてどこに行こう?