この子は、俺に対して敵意を持っていないようだ。それが、少し申し訳ないような気になる。多分、最後には多数決になるだろうし…いつだって、声の大きいものが強いのだ。
「主様は、おむすびの具は何が好きですか?」
「え、うーん…魚かな。シャケとかツナとかおかかとか」
「つな?」
「鮪の身を油漬けにしたもので、俺はマヨネーズで和えたやつが好きだな」
若干ジャンクフード寄りではあるが。
「そうなんですか…僕もしゃけのおむすびは好きです」
「しゃけは余程魚が嫌いとかでなければ食べられない、というものはいないだろうしな」
「定番で面白みに欠けるとも言えるがな」
食べ物に面白みが必要なんだろうか。
「…まあ、液状でないものなら大抵のご飯と一緒にして美味しい食べ物はおむすびにされてるんじゃないか。海のものでも山のものでも」
後混ぜご飯系とかもあったな。
何故か、虎君が私と一緒にいたがったので、どうするべきか考える。…どう考えても、僕といるより他の刀剣と遊ぶ方が楽しいだろうに。私は、一人遊びならそこそこ知っているが、他のものと共に遊ぶものはあまり多くを知らない。そして走り回るのは疲れるだろうので御免被りたい。私は体力がないのだ。
「…折り紙でもするか」
「おりがみ、ですか?」
「私も幼い頃はひたすらクレヨンで絵を描いたり折り紙を折っていた時代があった…気がする」
まあ、他の園児たちと共に走り回ったりなんかもしていたが。虎君は幼く見積もっても小学生位の年に見えるけれど。
リソースを適当に使って色紙を生成する。ああ、懐かしい。昔は家に常に500枚ぐらいまとめ売りされている色紙がいくつか、引き出しに備えられていたものだ。
「…うーん、鶴なら今でも折れるだろうが、他はどうだろうなぁ」
カラフルな色紙を一枚手に取って、適当に折り始める。鳥系は比較的折りやすかったような記憶がある。折り方は既に朧だが。
「俺もいいか?」
「好きにすればいい」
そういえば、鶴と一口に言っても色々あったな。羽が扇状になっているのから、足があったり首が複数だったりとか。
「そこ、一体どうなってるんですか?」
「ここをしっかり折り目をつけて開けばいい。こういう、開いて形を変える部分は先に綺麗な折り目を付けられると綺麗に折れる」
…うん、久しぶりにしては見れるものにできたな。人間、一度身に付いた技術はそれなりに覚えているものらしい。次はもうちょい複雑なのにしよう。
「できました!」
「…うん、よくできているんじゃないか」
多少いびつな部分もあるが、それも味というものだ。遊びで作るのなら、多少いびつなくらいで丁度いい。
…何か子虎たちが少し退屈そうにしているな。風船でも作って渡してみるか。
「…主様は手先が器用なんですねぇ」
「いや。こんなものは慣れだ。技術と呼ばれるものは大体そうだよ」
一つ一つの折り方にも確か名前があったはずだが、山折り谷折りしか覚えていない。まあ、名前がわからなくても折ることはできるからな。
「やり方を理解すれば余程ぶきっちょでなければできるんじゃないか」
切るところまではありとして、やっぱり折り紙は糊やセロテープなんかは使わないもんだよなあ。…キメラ鶴作ろう。うろ覚えだからうまく作れないかもしれないが。
「…主様、なんですかそれ」
「進化形だ(ドヤァ…」
脚付きの次は腕付きか、さらに足を増やすか…。
「えええ…」
「ぶふっ…なんだそれwww」
「技術の発展には遊び心も必要だ」
何か楽しくなってきた。増やそう。白いのがツボにはまったようだが、俺は知らん。
「君は何時まで起きてるつもりなんだ?」
「一応日付が変わる前には眠るつもりはあるが。…そういうお前は寝にいかなくていいのか」
「君が寝たら俺も寝る」
「・・・」
「そんな顔をしなくてもいいだろう」
「自慢じゃないが俺は寝つきが悪い。後"見守られ"ていて寝付ける気はしない」
日中適当に切り上げた分を夜やろうかと思ったのだが…これじゃあまり意味がないかもしれない。これは何の嫌がらせだ?
「ほうほう、つまり君は一度布団に入ってからまた起き出してくる可能性がある、と」
「…というか、君は此処で夜を明かすとは言わないよな」
「言ったらどうなるんだ?」
「…ベッドは使っていいぞ。俺は此処で寝る」
「いやいや、それは流石にダメだろう。…って、今朝のアレはそれが原因か。同衾するのは拙いと言ったって、方法は他にもあるだろう。そもそも、君の方が寝台を使うべきだ。二日連続椅子ってのは疲れが取れなくて拙いだろう」
「そう思うなら自分の部屋で寝てくれ」