それからの俺たちは西へ東へ。
八面六臂の活躍をした。
北に蛮族がいると聞けば首を狩りに行き、南に土蜘蛛がいると聞けば焼き討ちを行い。
そんな中で俺たちは能力の強化と軍勢の装備を強化していった。
これらはそんな俺たちの愉快な戦争記だ。
俺たちはその日、とあるひまわり畑に来ていた。
なんでも凶悪極まりない殺人花妖怪がいるそうだから。
「うわあー、こりゃ見事な花畑だねえ、どうする?」
最初に倒した鬼の頭領にして今は俺の妻である虎熊がにこにこと首をかしげながらたずねる。
「上空から焼夷弾をばら撒いて燃やせ。それから鶴翼の陣で追い込み漁を行え。
反対側には火矢隊を2km先に配置させておけ」
俺は特に思うこともなく淡々と殲滅作戦を指示していた。
「だよねえ、あんたはそういう奴だった」
「見損なったか?まあ、一本くらい持って帰ってもいいんじゃないか」
「よくないわよ。誰だか知らないけどいい度胸ね。この風見幽香の畑から花を取っていくなんて」
噴出すような圧倒的な妖力。肌があわ立つ。
「虎熊、穏行はやってたのか!?」
「やってたよー。見つかるはずないんだけど」
俺は叫びながら後ろへとすっとぶ。
「一時退却だ!全速で後方まで下がれ!」
「あら、逃がすと思う?」
風見幽香は日傘を構えてこちらに向ける。
あれはまずい、何か知らんがまずい。
何か撃って来る構えだ。
俺はやや高度を上げて空を飛ぶ。
神力を放出してアフターバーナーのように吹かす。
200kmは出ていたと思う。
今や豆粒のように小さくなった幽香から光が見えた。
その瞬間に俺は神力放出で無理やり横にずれる。
強烈なGを無視して全力で。
「総員退避!」
俺は無線で指示を出す。ヘッドセットをつけているのでこういう時は便利だ。
俺のすぐ横を帯状の太い光線が通り過ぎていった。
さらに二発三発。
だがこの距離では当たらん。
どうやらあちらさんは根城から動く気がないか、足が遅いのかもしれない。
「主よ!ご無事で!?」
なんとか自陣にまでたどり着いた俺は部下たちに迎えられた。
「無事だ。被害状況は?」
「あの光線に焼かれ観測手が死亡。ほか3名が焼けました。即死です。
残りは塹壕に隠れてやりすごしました」
「雑な攻撃で助かったな。射撃手、塹壕に隠れつつ制圧射撃用意!火矢をつがえろ!
目標、ひまわり畑、攻撃開始!」
人間用のそれをはるかに上回る大きさと威力の弓によって火矢が放たれる。
向こうから光線が放たれるがそう何度も当たらん。
「焼夷弾用意!目標ひまわり畑!」
調合した特殊な油をたっぷりとつめた壷を鬼たちが投げていく。
俺たちはうまい事塹壕にかくれたりこっそりと移動したりしつつ着実にひまわり畑を焼いていった。
「撃て!」
しかし風見幽香は足を止めない。こちらに向かって一直線に向かってくる。
鉄条網に気がつくとわずかに飛んで避けた。
「狙撃隊、構え!目標、風見幽香!」
俺自身も幽香に狙いをつけて構える。
「撃て!」
鉄製の矢が、妖力弾が、銃弾が幽香の体をえぐる。
だが矢が突き刺さり、いたるところをえぐられた姿でなお幽香は平然と立っていた。
ツタが彼女の体を包み、即時に再生させている。
彼女は憤怒の形相で傘によってこちらを狙うと再びあの光線を放ってきた。
「まずい、各自散開!引きうちをしつつ距離を稼げ!」
あの妖力の収束率はまずい。より貫通力をあげた光線で塹壕ごとふっとばす気だ。
轟音。
塹壕は見るも無残に崩れ落ち、逃げ遅れた数名が光線で胴体を真っ二つに切断された。
「空中戦用意!ドッグファイトをしかけろ!一撃離脱だ!」
俺たちは蜘蛛の子をちらすように逃げ回ると空中から取り囲んで撃ちまくる。
「撃て、撃ちまくれ!」
彼女もどうやらこの戦いを理解してきたらしい。
小出しに光線を撃って一体一体確実に撃墜し、近寄られたり固まったところをみるとあの太い光線でなぎ払ったりした。
「くそ……倒れんか。まともな生命力じゃない。こいつは長い戦いになるぞ」
通信から頼もしい声が響く。
「まるで地獄だねー。だけど、あたしらにゃお似合いだ」
「そうですぜ、主よ。こいつはまったく戦争の犬にふさわしい」
俺は笑う。
「お前ら鬼じゃなかったのか?」
「そんなもん、あんたに捕まったときにとっくに辞めちゃったさあ」
虎熊も笑う。
「いいだろう従僕よ!あの怪獣を必ず倒すぞ!」
「お望みのままに、わが主よ」
幽香も笑う。
「これがザミエルと従僕共。なるほどたしかにただの鬼じゃないわね。
だけど同じこと、この風見幽香の怒りに触れた事を後悔しながら死んでいきなさい!」
戦いは三日三晩続いた。
だが、どんなものにも終わりが来る。
三日後地に倒れているのは幽香だった。
凄惨な姿だった。衣装はほとんどボロキレ、体中に矢が突き刺さり、いたるところが欠損している。
俺たちも五体満足な奴は数えるほどしかいない。
おれ自身も何発かいいのをもらってしまった。足が動かし、呼吸もままならない。
「これで……終わりか?」
幽香が鬼気を帯びた顔で笑う。
「いいえ、私の最後の花は大輪よ」
幽香が天に手を向けると太陽のような光球が現れる。
それは見る間に大きくなってゆく、10m、20m、30m。
「まずい、爆発するぞ!総員全速で退避しろ!」
そして、光の花が咲いた。
その一瞬、幽香の近くで空間がひび割れ、紫色の手が伸びて幽香を吸い込んでいったのは気のせいだったのだろうか。
「八雲、紫……いるのか。この時代に」
死傷者63名。
実に全軍の二割が削られた。実質的に全滅といっていいだろう。
幽香との戦いは俺たちに悲惨な傷跡を残して終わった。