刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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起こり得る終焉 もしも遡行軍との戦いが終わったら 
まあ間違いなく神隠しエンドだよね、って
政府的には主の首を挿げ替えるための嘘だった、という√もありっちゃあり 少なくとも全刀解は指示ではなく彼女の判断


誰かの望んだ"ハッピーエンド"

 

 

もう、明日からは歴史を遡って遡行軍と戦わなくてもいい、らしい。その性質上、俺が生きている間には終わらないと思われた戦いが、まさかの終焉を迎えたということだ。つまり、俺が審神者を続ける必要性も、此処にいる理由も、仕事も、無くなったと言う事になる。

…否、まだ一つだけ仕事が残っている。審神者の本義にもある、重要な役目。降ろした神に、元の場所へお還りいただくこと、だ。即ち、俺の降ろした刀剣を全て刀解する、ということになる。

まあ、元より長谷部さんとは生きてか死んでかはともかく、俺が審神者を辞める事になる時には彼を折ることを約束していたのだが。

「…まさか、こんな日が来るとはなあ」

さて、どうなることやら。

 

 

 

「主は、納得しておられるのですか」

「んー…そんな事言われてもなあ。戦いが終わったというなら、俺は役目を終えたという事になるし、穀潰しにに大金を払う事は出来ないだろう、政府も。現世に戻った後、どうなるか、どうすべきかに不安がないというわけではないが、道理を曲げようとまでは思わないし」

「…逆に、僕たちが納得すると思うのかい」

「…思わないね。僕にとっても、君たちにとっても、此処で過ごした時間は惜しむに足るものだっただろうし」

「なら、何故…」

「僕の融通の利かなさは君も知っているだろう。…少なくとも、僕に自分から人間を辞めるつもりがない以上、僕にはこうすることしかできない」

「それなら…僕たちが、主君と一緒に居たい、僕たちに隠されてほしい、と言ったらどうされるのですか?」

「…どうしようねぇ」

彼女は、刀剣に悪感情を持っていないし、家族以外の現世への執着はない。神隠しされても、本人の心情の上ではあまり問題はない。

「…そうだなあ。本当に、隠されて現世との繋がりを断つというのなら…家族に手紙を残したいな。心配はさせたくない」

「主は俺たちに隠されてくれるのかい?」

「それが君たちにとって一番良い選択だと本当に言えるのなら。

 

 

 

一週間。どうするか決める為、お互いを説得する、ということになった。それは実質、彼女を現世に返すか否か、というものだったのだけれど。

「大人しく頷いてくれるってわけにはいかないのかい?君は断固拒否だ、ってわけじゃないんだろう?」

「神隠しというのがどういう仕組みで、どうなるものかを具体的に知っているわけではないけれど…それをしたら、僕も、君たちも、そこから出られなくなるものなんだろう?…それは、いずれ君の好きな驚きのない、退屈な場所になるんじゃないのかい、鶴丸さん」

「神様の気の長さを忘れてもらっちゃ困るぜ、主。少なくとも、君という人間の寿命程度の時間、毎日同じことの繰り返しだったとしてもそれはそれでアリだ」

「幽世に渡ったら人間ではなくなるんだろう?…永遠に閉ざされた箱庭の中で生きると言うのはエリュシオンみたいなものな気がするけれど」

「える…ああ、君の好きな音楽家の曲か。まあ、それは否定できないかもしれないが、幸不幸はそいつ次第なんだろう?」

「まあ、それはね」

「君は俺たちと過ごしてきた時間を愛してくれているのだろう?それと、これからの時間は何が違うんだ?」

鶯丸が口を挟む。彼女は肩をすくめて目を伏せる。

「いずれ喪われるとわかっているからこそ、愛しいものもあるんじゃないかな。それが永遠にあり続けるものになったら…うーん、自分でもどう思うかわからないな」

 

 

 

結果として、彼女は刀剣たちに神隠しされることを選んだ。こんのすけを通じて軍、そして家族に届けられた手紙には、それを選んだのは彼女自身の意志であり、後悔も恐怖苦痛もないこと、彼女が刀剣たちを我が子のように愛していること、家族への感謝と謝罪などが彼女の直筆で記されていた。そして、同封されていた写真には、本丸の中庭、大きな満開の桜の木の下で、彼女の従える全ての刀剣と共に微笑う彼女が写っていた。

 

 

 

これで彼女は僕らのもの。他の人間にも、ましてや神にも、奪わせたりはしない。永遠に邪魔の入らない箱庭の中で、ずっと幸せに暮らすんだ。だから、ねぇ、これでハッピーエンドってことでいいよね、ねぇ、主。みんな、みんな、君の事が大好きで、愛しているよ。

 

 

 

 

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