Fate/crescent 蒼月の少女【完結】   作:モモ太郎

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エピローグ これからの未来 

 「第六次聖杯戦争」──。

 そう呼ばれた、小さな戦争が終結してからはや一週間。

 戦場となった大塚の地は未だ慌ただしく、人々は形容しがたい不安に駆られながら過ごしている。半ばからねじ切れるように消滅した歪な形のランドマークタワーや、一夜にして蒸発してしまった広大な龍神湖の跡地を見れば、そう思ってしまうのも無理はない。今日も、ニュースやワイドショーは大塚市の話題で持ちきりだった。

 そんな中。

 とす、とす、と乾いた地面を踏み締めて、だだっぴろい平地のそば──かつては「湖岸」だった場所を足を引きずって歩く少女がいた。彼女は、志原楓。この戦争に参加した魔術師の生き残りだ。

 夕焼けに染まる空の下、彼女は何かを探すように視線を彷徨わせ、ひび割れた龍神湖の跡地を眺めまわす。それでも、目に映るものはどこまでも皆無だった。唇を噛んで、彼女は目を閉じる。

 

「……………………」

 

 楓は探していたのだ。

 この一週間、もうずっと見ていない兄の姿を。

 乾いた地面に腰を下ろして、楓は茫然と目の前の景色に圧倒される。

 それくらいは分かっていた。それでも諦めきれずに病院を抜け出して、傷だらけの体を引きずってここまで歩いてきたのだ。それでも、ここまで何もない景色を見せられては、諦めざるを得なかった。

 

 ──志原健斗は、死んだ──。

 

 すっ、と楓はその答えを受け入れた。受け入れてしまったし、受け入れるしかなかった。

 あの日、煌々と天を照らしたあの流星を見た時から、本当は分かっていた。兄はその命を燃やし尽くしてしまったのだ、と。

 それが、他でもない健斗が最後に選んだ答えならば、楓には何も言うことはできない。

 

「──……志原‼︎」

 

 そうして座り込んで、どれくらい経ったのだろう。

 抱え込んだ両膝に顔を埋めていた楓は、自分を呼ぶ声に気付いて顔を上げた。

 遠くから走ってくる人影。ぱたぱたと、空になった右袖を風に揺らしながら、彼はこちらに駆け寄ってくる。

 

「倫太郎!」

 

 はあ、はあ、と 息を切らした彼は左手で額の汗を拭い、怖い顔で楓の瞳を覗き込む。

 

「何やってるんだよ、こんなところまで……探したんだぞ。志原は傷の治りが遅いんだから、退院までは無茶できないって言われただろう」

 

 優秀な魔術刻印のお陰で人外じみた回復力を持つ倫太郎と違って、楓のそれは人並みだ。彼女が今いるべきがここではなくベッドの上、という事実くらい、彼女自身よく理解していた。

 ごめん、悪かったわ、と倫太郎に謝罪して、楓はまた視線を前に戻す。その妙に気の抜けた声に何か感じたのか、倫太郎は無言のまま楓の隣に腰を下ろした。

 

「まあ、君が来るならここしか無いとは思ってたけど」

 

「よく分かってるじゃない。……大丈夫、もう納得したから」

 

 納得した、か。

 倫太郎はそんなことを口の中で呟いて、前をまっすぐ見つめる楓の横顔をちらりと眺めた。

 この戦争が終わり、あらゆるものが喪われたという事実を受け止めるためには、もう一度この景色を見るしかなかったのだろう。

 

「……君の……兄さんのことは…………残念だった。僕がもう少し、しっかりしていれば──……」

 

 言葉を選んで謝罪しようとした倫太郎の声を、楓は「いいわ」という一言で遮った。

 

「あの人は自分で自分の生き方を見つけて、それを最後まで貫いた。他でもない本人がそれでいいって決めたんだから、誰かが謝ることじゃないわ」

 

「そう、か……」

 

 しばしの沈黙。

 志原楓の義理の兄にしてセイバーのマスターであった志原健斗については、「死亡」という形で結論が出された。言葉にしてみれば呆気ない、腹立たしいくらいに空虚な二文字で終わってしまうその結末には、それでも多大な功績が伴っている。

 

「セイバーの様子は?」

 

「アンタが前にお見舞いに来た時と変わらないわ。ずっとふさぎこんでて……」

 

 昏い表情で楓は語る。受肉した上にサーヴァントとしての力を失い、普通の少女と変わらない存在となったセイバーは、倫太郎の隠蔽工作によって「ただの被害者」として普通の病院に担ぎ込まれた。これは、彼女が「元サーヴァント」という特異な存在であることが広く発覚した場合に起こるであろう厄介ないざこざを回避するための処置である。

 とはいえ、セイバーの憔悴ぶりは倫太郎もよく知るところだ。

 

「色んなものが傷付いて、色んなものが喪われた。それでも前に進まなくちゃ。時間をかけて、取り戻せるものだけを少しずつ、取り返していくしかないんだろうさ」

 

 目を伏してそう願う。とはいえ、きっと取り返しがつかないものだって色々あるんだろう。

 そんなことを、倫太郎は自分の欠けた右腕を見つめて思った。

 

「……君はこれからどうする気なんだ?」

 

 しばらくしてから、倫太郎は楓に問うてみた。

 聖杯戦争が終わってからというもの、諸々の後処理や報告に追われていた倫太郎はなかなか時間を確保できず、こうしてゆっくり話すのも久しぶりに思える。

 せっかくの機会に、志原楓という人間はこの先どうしていくのか、それを聞いておきたかった。

 

「──……」

 

 楓は白い喉を見せて天を仰ぎ、困ったように声を漏らしてから、

 

「とりあえず、魔術師はもうやめようと思う」

 

 なんでもないコトを言うかのように、一つの終わりを倫太郎に告げた。

 とはいえ、予想していなかった訳ではない。むしろあまりに予想通りだったので、少し拍子抜けしたくらいだった。

 

「左腕はリハビリである程度まで回復するそうだけど、今までみたいな激しい運動は出来なくなった。それに、そもそも「やらなくてもいい」って言われてたところを意地になって続けてただけだから、丁度いい辞めどきというか……」

 

「そうか。これから寂しくなるね」

 

「大丈夫。別にどこか遠くに行くわけじゃないしね。魔術師を続けるべきではなかった人間が、あるべき形に収まるだけ。……ああ、言葉にしてみると最後の踏ん切りがついた。魔術師の志原楓は、今日をもって終わりよ」

 

 魔術師をやめる、なんてことは、普通の魔術師にとってはそれこそあり得ない発言だ。魔術師とは生まれた時から魔術師なのであり、その双肩には一族の重みと誇りがかかっている。簡単にやめるなんて許されない。

 けれど、志原家は特殊な家系だ。

 元から正式な魔術師ではなかったが故に、そうした慣習や考えからは距離を置いてこれた。だからこそ、楓の言葉は叶えられる。叶えることができる。

 

「……倫太郎こそ、これからどうするの?」

 

「僕はひとまず後処理のごたごたを終わらせる。それから、フィムの身の振り方も考えないと……あ、知ってた? あの子、やっぱり英国に帰ってディミトリアス家の正式な後継者になるんだってさ。マリウスには子供も養子もいなかったらしいから、彼女に後を任せたんだろうね」

 

「あいつ、そういえば歳の割にまだ婚姻してなかったんだっけ。なんか意外ね」

 

「マリウス・ディミトリアスといえば他を顧みずに研究ばかりしている怪人で有名だったし……それか、最初から後継はフィムに決めてたのかもしれない」

 

 マリウス・ディミトリアスの遺言によって、フィム改めフィム・ディミトリアスは晴れてディミトリアス家の全てを有する後継者となった訳だが、事はそう簡単ではない。

 まずフィムはホムンクルスであり、短い寿命の問題を第一に解決する必要がある。また、まだ幼いフィム一人にディミトリアス家の膨大な資産運用や対外交渉を任せるのは無理な話だ。それに、引き継ぎの際に発生する利権問題などにかこつけて金をふんだくろうと群がってくる連中の対処もあるだろうし、やるべき事は山のように多い。少なくともフィムが独り立ちできる歳になるまでは、繭村家が惜しみなく援助を続けていこうと考えている。

 

「まあ、マリウスはまだ若い方だったし、ここで死ぬ予定なんてなかったんだろうさ」

 

 マリウスが時をかけて少しづつ消化していこうと考えていたであろう事柄が、彼の突然の死によって怒涛の如く押し寄せてきているわけだ。死してなお困らせる奴だな、と倫太郎は呆れたため息をついた。

 

「で……まあ、つまり、まだまだ「魔術師」の繭村倫太郎はいなくなったりしないよ。やる事も多いしね。それに」

 

 そこで言葉を区切って、倫太郎は楓の方に向きなおり、真剣な瞳で楓の両眼を覗き込んだ。

 

「ど、どっ……な、なに、どうし──……?」

 

 思わず体を硬直させた楓は、続きを言うことが出来なかった。

 ふわ、と赤銅色の髪が頬を撫でたと思った時には、倫太郎の左腕が自分の体を抱き締めていた。

 頭が真っ白になる。

 どくん、どくん、という心臓の鼓動のみが鼓膜を揺らす。考えられるものは何もなく、ただ体温の暖かさだけを感じていた。

 

「ありがとう。君のおかげで、僕は救われた」

 

 その、心からの感慨を込めて紡がれた一言に、楓は肩をぴくりと震わせる。

 

「なんせ、僕が何であるかを思い出させてくれたんだから。もう辛くはない。迷うこともない。表向きは「魔術師」だとしても、僕は「魔術使い」として生きていくことを決めた。これがたとえ繭村の理念に反するものだとしても、この先曲げるつもりはない」

 

「っ………」

 

 顔を真っ赤にしたまま、楓は返答に困った。すぐに何かを答えられるような精神状況ではなかった。それでも、倫太郎の言葉をゆっくり頭の中で噛み砕いて、その意味を理解する。

 魔術使いとして生きることを、決めた──。

 その一言を紡ぐのが、「魔術師」として己の意思を封殺されてきた倫太郎にとって、どれほど難しいことだったのか。楓には推し量ることしかできない。

 それでも、それでも──、

 

「……よかった。本当に、よかった」

 

 彼が、自分の意思と決意を見つけることが出来たという事実は、心の底から喜ばしい。

 繭村倫太郎はもうロボットではなく、確固たる一人の人間として、これからの道を歩んでいけるのだから。

 それだけでよかった。

 その結果だけで、楓は自分が戦ってきた全てが報われたような気がして、自然と笑顔と涙を溢していた。色々な感情がごちゃ混ぜになって、自分が泣きたいのか笑いたいのかも分からなかった。

 

「……本当はね。私は、何もかもを亡くしてしまったようで怖かった……‼︎ 結局、この戦いで獲得できたものは何もなくて、ただただ失っただけじゃないかって……‼︎」

 

 自分の感情を、内に秘めていたかった弱さを、強がらずに吐き出していく。

 

「それでも……それでも倫太郎が、アンタがそう言ってくれるのなら、「救われた」と言ってくれるなら! それは、きっと何も残せなかった「志原楓」っていう魔術師の意味を、存在を、それだけで救ってくれる……‼︎」

 

 何を言っているのか自分でもよくわからなくて、それでも楓はそれだけを言い切った。

 倫太郎は何も言わずに、ただ抱きしめる腕の力を強めて、溢れそうになる涙を堪えきった。

 オレンジ色に染め上げられた空と大地の狭間で、志原楓という魔術師の最期の言葉が、乾いた風に溶けていった。

 

 

 

 

「……落ち着いたかな、互いに」

 

「うん…………帰ろう……」

 

 しばらくして。人気はないとはいえ、外で長時間抱き合っていた二人は少々気恥ずかしそうにしながら立ち上がり、あたりをキョロキョロと見渡していた。

 楓の身体を考慮して、遠く離れた病院までは歩くのではなくタクシーを使おう、という倫太郎の判断のもと、人の寄り付かなくなった湖岸道路の端に座り込む。自然、手持ち無沙汰な時間を潰すべく、二人はたわいのない会話に話を戻していた。

 

「……で、多分一ヶ月くらいは時計塔の方で報告とかディミトリアス家の家督整理とかをしないといけないんだ。しばらくは日本を出てイギリス暮らしだねえ」

 

「大変ね色々と……時計塔といえば、あれから士郎さん達の姿を全然見てないわね。あの人ら、時計塔の誰かさんの指示でこっちの調査に来てたんでしょう?」

 

「あ、そう、それがちょっと謎で……僕も気付かないうちにふらっといなくなって、連絡が一切取れないんだよ。まるで幻だったみたいに消えちゃって、いくら探させてもどこにいるのかすら分からない」

 

「黙っていなくなるような人たちじゃあなかったと思うけど……何かそうしなきゃいけない理由があったんじゃないの?」

 

「けどなあ……そんな理由ったって──……」

 

 倫太郎が困ったように首を傾げた瞬間、

 

「それが、あったのよ」

 

「「どわああああああああああああ‼︎‼︎」」

 

 その気配を微塵も悟らせず二人に近づいていたとある人影が、いきなりそんな事を言い放ったものだから、倫太郎と楓は心臓が止まるかと思うほどの衝撃を受けた。

 楓は数センチ物理的に跳ねてから、倫太郎の方は転がるように前のめりになってから、慌てて背後を振り返る。

 遠坂凛──。

 彼女はいつも通りの雰囲気で、毅然とした雰囲気を纏わせながらそこに立っていた。未だに心臓をばくばく言わせながら、倫太郎はやや上擦った声で彼女の名を呼ぶ。

 

「連絡ができなくてごめんね、二人とも。色々あって、完全に姿を隠さなきゃいけなかったものだから」

 

「と、とりあえず心臓に悪い登場の仕方は! 置いておいてですね! 姿を隠していた、って……一体何からですか? もう聖杯戦争は終わったんだし──……」

 

「だからこそ、ね。私達が雲隠れしていた理由は、貴方達も話していた──時計塔(・・・)にある」

 

 意外な単語が飛び出してきて、倫太郎はともかく楓も目を白黒させた。時計塔のツテで送られてきた彼女達が、時計塔に姿を捉えられないように動いている。これが一体何を意味するのか。

 

「本当はまだ人前に姿を見せるのも危ないから、これからほとぼりが冷めるまで中東あたりに逃げようと思っているんだけど──その前に、貴方達だけには伝えておかないと。とびきりの良いニュースをね」

 

 そう言って、凛は二人にとびきりの笑顔で笑いかけた。

 そして──それ(・・)の内容を聞いた倫太郎と楓の二人は、今度こそ先の数倍は大きく張り裂けるような声を上げることになる。

 

 

 

 

 その夕暮れ時。その男は、ぼんやりとした表情で何もない空間を眺めて時間を無為に潰していた。

 住宅街と大通りの中間点、なんともいえない場所に面した喫茶店の店主である槙野は、人のいない店内を見回してため息を漏らす。入り口の看板は今も「CLOSED」のままだ。定休日という訳でわないが、何事も手につかない今の状態では、どうも店を開ける気にはなれなかった。

 考えているのはたった一つだけだ。

 アナスタシア……ほんの最近までこの店で働いていたその人物を、槙野は何度も頭の中で思い描く。

 一週間前。無知な彼ですら察してしまうような、死を振り撒く「何か」が起きていた夜。彼女は朦朧とした槙野のため、この店を飛び出していった。

 

 ──そして、帰っては来なかった。

 

 思い返せば、まるで自分が夢を見ていたような、そんな現実感の欠けた記憶が浮かび上がる。アナスタシアという人間は自分が見ていた幸せな幻で、本当は何もかも最初から存在しなかったのではないかと、そう思う。

 

「……………………」

 

 からん、と扉が開いて鈴が爽やかな音を奏でた。

 思わずばっと顔を上げて、槙野は店の入り口を見やる。

 

「よう」

 

 だが、そこにいたのは見慣れた少女ではなかった。

 代わりに、正体不明ながらもよく彼女のそばに姿を現していた謎の外国人が、扉にもたれるようにして立っていた。

 

「貴方、でしたか」

 

「久方ぶりだな」

 

 彼は大股でカウンターの方へと歩いてくると、どかっと椅子に座り込んで息を漏らした。

 この男は、アナスタシアのことを何か知っているに違いない。

 槙野は開口一番、彼女を知らないかと問おうとして──しかし、彼が片手でカウンターの上に差し出した物を見て、思わず口をつぐんだ。

 

「……これは……」

 

 そこにあったもの。

 それは少しだけ古ぼけた、小さな木彫りの十字架だった。

 

「最初から話そう」

 

 男はそれをじっと見つめたまま、口を開いた。

 彼女の生い立ちに身分と、自らの正体。彼らが戦っていた「戦争」のこと、それがどういった経過を辿って、どういう結末を迎えたのか。

 

「あいつは……アナスタシアは「この世全ての悪」を相手にたった一人で戦い抜いた。街の人々を、そして他でもないお前を守るためにな。そして──その役目を果たして、二度と帰って来なかった」

 

 アーチャーの顔が苦々しく歪む。彼自身、彼女を生きてここに帰すと決めていたのに、それは結局叶わなかった。

 

「あいつが、最後に俺に託した願いがある」

 

「……それは?」

 

「『この戦いが終わったら、あの人のところに、私がいたという証だけでも連れて帰ってあげてほしい』──……と、あいつは言い残した。あいつの、最初で最後の命令(わがまま)だ」

 

「………………」

 

 あの時、残りの令呪全てを費やして紡がれたその命令は、聖杯が消滅したのちもアーチャーの長期活動を可能とした。

 それ故に、彼はマスターという魔力供給源を失ってからも現界を続け、聖杯が消えたことでがらんどうとなった大空洞に辿り着き──そこで、この十字架を見つけ出したのだ。

 それをこの場所に届けた今、その願いは叶えられた。

 

「──すまなかったな。あいつを、護れなかった」

 

「いえ。それは……」

 

「良い。あいつがそれを望んだとしても、俺の役目は違ったんだ」

 

 沈黙が二人の間を流れていく。

 何を言うべきか迷ったところで、槙野は思わず目を剥いた。

 目の前に座る男の輪郭が、空気に乗って溶け始めている。

 

「……お前にそれを届けた以上、俺の役目もここまでだ」

 

 差し出した十字架をじっと見つめて、アーチャーは呟く。

 

「最後に聞きたい。お前は、これから──……」

 

 ことり、と小さな音を立てて、湯気の立つカップがアーチャーの眼前に差し出される。

 最期の一杯。

 手向けとなるそれを差し出した槙野はにこりと笑って、

 

「貴方が見つけ出したのはこの十字架だけで、彼女の死体は存在しなかった(・・・・・・・・・・・・・・)。そういうことで間違いはありませんよね?」

 

「ああ。しかし……なにせ契約が途切れているからな。普通ならば、マスターの死亡という形でしか発生しない現象だ」

 

「ですが、彼女は普通(・・)ではなかった。なにせアーチャーさん自身、彼女の最期に何が起きたか把握しきれていない」

 

「まあ、その通りだ。聖典との融合体なんざ、この世界広しといえどそうそう存在し得るものではないだろうさ。確かに死体が存在しないというのも不自然ではある」

 

 ずず、と熱く苦い珈琲を流し込むアーチャーの言葉に、槙野はそう言ってくれるのを待っていたと手を叩いた。

 

「つまり、彼女に並大抵の常識は通用しない。……もしかしたら、アナはまだ生きているかもしれないわけです。それが分かっただけで十分ですよ」

 

「だから、待つと?」

 

「ええ……ここは彼女の帰る場所です。何度季節が巡ろうと、どんな月日が経とうともそれは変わりません。日々を細々と生きながら、この十字架と一緒に待ち続けますよ」

 

「は……残酷かもしれんが、悪くはないか……」

 

 アーチャーが立ち上がる。消えかけの身体は、今にもその存在を跡形もなく霧散させてしまいそうだった。

 いや、消える。もう数秒も経てば彼はこの世界から消え失せる。

 それを知って、アーチャーはしかと槙野の瞳を見つめ──、

 

「じゃあな。お前達にとっての幸福を、願っておく」

 

「さようなら、あの子の戦友。後は任されますよ」

 

 風のないはずの店内を、一陣の風が凪いでいく。

 瞬きの後に目を開くと、そこには誰も立っていなかった。

 

 ……かくして、店主は今日も待ち続ける。

 「おかえり」と言える唯一の人が、少し気恥ずかしそうに洒落た扉を押し開けて、その顔を覗かせるその日まで──。

 

 

 

 

「…………………………」

 

 私は、まるで人形のように空虚な手足を動かして、人気のない街の中を無言のままに歩いていた。

 いや、歩いていた、というのには少し語弊がある。

 この歩みの先に目的地はない。目指す場所はもうどこにもない。だからこれはきっと、ただただ徘徊しているだけだ。どこまでも空虚な、何も意味のない行為に過ぎない。

 

「…………………………」

 

 誰かと話したいのに、何も話す気にならない。それはきっと、隣にいつもいたはずの誰かがいないからだ。

 やけに腹が立った。

 けれど、腹を立てたって何の役にも立たない。今ここにいない人間を呼び戻すことはできない。今の私では、せいぜい、そこらの電柱を蹴飛ばすくらいしかできることがない。そうしてコンクリートの塊に激突したつま先は、じんと鈍い痛みを発していた。その痛みが、もう、私がかつての私ではないことを知らせてくる。

 

「…………………………」

 

 改めて、この歩みに目的地はない。

 それでも私は歩き続ける。かつて、もういない少年と共にこの街を駆け抜け、戦い抜いた記憶をなぞるために。もう戻れない過去の時間を慈しむために。

 虚しい。意味がない。時間の無駄だ。

 頭の中でそんな正論ががんがんと響く。黙れ、分かっている、そんな事は誰よりも私が、あの少年を殺めた私が一番良く分かっている。今にだって、私は罪悪感と憤怒から今すぐ自分を殺してしまいたい。ふざけた運命に弄ばれて、結局彼を守ることができなかった私を、私は終生許さない。

 

 ……でも、死を選ぶ訳にはいかない。

 

 そうしてしまったら、命を使い果たして私を救ってくれたケントの意思が、意味を失ってしまう。

 何もかも失った私が最後までしがみつけるのは、守り通すことができるものは、きっとそれしかない。

 私は自らを呪い、そして生きながらえることで、彼の望みを叶え続ける。それがきっと、かけがえのないひとを殺めた愚か者(わたし)への罰なのだ。

 

「……………………………」

 

 懐かしむ心と、自らを糾弾し憎悪する心で頭の中をごちゃ混ぜにしたまま、私はふらふらと彷徨い続ける。

 どれくらいの時間歩いていたのだろう。

 ふと、私は行き止まりにぶつかって足を止めていた。目の前に道はなく、無言のままに身を翻えそうとする。けれど、私は目の前の光景に吸い込まれていった。

 

 それは、住宅街の最中にぽつんと佇む寂れた公園だった。

 

 言い表せない懐かしさに吸い寄せられて、私は公園の奥、壁のように聳える高いフェンスに両手を這わせる。ここは高台だ。その奥には、眼下に広がる大塚の街を彼方の山麓まで見通すことができる。

 ああ、と声が漏れた。

 見覚えがあるのは当たり前だった。ここは、私とケントが、初めて互いに言葉を交わした場所だったのだ。あの日もこんな夕焼けの下だったのを覚えている。鮮烈で、どこかユーモラスな……彼にとっては2度目の、私にとっては数千年ぶりの再会だった。

 

『このゴミムシ馬鹿愚か不敬者ぉーっ‼︎』

 

『うお……おおぉ……ビンタが、なにゆえ、右ストート並の威力に……⁉︎』

 

『フンッ。いきなりこの魔王に殴り掛かるとは、いい度胸してるじゃあないですか。本来なら万死に値する愚行です』

 

 映像を投映するかのように鮮明に、その記憶を思い出せる。

 彼の顔も、声も、姿も……全てを。

 諦めが悪く、私は思い返してしまう。

 

『では、一緒に来てくれますか。私の……マスター』

 

『……ます、たー?』

 

 ついぞ、彼をマスターなんて呼んだ事はこの時くらいだったように思う。

 それも当たり前だった。

 私は、ずっとずっと知りたかった彼の名前を知ることができて、そんな野暮ったい呼称を使うのは嫌だったから。だから、彼を名前で呼ぶことにした。サーヴァントとしては不出来だと分かりつつも。

 

「……………………………」

 

 思わず、その名前を呟いていた。

 返事はない。

 風が、狂ったように私の髪を揉んでいく。

 

「………………………、ぐ」

 

 誰かの声が聞こえた気がした。それはきっと自分の声だ。耐えきれなくなって、私は思い切り両手を目の前のフェンスに叩きつけ、めいっぱいの力で握り締めた。

 

「うう……っ、あ……あ……‼︎‼︎」

 

 なにもない。ここにはもう、なにも。

 理解してはいた。けれど、それを実感と共に把握してしまった瞬間、もう私は限界だった。

 ガシャン、と音を立ててフェンスが揺れる。

 額をそれに押し当てて、目の前に広がる絶景に目もくれず、私は叫んでいた。意味のない声を、何にもならない慟哭を、ただただ天に響かせた。

 

「ああああっ……っう…………‼︎‼︎」

 

 会いたい。

 そう思ってしまう自分が、情けなくて、恨めしい。

 私がそんな事を願ったのが過ちだったのに。私が彼と再会したとしても、そこに横たわる運命は、きっと私が彼を殺める事を摂理とする。それだけの話だったのに。

 それでも、会いたい。

 まだ伝えていないことも、やり残したことも、謝りたいことも……数え切れないくらいに残っている。

 だから、あなたに会いたい。

 

「ケント……ケント…………ケントっ……‼︎‼︎」

 

 身体を震わせて、その名前を呼んだ。

 この世界でたった一人。私と共にあろうとしてくれた人の、その名前を。

 意味がないのに、何度もその名前を繰り返す。

 怖かった。そうしていないと、彼が存在したという事実が、嘘になってしまうようで怖かった。

 自分に幻滅する。また、懲りずに彼を望んでしまう下衆な自分を、どこまでも殺してやりたい。

 でも、止められない。

 止められるわけがなかった。

 誰かに会いたいと願う気持ち。誰かを愛しむ気持ち。そんなもの、きっと神にだって制御しきれない。だから、私はまた彼の姿を夢想する。

 

「………………………っ」

 

 泣き疲れて、私は冷たい金網に身体を預けてずるずると座り込んだ。

 私は生きている。だから、生きていく。

 例えこの世界に、たった一つ望んだものが無くなっていたとしても。残酷な運命が変わることはなかったとしても。それがきっと、私にできる唯一の贖罪になるのだから。

 

「ケン、ト」

 

 そうして。

 絞り出したような声で、無意識にその名を呼んだ時。

 

 

 風が、吹いた。

 

 

 それは私の背中を軽やかに撫でて、前へ前へと抜けていく。まるで、私が立ち止まるのを許さないと言っているかのように。

 ぴくり、と勝手に肩が跳ねた。

 気配を感じる。あり得ないはずの何かを、己の背後に感じている。

 

「………………え、」

 

 ほぼ反射的に、私は後ろを振り向いた。

 涙で霞んだ視界が、誰かのシルエットを映している。慌てて私は涙を拭い、その人影をしかと見た。

 黒曜石のような黒い髪と、やや鋭い瞳。変わらない人のいい笑顔を浮かべて、「彼」は立っている。

 

「……は、はは。はは…………」

 

 あり得ない、と乾いた笑いを漏らした。

 自分はおかしくなっているらしい。こんな幻覚を見てしまうほどに、私は追い込まれて、彼のことを想っていたのだ。笑えるくらいに、自覚するのが遅すぎた。

 だが──、

 彼がこちらに歩いてきて、その両手が私の体を抱きしめた瞬間。

 今度こそ、私の頭の中は真っ白に漂白されてしまった。

 

「え……と……おかしい、ですね、なんで……」

 

「…………バカ。夢だとでも思ったのか」

 

 彼の声が、私の鼓膜を久しぶりに震わせる。

 

「よく見ろ。お前が見てるのは本物だ。確かにこの世界に生きている志原健斗だよ、セイバー」

 

 その身体の温もりと、彼の胸越しに伝わってくる確かな心臓の鼓動が、その事実を言外に示していた。

 

「な──そ、そんなっ……け、ケント、なぜ……⁉︎」

 

 抱き締める力が緩められたので、思わずぱっと離れて今一度その姿を眺め回す。頭の先からつま先まで、ケントは確かにケントだった。

 けれど、まだ私の心は拒絶する。目の前の光景が、瞬きすれば消え去る幻想のように思えてならない。ただ、私はもう彼を失うことに耐えられない。だからこそ、信じられない。

 

「……俺にも、よく分かってはいないんだけどな。あの時、俺は確かに聖杯もろとも死んだはずだった」

 

 ケントは目を細めて、彼方に見える龍神湖の跡地に視線を向ける。

 

「ただ……あの決着の瞬間、聖杯を汚染していた「この世全ての悪」は誰かの手で綺麗さっぱり除去されていた。つまり、あんな肉の塊に成り果ててはいたけれど、願望機はちゃんと願望機として機能する状態にあったんだ。それで──」

 

 死の間際、閃光が全てを消し去るその寸前に、彼は願った。

 

 「どうか、セイバーが、泣かなくてもいい世界になりますように」と。

 

 壊れかけの願望機は、しかしその願いを確かに受け止めていたのだ。

 そして、その願いを叶えるために最も必要とされた事柄──「志原健斗の存命」は、奇跡に等しい可能性をくぐり抜けて叶えられた。

 

「──そういうわけで、俺は6日ほど前にあの跡地で目を覚ました。完全に蘇生した状態でな。実はもっと早くお前に会いに来たかったんだけど……完全な死亡からの蘇生者なんて前例がほとんどないし、魔術師達に目をつけられると困るとかで、士郎さんと凛さんの二人に極秘で匿われてたんだよ。志原健斗という人間が、完全に死亡したとみなされるまで──な」

 

 その後も、カエデ達の方には今頃凛さんから連絡がいっているとか、みんなには心配をかけたとか、聖杯も最後には役に立つもんだとか、ケントはそんな話をしていた気がするが、正直私はそのうちの1割も理解していなかった。

 ただ、目の前の事実に現実感が感じられなくて、目を丸くして茫然とすることしかできなくて──、

 

「え、セイバー、何……ごぼえっ⁉︎」

 

 私は何をしたいのかも不明なまま、頭から彼の身体に突進していった。くぐもった声を上げながら、腹に頭部の直撃を受けたケントは咳き込む。

 

「お、お前なあ、何を……」

 

 不満を漏らそうとしたであろうケントは、何かを悟ったかのように口をつぐんだ。

 私は今度こそ両の腕で彼の身体を抱きしめて、決して離さないと力を込める。上を向いて彼の顔を見つめることは、できなかった。今の私はきっとひどく泣き腫らした顔をしているから、あまりそれを見せる気にはなれなかった。

 

「────……ごめんなさい……」

 

 ケントの肩が、ぴくりと震えた気がした。

 

「私が……私が、弱かったせいで……あなたを、今度までも……っ」

 

 漏れ出す嗚咽が、頭の中でめまぐるしく渦を巻く感情が、私の言葉を阻害する。それでも強引に声を絞り出して、私は言葉を紡いでいく。

 

「……嬉しいんです。本当に、信じられないくらい……あなたが、生きていてくれたことが。でも……私には、あなたに合わせる顔が……ない」

 

 すっ、と体を離して、俯いたまま後ろを向く。

 この奇跡に、私は心から感謝している。

 正直なところ、今だってまだ現実感を感じられずに、嬉しさのあまり足元が浮ついているような感覚がある。それでも、私には彼に触れる資格はない。彼を二度も殺めようとした──私には。

 

「いいや。謝るのは俺もだよ、セイバー」

 

 だが。

 背中からそっと回された腕が、私の体を抱きしめた。

 

「……なん、でっ……なんで、謝るんですか……」

 

「俺が弱かったから、あの時お前をちゃんと守れなかった」

 

 優しく、大きな手が私の頭を撫でた。

 蒼色の髪の毛が弄ばれる感覚に身を任せつつ、私は嗚咽を噛み殺した。

 それは謝るべきことじゃない、と叫びたい。私は守られる側ではなく、明白に守る側だったのだから。それでも、彼が言葉にして謝る以上、それはケントにとって謝罪しなければならない事実だったのだ。

 

「……わたし、」

 

 ぐいっと身体を反転させられて、顔を覗き込まれる。

 思わずぱっと視線をずらした隙に、ケントは人差し指を私の口に押し付けた。その顔が少しだけ朱い。何かを誤魔化すように、ケントはやや早めの口調で告げる。

 

「もういい。もうおしまい! 俺たちは互いに謝った、だからおあいこだ。もうお前が俺に対して申し訳なく思う必要はないし、謝る必要だってない‼︎」

 

「でもですね…‼︎」

 

「──……っ、ああ、もう‼︎」

 

 口調が双方に熱を帯び、大声になりかけた頃合だった。

 ガッ、とケントの両腕が私の肩を掴み、距離がなくなって──、

 

 次の瞬間、時間が──飛んだ。

 

 何を言いたいのか、何をしたいのか、全部めちゃくちゃで分からなくなっていた頭の中が、その僅か数秒の間に真っ白に漂白されて、綺麗さっぱり凪いでしまった。

 ほのかに暖かな、柔らかい体温が離れていく。

 無限とも思えた一瞬は終わった。

 怒っているのか恥ずかしがっているのか分からない顔をしたケントが、再び私の眼前に顔を寄せて、やや上擦った声で言う。

 

「……俺は、嬉しいんだ」

 

「へ、……あ……」

 

「正直なところ、ずっと諦めていたんだ。俺とお前、死者と英霊。どんなに想っていようが、俺たちが共に生きていく未来なんてあり得ないって、ずっとどこかで思ってた」

 

 いつになく真剣で、それでいてどこか泣き出しそうな瞳で、ケントは私の瞳を覗き込んでいる。

 目は、もう離せなかった。

 

「でも、俺たちは生き残った。生きて、これから先の未来に、一人じゃなく一緒に踏み出していける。それが、俺は、本当に嬉しい」

 

 だからさ、とケントはどこまでも自然な笑顔を浮かべた。

 

「泣かないで、笑ってくれよ。俺があの時願ったのは──セイバーが、もう泣かないでいい世界なんだから」

 

 その瞬間、私の中のどろどろが、つっかかえていたものが、跡形もなく消し飛んでいくのを自覚した。

 願い。ただ誰かの幸福を願う、純粋無垢な祈りの形。

 それを明確な言葉として聞いたことで、私は、自分が何をすべきか理解した。

 

「……………………ああ。そう、だったんですね」

 

 ひとつの覚悟を決める。

 涙をぐじぐじと彼の服で拭く。例の如く健斗はちょっと嫌そうな顔をしている気がしないでもないが、止めないのだから問題ないということにする。

 そうして、私はぱっと顔を上げた。

 

「もう大丈夫か、セイバー」

 

 そう言った彼の瞳を見て、私はこくりと頷く。

 私達は生きている。この世界を、今も一緒に生きている。

 今はそれが分かっただけで手一杯だ。その幸福をちゃんと受け止めきるだけで、言葉を考えている余裕なんてない。

 

「はい。ケントのおかげで、すっきりしました。……ちょっと、強引でしたけど」

 

「そ、それはいいだろ。あんまり蒸し返すな」

 

 勢いで流してしまいたかったのか、ケントは恥ずかしそうにそっぽを向く。

 それを見てくすりと笑ってから、私は髪を染め上げる夕焼けを見た。

 ケントも、目を細めて同じものを見ている。

 数千年の時を経て、また動き出した時と。

 手繰り寄せた奇跡を経て、これから動き出す時。

 不安はない。残酷な運命を乗り越えた今、たとえどんな困難がこの先に立ち塞がっても乗り越えていけると、そう信じられる。

 それが、とても──身震いするほど誇らしかった。

 

「あの日も、始まりはこんな空でしたね」

 

「ああ。今度はきっと、長い道になる」

 

「そう、ですね……でも」

 

「……でも?」

 

「その前に、あらゆる全てを始める前に……これだけは伝えないと」

 

 夕日が沈む。

 彼方にまで広がる地平線と霧に沈む山麓、鮮やかな夕焼けを背にして立つ。

 それを見て、彼は何を思うのだろう。

 この先に続く未来に、何を願うのだろう。

 

 そんなことを思いながら、私は心の底からの笑顔を浮かべて──、

 

 

 

 

「私は──ずっと、あなたを────……」

 

 

 

 

 私達は生きている。

 生きているからこそ、自分の道は自分で決める。自らの生における意味を、目的を決定することは、生者にのみ許された特権だ。

 私はもう、誰にもその道を決めさせることはない。

 これから先、どんな困難があったとしても、私は憶えているのだから。二度にわたって、自分の生き方を決めることを、当たり前を当たり前と許してくれた人がいたことを。

 

 だから、もう大丈夫。

 私はこれから先の未来に、力強く踏み出していける。

 

 

 空に瞬く月は、その旅路を煌々と照らしてくれることだろう──。

 

Fate/crescent 蒼月の少女       ──完


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