『 ピッ 』
画面のコマンドに触れた直後、
痛いほどの深閑の中に、誰かの生唾を飲み込む音が響く。
皆が目を見張る中、砂嵐を映し続けていた電子モニターに、変化が訪れようとして────
『先輩っ‼せんぱーいっ‼』
突として、画面いっぱいに映し出される少女の顔面。
スピーカーを
『先輩、どこですかっ⁉どうか応答願います!立香先輩っ‼』
『こらこら、気持ちは分かるけど一旦落ち着いて。そんなに顔を近付けちゃあ、向こうから確認も出来やしないだろ?』
モニターの端から聞こえてきた第三者の声に、「す、すみません…」と小さく謝った少女の顔が離れていく。
やがて青と白の画面が少女の姿を映し出すと、上体を起こした藤丸の目は大きく見開かれる。
「………マシュ?」
震える声が名を紡ぐと、少女───マシュも少しだけ驚いた様子を見せ、やがて眼鏡越しの瞳に輝きを
『………はい、先輩。マシュです、マシュ・キリエライトです!』
「マシュ………夢じゃ、ないよね?本当のホントに?」
『ええ、夢ではありません。本当のホントにマシュです!』
「フォーゥ!(ガブッ)」
「痛でででっ!フォウ君痛い痛い!」
『あっ!駄目ですよフォウさん!というか、やはりそちらにいらしたんですね⁉心配したんですからっもう!』
ぷりぷりと怒るマシュに、「キュゥ……」と小さく鳴いたフォウは長い耳を下げ、僅かに落ち込む素振りを見せる。
「あはは………ん?こうして痛いってことは、やっぱりこれは夢じゃない………んだよ、ね?」
フォウに噛まれた指の痛みが、この奇跡を現実のものであることを知らせてくれる。徐々に引いていく痛みとは正反対に、驚愕と歓喜に高揚する気を抑えられないまま、藤丸はモニターへとつんのめった。
「マシュ………。」
『先輩………。』
「マシュ……ああ、本物のマシュなんだ!」
『はい、正真正銘あなたの後輩、マシュ・キリエライトですよ!立香先輩っ!』
「ま………マシュ!」
『先輩!』
「マシュっ‼」
『先輩っ‼』
「マシュうううゥゥゥゥゥッ‼」
『先ぱあああァァァァァァっい‼』
「だああァァッ‼いつまで乳クリクリ合ってンだオメーらは⁉同窓会で久々に再会した女共ばりにノリがウゼェんだよっ‼」
スパーンッ!と小気味良い音を鳴らして、銀時の平手が藤丸の後頭部に直撃する。「ぐほぁっ‼」と声を上げて倒れる藤丸に、モニターの向こうから「先パーイッ⁉」とマシュが叫んでいた。
「やっほ~マシュ!久しぶりだね~元気だった?」
「三日ぶり、ほどでしょうか………しかしマシュ殿、目の下に
「あら、本当だわ!もうっ駄目よマシュ!睡眠不足は美容の敵だってポ〇コも言ってたでしょ!」
「フォーゥ、フォウッ!」
『す、すみません。必要時以外は管制室から離れたくなかったもので…………でも、皆さんのお顔を見られてやっと安心出来ました。本当に、ご無事で何よりです。』
「マシュさん、お久しぶりです!またお会いできるなんて嬉しいなぁ……。」
「おい童貞眼鏡、鼻の下伸ばしてンじゃねーぞ。マシュ、私達も皆元気アルよ!なっ定春?」
「わぉーんっ!わんわんっ!」
『はいは~い。再会の喜びに浸るのもいいけど、このまま一話丸々っとそれで持たすわけにはいかないだろ?そろそろ私にも喋らせてくれないかな?』
『あっ、すみません。私ったらつい夢中になってしまって……。』
『別に謝ることはないよ。君が藤丸君に一番会いたがっていたのは、私も職員達も理解の上だからね。さて、ちょっと割り込ませてもらうよ。』
モニターのマシュが横へとずれ、ひょっこりと顔を覗かせる黒髪の美女。突然の新キャラの登場に瞠目する桂に対し、彼女はにっこりと微笑んだ。
『おや、そこの色男さん達は初めて見る顔だね?自己紹介が遅れて申し訳ない。私はレオナルド・ダ・ヴィンチ、皆はダヴィンチちゃんと呼んでるよ。こう見えてカルデアの技術局特別名誉顧問を務めてる、万能の英霊なのさ。』
「あ、ええと………俺は桂小太郎、こちらでは
『ふんふん、私と同じクラスか。キャスターがいるなら色々と心強いかもね、よろしく~………それで、そちらの彼は?』
ダヴィンチ、もといダヴィンチちゃんの興味が、高杉へと移る。向けられる視線に
「……高杉晋助、
あまりに素気の無い態度と
『フォウさんが自分から………あんなに懐いていらっしゃるなんて……。』
「な?驚いただろ~マシュ。
『……はい、銀時さんの
『ん……?高杉クン、君まさか────』
ダヴィンチちゃんが
『まあとりあえず、君達が元気そうで何よりだ。管制室にいる職員達も皆喜んで………あーあ、ムニエルなんて号泣じゃないか~。誰か彼にティッシュペーパー渡し……いやもうコレ、ティッシュじゃ間に合わないな。タオル持ってきてタオル。』
「俺達の方は何とか………まあ、色々あり過ぎてどれから報告していけばいいのか分からないんだけど………。」
『構わないさ、こちらは本日始めて通信に成功したんだ。何でもいい、何一つ分からないことだらけの私達に、
ダヴィンチちゃんが言うなり、藤丸を始め何人もの挙手が一斉に上がる。そして彼女が誰と指名するのを待たずして、皆
「マシュ、それにダヴィンチちゃん!実はこっちの世界では、ずっと夜が続いてて────」
「聞いてよ二人とも~!アタシは
「あっそうだ!ねえ二人ともっさっき縁側の下にゴリラがいたんだよ!マスターも僕も見たもんっ嘘じゃないも~ん!」
「フォーオゥ!フォウフォウフォウッ!キュウゥッ!」
「おいおい、おたくらがレイシフト?した到着時間、思いっくそズレてて結局結野アナ見逃しちまったじゃねーか!俺が一番楽しみにしてた湯けむりリポート(ポロリもあるカモよ☆)だったってのに、局に頼んで
「あ~銀ちゃんズルいネ!それなら私も、『家政婦は多分見たかもしれない・愛と憎悪の土俵入り、どすこいバンジー殺人事件!』のテープ欲しいアル!」
「わんわんっ!わんっ!」
『はいはいは~い。諸君らの
広い庭の草陰から、雨を求める
そんな彼の後ろでは、居間に集まった皆から
『………成程ね。
確認を求めるダヴィンチちゃんに、銀時や神楽そして藤丸が頷き、答えを示す。
『しかしその松陽君について、やはり気になる点が幾つもあるなぁ。背中に浮き出た不可解な紋様といい、記憶を喪失していることといい、まあ彼の記憶が欠落している原因として挙げられるのは、恐らく現界時に起きたであろう何らかのバグによるものだと考えられるけど………うーん、こればかりは推測だけだと
「……松陽は、具合が悪くて寝てるヨ。今はまだそっとしておくネ。」
定春のもふもふボディに顔を埋め、神楽は閉ざされた襖を向いてそう呟く。未だ開くことの無い堅縁の狭間、その箇所を見つめ続ける彼女の瞳に揺らぐ
『先輩からお聞きした、その松陽さんという方………とても皆さんに慕われておられるんですね。』
「うん。凄く優しくて穏やかな人なんだ、目が覚めたらマシュにも是非会ってもらいたいな。」
「うんうん、マシュもきっと仲良くなれるよ。僕も松陽さんのこと大好きだもんっ!」
「おっ、戻ったか。」
彼の声に振り向いた一同がみたものは、プルルル……と安臭い感じのプロペラ音と共にゆっくりと降下してくる、数体の小さな式神エリザベス。国民的代表作の某青い狸、じゃなかった猫型ロボットが飛行時に頭部に装着している、あの黄色いプロペラに似たものを頭頂で回転させ、各々手に持った小型のカメラを抱えたまま、エリザベス達は次々と広げた桂の腕の中に収まっていく。
「よしよし、皆無事に帰ってきてくれて何よりだ。もう休んでよいぞ。」
それぞれのエリザベスが、桂からの
「ダヴィンチちゃん殿、映像のデータは上手くそちらに送られただろうか?」
『バッチリさ、助かったよヅ……桂君。しかし君の使い魔、中々ユニークなデザインだねぇ?私の芸術的センスが久々にざわついてるよ。機会があればもっとよく観察してみたいものだ。』
「おおっ⁉エリザベスの魅力が理解出来るとは、流石はダヴィンチちゃん殿!そなたが偉大なる科学者にして芸術家の英霊であると、かねがね藤丸君から聞いてはいたのだが、まさかこれまでに豊かな感性を持っておられるとは……!『いつか』などと待ちきれぬ!是非今、ここで、俺の可愛いエリザベスを存っ分に見てくれ!」
鼻息を荒げながら、桂は展開した緑の巻物を広げる。紙面に
「え?えっ────うわあああァァァッ‼」
悲鳴を上げる新八を始め、驚愕する一同の頭上から次々と振ってくる、大中小様々なサイズの式神エリザベス。
この光景を分かりやすくお伝えするために礼を挙げるとすれば、ジャンヌ・ダルク・オルタ・しゃん……失礼、ジャンヌ・ダルク・オルてゃ……ええいっもう、縮めてジャンヌサンタリリィの宝具、『
「っぷは~!テメェ何しやがんだ馬鹿ヅラ‼死因がオ〇Qで
「ヅラじゃないかつ……もごっ⁉ふぉ、ふぉら!
「ひゃん!ちょ、何してるの⁉アタシのスカートの中に潜っちゃ駄目……あはっ!あはははは!やめて~動かないで~
「わうっ⁉わんわんっ!きゃいんっ!」
『た、大変です!部屋の中がエリザベスさんだらけに………先輩、姿が見えませんがご無事ですか⁉』
「うわ~マスター!犬〇家のアレみたいに上下逆さまにひっくり返って
最早収拾つかず、というかこのままだと話が前に進みやしない。読んでくれてる側が既に飽き飽きしてるだろうし、誰でもいいから収拾つけてくれないかな~。などとダヴィンチちゃんの心中の呟きを
明確な苛立ちを含んだそれに
その先にあるのは、首から下がエリザベスに埋もれている状態でこちらを睨む高杉の姿。頭と肩の上でフォウと小さなエリザベスがじゃれ合う微笑ましい様子が繰り広げられていようとお構いなし。鋭い眼光を放つ右目から伝わる憤然と、見るも明らかな
『桂く~ん、せっかく召喚してくれたのに悪いんだけど、やっぱりモニター越しだとよく観察出来ないなぁ。また今度、それこそ君がカルデアに来られた時にでも、じっくりと研究させてくれたまえ。』
「あ、ああ………そうだな、そうするとしよう。」
そう言ってから桂が二、三度手を叩くと、式神エリザベス達はポンッと煙と共に一斉に消滅する。居間の体積を満たしていたそれらがいなくなったことにより、
『大丈夫ですか先輩っ⁉今顔面から
「フォ~オゥ?」
「あいててて………うん大丈夫、平気平気。」
赤く腫れた鼻を押さえながら体を起こし、藤丸はマシュとフォウに親指を立ててみせる。救急箱を持ってきた段蔵に手当を受ける彼の周りで、サーヴァント達は皆モニターの方へと体を向け、腰を下ろした。
『さて、今のぐだぐだタイムの間にこちらは映像からのデータ解析を終えたようだ。』
「ほう、あの短時間でか。カルデアにゃあアンタを始め、随分と有能な人材が揃ってるらしいな。」
『んふふ~、君のような色男にお褒めに預かるとは光栄だよ、高杉君。そっちに聞こえているかは分からないけど、
ダヴィンチちゃんがそう言ったと同時に、スピーカーの向こうから
『まずは君達のいる、そちらの世界についてなんだけど……………そのことについて、私から一つ謝罪をさせてほしい。』
途端、ダヴィンチちゃんの顔からモナ・リザの微笑が消える。普段あまり見ることのない、いつになく真剣な様子のダヴィンチちゃんに藤丸やアストルフォ達は目を丸くしつつも、彼女の話に耳を傾ける。
『……すまない。実はそちらの霊基基点、銀時君達が本来存在していた
「もう一つの、江戸……それってどういうことですか?僕らのいた本当の江戸と、ここは違うってことなんですか?」
ダヴィンチちゃんの言ったことが呑み込めず、唖然としながら質問をする新八の横で、銀時と神楽は余っていた駄菓子を頬張っている。冷静なのかはたまた話が難し過ぎて理解が追いつかないのか、表情一つ変えることなく
『平行世界………パラレルワールド、と言ったほうが分かりやすいかな?主に一つの世界から分岐し、それと並行して存在している別世界のことを示すのさ。在り得たかもしれない未来、可能性、選択……そういった『
「え?そ、それは………その………。」
『……ダヴィンチちゃん、今の質問で新八さんが眉を
『ありゃ、困らせてしまったかな?そんなつもりはなかったんだけど、君がそう捉えてしまったのであれば謝るよ、すまないね。しかしだ、私が今言ったように平行世界とは、まるで合わせ鏡をした時に起こる、鏡の中に果てしなく
「えっと………つまりは、僕らのいた世界にそっくりな別世界は他にも存在していて、そこにはまた別世界の僕も存在していて…………んん?」
眼鏡の下の瞳がぐるぐると渦巻き、混乱する思考をリセットするように、新八は立てた両手の指で自身の頭を乱暴にがしがしと掻く。
そんな彼とは対称的に、桂は至って平静を保った状態で切り出してきた。
「とすれば、やはりここは俺達の存在していた世界と合わせ鏡になった平行世界の一つ、というわけなのだな…………しかしつくづく驚かされることばかりだ。多少異なる箇所はあれど、宇宙船の飛び交う空や江戸の街並み、そして馴染みのある者達までもが、俺の知るそっくりそのままの姿なのだから。」
「……だが、問題はこっからだ。ヅラの言ったように、平行世界といえど俺達のいた
高杉が溜め息と共に吐き零した紫煙に、琥珀の蝶達が絡みつくように舞い踊る。眉間に皺を寄せる彼の言う事も最もだ、と銀時はラストワンとなったフルーツ餅を口に放りながら胸の内で頷く。こちらの世界にレイシフトをしてからまだ日は浅いといえど、明らかに異常な事態が起きていることはよっぽどの阿呆でも分かることだ。
「アタシ達の知ってることはさっき一通り話したんだし、とりあえず今度はそっちで把握出来た内容を聞かせてくれないかしら?分からないことはたくさんあれど、解決できるものならアタシはまず最初にこの延々と続く暗闇を何とかしたいわ…………嫌なのよ、閉められた井戸のように真っ暗で、息が詰まりそうになるこの感覚。まるでたった一人で『最期』を迎えた、あの時を思い出すみたいで………。」
「!………仔兎?」
「エリちゃん、もしも真っ暗が怖くなったらいつでも言ってヨ?私、エリちゃんに昔何があったのかは全然分からないアル。けど私も銀ちゃんも新八も定春も、みーんなエリちゃんの側にいるからナ、もう寂しい思いはさせないアル!」
満面の笑顔と共にかけられた温かい言葉に、エリザベートの抱いていた不安や
気恥ずかしさに視線を逸らしながらも、「……ありがとう」と
『……エリザベートさん、元気になられてよかったです。』
「フォウ、フォウフォウ。」
「そうだね~。こっちに来てからもあの二人、結構仲良いみたいだよ?何かと神楽ちゃんの世話を焼いてあげてるエリちゃんが、まるでお姉さんみたいだし………それでさダヴィンチちゃん、そっちで他に分かったことを色々と聞かせてほしいな?」
『りょうか~い。先程ヅ……桂君が先程こちらに送ってくれた、江戸の様子を撮った映像及び画像データを解析した内容を元に、我が天才的な頭脳をフル回転させた上での結論を述べさせてもらうよ。』
アストルフォの
『まず、そちらの国を四六時中覆っている幽暗………それこそが、今の今まで我々が君達との通信を行えなかった最大の原因だ。その正体は
「魔術結界、だって………⁉」
ダヴィンチちゃんの出した一つの結論、あまりに聞き慣れないその単語を、新八は反芻する新八の横で、桂はまたも眉一つ動かすことなく冷静に呟く。
「……やはり、その
『流石は
「あ?何だよヅラぁ、分かってたんならもっと早く言えっての。」
「ええいもうっどいつもこいつも!だからヅラじゃない桂だ!仕方なかろう銀時、確証も無いのに事を荒立てたくはなかったのだから…………しかし魔術による結界となれば、この現象は何者かが人為的に起こしているということになるな。それもここ十年という、長い年月の間も結界は維持し続けられている………だとすれば、その夜を模した結界を展開した者は、相当な魔力を保持している、ということではないのか?」
つらつらと並べられる桂の推測を聞きながら、眉を八の字にして「ん~…」と
『それともう一つ、その結界がどういったものなのかについてなのですが………どうやら外部からの防衛機能は備わっておらず、どちらかというと内部のものを外へと出さないための作用が、大きく働いているようです。』
「何と……それでは、この結界の本当の役割とは………!」
「つまり、アタシ達は本当に
『おや、君は鋭いことに気が付くね。正にその通りなんだ。』
驚く段蔵の隣でエリザベートがそう呟いたのと同時に、ダヴィンチちゃんが
「
『貧相じゃないよ~顔も頭脳もスタイルも完璧な天才美女サーヴァントだよ~………さっきマシュが述べたのと、エリザベート君が比喩で表した通りさ。日本でも
タブレットを置き、やれやれとダヴィンチちゃんが首を横に振る。ふと彼女の話を聞いていた藤丸は、頭に一つ浮かんだ疑問を声に出す。
「あれ?それならどうして、こうやって通信が可能になったの……?あぁもしかして、ホームズが何かしてくれたとか?」
「ホームズ……?ホームズってあの、コ〇ンとかでしょっちゅう名前聞く名探偵ってやつか?ふーん、そいつも
「そっか、銀さん達は帰る時まで姿を見なかったもんね。今度改めて紹介するよ。」
『あの、先輩………ホームズさんはこの通信が復旧されてから今に至るまで、一度も管制室に来られてはいません。何でも、至急調査しなくてはいけないことがあるとかで、
「え?あの頭の堅い探偵ったら、おっきーのところにいるの?珍しい組み合わせね、一体何の用なのかしら?」
エリザベートに藤丸、マシュが揃って首を傾げる傍らで、あることに気付いた桂が拳でポンと掌を叩く。
「もしや、先刻に俺達がこの道場のあちらこちらに貼って回ったあの
『ご明察だ、やはりヅラ君は中々に頭が切れるね。君達が貼りつけたその札とやらの効力で、この新八君の道場は結界の中に更に結界を展開した状態になっている。例えるなら、湯舟の水面に
「つまり、結界を張ったこの道場の中であれば、外の影響を受けることなくカルデアとの通信が行える、っていうこと……?」
『はい、その通りなんです。先輩!』
藤丸とマシュが
「おい高杉……貴様に
「さぁな、妙に古めかしい口調ってだけで、後は頭からすっぽり布で覆っちまってて外観は
「全く、貴様と言う奴は………何故そういった肝心なことを口に出さぬのだ?大体貴様のそういうところは、昔からちっとも変りやしない。今だってその『左肩』は─────わぶっ⁉」
くどくどと続きそうになる桂の小言を
『……結論から言うとだね、そちらの平行世界は既に幾つもの異変が感知され、最早特異点と呼ぶに相応しいものと化している。本当は今すぐにでも君達を連れ戻したいところではあるが、今の我々に出来ることは、その即席で作られた
深々と
「ふう……頭を上げてよ、ダヴィンチちゃん。そんならしくないことされても、どうしたらいいか困るだけだからさ。」
『………藤丸君、もっと感情を露わにしてもいいんだよ。ダヴィンチちゃんのせいで~とか、今すぐカルデアに帰せ~とか、詫び石じゃんじゃか寄越せ~とかさ。』
「んん~、そう言われると素直な欲求に従って、聖晶石は欲しいかな………でもさ、ダヴィンチちゃんはわざとやったわけじゃないんだし、銀さん達を帰そうとしてくれて行った上でのレイシフトだろ?それにここが特異点になっちゃってるのなら、それを元に戻すのがマスターである俺の役目なんだしさ………誰も悪くなんかないんだ。だからダヴィンチちゃん、顔を上げて?」
藤丸の穏やかな口調と声に、ダヴィンチちゃんは恐る恐る顔を上げる…………彼女の目が映したのは、自分へと向けられた皆の笑顔。煙管を吹かす高杉は相変わらずのポーカーフェイスであれど、その
「ったく、垂れる文句はまだあれど、起きちまったモンは仕方ねぇや。特異点だか何だかよく知らねえが、俺は万事屋銀ちゃんの社長・坂田銀時だぜ?頼まれればどんな仕事だってそつなくこなす、例えそれが異変の解決でもな。あ、勿論依頼料はきちんと頂くぜ?金か
「あ~銀ちゃんばっかりズルいアル!それなら私だって、特上の酢昆布1年分、いや10年分で働いてやるネ!」
「10年分って、神楽ちゃんそんなに食べられ……いや、余裕で食べられるか。ともかく、僕も万事屋社員の一人ですから、銀さん達と一緒に頑張りますよ。」
「あ~ら、眼鏡ワンコったら欲が無いのね?つまらないの………アタシ達は元々カルデアの、今は
「段蔵も同じです、我らサーヴァントはマスターに従い、マスターの為に働くのみにござります。」
「わ~い!皆一緒だと頼もしいな、ねっスギっち………ああんっもう顔を逸らさないでよ~ねぇったら~っ!」
今しがたの静けさがまるで嘘のように、賑やかを通り越して
暫くぽかんとしていたダヴィンチちゃんだったが、やがて彼女の開きっ放しだった口が大きく吹き出した。
『全くもう、君達には呆れるよ……………でも、ありがとう。』
再び
漸くいつものダヴィンチちゃんを取り戻したことに安堵し、マシュも胸を撫で下ろした。
『さて、それじゃあ万事屋銀ちゃんの社長さんに、早速依頼を一つお願いしたいんだけど、いいかな?』
「おうっ、どーんと来い。」
やる気に溢れ、むふーと得意げに鼻を鳴らす銀時。しかしそんな彼のご機嫌な
『銀時君、
《続く》