「こんのすけ、小鳥に危害を加えるようなものを招き入れたら斬ると言ったはずだが」
「いえ、その、私も主さまに危害を加えられることは避けるべきだというのはよく承知していますので…」
「ははは、知っているぞ、ああいうのを主のセコムというのだろう」
「うん、膝丸は大袈裟だと思う」
先程刀を突き付けられたばかりだというのに、小鳥には全く怯えた様子はない。鶴丸に抱えられて小首を傾げている。抜刀した膝丸と対峙しているのは、同じく抜刀した同田貫と和泉守だ。特に、同田貫は金色の瞳をぎらつかせている。
「確かに、俺は拳で語るタイプの話し合いは出来ないんだけど」
「それは話し合いと言わないだろう」
膝丸の突っ込みに小鳥はそう?と首を傾げた。
「それにしても君たち、引き継ぎを希望して此処にいるんじゃないのかい?」
「…戦場に出られりゃあそれでいいとは言ったが、こいつに采配ができんのか?」
「そりゃまあ、主には無理だな。主にはまだ戦の知識がない。どころか、現状出陣出来ないからな。こうして俺たちみたいなのが寄越されるってわけだ」
「俺ちゃんとこんのすけに貰ったテキストで勉強してるよ。実戦経験は確かにないけど」
「小鳥は本丸の維持と後方支援に徹していればいい。戦の知識なら俺が持っている」
「そうやって甘やかすからそいつが何もできないんじゃねーの」
「はァ?」
和泉守の台詞に膝丸は割とガチで気分を害した顔をする。
「…仲間を斬るものではないが、正式にこの本丸のものとなったわけではない以上、勘定の外だよな?」
「んー…俺は
あぁでも、実質的にはそう変わらないのか、と緊張感なく小鳥は言う。
「ちょっと前まで、此処の維持以外の仕事がなかったから」
「今更になって小鳥を普通の審神者と同じに扱おうなどと、虫が良すぎる」
「俺は別に気にしてないけどなぁ」
「そこは気にするべきです、主さま」
「大らかというか、のんきというか…」
「だって俺、結局死にそうになったわけじゃないし」
「…俺が言うべき台詞ではないだろうが、それは結果論だろう。君は奴らに使い捨ての間に合わせの道具として使い潰されそうになったんだぞ。そこは怒って然るべきだろう」
「でも、特に後ろ盾のあるわけでもない一般人で、さして優秀でもなく鍛刀もさせられない、となれば危険な所に引き継ぎに回されるのも仕方ないんじゃないかな。それでひざまるみたいにやさしいひとの所に回されたのは運が良かったよ」
話を仕切り直した。
「…さっき俺が刀を突き付けても動じなかったのは何でだ」
「だって君、別に本気で俺を斬ろうとはしてなかっただろう?流石に斬る気で向かってこられたら俺も逃げるよ」
「・・・」
朗らかに言い切った小鳥に同田貫は苦虫を噛み潰した顔をする。
「…鍛刀ができねぇ、って言ってたが、刀を顕現させる事も出来ないのか?」
「顕現させられなきゃ審神者は出来ないよ。…より正確には、鍛刀したらいけないと政府に言われてるだけで、能力的に問題があるわけじゃないんだよね。初期刀がないから顕現させた事はないんだけど」
「政府に禁じられてるぅ?そりゃ一体どんな冗談だ」
「はっきりそう言われたわけじゃないけど、試験の時に俺が降ろしかけたものが相当ヤバかったみたいだね。俺は悪いものだとは感じなかったんだけど」
「(そりゃあ、見た者を祟り殺す神剣を降ろされたりすればヤバいどころじゃありませんよ)」
和泉守は手にしていた脇差を小鳥に差しだす。
「…顕現してくれ」
「ん、わかった」
小鳥が触れると同時に、清浄な霊力が刀剣に廻り、満たされる。
「かしこみもうす」
鯉口を切ると、その脇差は顕現を果たす。
「すみません、兼さんがご迷惑をおかけしました。あ、僕は堀川国広って言います」
「俺は小鳥だよ」
「国広…」
「弱いものいじめはかっこわるいよ、兼さん」
「まあ、俺がもやしなのは否定しないけど」
膝丸と鶴丸が若干堀川を羨ましそうに見ている。頭の天辺から爪先まで、小鳥の霊力で形作られ、満たされているというのは、どれだけ心地よいことだろう、と。
堀川が出陣して短刀を拾ってきた。
「俺っち、薬研藤四郎だ。まあ、よろしく頼む」
「俺は小鳥だ。…薬研は小さいな」
「…まあ、俺は短刀だからな」
「刀剣男士は皆俺より背が高いものなのかと」
「…って言っても、俺と大将は一寸も変わらないだろう。いや、兄弟たちは概ね俺より背が低いだろうが」
そう返し、その場の刀剣を見回して言う。
「…此処にいる旦那方がこの本丸の刀全て、ってことはないよな?随分偏ってるが」
「残念ながら現状これで全てだな。この本丸は色々特殊でなぁ」
いっそ楽しそうに鶴丸が言う。
「鍛刀禁止令が出ていてね。諸事情により暫く堀川に単騎出陣を頼まなければならなくなっていた。来てくれて助かる」