あてもなくただまっすぐ山や森を避けて行く。
獣が出れば狩り、水があれば汲む。
大地を寝床に、石に枕し。
何日たっただろう、ある山を迂回するときにそいつと出会った。
それは一匹の筋骨隆々とした男の鬼だった。
「あんた……うまそうだな、とてもうまそうだ。
野良神か?なんにせよ、いっちょ勝負と行こうぜ」
「負けたら食われる、か。わかりやすくていい。じゃ、死んでしまえ」
轟音が鳴り響き、弾丸は鬼の胴体を真っ二つに泣き別れにした。
「くそ……やっぱ神か、わけわからん能力つかいやがって……
仕方ねえ、討ち取れ」
上半身だけになった鬼が息も絶え絶えにしゃべる。
「そうさせてもらう、いやだがその前に……」
鬼の妖力だけコピーし、体に取り込む。
それを繰り返すこと数回。
だいたい限界まで妖力が満たされたのを確認して俺は鬼の頭を吹っ飛ばした。
「そっちが食おうとしたんだ。食わせてもらうぞ」
鉈で鬼を解体し、ライターで火をおこし食う。
妖怪の肉は貴重だ。食って取り込むことである程度は力をあげることができる。
諏訪子が教えてくれたごくごくシンプルな秘法のひとつ。
それは相手を食って力を取り込むことだ。
「お前……お前がそいつを殺したのか!!」
「そうだよ。食おうとしたんだ、食われることもあるだろうさ」
どうやら鬼は一匹ではなかったらしい。
「くそ……おいお前ら!やっちまえ!敵だ!敵討ちだ!」
おおお、と鬼が遠吠えし仲間を集める。
俺はあわててそいつの頭を撃って吹き飛ばすがもう遅い。
「敵か!」
「敵だと?面白い、人間だか神だかわからんがやってやるぜ」
5体、6体。山からわらわらと鬼が下りてくる。
俺は出てくる端から頭や心臓を吹っ飛ばしていくだけでよかった。
「おおい、もうやめだ、降参だ!参ったもうやめてくれ!」
鬼の頭らしき女が遠くから声を張り上げる。
背が高く胸もでかい均整の取れた顔つきと体だ。
頭に一本角がある。
「わかった、とりあえず全員俺の眼の届く範囲に出ろ」
さて、洗脳の時間だ。
「俺の名はザミエルという」
低いが明瞭な声を出す。頬には微笑。
「俺はある使命をおびてこの地に来た」
鬼たちはおびえた目で俺を見ている。
「あんたらを救いにきたのだ」
かちん、かちん。ライターの蓋を鳴らす。
幻覚を展開させていく。
「あんたらに文明人たることを教えに俺は来たのだ!」
鬼たちはおびえながら俺にひざまずいた。
俺は笑いがこみ上げてきた。ランドル・フラッグごっこがここまで有効だったなんて。
ああそうさ、俺は悪魔さ。そういうものだ。
※作中で主人公がしているランドル・フラッグごっことはスティーブン・キング作品に出てくる定番の悪役ランドル・フラッグのものまねです。
こういうことをする悪魔じみた奴なのです