Fate/crescent 蒼月の少女【完結】   作:モモ太郎

82 / 97
物語も佳境に入ってきたということで、ここまでのあらすじ及び登場人物設定をもう一度掲載しておきます。八十話までの内容が含まれますのでご注意ください。
よろしければ感想、評価などしていただくととても励みになります。


【現時点における登場人物紹介と、ここまでのあらすじ その2】

〈第六次聖杯戦争の時系列〉

 

【8月26日】

・繭村倫太郎が令呪を獲得、聖杯戦争の勃発が明らかになる。

 

【9月1日】

・聖杯戦争の緒戦、セイバーvsライダー。決着付かず。

 

【9月2日】

・志原楓がキャスターを召喚、同時刻に繭村倫太郎がアサシンを召喚。

・合計七騎が揃い、聖杯戦争が本格的に始まる。

 

【9月4日】──運命の夜。

・セイバーvsバーサーカー。→セイバーは敗北。マスターも失う。

・運悪く、志原健斗もバーサーカーに殺害される。

・健斗とセイバーが契約を結ぶ。

 

【9月5日】

・志原健斗、セイバーと再会。

・セイバーvsライダー。→決着寸前で戦闘中断。

 

【9月6日】

・倫太郎、楓による宣戦布告を受ける。

・健斗が誤って令呪を一画使用。

・セイバーvsランサー。→ランサーは撤退。

・キャスターと志原楓、アナスタシア、及びアーチャーに初遭遇。→戦闘は起こらず。

・夜、窮地に陥った健斗をセイバーが救出。

・セイバーvs十二天将「勾陳」。→セイバーの勝利。

・セイバー、聖杯に託す願いを健斗に話す。

・倫太郎、アサシンが掲げる正義を認める。

・倫太郎&アサシンvs十二天将「天空」。→アサシンの勝利。

 

【9月7日】

・衛宮士郎が倫太郎を訪ね、聖杯の汚染や今回の調査について報告。

・セイバーと健斗がお祭りに行く。

・アナスタシア&アーチャーvs黒化アサシン。→黒化アサシン消滅。

・セイバーvsキャスター。→キャスター苦戦、決着付かず。

・健斗vs楓。→健斗の辛勝。

・健斗、敵対するマスターが己の妹であったと知る。

・セイバー陣営とキャスター陣営、休戦。兄が死亡しているために聖杯を求めている事を知り、楓は協力を誓う。

・健斗はセイバーの笑顔を見たことで、自身の恋心を自覚する。

 

【9月8日】

・自身の変化に戸惑うアナスタシアと、それを肯定するアーチャー。

・健斗とセイバー、映画館に行く。

・自分を悪と断じるセイバーを見て、彼女の自己認識を変えてみせると健斗は決意する。

・楓、学校の屋上でアーチャー(?)による攻撃を受ける。

・倫太郎の根本的な歪みがアサシンによって看破される。

・楓と倫太郎が遭遇し、戦闘。→楓の勝利。

・二人の前に黒化バーサーカーが襲来。→アサシンとキャスターは敗北。が、運良くバーサーカーは姿を消す。

・仙天島の女魔術師vs代行者たち。→女魔術師の勝利。

・仙天島の女魔術師&ライダーvsランサー。→女魔術師の勝利。

・衛宮士郎&遠坂凛vs黒化セイバー。 →ランサーの力を借り、撤退。

・アーチャーvsライダー。→ライダーの勝利。が、アナスタシアを見逃す。

 

【9月9日】

・健斗、悪夢の中でセイバーに何度も殺される。

・召喚される英霊達が重複している事実が明らかになる。

・セイバー、アーチャーの狙撃の前に倒れる。

・キャスターvsアーチャー。→キャスターの勝利。

・アナスタシアと楓たちが停戦する。

・健斗vsアサシン。→決着付かず。

 

【9月10日】

・セイバー、キャスターによる治療を受ける。

・アサシンvs黒化ライダー。→楓とキャスターが窮地を救う。

・楓の精神的な弱さがアサシンによって看破される。

・バーサーカーvsアサシン&キャスター。→決着付かず。

・マリウスvs楓&倫太郎。→マリウスは重傷を負うも、決着付かず。

 

【9月11日】

・セイバー、ランサー、キャスター、アサシンの主従および士郎と凛が繭村家に集まり、情報を共有する。

・セイバーと健斗のすれ違いから、セイバーが姿を消す。

・アナスタシアが命令を無視し、自分の意思で戦うと決意する。

・健斗の友人がバーサーカーに攫われる。

・セイバー&健斗vsバーサーカー。→バーサーカー消滅。

・セイバーの過去と願いが明らかになる。

・仙天島の女魔術師が令呪を奪い、セイバーを攫う。

・アサシン&ランサーvs仙天島の英霊六騎。→アサシン、ランサー、黒化ライダー、黒化キャスター消滅。

・セイバーと大聖杯がいびつな形で融合する。

・暴走する健斗vsキャスター。→キャスターの勝利。

 

【9月12日】

・健斗が目覚める。

・倫太郎が何を信じて戦うか、決める。

・楓とフィムの魔力供給リンクが確立。

・クロウリーが計画を最終段階に移し、天月の塔が出現。

・アナスタシアとアーチャーが仙天島へ。

 

 

〈登場人物、及びサーヴァント〉

 

 

【志原健斗&セイバー】

 

志原健斗(しはらけんと)

 

 一般人、17歳の少年。ボサボサの黒髪に若干悪い目つきが特徴。特に親しい友人に前田大雅(まえだたいが)三浦火乃果(みうらひのか)がいる。

 不運にも聖杯戦争に巻き込まれて殺害されるも、瀕死のセイバーと契約を結ぶことで死を免れる。「身体は死亡したが魂が離れない」という生と死があやふやな状態で活動しているため、セイバーが消滅して宝具の効果が切れれば死に至る。よって、聖杯に託す願いは自己の蘇生。……それとは別に、「自分を絶対の悪として捉えるセイバーを否定したい」という強い思いを持つ。また、実は良家の魔術師の「余りもの」として産まれており、魔術回路の質は倫太郎に次いで高い。

 内心ではセイバーを大切に思い、自覚するくらいには強く惹かれている。

 体内に埋め込まれた宝具の真名は「耐え難き九の痛酷(ラーマーヤナ)」。大元のセイバーに異常が発生したことでこの宝具の効力が暴走し、健斗を第二の魔王として目覚めさせた。セイバーと同等の力を振るうことが出来るが、それは魂を蝕む類の呪いでもあり、遅かれ早かれ健斗は死に至る。すぐそこに迫る死神に追いつかれるよりも早く、彼はセイバーを助け出そうとしている。

 

・セイバー(真名:羅刹王(らせつおう)ラーヴァナ)

 

〈筋力A、耐久A、敏捷B、魔力A+、幸運C、宝具EX〉

 蒼髪が美しい小柄な少女。外見は健斗の一、二歳下くらいのイメージ。かなりの童顔なので中学生に間違えられたりするが、本人は「魔王」を自称している。ワガママかつ甘いもの好き、自由奔放な行動で健斗を振り回す独裁者。

 ただし戦闘能力は非常に高く、敵に対しては容赦のない冷酷無比な一面を覗かせる。特に「神性」を持つものに対しては無敵とも言える強さを発揮し、クー・フーリンの槍を皮膚のみで弾き、神霊級かつ各々が英霊数騎ぶんの力量を誇る十二天将を相手に、たった一騎で圧倒してみせた。「魔王特権」による物体の変革により、さまざまな武装やクラス的に所持しない宝具でさえも再現可能と、戦術の幅が広いのも彼女の強み。

 真名はインドの叙事詩「ラーマーヤナ」に登場する魔王、ラーヴァナ。凄まじい力を持つ勇者ラーマの全盛期に並ぶ力を持つため、その力はサーヴァント全体で見てもかなりの上位に立つ。 特に愛剣である煌々たる月雫の夜刃(チャンドラハース)による一撃は、大塚の森を根こそぎ消し飛ばすほどの威力を誇り、英雄アキレウスの盾さえも貫いた。

 聖杯に託す願いは、「かつて出逢った少年にもう一度会うこと」。しかし、志原健斗がその少年の生まれ変わりであると知り、セイバーは今度こそ彼を守ると誓った。しかし、その誓いは最悪の形で破綻することになる。

 

 

【繭村倫太郎&アサシン】

 

繭村倫太郎(まゆむらりんたろう)

 

 16歳にして繭村家十九代目当主を継いだ天才魔術師。容姿は髪を長くして、気弱な感じにした士郎というイメージ。魔術回路の質は非常に良質で、単純な貯蔵量だけなら遠坂凛をも上回る(起源や属性を考慮すると、総合的には凛の方が優秀)。

 魔術師でありながら魔術が苦手という致命的な欠点があり、自分を三流だと感じている。また、自己よりも「繭村家」総体を優先すべきだと教え込まれてきたため、自己の目的や願いといったものが非常に稀薄。一見普通の少年のように見えても、その思考回路には自分というものが存在せず、完全に歪んでいる。アサシンと楓の言葉で、ようやく自分の歪みと向き合う覚悟を決めた。

 彼が用いる魔術は熾刀魔術(しとうまじゅつ)。起源である「切断」を刀を媒介として発現させることで、不可視のモノすら断ち切る概念切断を引き起こす。

 倫太郎が魔術を心底嫌い、苦手意識を持つ原因は、彼が生来の魔術使いであるということと、志原楓を傷つけてしまったトラウマが深く関係していた。が、長い戦いを経て、彼は自分の願い/正義は昔も今も変わらず、「志原楓を守り続ける」ことだという答えに辿り着く。答えを得た今の倫太郎は、天才の異名に相応しい奇跡を手繰ってみせる。

 

・アサシン(真名:魔眼のハサン)

 

〈筋力D、耐久D、敏捷A+、魔力C、幸運D、宝具EX〉

 目元にボロボロの包帯を巻きつけた、山の翁の名を継ぐ暗殺者。

 紫陽花色の短髪に褐色の肌が特徴。実にマイペースで、話し方は非常にゆっくりとしている。かつて「正義」に憧れながらも、人を殺す事でしか己の正義を成せなかったため、暗殺者である自分をなにより嫌悪している。「気配遮断」などに頼らず真正面から戦おうとするのは、その自己否定の表れ。そんな自分を認め、「僕の正義の味方だ」と言ってくれた倫太郎に対しては、非常に良い感情を抱いている。

 彼女の最大の武器は、神ですら死に至らせる「直死の魔眼」。

 普段は包帯である程度抑えているが、本気の戦闘時には包帯を解いて戦う。唯一の宝具名は「妄想死滅(ザバーニーヤ)」。「直死の魔眼」のリミット制限を意図的に外すことで、ありとあらゆる事象、存在の死を読み解く真の死神に変貌する。ただしこの状態で戦うことが出来るのは数分間に限られ、その後は脳が破壊される。

 黒化英霊の群れに殿(しんがり)として立ち向かい、消滅。その最期は生前とは異なり、笑顔を浮かべるほどには暖かいものだった。

 

 

【志原楓&キャスター】

 

志原楓(しはらかえで)

 

 志原の家に生まれた魔術師。容姿は髪を短く、茶髪に染めてツインテールに変えた凛のイメージ。魔術回路の質は悪く、量で比較すると士郎にも普通に負ける。

 また、使えるのは「徒手魔術(としゅまじゅつ)」という強化魔術の延長のみで、士郎でもできた魔力による視力強化すらできないというぽんこつっぷり。一応運動神経と料理には自信がある。

 一見すると気が強くて明るい少女のようだが、内側では大きなコンプレックスと劣等感、魔術師への嫌悪を抱えている。メンタルが超人クラスの凛に比べると、楓は嫌なことがあったら盛大に凹むし泣く。若干卑屈なので慎二っぽいところもある。過去に色々あった倫太郎には特に強烈な敵意を向けるも、彼の歪みと苦悩を知って、なんとも言えない複雑な感情を抱いている。倫太郎の決断の裏に隠された決意を知って、彼女もまた、弱気な自分に負けない強さを身につけようとしている。

 戦闘時には自分が使える唯一の魔術である「徒手魔術」を活かせるよう、もっぱら徒手空拳で戦う。

 

・キャスター(真名:安倍晴明)

 

〈筋力E、耐久D、敏捷C、魔力A+++、幸運B、宝具A〉

 人外の美貌を持った和装の優男。平安時代に君臨した都の守護者にして、最強の陰陽師。強力なサーヴァントだが、楓が大好きな映画のパッケージを触媒に召喚されるという適当っぷり。本人の性格も気楽かつ能天気で、聖杯に託す願いはなく、ただ「楽しそうだし、かわいい声が聞こえたから」という理由で召喚に応じた。マスターである楓をよくからかったりするものの、彼女を守る為には全力を尽くす。

 知名度補正が最大に働くこともあいまって、その実力は非常に高い。千里眼による過去把握や真名看破に加えて、多種多様な術を用い、小型の式神を最大千体まで使役する。また、一匹一匹がサーヴァント1〜5騎ぶんの力を持つ「十二天将」を使役できるため、本来の戦力では最強を誇る。ただ、マスターの魔力量の関係から全力で戦うことは難しい。

 健斗に看破された事で、キャスターは「本当の彼」を僅かな間のみ、彼の前に晒してみせた。妖狐との混血児である安倍晴明は、かつて化生ではなく人間として生きる道を選択したが、彼は人間の精神や感情、道徳倫理といったものを理解する能力を持たなかった。それは今なお変わることはなく、本質的には生物よりも機械に近い。安倍晴明は作り出した「仮想の人格」、つまり「方言で話すお調子者の男」という仮面を常に演じることで、あたかも感情を持つ一人の人間として振舞っているに過ぎない。ただ、それでも善き人間として生きようとする意思はあるため、楓には最上の忠誠を尽くす。

 

 

【アナスタシア&アーチャー】

 

・アナスタシア

 

 本名はアナスタシア=グレチニシコワ=イリイーニチナ。ロシア出身の、白い肌にブロンドの髪を持った少女。大学の留学生という身分を偽りながら、喫茶店「薫風(くんぷう)」に居候している。

 その正体は聖堂教会から送り込まれた代行者見習いであり、別働隊による聖杯奪取が失敗した際にマスターとして聖杯を掴む役割を与えられている。幼い頃に教会非公認のNo.13、「第十三聖典」と融合して代行者の力を手に入れてから、復讐を果たすためだけに生きてきたという過去を持つため、初めて享受する平穏に戸惑いながらも、それに対して悪くないと感じている。特に最近は店主の槙野が気になるらしいが、常に仏頂面なのでそれを知る者はアーチャーくらいしかいない。

 代行者だけあって身体能力はかなり高い。キャスターの式神を素手で握りつぶしたり、アーチャーと共にビルからビルへと高速移動したりと人間離れした動きを見せる。「黒鍵」と呼ばれる代行者の武装を用いることが多い。

 喫茶店で短くも濃い時間を過ごしたことで、彼女は次第に変化を遂げていった。空虚で凍てついた心のまま、無為に復讐を繰り返していた頃の彼女は既にいない。代行者としての役割も捨て、彼女は母の遺言の通り、彼女が成すべきと思った事をやり遂げようとしている。

 

・アーチャー(真名:シモ・ヘイヘ)

 

〈筋力D、耐久B、敏捷B、魔力B、幸運A、宝具B〉

 灰色の短髪に軍服を着た剛毅な男性。武器のモシン・ナガンが示している通り、真名は「白い死神」と呼ばれた狙撃手、シモ・ヘイヘ。

 皮肉屋だが仕事屋、戦場に慣れているので常に冷静さを失わない。アナスタシアの真面目気質には若干うんざりしているものの、何だかんだ望まれた役目はきっちり果たす。叶えたい願いは「戦争で失った戦友たちに再開する」というものだが、第三次聖杯戦争の顛末を把握しており、得体の知れない聖杯という願望機に頼る気は無い。召喚に応じた理由は、もう一度かつての愛銃と戦いたいという願いから。

 アナスタシアとは火に油、まさに対照的といった性格嗜好だが、それでも内心では悪くないと感じ、その心象的な変化を祝福している。

 

 

【ランサー(マスター無し)】

 

・ランサー(真名:クー・フーリン)

 

〈筋力A、耐久B、敏捷A+、魔力C、幸運C、宝具A〉

 おなじみクー・フーリン。抑止力の後押しによって、前回の聖杯戦争の記録からサルベージする形で限界している(帝都聖杯奇譚におけるライダーの形に近い)。特殊な召喚の影響によって、前回の記憶(UBWルート)をそのまま引き継いでいる。

 抑止力ブーストによって全体的にステータスが引き上げられ、槍の宝具だけでなく地元でしか使えない「城の宝具」を行使可能。マスターが世界も同然のために実質的な魔力無限も加わり、並みのサーヴァントでは相手すらならない。スキルや加護を無視した純粋な戦闘能力を比較すると、魔王を名乗るセイバーすら上回っている。

 彼もアサシンと同様、黒化英霊達に挑み消滅。彼の第三宝具によって、倫太郎達は辛くも全滅を免れた。

 

 

【アレイスター・クロウリー&ライダー】

 

・アレイスター・クロウリー

 

 長い金髪に黒いローブを纏った女性。仙天島に大聖杯を模倣した基幹システムを敷設し、大塚の龍脈を乱用することで、第五次聖杯戦争から十年という短期間で第六次聖杯戦争を実現させた。

 ライダーが「魔術師(メイガス)の極地」と呼んだように、魔術師としての力量は非常に高く、無詠唱・無動作で様々な魔術を発現させる、致命傷を瞬く間に治す、令呪を瞬きの間に「再生」させるなど、その力量は計り知れない。代行者四人を容易くあしらった事からもその力量は伺える。また、セイバー・オルタと「聖杯の泥」の支配権を手中に置いており、それらを全て動員することでランサーにも勝利した。

 目的は「魔王を再誕させる」ことらしいが、その理由は未だ不明。セイバーの存在が密接に関わっているらしく、予想外の強敵によりセイバーが脱落しかけた際には、ライダーを遣わして存命を確認させていた。

 9月11日時点において、策を弄することでセイバーを手中に収めた。彼女と大聖杯の「中身」を融合させ、着々と最後の準備を進めている。

 

・ライダー(真名:イヴァン雷帝)

 

〈筋力B、耐久C、敏捷A、魔力D、幸運C、宝具A〉

 金髪に白肌の少年。見た目は常に荒っぽい子ギルみたいなイメージ。

 真名はイヴァン雷帝。子供の姿でも、広く知られる彼の残虐性は確かに残っている。むしろある程度成長すると「狂戦士」のクラスに振り分けられてしまうため、「騎兵」のクラスで召喚された際は必ず子供の姿で現界する。

 宝具「雷帝」による肉弾戦を好むが、「三界滅す神話の終局(ケラウノス・ティーターノマキア)」という切り札をも持っている。これは主審ゼウスにのみ許された神の雷であり、本来ならば人の皇帝に過ぎない彼には使えないものの、マスターの卓越した手腕と幸運によって可能となった。これは皇帝(ツァーリ)という存在が当時の人にとって「神」に等しい威光を持つものであり、同時にイメージ的な「雷」が彼に付与された結果として、彼がサーヴァント中もっとも主神ゼウスに近い存在だったというのが大きい。この宝具を行使する際、彼の霊基は僅かな間世界から神のものであると誤認され、雷霆による一撃を放つ事が可能となる。

 暴君のイメージで知られる彼だが、その凶暴性は確かな叡智に裏付けされたものであり、必要とあらば退くことも惜しまない。また、賞賛に値すると感じた敵対者に対しては、素直に尊敬の念を口にする一面も持つ。

 

 

【マリウス・ディミトリアス&バーサーカー】

 

・マリウス・ディミトリアス

 

 30前後と思しき風貌の西洋人。「魔石の担い手」の異名を持つ鉱石科の秀才にして、バーサーカーのマスターでもある男。

 基本的に一般的な魔術師同様、冷酷に効率のみを求める性格。ただ、己のプライド、魔術師としての矜恃を何よりも重視する傾向がある。そのため自分が頭を下げる、他者にへりくだるといった行為は何よりも嫌い、矜恃を守るためであれば非効率的な行為も厭わない。

 第六次聖杯戦争においてはオフィスビルの上部数フロアを工房とし、かの「月霊髄液」をモデルに作り上げた「魔術式強化外骨格(オリカルクム・フルアーマー)」を自ら用いて、倫太郎と楓を窮地に追い込んだ。

 倫太郎によって魔術回路の七割を機能停止に追い込まれ、撤退。フィムを逃してクロウリーとの一騎打ちに臨み、死亡した。

 

・フィム

 

 マリウスの傍にいるホムンクルスの少女。どこかイリヤスフィールと呼ばれるホムンクルスに似ているが、これは製造元と製造目的が同じだから。第五次聖杯戦争で活躍したイリヤスフィールが深刻な動作不良を起こした場合に備えて鋳造された、無数の劣化スペアのうちの一人。アインツベルンの廃棄場にてマリウスと出会い、聖杯戦争に使う駒として彼に引き取られる。その後はバーサーカーとの分割契約を結ぶなどして彼を補助していたが、クロウリーに命を狙われ、マリウスによって逃がされる。その後は倫太郎達と行動を共にし、キャスターとの契約を補助することで、彼が全力を出すためのサポートに徹する。

 マリウスとの離別に際して受け取った言葉から、彼女も彼のように、自分の意思で生きていくことを決意した。その現れとして、現在、彼女は「ディミトリアス」を名乗っている。フィムという名は倫太郎がつけてくれた。

 

・バーサーカー(真名:アキレウス)

 

〈筋力A、耐久A、敏捷EX、魔力C、幸運D、宝具A+〉

「最速の英霊」と称される英雄。通常の霊基状態でもその俊敏性は全英霊中最速に位置するが、更に「狂化」によるブーストが加わっており、その俊敏性はサーヴァントですら捉えられない。

彼とまともに交戦するには優れた「直感」や「心眼」か、それに類似した能力が必須となる。その必要条件を乗り越えたとしても、「狂化」によって強化された彼の剣戟とまともに打ち合えるサーヴァントは数少なく、彼を"最強"と呼ばれる存在たらしめている。

セイバーを一度退け、令呪支援を受けたアサシンとキャスターを同時に相手しても一歩も譲らないなど、悪夢のような強さを見せる。ただし僅かながら弱点もあり、理性を失ったことによる冷静な戦略眼の喪失などが挙げられる。

セイバーとの再戦の際も彼女を致死寸前まで追い込んだが、健斗の機転によって「狂化」の弱点を突かれ、煌々たる月雫の夜刃(チャンドラハース)による一撃を受ける。フィムの声に応えて「蒼天囲みし小世界(アキレウス・コスモス)」を発動させるも、僅差で競り負けて消滅した。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。