東方銃神録   作:照喜名 是空

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歪んだ偶像

それから俺はじっくりとこいつらに価値観を植えつけて行った。

人を食ったことを罪といい、いわばゆがんだキリスト教のコピーを作り上げた。

俺の十戒曰く。

 

わたしのほかに神があってもよい。しかし従う神はわたしのみである。

あなたの神、主の名を熱心にとなえよ。

あなたの父母を敬え。

人を食ってはならない。互いに殺しあってはならない。

産めよ増えよ地に満ちよ

盗んではならない。

嘘を言ってはならない。

隣人の妻を欲してはならない。

隣人の財産を欲してはならない。

 

ああうん、実にサタニックだ。キリスト教のコピーというより反転させたものといったほうが正しいのかもしれない。

そして、「人を食った罪は私の力によってあがなわれる」と言った。

 

要するに俺の力で死体を増やし、妖力を増やしてやれば問題は解決するのだから。

連中が人を食うのは食わなきゃ力が落ちるからだ。

だが、それしか食えないわけではないし、急激に落ちるというものでもない。

 

そうして、俺の言葉を良い伝え、福音と称した。

減った人員の分は俺が彼らの財産や食料を増やして対応した。

 

いくつか聖歌を教え、彼らが好みそうな軍歌もまぜた。

そうして彼らが俺を妄信するようになった頃、「熱狂的解放運動」と称して他の鬼が支配している地域を征服していった。

といってもやることは単純だ。

俺が鬼におびえる村に忍び込んで

 

「鬼を退治してくる。彼らはもうあなたがたに害をなさなくなり、よき隣人となる」

 

とかいって他の村を襲う鬼を囲んで畳む。

そうした後に監禁して念入りに洗脳する。

その後村に戻って鬼が泣き叫んで懺悔する様を見せる。

当然この時に村人から鬼を殺せとか言う声もあがるが俺がかばってみせる。

そうして言うのだ。

 

「わたしがこのように鬼を支配できたのもこのザミエル神の加護のおかげ。

彼の聖なる道具である銃をさずかったおかげである」

 

といい銃の実演をしてみせる。

驚く村人にすかさず畳み掛ける。

 

「あなた方にも彼の福音を述べ伝えよう。彼の加護のある品を授けよう」

 

そう言って適当なことを言いライターなり鉈なりを渡す。

 

「何も堅苦しいことはしなくていい。日に一度彼の名を唱えて感謝すればそれでいい。

あとはせいぜい殺しあったり盗んだり嘘を言ったり他人の妻を寝取ったり、他人の財産を奪おうとかしなければいい。

それだけでザミエル神の加護はある」

 

後はただ去っていくだけ。

熱心なザミエル教徒となった鬼を従えて俺は行く。

信仰してくれればそれで御の字というものだ。

 

そんなことを5、6件繰り返すうち、いつしか百名ほどの大所帯となっていた。

中には鍛冶といったレアなスキルをもつ奴らもいたので大分俺はやりやすくなった。

鬼が使える強度の弓矢と槍を作り、いいものができたら俺がコピーする。

これは実に効果的だった。

採算度外視の良品を一個作ればそれでいいのだから。

黒い毛皮を身につけ、俺を象徴する空薬莢を胸につけた鬼の軍勢。

 

「信じられないなあ、まさかあんたを迎えたときはこんな事になるとはおもってなかったよ」

 

あの時最初に倒した群れの鬼の頭がしなだれかかってくる。

名前は虎熊。

鬼だけあって竹を割ったような性格だし嘘はつかないし、

体つきも豊満でいい女だったし、向こうは俺が崇拝させたので……

まあ、やることをやってしまったわけだ。

今では教団の聖母的存在だ。

 

「ま、ざっとこんなもんだ。昔さんざんカルトの脱洗脳をやってきたしな。

あいつらのやり口は良く知ってるさ。一番単純で下種な手段を使わせてもらった」

「うーんあんたのいうことは良くわからないけど、まああんたに任せるよ」

「これから俺たちは傭兵になる。国に雇われて兵士の代わりに戦う戦士だ。

諏訪の国が大和に落ちたそうだな。そろそろ売り込みどきか……」

 

第二次諏訪大戦は歴史のとおりになったらしい。

あれだけ俺が引っ掻き回した後によくああも旨く和平が結べたと思う。

なんにしろ、帰還の時だ。

 

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