視点ころころ
ゲートを自分の本丸に繋ぐ。セキュリティが何か…無理やりこじあけられようとした形跡があるな?
「…何だ、乗っ取り案件か」
あーはいはい、よぅくわかったよ。俺のもんに手ぇ出そうとした結果の今回の任務だったわけだな?…さて、どうしたもんかねぇ。
「コード認証、正直者のみがこの門をくぐれ」
門をくぐれば、うちのカンスト一軍がずらっと並んでいた。臨戦態勢じゃないか、なにこれこわい。
「主!」
「お怪我などはございませんか?誰ぞに危害などは」
「俺は大丈夫だよ、二人とも落ち着いて。…留守中に何があったのか、話してくれるか?」
「…というわけで、僕らは警戒態勢で張っていたというわけさ」
「つまり、足を踏み入れたものはいないわけか。…まあ、こじ開けようとした形跡自体はあったが、実際開けられた様子はなかったしな」
まあ、だから良いということにはならないのだが。
「主の方は、どうだったのですか?一体何が…」
「いや、俺はいたって平和だったぞ。新任の引き継ぎと勘違いされかけたが」
とりあえずこの支給された呪具は廃棄しよう。何の影響が出るかわからん。
「…無事君が戻ってきたのはいいけれど」
「いや、様子見に来ただけだからあっちの本丸とのリンク切ってないし、任務完了もしていない」
「え゙っ」
「途中で投げ出すつもりはないんだが、あちらのこんのすけも誤解をしているようだったから君たちが気になってな。端末の緊急回線を利用して繋いで来たんだ」
「…つまり、故意だと」
「さてなあ。というわけで、またあちらに行かなきゃならないわけだが」
「行かないでください、主君」
「秋田君」
「主君にもう会えなくなったらと思うと、不安なんです。…主君は、僕たちの主君ですよね?」
「…僕はお前達の主を辞めるつもりはないよ。ここまで僕を支えてくれている君たちより大切なものはない」
「だったら」
「でもね、一度手を出したものは途中で投げ出してはいけないと思うんだ。彼らが人を嫌いになってしまったら、それはとても悲しい事だと思うから」
まあ皆お人好しだから、よほどのことがなければ、本当に嫌いになってしまうことはないだろうとも思うのだが。彼らは一度裏切られていることになるからなあ。
「…だったらせめて、誰かを連れていってください。いざという時に、主君を守れる刀を」
…それは、何を警戒して連れていけばいいんだ?んー…被ってない子の方がいいんだろうか。とりあえず、カンスト組だよなあ。いや、どんな状況でも対応できる打刀の方がいいか?本丸の守りに残した方が良い気もするし…。
「…厚君、サポート頼めるか」
「おう、任せてくれ、大将」
「碧鳥様、その方は…」
「うちの厚君だ」
「俺の大将に妙なちょっかいを出されても困るからな。護衛ってやつだ」
「え、ええと…」
「なんか、俺がこっちの本丸で重傷負って戻れない事になってたらしい。まあ、デマってやつだな」
まあ、俺の
「こちらの刀剣男士は碧鳥様に危害を加えたことはございません!」
「大丈夫、大丈夫、ちゃんとその辺の誤解は解いてきたから。…早く仕事を終わらせてこいとは言われたけどね」
正直、どうなったら終わりなのか俺は把握できていないのだけれど。
「…なあ、大将、碧鳥って」
「呼び名がないと困るだろ?」
「…本当に気に入ってるんだな、アレ」
「当然だろう。気に入らないものを使う訳がない」
「そりゃあそうだけど」
…ん?何か変な顔してるのがちらほらいるがどうかしたのかな。
「…正直、大将が此処で何かする必要ってあるのか?特に問題あるようには見えないけど」
「んー…わからん」
俺も別にこういうのに詳しいわけじゃないからなあ。
何となく政府の連中の思惑が読めたぞ。…大将は気付いてんのかな。気付いてなさそうな気もするんだよな…。優秀な事が仇になることもあるんだなぁ…。まあ、俺は出来る限り牽制しとくか。ざっと見た感じ、この本丸に練度上限に達している刀はいないみたいだし、容赦しなければ俺一人でもそうにかなりそうだ。…どうにかしないでもいいのが一番なんだけどな。"味方"とは出来る限り戦いたくないし。仮にも、身内と言える刀剣も含まれてる訳だし…まあ、主は違うけど。
まあ普通に考えてあんな良い子が自分の刀剣に執着されてないわけがなかったよね。
「…とはいえ、あそこまでってのは正直想定外かな…」
現世に帰れなくなるの確定とか怖いんだけど。死後を共に過ごす約束は…長谷部君かな?というか、縁の結ばれてるので太くないのがないんだよね。それだけ執着されてるってことになるわけだけど。…そんなにいい
「…光忠」
「え、あ、何?くりちゃん」
「…国永の強い執着を感じる」
「…国永さんの?」
「…何で気が付けなかったのかわからない程だ」
「…何か呪具でも使ってたのかな」
縁を隠す呪具なんて聞いた事ないけど、副作用って可能性もあるし。
練度上限に達した短刀、しかも厚藤四郎だ。短刀たちが動揺しないわけがなかった。こちらの短刀で一番練度が高いのは、なんとかうまく立ち回っていた薬研と乱で、それでも60代になる。明らかに…踏んでいる場数が違うのだ。
「…本当に、すごい人なんですね」
「…政府のやつらも惨い事考えやがる」
大方、刀剣が揃っていて練度も高い彼女の本丸をお偉いさんの子供に与えて、彼女には他の本丸(つまり彼らの本丸だ)を優秀な本丸に変えさせるつもりだったのだろう。そして、それが上手くいっていれば、同じ事を繰り返させようとすらさせたかもしれない。
それは、当事者たる彼女と刀剣たちの感情を考えない酷い方策だ。それで優秀な戦力の揃った本丸が増やせるのも確かだろうが。
「…その思惑にのる事は、出来ないが…」
けれど、彼女が主だったら、と思ってしまうのは止められなかった。彼女の刀剣がどれだけ彼女を慕っているのだとしても。
「ねぇ、碧鳥さん、二つ本丸を持つことって本当に出来ないの?」
「基本、出来ない事になってたはずだが。必要性もないし」
というよりも、普通は出来ないのだ。主に維持に必要な霊力の問題で。そこに当事者たる刀剣たちの感情も絡んでくる。良好な関係を築いている審神者は、刀剣から少なからず執着されるものである。刀剣たちが一番対抗心を燃やすのは、大概にして、自分と同一の刀剣である。だから、同一刀剣を二振り以上同一本丸で運用するのは非推奨などと言われるのだ。
「…大将はお人好しだからなあ」
自分からこの本丸の刀剣を突き放す事はできないのだろう。彼女は人間が嫌いで、自分を慕ってくれる刀剣たちは大好きだから。好きには好きを返そうとしてくれるやさしい人だから。
「こういうのはあんまり得意じゃないけど、俺がどうにかするしかないよな」
「君の初期刀は歌仙兼定かい?」
「ん?ああ。歌仙さんが僕が一番最初に顕現した刀だよ」
といっても、すぐに切国さんとかむっちゃんとか長谷部さんとか来たからアレなんだが。
「その僕は、とても見る目があったんだね」
「そう言ってもらえるのは光栄だね」
まあ、否定はしないよ、うん。肯定するのもなんか自画自賛ぽくてあれではあるんだが。
「…君は、そのままでいてやってくれよ」
「ん、おー」
つまり歌仙さんの自慢の主であれということだな?言われなくてもそうするともさ。俺は、俺の刀剣たちの誇れる主でないといけないからな。
「…余計なお世話だったね」
「碧鳥さんは、何故厚兄さんを護衛に選んだんですか?」
「カンストしててこっちの刀剣と被ってなかったからだが」
「…それだけですか?」
「んー…まあ、しいて言えば、頼んだ事があったしなあ。丁度そこに居たし」
「…適当ですね…?」
「うちの子皆しっかり者だから誰選んでも不安はないからな」
「"僕"もですか?」
「五虎君もね。虎君たちとの連携がすごい」
「…僕も、そんな風になれますかねぇ…」
「なろうと思って努力すればなれるんじゃないか。別に、ならなくてもそれはそれでいいと思うし」
「…ならなくてもいい、ですか…?」
「うちの短刀…特に、就任初日からいる八振りは子供らしい可愛げがないと主に太刀どもの評判でな。特に一期さんと後藤君が頼りにしてもらえないと嘆いている」
「・・・」
「まあ、俺は大変頼りにさせてもらっているわけだが」
「…僕も、そんな風に主様に自慢の刀だって言ってもらえるようになりたい、です」
「そう思って考えて動けば、君もなれるよ」
頭撫で撫で
「はい、頑張ります」
はにかみ笑い
「五虎退は自分から競って前に出ていくタイプじゃない分目端が利くからな。度胸が付けば参謀にもなれる」